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日本の至る所に見かけた湿地、ため池がどんどんなくなっています。湿地にも色々あって、浅い湿地、日当たりの良い湿地、森野の中の湿地、色々あります。湿地で見かける生物の中でも、トンボの種類は大変多く、トンボの種類によってすんでいる湿地の状況がわかるとも言われています。今回は、滋賀県の比良山系の山腹にある湿地にフォーカスを当ててみました。
ハッチョウトンボ オス ハッチョウトンボ メス
「おい、ナベちゃん、うっとこの近くにモウセンゴケがいっぱい生えとるで。」比良山系の山腹で動物病院を開いているコモちゃんが、その湿地に案内してくれました。やぶをかきわけていくと、山の北側が平地になっていて、西側の斜面から水が流れてきているようで、浅い湿地になっていました。「ほら、これや。」子供の頃、植物園で見たことはあったんですが、改めて見てみると、とても可愛らしい植物です。「ここになー、むちゃ小さいトンボがいるんや。」辺りを見回しましたが、トンボらしい気配を感じません。視線を下に落としてみると、下草の上に、なんとも可愛い「ハッチョウトンボ」がとまっていました。「ハッチョウトンボ」は、赤とんぼを小さくしたもので、体長約8 mmの日本最小のトンボです。オスは、写真にあるように、真っ赤なボディー、メスは黄土色と黒のまだら模様で、少し地味な色です。大体昆虫はオスの方が、はでな色が多いですね。ハッチョウトンボのオスをマクロレンズで覗いてみると、複眼は真っ赤ではなく、真ん中で赤と黒のニ色にくっきり分かれています。目までツートンカラーなんておしゃれですね。「ハッチョウトンボ」は、その昔、尾張の国の矢田河原八丁畷で見つかったところから命名されたようです。ところが、もう一説には、同じ名古屋ですが、瑞穂区神明町付近の八丁畷で見つかったことに由来するとも言われています(「なごやの昆虫」、臼田明正、他著、名古屋昆虫館、1989年)。         
しばらくこの湿地に通って観察、撮影を続けてみました。ハッチョウトンボの発生は6月頃で、ほとんどの固体は夏の終わりには姿を消してしまいます。6月下旬にはモウセンゴケが湿地一面にびっしりと生い茂り、ハッチョウトンボが捕まっている姿をよく目にしました。恐らく、産卵時につかまったんでしょう。捕まったトンボは、モウセンゴケの触手を噛んで必死に抵抗しますが、羽根は粘液にひっかかってとれません。こうして、モウセンゴケは栄養を貯え、翌年に未来を託して、7月には姿を消してしまいます。次のページは、下のアイコンをクリックして下さい。

モウセンゴケ:松の新芽が出て来ている。 モウセンゴケにつかまったハッチョウトンボメス

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