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2013.11.8mf更新

基本契約書の個人保証を利用し、債権回収

基本契約書

小池さんは、小さいながらも、従業員を5人使い配管工事を営む会社の社長です。この会社は小池さんが20年ほど前に設立し、最近は業績も安定してきています。小池さんは、この10年間、騙されて金を取られたり、親しい友人に紹介されて仕事をしたらその取引先が倒産したり、色々な目にあいました。そのおかげで、若干の法律知識を身につけていました。
その一つが取引先から個人保証をとることでした。初めは取引先に対して「個人保証してくれ」とはなかなか言いにくかったのですが、弁護士に「基本契約書 」というものを作ってもらい、その中に「連帯保証人」の欄を作り、「うちの会社では、いつも、この契約書を使っています」と、自然な会話で、取引先から押印してもらうのです。

取引先の倒産

この基本契約書が役に立つときがきました。取引先の設備会社がつぶれ、その社長の飯田さん一家が逃げてしまったのです。小池さんはこの設備会社振出の870万円の手形を持っていました。
よく調べてみると、飯田さんは妻と離婚しどこかへ逃亡し、奥さんは子供2人と別の男の人と一緒にマンションに住んでいました。自宅には誰も居ず、自宅は売りに出ていました。飯田さんから、ときどき、不動産業者に連絡が入るとのことでした。

小池さんは知り合いの法律事務所を訪ねました。弁護士は小池さんに対し、「急いで、法務局(登記所)に行って、飯田さんの土地・建物の登記簿謄本を取って下さい」と言いました。幸いなことに、この土地・建物は、まだ飯田さんの名義のままでした。

仮差押

そこで、弁護士は飯田さんが連帯 保証人 となっている基本契約書を証拠とし、190万円の保証金を供託して、この土地・建物を仮差押する手続きをとりました。
10日ほどすると不動産業者から連絡がありました。業者は、「飯田さんの物件は既に他に売られ、さらにその人から他に売られているので、登記の申請をするため謄本を取ってみたら、仮差押の登記がされていたので、驚いた。仮差押を取下げてくれ」と言ってきました。
飯田さんの物件は、他に売られたが、登記はしていませんでした。幸いに、小池さんの仮差押が早かったので、この物件を買った人は仮差押に負けてしまうのです。結局、関係者が分担して870万円を、小池さんに支払ってくれました。債権回収ができたので、小池さんは仮差押を取下げました。

債権確保の方法/基本契約書&仮差押

会社が倒産しても、通常は、代表取締など取締役個人は会社の債務について責任 はないのです。ただ、取締役が悪意または重大な過失によって任務を怠った場合には、例外的に責任を負います(会社法429条)。
会社が倒産したときに、会社に預金とか不動産がなければ債権者はどうしようもないわけです。そこで、会社を相手に取引をするときには誰かに個人保証をしてもらう必要があります。
しかし、取引の都度個人保証をもらうことは不可能です。そこで 基本契約書を作り、その中に、「連帯保証人は本契約から発生する一切の○○○○株式会社の債務について連帯保証する」との一文を入れ、以後の取引につきすべて保証の効力が及ぶようにするのです。小池さんが成功したのはこの個人保証があったからです。会社に財産がなくても社長個人が財産をもっている例は非常に多いのです。
小池さんは弁護士に仮差押の手続きを依頼しました。仮差押は、相手(債務者)が財産を処分するおそれがある場合に、それを止める手続きです。不動産の名義を変えられたり、売掛金を回収されたりしたら、裁判に勝っても強制執行する対象の財産なく、強制執行が不可能となります。それを防ぐために正式の裁判の前に仮差押をするのです。
普通、裁判となると長くかかると思われていますが、仮差押手続きは、通常、1日で決定が出て、1週間位ですべての手続きが完了します。債権者は、請求する債権額の約2割(小池さんの債権は870万円ですので保証金は190万円)の保証金を供託します。この保証金は、通常、事件終了の際、全額返ってきます。このように仮差押は、急を要する場合、非常に、威力があり有効な手続きなのです。
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