債務がある場合、妻に支払う財産分与の計算方法は
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2015.6.12mf
相談:財産分与
結婚して11年、私(38歳)は商社勤務(年収900万円)、妻は35才、パート(年収120万円)で会社に勤めています。子どもは10歳です。妻とは、職場結婚で、妻は遊び好きです。
2年ほど前から、妻の様子がおかしいので(帰宅が遅い、私に隠れて電話をしている)、興信所で調査してもらっていました。1週間ほど前、妻子ある上司の男性(47歳)とホテルに入ったとの報告がありました。この男は他の女性とも不倫をしているそうです。
私は3年前に、平手で妻をたたいたことがあり、妻は、私を「暴力夫」と言います。不貞が明らかになると、妻は、「婚姻生活が破綻した後の関係」と、自己弁護しかねません。
妻のような女を選んだ私が悪いことはわかっていますが、この10年間は何であったかと、考え、夜も眠れず、この半年で10kg体重が減りました。
興信所のレポートをにおわせ、妻に不貞を自白させようと考えています。この後どのような手続きをしたら、よいでしょうか。
5年前に3500万円でマンション(時価、2500万円、私名義)を買い、そのローンが2000万円(私名義)残っており、預金は500万円(私名義400万円、妻名義100万円)ほどあります。
不倫をおこなっている妻にも財産分与をする必要がありますか。
離婚の場合、不倫をおこなっているので、妻は親権者には不適格と考えますが、いかがですか。
相談者は、深刻な表情で、法律事務所を訪れ、弁護士に相談しました。
弁護士の回答:夫婦共有財産から負債をマイナスする
あなたのような境遇に置かれた人は、男性にも、女性にも大勢います。皆、逆境を乗り越えています。
眠れない場合も、昼間、身体を動かし、努めて、長時間歩くなどすれば、自然に眠れます。あるがままに生活するしかありません。半年もすれば、あなたの気持ちも楽になるでしょう。
異性に対する人間の性癖は、本能的で、矯正できないものがあります。今回の不倫が終わっても、妻は、さらに、新しい相手を見つける可能性があります。
離婚を考えるなら、興信所のレポートについては、今は、妻に伝えず、裁判の際に証拠として出す方が、効果は大きいです(裁判で、相手が不貞を否定した後に証拠に出すと効果は大です)。
同居していれば、婚姻関係は破綻しているとは言えないでしょう。不貞した後も同居が続けば、妻の不貞は、婚姻関係が破綻していない時期における不貞と認定され、あなたに有利な判決が出ます。
離婚に際しての問題の結論は次の通りです。
- 離婚原因につき責任がある妻にも財産分与請求権はあります。
- 財産分与の金額は、@夫婦が結婚期間中に得た財産(実質的夫婦共有財産。なお、婚姻前に持っていた財産および相続財産は関係ない)から債務の額をマイナスして総額を算出し、それを2分し、Aそこから妻名義の財産をマイナスして算出します。あなたが、妻に支払う財産分与は、次の通りの計算で算出します。
@相談者および妻の持分(寄与度平等)
{2500万円(マンション)+500万円(預金)−2000万円(債務、ローン)}÷2 =500万円
A実際の分与額
500万円−100万円(妻名義の財産)=400万円
ただし、裁判官によっては、夫と妻の取り分を平等にしない判決もあります。財産形成の寄与度を考慮するのです。下記判決は、夫4対妻(専業主婦)6、あるいは、夫6対妻(躁鬱病)4としています。
なお、債務が資産額を上まわる(債務超過)場合
、は債務だけについての財産分与を考える必要があります。
- あなたには、妻に対し、300万円ほどの慰謝料請求権が認められるでしょう。
親権は、母親が取るでしょう。これはほぼ機械的に決まります。不貞をしたくらいでは、親権者不適格とは判定されません(子供を放置して遊び歩く場合は別です)。その場合、あなたが負担する 養育費 は、月額8万〜10万円です。これも、ほぼ、住居費、医療費などの特別な負担がない限り、機械的に決まります。
10歳の子供は、事態を理解し、大きくなればあなたに会いに来るでしょう。さらに、あなたが、粘り強く親権を主張すれば、妻が親権を諦め、あなたが子どもの親権を取れる可能性もあります。離婚は悲劇ではありません。現在は、愚かな配偶者から解放される好機です。外国では、離婚をすると、Congratulation ! と言う人もいます。
しかし、これは第三者の意見です。
10年間一緒に暮らした妻ですから、冷静に話をしたいとのお気持ちもあるでしょう。
