キャッチセールス / 悪徳商法
弁護士(ホーム) > 金銭貸借、保証、債務整理、破産の法律相談集 >
Last updated 2018.5.9mf
(相談)
私は、街頭で、「アンケ−トに協力して下さい。」と、誘われ、言葉巧みに、語学教材などを 70 万円で買う契約をさせられてしまいました。
初めはアンケ−トに協力するつもりが、いつの間にか、話が語学教材のことや、外国旅行に安く行けるクラブの入会の話になり、私は、契約書に判を押してしまいました。よく読むと、語学の教材とコンパクトディスクを買う契約書とロ−ンの契約書になっていて、買った人はメンバーになり、安く旅行に行けるのです。
そのときは、私は、安く旅行ができてよいと思いましたが、よく考えると、毎月、 5 万円ものお金を払うのは無理なのです。
相談者は、大学の学生相談室で、弁護士に相談しました。
(処理)
都会には色々な落し穴があります。学生の被害で一番多いのは街頭販売です。
商品は語学教材などが多く、最近はパソコンなどもあり、値段は明らかに通常より極めて高いです。
巧妙な業者は、街頭でのアンケ−トによる名簿を利用します。
学生の下宿に、「おめでとうございます。あなたが抽選に当選されました」との電話を入れ、賞品を取りに来るよう誘い、そこで(きれいな事務所で)勧誘をする例もあり、手口は洗練されています。
男子の学生に対しては、美しい女性が、女子学生に対しては、感じのよい男性(女性は、「異性を感じた」と言います)が勧誘します。学生は恋愛感情を抱いてしまうのです。
そこで、学生は1時間以上勧誘されて、つい契約書に判を押してしまいます。
都会人の孤独感を突いた手口です。 異性を使うのは水商売と同じです。
商品の代金は 40 万から 70 万円位ですから、学生がこれを払うには無理があり、また商品は学生にとって無用なものです。
契約は、通常、ローン契約と商品の売買契約がセットになっています。判を押してから、学生は後悔します。そうすると、業者は、契約を止めないよう説得するのです。学生が、「止める」と言えば、業者は、「違約金を払え」と言ってきます。
(申込みの撤回:クーリングオフ)
大事なことは、契約して 8 日以内に業者宛に、「契約を止める」とはっきりと通知をすることです(特定商取引に関する法律第 9 条、旧訪問販売等に関する法律)。本件は学生がすぐ気が付きましたので、内容証明郵便 で契約の申込みを撤回し、問題は解決しました。
急ぐときには、この通知は電報でするとよいでしょう。ロ−ンの申込みがしてありますから、無用なトラブルを防ぐためにも、(法律上は必要ないのですが)ロ−ン会社にも通知します。
8 日以内との期限がありますから、「おかしい」と気付いたときは、すぐ他人(弁護士でなくともよい)に相談して下さい。
8 日を過ぎても、学生が未成年であれば、未成年を理由に申込みを取消することができます(民法 4 条 2 項)。さらに、8日を過ぎても、ローン会社が販売会社に金を払う前、販売会社が商品を発送する前なら、申込みを撤回すると、良い結果が得られます。これは、うやむやな結論になる可能性もありますが、ローン会社はトラブルがある件に金を出さないし、販売会社はトラブルがある件では商品を発送しないのが普通だからです。
ローンが実行され、商品を受け取った後でも商品を使用していない場合は、解約の通知を出し、商品を返品し、銀行口座の残高を少なくし、ローンの引き落としができないようにし、相手の出方を待つとよいでしょう。
気をつけることは、預金に貸越し特約がある場合です。預金がなくても、割賦金が引落とされてしまいます。貸越特約がある場合は、預金口座を解約した方がよいでしょう。
これで、小額の違約金を支払うことで解決できるケースが多いです。
解約の場合は、相手は多額の違約金を請求してきますが、違約金は通常の使用料を超えるときは無効とされていますので(特定商取引に関する法律 10 条)、これに応じる必要はありません。(署名・捺印の意味)
署名をしたり判を押すことは、他人と約束事をするのですから、重大な意味を持ちます。内容をよく読み、納得できなければ判を押してはいけません。拇印を押すことも同じです。
