11:00PM
夜。私はそっと自分の部屋を抜け出し、相川が泊まっている部屋に向かう。
御剣家は朝も早いが夜も早い。夜は2人の世界。人の目とか、御剣家とか
そういうのに構わず好きなだけ甘えられる時間。
ドアをノックする。
「真一郎様?」
「ああ、鍵かけてないから入ってきて?」
「って、自分でドア開けているじゃないですか」
「いや、なんか待ちきれなくて…… それなら
 それなら、いづみこそ。今日は「俺が部屋に行く」ってことじゃ
 なかったの?」
「なんか待ちきれなくて」
ふと笑って、どちらともなく部屋に入る。後ろ手に扉を閉める。
「このパジャマ姿もかわいいね、いづみ」
相川はそう言って、一度軽く口付けた。
「真一郎様……」
私は、うれしい気持ちと、愛しさと、一度つながった体が今離れている
ことの名残惜しさで胸がいっぱいになって。
今度は私から口付ける。
深く長く口付けて体温と真一郎様を感じる。
体の芯が暖かくなっていく。
「はあ」
息が続かなくなって、どちらともなく唇を離す。目の前にある真一郎様の
顔を見つめる。
「えへへ」
ぽすん、と。顔を真一郎様の胸に預ける。真一郎様の腕が私の背中に
まわって。それから2人で、ベッドに倒れ込む。
「あ……」
真一郎様の手が私の胸に触れる。
ふよふよと、つまむように揉む。それから転がすように胸全体に手を
すべらせる。くすぐったいような、恥ずかしいような、そんな気持ち……

 私は真一郎様の背中に手をまわして、肩に顔をよせた。目を閉じて
首筋に幾つもキスをする。
 真一郎様の手が一瞬止まる。かすかに息の止まったのが分かった。
よかった。
真一郎様も感じてくれている。私の胸に添えられた真一郎様の手が、
また動き始めて、私は宙をさまよう。
「!」
突然、真一郎様の指が私の秘部に触れた。体の内側が収縮して、熱いものが
ほとばしったのが分かる。
「はぁ……あ」
指がそのままゆっくりと動き出して、熱さが、気持ちよさが、そこから
広がっていく。体中が熔けて広がって、真一郎様に向かっていく。
「入るよ、いづみ」
どこか遠くで、耳元で、真一郎様の声が聞こえる。そして地響きのような
衝撃が走る。続けて幾つも熱がたたきつけられて、私は空に打ち上げられる。
かろうじて残っていた私の核は砕かれて。宙に満ちていた温度はどんどん
高くなっていって。
 そしてひと際の高熱とともに、すべてが真っ白い光の中に、真一郎様に
向かって、吸い込まれていった。


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