『サザエさん』1969年〜1970年のレビュー

最終更新日: 2020/05/08 サブタイトルリストの拡充と別ページ化

 Amazonプライム(要有料会員登録)で見ました。1969年10月放送開始から、1970年9月までのレビューです。


 最初期は「トムとジェリー」を思い起こさせるドタバタ作品でしたが、次第にファミリーアニメという新しい形に落ち着いていきます。この変化はわりと急で、最初の数回で起こっていますが、裏には雪室さんのファミリードラマ的な作品が、松本美樹プロデューサに評価された事情があるようです。そして、第10回からキャラデザも丸顔・低等身に変わります。

 TV放送が白黒からカラーに変わる時期で、東芝がスポンサーだったこともあるでしょうが、OP、EDの色彩が非常にすばらしく、アニメーションも当時の最先端だったと思います。また、OP曲の音程がまともなのも驚くべきところ(笑)ですが最初の半年だけでした。70/04/05のOP変更から、テープ速度調整による音程下がりが発生しています。

 雪室さんも今みたいに自在に書いている風ではなく、いろいろ試行錯誤しながら「サザエさん」を作り上げていこうという若々しさが感じられます。辻さん、城山さんと、三人の脚本体制はすごいですね。

Amazonシーズン1第6回Cパート「家なき子物語」(1969/11/09放映)

売られた磯野家

ストーリー: カツオとワカメが家に帰ると他の人が住んでいて、家は波平から買ったと言う。夢から覚めるとそこは静岡のおじさんの家で、おじさんが電話でカツオとワカメをもらう話をしているのを聞いてしまう。

感想: 最初は夢オチかと思わせて、さらにたたみかけるサスペンス調の予想しないような展開で、ファミリーものの枠を超えた複雑な話になっています。最後は、バスの時間待ちでのミカン狩りと、後年「あずきちゃん」にもつながる作品です。


Amazonシーズン1第12回Bパート「ねえ・どうして」(1969/12/28放映)

ノリスケ初登場

ストーリー: タラちゃんが何事にも「どうして?」と聞いてくるのが、磯野家のみんなにはとても鬱陶しい。適当なことを言っていたことをきっかけに、タラちゃんは三河屋のトラックに乗ってしまい、誘拐騒ぎに。

感想: 小さな子供の無邪気な疑問と、相手にする鬱陶しさという、日常の隙間から発した風が、最後には逆向きになって返ってくるという計算された構成が、すごく面白いです。


Amazonシーズン1第17回Cパート「カギッ子」(1970/02/01放映)

カツオがカギッ子に

ストーリー: 同級生の橋本が団地のカギッ子ということで、憧れるカツオとワカメに、サザエとフネがわざわざ外出してカギッ子体験をさせてやるという内容です。

感想: 「サザエさんヒストリーブック」で、この話が実は幻の第1話だったという秘密が明かされました。当初のドタバタ路線と合わずにお蔵入りしていたものが、半年経ってファミリーものに路線転換を行った後に放送された、いわく付きの作品です。
この作品、全く第1話らしくないのは、「サザエさん」が既にマンガで人気作品になっていて、イントロダクションをする必要がなかったということもあるでしょうが、いきなり1話から磯野家とは真逆のカギッ子体験をさせるというところが、雪室さんの「へそ曲がり」ぶりを発揮していると思います。 雪室さんの書いた「ゲゲゲの鬼太郎」(2期)の第1話も普通の1話らしくなくて、ちょっとこんな感じなんですよね。


Amazonシーズン1第39回Aパート「モノオキの神様」(1970/07/05放映)

怒られて物置に

ストーリー: いたずらが過ぎたタラちゃんはサザエに物置に閉じ込められる。 タラオはそこで怖い「モノオキの神様」に会う。

感想: フジTVの35周年前祝いスペシャルに、放送1年目の中の傑作として放映されました。 現在のタラちゃんと比べると、キャラクターが今とは全然違って驚きましたが、第1回から順に見ていくとこれが当たり前のタラちゃんでした。
いたずらなタラちゃんの話でありながら、磯野家のいたずらっ子の歴史をふり返っていく、ステキな作品です。



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