『サザエさん』レビュー

最終更新日: 2019/08/26 1969〜1970年のレビュー追加

 1969年10月の開始以来、放送40周年を迎えた『サザエさん』ですが、雪室さんは1969〜85年、1996〜現在のメインライターの一人となっています。 特にここ数年は3本のうち1〜2本が雪室脚本となっており、『サザエさん』の高視聴率を支えている立役者の一人と言って過言ではないでしょう。 『サザエさん』は良くも悪くも「マンネリ」という評価を受ける作品ですが、動かせないキャラクターや人間関係に対して、雪室さんは外からいろいろな刺激を与えることで単調さや古くささからうまく逃げているように感じます。

 脚本家を気にしながら見ているとすぐに気づくことですが、雪室さんはサブタイトルあたり「原作4コマネタ」を1本だけ使っていることがわかります。 ストーリーは原作ネタに関連はしているものの、思い切ってふくらませた話が多く、ときに原作ネタが浮いているようになってしまう場合も少なくありません。 原作ネタは冒頭か最後に入ることが多いようです。 一方でもう一人のメインライターの城山さんは原作ネタをつなげたストーリーが多く、「偉大なるマンネリ」を指向しているように感じます。 最近は、この二人の組み合わせが、『サザエさん』をうまくバランスのとれたものにしているような気がします(笑)。 アニメでの元ネタ選択は文芸担当のスタッフが過去の履歴を元に行っているそうです。(『アニメーションノート』第4号の成島さんへのインタビュー)

 『サザエさん』は30分番組で3本というのは誰もが知っていることだと思いますが、1話の時間が6分55秒と短時間であるにもかかわらず、ストーリーの密度が非常に濃くテンポが速いのが特徴です。 下手な30分アニメと同じくらいの内容があるときもあります。 みんな『サザエさん』のリズムが当たり前になっていると思いますが、意識して見ると結構すごいですよ。 ただ個人的にはもう少し長い時間で複雑に構成した作品を見てみたいところです。

 磯野家のキャラクターで雪室さんがいちばん好きなのは、カツオでないかと思います、と自分は書きましたが、2019年発売の「サザエさんヒストリーブック」のインタビューでは「雪室はカツオをいじめすぎだと言われますが(笑)、僕がいちばん愛しているのがカツオなので、いじめているわけではありません」と答えられています。


Amazonプライム(要有料会員登録)で見た過去作のレビューは以下の別ページにまとめました。

幻の作品が見られるのはうれしいのですが、いきなり何10話も一挙に追加されるので、見るのが追いつきません。ずっと配信継続してくれればいいのですが。


2005年から2010年に書いたレビューはこちらに直書きです。

第5591話「サイレンとカミナリ」(2005/07/10放映)

バカモノー!

ストーリー: わがままが過ぎてついに磯野家全体に「これはやばいのでは」ムードが漂うタラちゃん。
カツオ「その点タラちゃんはカミナリがいないから幸せだよ」
フネ「確かに少し甘やかしすぎかもしれない」
サザエ「最近わがままが過ぎるのよ、タラちゃん」
カツオ「ボクもお父さんの孫に生まれたかったよ」
というのは某掲示板のログではなく、本当にアニメのセリフ。 そんなわけで、最後は波平に怒鳴られることに。

感想: タラちゃんの傍若無人ぶりがこれではいけないということは、やはり脚本を書いている側も感じているところなのだろう。 タラちゃんが波平に怒鳴られて、それでも一般視聴者が不愉快に感じない…ということを考えてこの作品が書かれたのだと思う。 現在の『サザエさん』ではこれが限界かと。(^^;


第5712話「天下の美少女花沢さん」(2006/05/07放映)

過去を語る花沢父

ストーリー: マスオの写真がうまいのを聞きつけて、花沢さんが美少女コンテストの応募写真を撮ってもらおうとやって来る。 なぜか花沢さんのお父さんまで乗り気なのだ。 撮影にまる一日つきあわされるマスオとカツオ。 カツオは「頭がくらくらして、花沢さんが美少女に見えてきたよ」と暴言を吐く始末。 さて、36枚撮りフィルム5本分の成果はどうなるのか。

感想: 子供の頃は花沢さんと言えば「ブ○」の代表と思っていたのだが、最近はこういう子がかわいく思えてしかたがない。 この話の花沢さんで、花沢さん痛車まで作ってしまった。


第5875話「父さん発明の母」(2007/05/27放映)

口は災いのもと

ストーリー: いわゆる全自動タマゴ割機の回
波平がある日突然、「全自動タマゴ割機」を買ってくる。秋葉原駅前あたりで、実演販売を見たのだろうか。本人は得意げである。 子供たちは大喜びだが、主婦2名は顔が引きつっている。 マスオは「いやーうまい、やっぱり機械で割ったタマゴはひと味違いますよ」と相変わらずのリアクション。 機械を使いたがらないフネに、波平は「母さんは機械ものに弱いからなぁ」と上機嫌であった。
しかし、すき焼きのにおいを嗅ぎつけたノリスケは、そのことを知らず「手で割ればすむものを、わざわざ機械を使うなんてね」「ああいうものを買う人の気持ちがわかりませんよ」「どうせ買うのは、タマゴなんか割ったことのない関白亭主ですよ」とすっかり本音を語ってしまい、当分出入り禁止に(笑)。 しかし、この話はタマゴ割機にとどまることはなかったのであった。

感想: 雪室さんの「タマゴねた」好きと羽目を外した脚本はいろいろな作品で見てきただけに、「また出たか」くらいに思っていたのだが、ネットの掲示板や動画サイトで異常に盛り上がっていたのは意外であった。
まあ、でもこういった際物を父親が買ってくるというのは結構現実的な話ではないだろうか。 事実、自分の祖父も突然自動缶切り機を買ってきた思い出があったりする。 主婦がTVショッピングでしょうもない物を買ってしまうのと同じなんだと思う。
しかしよく考えてみると、子供たち、主婦たち、マスオの見せるリアクションがそれぞれ本当にリアルだったりするのが、この作品の脚本の本当にすごいところで、だからこそ『サザエさん』でこのストーリーを展開して視聴者に違和感を感じさせないのだと思う。 突拍子もない脚本を書くだけなら誰でもできる。 それでいて、作品の枠にぴったり収まらせることができるのが、雪室さんのすごいところではないかと思うのである。


第6305話「春風からの招待状」(2010/03/28放映)

いわゆる聖地巡礼に行ってきました。 こちらです。



2010年からは「はてなダイアリー」の方に時々感想などを書いていましたので、以下に直リンしておきます。太字になっている回がわりとちゃんと書いたもので、それ以外は暇人向けです。


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