消費者契約法

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(平成12年5月12日・法律第61号)
施行、平13・4・1
改正、平13-法129
第1章 総則


第1条(目的)
この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ、事
業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み又はそ
の承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任
を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無
効とすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済

の健全な発展に寄与することを目的とする。

第2条(定義)

この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者とな
る場合におけるものを除く。)をいう。
2 この法律において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために
契約の当事者となる場合における個人をいう。
3 この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう

第3条(事業者及び消費者の努力)

事業者は、消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契
約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるよう配慮するとともに、消費者契約
の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、消費者の権利義務
その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努めなければならない。
2 消費者は、消費者契約を締結するに際しては、事業者から提供された情報を活用し、消
費者の権利義務その他の消費者契約の内容について理解するよう努めるものとする。

第2章 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し

第4条(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次
の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費
者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であ
るとの誤認
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるそ
の価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実
な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であ
るとの誤認
2 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して
ある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ
、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実
が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより
、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承
諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消
費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは
、この限りでない。
3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して
次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその
承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去
すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。
二 当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退
去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。

4 第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項であっ
て消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの
をいう。
一 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容

二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件

5 第一項から第三項までの規定による消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消
しは、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
第5条(媒介の委託を受けた第三者及び代理人)

前条の規定は、事業者が第三者に対し、当該事業者と消費者との間における消費者契約の
締結について媒介をすることの委託(以下この項において単に「委託」という。)をし、
当該委託を受けた第三者(その第三者から委託を受けた者(二以上の段階にわたる委託を
受けた者を含む。)を含む。次項において「受託者等」という。)が消費者に対して同条
第一項から第三項までに規定する行為をした場合について準用する。この場合において、
同条第二項ただし書中「当該事業者」とあるのは、「当該事業者又は次条第一項に規定す
る受託者等」と読み替えるものとする。
2 消費者契約の締結に係る消費者の代理人、事業者の代理人及び受託者等の代理人は、前
条第一項から第三項まで(前項において準用する場合を含む。次条及び第七条において同
じ。)の規定の適用については、それぞれ消費者、事業者及び受託者等とみなす。
第6条(解釈規定)

第四条第一項から第三項までの規定は、これらの項に規定する消費者契約の申込み又はそ
の承諾の意思表示に対する民法(明治二十九年法律第八十九号)第九十六条の規定の適用
を妨げるものと解してはならない。
第7条(取消権の行使期間等)

第四条第一項から第三項までの規定による取消権は、追認をすることができる時から六箇
月間行わないときは、時効によって消滅する。当該消費者契約の締結の時から五年を経過
したときも、同様とする。
2 商法(明治三十二年法律第四十八号)第百九十一条及び第二百八十条ノ十二の規定(こ
れらの規定を他の法律において準用する場合を含む。)は、第四条第一項から第三項まで
の規定による消費者契約としての株式又は新株の引受けの取消しについて準用する。この
場合において、同法第百九十一条中「錯誤若ハ株式申込証ノ用紙ノ要件ノ欠缺ヲ理由トシ
テ其ノ引受ノ無効ヲ主張シ又ハ詐欺若ハ強迫ヲ理由トシテ」とあり、及び同法第二百八十
条ノ十二中「錯誤若ハ株式申込証ノ用紙若ハ新株引受権証書ノ要件ノ欠缺ヲ理由トシテ其
ノ引受ノ無効ヲ主張シ又ハ詐欺若ハ強迫ヲ理由トシテ」とあるのは、「消費者契約法第四
条第一項乃至第三項(同法第五条第一項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ因リ」と読
み替えるものとする。

第3章 消費者契約の条項の無効

第8条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)
次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項

二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な
過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条
項
三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により
消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の全部を免除する条項
四 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該
事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)によ
り消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の一部を免除する条項
五 消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵が
あるとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に
瑕疵があるとき。次項において同じ。)に、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償す
る事業者の責任の全部を免除する条項
2 前項第五号に掲げる条項については、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は
、適用しない。
一 当該消費者契約において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該
事業者が瑕疵のない物をもってこれに代える責任又は当該瑕疵を修補する責任を負うこと
とされている場合
二 当該消費者と当該事業者の委託を受けた他の事業者との間の契約又は当該事業者と他
の事業者との間の当該消費者のためにする契約で、当該消費者契約の締結に先立って又は
これと同時に締結されたものにおいて、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるとき
に、当該他の事業者が、当該瑕疵により当該消費者に生じた損害を賠償する責任の全部若
しくは一部を負い、瑕疵のない物をもってこれに代える責任を負い、又は当該瑕疵を修補
する責任を負うこととされている場合
第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)

次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であっ
て、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応
じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害
の額を超えるもの 当該超える部分
二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回
数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支
払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これら
を合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に
応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われ
た額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該
超える部分
第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)

民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権
利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項
に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

第4章 雑則

第11条(他の法律の適用)
消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力につい
ては、この法律の規定によるほか、民法及び商法の規定による。
2 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力につ
いて民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

第12条(適用除外)

この法律の規定は、労働契約については、適用しない。
2004.10.20
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