日本では、将来得られるであろう利益(逸失利益、得べかりし利益)を、現在、請求することを認めています。そこで、中間利息を控除して、現在の請求額を計算します。これが現在価値の計算です。登録 Aug. 8, 2000弁護士河原崎弘
- 現在価値の計算 には次の3つ方法があります。カルプツオ式(Carpzowsche Methode)は妥当ではありません。
世間では、金銭は、通常、1年毎の複利で計算しますので、ホフマンよりライプニッツの方がより正確です。
カルプツオ式(Carpzowsche Methode)
T = r × { An - ( An × 0.05 × n ) }
新ホフマン式(Hoffmannsche Methode)
T = r n Σ A / ( 1 + 0.05p ) p = 1 = r
A { 1/(1+0.05)+ 1/(1+2× 0.05) + ....... + 1/(1+(n-1)× 0.05)+ 1/(1+n× 0.05) }
ライプニッツ式(Leibnitzsche Methode)
n T = r Σ A (1 + 0.03 ) p p = 1
= r
A { 1/(1+0.03) + 1/(1+0.03)2 + .......+ 1/(1+0.03)n-2+ 1/(1+0.03)n-1 + 1/(1+0.03)n }
T = 損害の現在価値、 A = 年収 、年利率 = 0.03(民法404条)、n = 就労可能年数、
r = (1 - 生活費率)あるいは労働能力喪失率
- ライプニッツにも単純な計算式があります。
単式ライプニッツ
T = A n / (1+ 0.03 )n × r
- 収入を直前の収入、あるいは平均年収を基礎とし、これを固定して計算している点は現実と異なります。賃金は変動する(通常は上昇する)ので、上昇の蓋然性が高いなら、それを考慮すべきでしょう。
- 将来、受取る分を現在受取るのですから、中間利息を控除します。従前は、年5%(改正前民法404条)を控除していました。現在の低金利の時代に年5%で減価することは、現在価値の計算としては正確ではなく、請求する側にとって不利です。
そこで,中間利息を 2%、あるいは3%、あるいは4% として計算した判決が少し出ていました。しかし、平成17年6月14日、最高裁は5%で減価すると判決し、この問題は5%で確定しました。その後、民法404条2項は、法定利率を3%に改定したことに伴い、2020年4月1日以降に発生した事故から、中間利息を控除する利率は、年3%になりました。
- 中間利息控除の方法には、上記の通りホフマン方式(単利)とライプニッツ方式(複利)があります。東京地方裁判所はライプニッツ方式、大阪地裁、名古屋地裁は新ホフマン方式を使っていました。年少者の逸失利益を算定する際、ライプニッツ方式では全年齢平均収入、新ホフマン方式では18歳初任給を使います。
2000年1月からは、各裁判所は、未就労者(幼児、生徒、学生、専業主婦)は、全年齢 平均賃金 または学歴別平均賃金を基に、それ以外は事故前の実収入を基にライプニッツ方式を使うことに統一されます。
- 得べかりし計算を、 損害賠償計算機 で自動計算することも、ライプニッツ係数表 を使って手作業計算することもあります。
- ドイツでは、賠償金は原則として年金(Geldrente)制であるので、損害を現在価値に直す必要がありません( Bürgerliches Gesetzbuch 843 )。