引渡命令/短期賃貸借契約についての改正法
(平成16年4月1日以降)

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2015.12.2mf

ご注意
民法395条が改正され、平成16年4月1日から、不動産競売において建物短期賃貸借人の権利は弱くなりました。
ここに書いてあることは、新制度(平成16年4月1日以降に締結された短期賃貸借契約)の場合です。旧制度( 平成16年3月31日までに締結された短期賃貸借契約 は別)

相談:不動産

建物を借りています。貸主が銀行からの借入れの返済を怠り、建物が差押えられ、競売になりました。
競売で建物を買った人が新貸主になりますが、借主は、引続き建物を借りていることができますか。契約は2年で、契約書もあります。

弁護士の回答:引き続き借りることができるか。

賃借人が、引続き建物を使用できるかは、抵当権の設定登記と賃貸借物の引渡しの後先で優劣が決まります。

抵当権の設定登記が、賃貸借物の引渡しより前の場合(賃貸借物の引渡しが、抵当権の設定登記より後の場合=抵当権設定登記後に借りた場合) 抵当権前設定登記が、賃貸借物の引渡しより後の場合(賃貸借物の引渡しが、抵当権の設定登記より前の場合=抵当権設定登記前に借りた場合)

法律

民法第395条〔抵当建物使用者の引渡しの猶予〕
@抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない
競売手続の開始前から使用又は収益をする者
強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者
A前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。

附 則(平成一五年八月一日・法律第一三四号)
(短期賃貸借に関する経過措置)
第5条この法律の施行の際現に存する抵当不動産の賃貸借(この法律の施行後に更新されたものを含む。)のうち民法第六百二条に定める期間を超えないものであって当該抵当不動産の抵当権の登記後に対抗要件を備えたものに対する抵当権の効力については、なお従前の例による。

関連相談:買受人の立場から、 引渡命令が出るか

裁判所の競売に入札しようと考えています。 入居者がいますが、立ち退かせることができますか。

回答

競売で 不動産を買う 場合は引渡し命令(不服申立は執行抗告)が出るかが問題となります。基準は次のとおりです。
執行妨害的な、占有者に対しては、保全処分が有効です。

引渡命令が出る
引渡し命令が出ない買受人が利用できる明渡方法
登記と占有明渡方法根拠条文
抵当権設定登記が占有より前:権利濫用的占有者引渡命令民事執行法83条1項強制執行に若干費用が必要
抵当権設定登記が占有より前:正常な賃借人6ヵ月後の引渡命令民法395条1項強制執行に若干費用が必要
抵当権設定登記が占有より後:正常な賃借人訴訟(正当事由が必要)借地借家法28条通常の裁判

競売の場合、一番の問題は、明渡がスムーズに行くかです。賃借人がいる場合、原則として6か月は、明渡はできません。抵当権設定登記より以前から賃借人が居た場合は、ほぼ、明渡は無理です。

引渡命令が出るか否かは、裁判所にある書類を見ると、大体、わかります。 競売手続きをする裁判所に、物件明細書、評価書、現況調査報告書が揃えてありますので、それをコピーし、弁護士に見てもらうとよいでしょう。
物件明細書には、引渡し命令が出るかが書いてあります。引渡し命令が出るなら、明渡は比較的容易です。 ただし、これは、100%信じてはいけません。そのため、専門家の判断が必要なのです。

2004.8.15
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