勧誘されて高価な物を買うときは、すぐ決めずに、1日考えてから決めるとか、あるいは、他人の意見を聞くことも必要です。これは学生だけでなく、社会人になってからも必要な知恵でしょう。
街頭販売の業者は若い経営者が多く、詐欺的商法であることは十分認識しています。セ−ルスマンの中には、同じ被害に遭い、その経験から詐欺的セ−ルスの仕事に入った人も結構いるのです。被害者が加害者に転換しているのです。
(信用度)
彼らが狙っているのは大学生です。その理由は、
「大学生は、サラリーマン、OLや主婦よりも、
経済的信用度が高いと、
業者は、考えているのです。なるほどと、思いました。学生には将来があるからです。
若い、男性、女性も、周囲が助けてくれる人がいる場合は、信用度が高いのです。
学生、あるいは、若い人は、このような業者に狙われていることを十分認識して下さい。
最近は、結婚をえさにマンションを買わせる例もあります(結婚詐欺)。被害は高額です。
この延長にある手口ですが、
インターネットでは、女性になりすました男性がいます。掲示板とか、
メール等で交信するとトラブルになる確率が高いです。
(参考:クーリングオフができる場合)
業者が、営業所以外で契約の申込み受けた場合、下記の通り、申込みをした人には原則として8日間の申込みの撤回(クーリングオフ)ができる期間が認められています。
これは、指定商品・役務 について認められています。
契約の名前 | 内容 | 根拠条文 |
---|
割賦販売 | 代金を2か月以上かつ3回以上の分割で支払う売買 | 割賦販売法4条の3 |
ローン提携販売 | 代金を2か月以上かつ3回以上の分割払のローンを伴う売買 | 割賦販売法29条の4 |
訪問販売 | 営業所以外における売買 | 特定商取引に関する法律 2 条 1 項 |
電話勧誘販売 | 電話勧誘に基づく売買 | 特定商取引に関する法律 2 条 3 項 |
通信販売 | 郵便等による売買契約又は役務提供契約で電話勧誘に基づく契約を除く | 特定商取引に関する法律 2 条 2 項 |
宅地・建物販売 | 宅地建物取引業者が売主となる宅地・建物売買契約 | 宅地建物取引業法37条の 2 |
訪問販売等に関する法律は、平成12年法律第120号により、特定商取引に関する法律 に改題されました。
2001年4月1日から消費者契約法 が施行されました。
消費者契約法第4条 では、業者が嘘の言って契約を締結した次のような場合は、消費者は契約を取消できます。
- 重要事項について虚偽を告げた場合
-
金融商品など、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額、その他の将来における変動が不確実な事項につき、「必ず儲かる」などの断定的な説明をした場合
-
消費者に勧誘をするに際し、消費者の不利益となる事実を故意に告げなかった場合
-
消費者に勧誘をするに際し、消費者が、「帰って下さい」と言ったにもかかわらず、それらの場所から帰らなかった場合、あるいは、「帰りたい」と言ったにもかかわらず、その場所から消費者を帰らせなかった場合
取消権は、騙されたと気がついたときから6か月、あるいは、契約締結時から5年間で消滅します。
悪徳商法に対しては、クーリングオフのほか、消費者契約法での取消でも対抗できるようになったのです。
抗弁の接続(割賦販売法30条の4)
通常、販売とローンは別契約です。割賦販売により商品を購入した場合、商品に瑕疵があれば、買主は売主に対して代金支払いを拒めます。買主がローン会社からローンを受けている場合、さらに、第三者たるローン会社の支払請求に対しても、この支払停止の抗弁を主張して、支払を拒めます。
次の
判例が参考になります。
(判決)
-
東京地方裁判所平成26年10月30日判決
エ 本件マンションの購入価格は2570万円であったところ、必ずしも評価額がこれに見合っているとはいい難い上、当初のサブリース賃料は月額8万2350