家庭裁判所 へ「夫婦関係調整」の調停を申立て、どのようにすれば問題を円満に解決できるか、第三者(調停委員)の意見を聞きながら話し合ってください。その後、離婚すべきかの結論が自然に出るでしょう。
判例
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平成17年4月27日東京地方裁判所判決(判例秘書)
実質的共有財産合計額 7218万4598円
(2)原告(妻)と被告(夫)とが共同で負担すべき債務は,本件マンションの購入に係る住宅ローンの残額(別居時点に近い平成14年10月
時点)3498万2824円である(甲5,乙1の3)。
(3)上記(1)の財産分与の基礎となる実質的共有である財産価額7218万4598円から共同の負債3498万2824円を
控除すると残額は3720万1774円となる。
(4)被告は,原告の資産として,家具,装飾用陶器,婚約指輪,毛皮コートを380万円と評価して財産分与の基礎財産とすべき
である旨主張するが,前記判断において被告の住居に残置された家具類等を計上していないし,上記財産の内容及び価額に照らして,
これを財産分与の基礎財産とすることは相当でない。
また,被告は,財産分与の判断において,婚姻時点でのマンション購入自己資金350万円,父親からの生前贈与350万円,
父親からの遺産7200万円の合計7850万円を控除すべきであると主張する。
しかし,被告の特有財産が○○のマンションの購入
資金の一部に当てられたことは前記のとおり考慮済みであり,被告の特有財産が夫婦の共同生活の費用の一部に当てられたことがあっ
たとしても,これを財産分与において精算することは予定していない。過去の婚姻費用の精算ということも財産分与で考慮することは
あるが,これは負担すべき婚姻費用を負担しなかった点の調整をすることを限度として行われているものであり,被告主張のような精
算を予定していない。ただし,次項で述べるとおり,寄与割合において考慮することとする。
(5)上記のとおり財産分与の基礎財産の価額は3720万1774円と算定された。これを分配するに当たっては,双方の寄与割
合に応じた分配をすべきところ,被告がサラリーマンとして財産の形成の基本部分を負担しており,さらに平成元年に相続が開始した
被告の父親の遺産のうち,相続税申告ベースで9300万円余りの遺産を取得し,相続税を控除した残額でも約6900万円程度を取
得している。これが家計費や上記財産分与の基礎財産にどの程度繰り入れられたか証拠上あきらかではないが,全く遺産からの流入が
ないとは言えない(○○のマンションについては前記のとおりの繰入計算を行った。)。
そこで,原告(妻)の寄与割合を6割,被告(夫)の寄与
割合を4割として,原告の取得分を計算すると,1488万円となる(37,201,774×0.4≒14,880,000)。そ
して,財産分与の方法としては,共有財産としては,○○のマンション,ゴルフ会員権,預金,株式であり,○○のマンション自体は
現在被告が居住して使用していることに照らせば,被告から原告へ金銭の支払をする方法によるのが相当である。
(6)以上検討したところによれば,年金以外の実質共有財産の財産分与として,被告から原告へ1488万円の支払を命ずるのが
相当である。
- 東京地方裁判所平成17年2月15日判決
このように,被告(妻)は,平成8年ころから情緒不安が増悪し,暴言,暴行等を繰り返し,平成13年に2度にわたり措置入院に
至ったものであり,この間,原告はもとよりA,Bも,繰り返し発現する被告の精神症状に苦慮し,翻弄され,心身ともに疲弊の極み
にあったことは想像に難くなく,被告が同年10月に退院した後は,もはや原告との同居生活が復活することはなく,平成16年に至
っても被告の症状は改善をみていない。以上のことからすれば,少なくとも平成13年10月の時点で,被告の精神症状等に起因して
原告,被告間の婚姻関係は破綻しており,その後の経過に鑑みても,およそ修復不可能な状態に至っているとみるほかない。
したがっ
て,原告,被告間には婚姻を継続し難い重大な事由が存するというべきである。
<<中略>>
したがって,原告(夫),被告(妻)間で清算の対象となる財産額は,本件土地建物の上記時価評価額8380万円から上記融資残高5045万5537円を控除した残額3334万4463円と認められる。そして,同財産形成についての被告の寄与度は4割と認めるのが相当であるから,同残額の4割に相当する1333万7785円が被告に分与されるべきである。
登録 2004.7.5
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