離婚の際、債務は財産分与するのですか/債務超過の場合
弁護士ホーム > 法律事務所 > 離婚/婚約不履行 >
離婚の際、債務は財産分与するのですか/債務超過の場合
2013.5.2mf更新
相談
離婚調停中です。私には弁護士が付いていません。
家(時価2600万円)の銀行ローンと公的機関からの借入れで、債務が
4000万円位あります。全部私名義です。
家を処分した場合でも借金だけが1400万円残ります。債務超過です。
年収は私が900万円、妻が80万円です。
離婚時に慰謝料を求められた上で、彼女は全く働く気のないのです。
すべての借金を私が一人背負わなくてはいけないのは、
おかしいと思います。
半々とは言わなくても、3分の1位は妻の負担にできませんか。
またこの手続きも、家庭裁判所で判断してもらえるのでしょうか。
回答
離婚時の財産分与では、資産だけでなく、負債(債務)も財産分与の対象となるかについては、あまり議論されていません。
資産が債務額を上まわれば、資産額から債務額を差引き、残額が夫婦共有財産ですから、残額が、財産分与の対象となります。
しかし、債務が資産額を上まわった場合は、債務について考えねばなりません。
- (婚姻生活中、一方が他方に無断で負った債務)
夫婦の一方が勝手にしたサラ金からの借金し、遊興費に使った場合などは、その債務につき他方の債務者は、責任を負いません(夫婦別産制)。ただし、そのような債務でも財産分与額決定の際、考慮した判例もあります(下記)。
-
(日常家事債務)
婚姻生活において、夫婦および子の生活に必要な費用は、日常家事債務として、夫婦が連帯責任を負います(民法761条)。夫婦の責任の割合は、各2分の1でしょう。
-
(夫婦の共同生活で生じたが、一方が債務者となっている債務)
夫婦共同の生活から発生した債務については(住宅ローンなど)、夫婦が共同で負担することが平等でしょう。財産分与の際には、考慮すべきでしょう。その場合、負担割合は、原則として、平等(1/2)です。資産より債務が多い場合、債務だけの場合は、債務を財産分与の対象とすべきでしょう。
(家裁の現状)
資産と債務がある場合は、資産金額から債務額を差し引き、残額を財産分与の対象にしています。
債務が残る場合や、債務だけの場合は、
家裁では、積極財産だけが財産分与の対象と考えているようです(債務は、財産分与の対象としない)。家裁では、一般調停(離婚後の紛争調停)と扱っているようです。この結果、財産分与は離婚後2年で時効ですが、一般調停ですと2年経過した後でも扱ってもらえます。
相談者の場合、妻には支払い意思も、能力もないようですので、離婚までに、家を処分した方がよいでしょう。
債務について、妻と夫の負担割合を決めるよう調停で主張し、離婚訴訟になった場合も、同様に主張してください。
ただし、夫と妻の債務の負担割合を決めても、それは、第三者(債権者)に対抗できません。この負担割合は、将来の求償割合を決める意味しかありません。
財産分与は、離婚後であっても、2年間は請求できます。
参考判決
- 東京家庭裁判所昭和61年6月13日審判(出典:家庭裁判月報38巻10号33頁)
ウ ところで,(1)のオで認定したとおり,申立人(妻)は,相手方(妻)に無断でサラ金等から借金を重ねたため多額の債務を負うこととなつた。この債務は,申立人及び相手方
が別紙債務目録4ないし6記載の借金をして返済をした。また,申立人は,親族から同目録1ないし3記載の借金もしている。これらの借金の原因について,申立人は,
相手方の収入が少なか4つたこと及び相手方が家計を省ず自動車や付合いに多額の費用を支出したためと主張している。しかし,一件記録によると,相手方の収入が高く
ないことは明らかであるが,当時の標準生計費と比較してもサラ金等から借金をしていかなければ生活できない額であつたとは認められない。
また,相手方が,家計に対
する認識が甘く,自己の収入の割に自動車や付合いに金をかけたと思われるふしもあるが,これとても,サラ金等から借金をしなければ家計が成り立たないという事情が
わかりさえすれば容易にその是正を図つたであろうと推測できる。
しかるに,申立人は,昭和48年ころ相手方に対し給料が足りない旨を話した程度で,サラ金等から借
金をしなければ生活が成り立つていかないというような説明はおろか,家計が苦しいといつたことも以後相手方に一切説明することなく,相手方に無断で慢然とサラ金等
から借金を重ねたものである。したがつて,膨大化した借金については,家計に無関心であつた相手方にも責任はあるものの,申立人の責任の方が大きく,その責任の割
合は,申立人7,相手方3と考えるのが相当である。
これを付言すれば,別紙債務目録1ないし6の残債務額585万円のうち,7割の410万円については,申立人が責任を負つてしかるべきものである。しかるに
申立人は,(1)のキで認定のとおり,離婚に際し370万円の債務負担を約しているに過ぎない。なお,別紙債務目録7及び8記載の債務は直接夫婦の生活に関わるも
のとして生じたものではないので夫婦関係をめぐるーつの事情として引酌するにとどめる。
エ そこで相手方が申立人に対して支払うべき財産分与の金額について判断するに,夫婦が婚姻期間中に協力して得た積極財産の半額(190万円)から40万円(ウ
の410万円と370万円の差額)を控除すると150万円となるところ,一件記録から認められるその他一切の事情を考慮し,この150万円をもつて財産分与の金額
とすることが相当であると考える。なお,財産分与の方法については,申立人及び相手方の現在の生活状況,夫婦で取得した財産の状況等を勘案して現金で支払わせるこ
ととする。
- 東京地方裁判所平成11年9月3日判決(出典:判例タイムズ1014号239頁)
思うに、債務についても夫婦共同生活の中で生じたものについては、
財産分与に当たりその債務発生に対する寄与の程度(受けた利益の程
度)に応じてこれを負担させることかできるというべきてあり、その
負担割合については、財産形成に対する寄与の場合と同様、特段の事
情のない限り、平等と解すべきてある。
そして、右借入金は、本件マ
ンションの購入代金の支払いのほか、○○ホテル303号室、△△ホ
テル608号室及びゴルフ会員権の購入資金として充てられたという
のであり、これらの財産の購入に当たっては、原告が主導的役割を果
たしたことは窺えるが、原、被告双方の供述及び弁論の全趣旨によ
れば、これらは夫婦共同生活における節税あるいは利殖の目的による
ものと推認でき、右ホテル及ゴルフ会員権の分割に当たって、後記の
とおり、原、被告双方が平等に取得することを合意しているといった
事情も考慮すると、必ずしもその負担割合を動かすほどの特段の事情
までは認められない。
そうであるとすれば、被告は、右債務残額につき、平成10年12
月当時の債務残額1540万3284円と426万9708円の2口
の半(983万6496円)を負担すべきである。なお、右の負担
すべき債務額の算出の基準時については、別居時とする解釈もありう
るが、一方で本件マンションの評価の基準時が第6回弁論準備手続期
日(平成10年12月15日)であること、本件においては、別居後
は専ら原告が本件マンションを使用し、被告は実家での寄宿生活を余
儀なくされていることも考慮して、本件口頭弁論終結時に近い平成10年12月を基準時としたものである(判例タイムズ1014号239頁)
2005.11.5
港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)弁護士河原崎法律事務所 03-3431-7161