円であるのに対し、本件消費貸借契約に係る毎月の返済額は、当初の金利で毎月9万6256円であって、さらに、本件マンションの管理費、修繕積立金として毎月8
000円の支払が必要となることから、毎月2万1906円の出費となり、しかもこれが約35年間も継続することに加え、サブリース契約の賃貸期間は2年間であり、
その後の空室リスクもあることからすれば、投資としての適格が高いとはいい難い。
(2) 以上の事実関係等によれば、被告Aは、当初から、不動産業者と提携して投資適格の低いマンションの購入を勧誘する目的で、比較的金銭に余裕のある30
歳代以上の女性を対象とするために虚偽の年齢を本件サイトに登録して原告に近付き、同被告に好意を抱いていた原告の交際に対する期待を利用し、原告に冷静な判断
をさせる機会や情報を十分に与えないままに本件取引を行わせたというべきであって、財産的利益に関する十分な意思決定の機会を奪ったのみならず、原告の交際や結
婚を願望する気持ちを殊更に利用し、かかる恋愛心理等を逆手にとって、上記勧誘が原告の人格的利益への侵害をも伴うものであることを十分認識しながら、投資適格
が高いとはいえないマンションの購入を決意させたというべきであるから、被告Aの上記勧誘行為は、信義誠実の原則に著しく違反するものとして慰謝料請求権の発生
を肯認し得る違法行為と評価することが相当である。
そして、上記のような事実関係の下において、原告が分離前相被告であるBとの間で、原告が本件マンションの所有権を保持しながら相応の和解金を取得しているこ
とや本件マンションの売買代金の支払を一部免れていることなど(弁論の全趣旨)を含め本件に現れた一切の事情を踏まえると、原告の精神的損害に対する慰謝料は2
0万円とするのが相当である(なお、本件売買契約は平成24年12月24日に締結されていることから、同日以降遅延損害金が発生するものと認められる。)。
-
大阪地方裁判所昭和63年2月24日
判決
そこで、本件売買契約勧誘行為の違法性の有無について判断する。
前記二の2に認定の事実によれば、被告会社の従業員が厳酷に対して行った勧誘行為は、一方で本件土地を別荘用に適する土地であるとしながら、これを直ちに利用す
ることを目的とせず、近い将来の土地値上りによる転売利益取得を主たる目的として、その購入をすすめたものであるが、その転売利益取得の可能性について、本件土地
の評価額は実際には22万円(1坪あたり約7326円)程度にすぎないのに、これが一坪あたり14万円ないし15万円であるかのような虚偽の説明をして、本件売買
代金225万円(1坪あたり7万5000円)でも時価よりはるかに安いように装つていたこと、さらに、実際は社町の開発計画、工場の進出、交通の利便等はいずれも
本件土地の価格に近い将来影響を及ぼす可能性が全くないうえに、本件土地の売買代金額自体が時価より著しく高額で、これ以上の価格に値上がりすることは到底考えら
れないのに、いかにも右事態によって本件土地が1、2年後にも売買価格より大幅に値上がりするかの如く断定的な説明をしたこと、また、右のとおり、売買代金額以上
の価格で転売することは困難であると思われるのに、1年後の転売を確約して原告に出損金額の回収が容易であるかのように誤信させたこと、しかも、右勧誘に当っては、
ことさら若い独身男性で 動産取引や投資取引に知識、経験がないと思われる者を客として選んだうえ若い女子従業員を使って関心を引き、現地へ案内すると同時に十分
な考慮の余裕を与えずに現地に近い旅館等で契約締結に至るまで同様の勧誘説得をくり返していたことなど、不動産取引、投資取引に知識・経験の乏しい原告をして虚偽
の説明を誤信させるよう意図的な勧誘方法をとっていたことが認められるのであって、かかる勧誘方法は、不動産業者として許容される顧客獲得のための正常な宣伝、勧
誘行為の範囲を著しく逸脱したものであって、違法なものというべきである。
学生相談室報告より
登録 August. 5,1997
港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)弁護士河原崎法律事務所 03-3431-7161