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2015.11.27mf
弁護士河原崎弘

死因贈与の効力/弁護士の法律相談

質問

私の夫(次男、子供なし)の母(私の義理の母)と夫は、公正証書により、「自分が死亡した場合、自宅(土地、建物)を次男 (夫)に与える」と 、契約をしてしまいました。
ところが、夫が先に亡くなり、その後、義理の母が亡くなりました。この土地、建物は長男が相続し、長男が自分の名義に登記してしまいました。
私は、夫の相続人として、この自宅の土地、建物を要求できませんか。
相談者は法律事務所を訪れ、弁護士に相談しました。

相続関係図
義理の母
×死因
贈与
相続

回答

義理の母と相談者の夫の契約は、死因贈与契約です。
死因贈与の場合、遺贈の規定が準用されます(民法554条)。従って、受贈者が、贈与者より先に死亡すると、死因贈与の効力は失われます(民法994条1項)。
あなたの夫が、死亡したことにより死因贈与の効力はなくなっています。
その土地、建物は長男が相続し、あなたは、その土地、建物を取得しません。

判例

東京高等裁判所平成15年5月28日判決(出典:判例時報1830号62頁)
(1)民法554条は、「贈与者ノ死因二因リテ効カヲ生スヘキ贈与ハ遺贈二関スル規定二従フ」と規定しているところ、こ れは死因贈与については遺贈の規定を準用する趣旨と解される。死因制与について遺贈の規定が準用される趣旨は、死因贈与と遺 贈とは、共に無償で財産を供与する行為であり、かつ、死亡によって本来は相続人に帰属すべき財産を相続人に帰属させないで相 手方に供与するという点において共通性を有するからと考えられる。  もっとも、単独行為である遺贈と契約である死因贈与との違いはあるから、単独行為であることのゆえの規定、例えば方式に関 する規定などは死因贈与に準用されるべきでないが、効力に関する規定については、準用することが不合理と認められない限り、 広く準用されるものと解すべきである。
(2)次に、民法994条1項は、「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。」と規定 するところ、この規定は、遺贈が無償の財産供与行為であり、何らかの個別的な人間関係に基づいてされるものであるため、遺贈 者の意思は通常個別的な人間関係のある特定の者、すなわち受遺者に向けられたものであって、遺贈の効力が生ずる以前に当該受 遺者が死亡したときには遺贈者が意図した供与の相手方が存在しなくなったがゆえに遺贈の効力を否定する趣旨でもうけられたも のと解するのが相当である。
(3)そこで、死因贈与につき民法994条1項が準用されるか否かについてみるに、死因贈与が無貝の財産供与た為であり、 かつ、供与者の死亡によって本米は相続人に帰属すべき財産を相続人に帰属させないで相手方に供与するという点で遺贈と共通性 を有することは前記(1)のとおりである。また、死因贈与も、その無償性に照らして何らかの個別的な人間関係に基づいてされ るものであることも、遺贈と共通するといってよいであろう。そうすると、贈与者の意思は、遺贈と同様に、そのような個別的な 人間関係のある特定の受贈者に向けられていると されるから、前記のような趣旨でもうけられた民法994条1項を死因贈与に ついて準用することについては格別不合理なところはなく、むしろ準用することが相当であるというべきである。

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2004.11.12
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