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99.12.18

語彙数の推計

 インターネットで公開中の天野成昭・近藤公久氏らによる「語彙数推計テスト」では、自分がどれだけの数のことばを知っているかが分かります。
 正確には『新明解国語辞典』(第4版)の見出し語を何語知っているかということだそうですが、50項目をチェックするだけでだいたいの結果が分かるのはおもしろい。
 さて、僕は今月、都内の某短大生98人(日本文学科)の協力を得て、「理解語彙に関するアンケート」と称する調査を行ってみました。上記の推計テストと同じものをプリントして、知っている項目に鉛筆でチェックしてもらう方式です。
 いつも学生たちから、簡単なことばについて質問をうけます。「『制限をとっぱらう』の『とっぱらう』って何ですか?」「『説明が舌足らずだった』というのは、説明不足だったということですか?」などなど。
 「とっぱらう」を分かってもらえないのでは物が言えない。「舌足らず」の意味は、「説明不足」でほぼOKでしょうが、質問するからには、自信がないんだろうと思う。
 いったい、今の短大生はどれぐらいの理解語彙があるか。知っておきたくなったのです。
 有効回答数は91。このうち、高いほうは50項目中43項目をチェックしている。低いほうは18項目。ただし、項目によって重みが違うので、機械にかけてみなければ、当人の「語彙数」は分かりません。全部を機械にかけるのは面倒なので、上位と下位だけをみてみると、次のようになります。

得点推定語彙数
43
58,800
43
50,500
42
57,000
42
54,600
27
25,900
27
23,400
26
23,000
20
18,200
18
15,100

 『図説日本語』(角川書店)にあるデータによれば

   小学生レベル: 5千〜2万語
   中学生レベル: 2万〜4万語
   高校生レベル: 4万〜4万5千語
   大学生レベル: 4万5千〜5万語

ということです。58,800語なんてのは、もう大学のえらい先生レベルで、「君、本当にそれだけ知っているの?」と疑い深い質問をしたくなるほどです。
 ちなみに、僕自身が試してみると「57,171語」という結果になりまして、これでは短大生に負けている。偉そうなことは言えません。
 一方、低いほうの15,100語というのは小学生レベルですから、これも逆に信じがたい。外国人留学生でもなさそうだし。58,800語をもつ人と、15,100語しかもたない人が一緒の教室で授業を聴いているというのも、あまりよいことではなかろうと思います。
 では、平均はどれぐらいの語数となるか。直接数値を出すのは面倒だけれど、とりあえず全体の半数以上、また、3分の2以上がチェックをした項目にかぎって機械にかけてみると、次のようになります。

1/2以上43,400語
2/3以上35,100語

 ここから分かることは、短大生たちに対し、半数に分かるような授業をするためには、高校程度の語彙を使用し、3分の2以上に分かってもらおうとすれば、中学程度の語彙を使用すべきだ、ということになります。うーむ。
 短大生の名誉のために付け加えると、『新明解』の所載のことばには〈老人語〉〈古いことば〉も多く含まれているので、世代的な原因で数値が低くなったフシもあると思います。たとえば「輪タク」なんて、僕も見たことありません。「オート三輪」なら、かすかに記憶に残っています。

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