登山NO.0057 美 ヶ 原( 王ヶ頭:2,034m ) 1995.10.1登山


 高原荘から見た王ヶ鼻、王ヶ頭( 1995.10.1 )

【美ヶ原登山記録】

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再々登山


NO.57 美ヶ原登山記録

高妻山に登った後、長野のビジネスホテルにもう 1泊し、翌日 美ヶ原を目指した。

遠くの山に登りに来た場合はどうしても時間と費用との相談になり、 もう一つ近くの山を組み合わせて効率を上げたくなってしまうのは仕方ないことであろう。

朝、長野から篠ノ井線に乗って松本へと向かう途中で雨となり、 天気予報を聞いて覚悟はしていたものの、やはり実際に降られてみるとガックリくる。
しかし発想を転換すれば、俗化したといわれる美ヶ原は、雨が降っていた方が観光客も少ないと思われることから、 登山を目的とする私には好都合と考えることもできる。

松本駅のコインロッカーに大きなリュックを預け、小さなサブザックに雨具と水筒、 若干の食料を入れ、バスターミナルへと向かった。
思った通り 15人程と少ない乗客を乗せたバスは、降りしきる雨の中を松本市街を抜けて、美ヶ原の持つ観光地というイメージとはかけ離れた山あいの寂しい田舎道を進んで行き、 40分程で登山口のある三城に着いた。
バスを降りたのは無論私一人で、周囲を見回すと、バス停の少し上には、かつて旗を掲げていたと思われる壊れかけた石の旗台があり、 そこに三城牧場と大きく書かれていた。

ありがたいことに、雨の方は傘をさすだけでレインウェアを着用する必要はない程の小降りになっていてくれたのだが、 山の方はガスがかかっていて何も見えない。
地図で見た記憶を頼りにバス停から道路を少し戻ると、道が二股に分かれており、そこにいた道路指導員に道を聞いたところ、 右の道を進んで少し先で山に入れば美ヶ原へ行けるとのことだったので、言われる通りにして山道に入った。
前日まではもっと先まで進んで桜清水小屋から王ヶ鼻へと登ろうと考えていたのだが、完全に決めていたわけでもなく、また雨も降っていたため、 樹林帯の道の方が良いと判断しての行動である。

山道は、傾斜はキツくないものの一直線に登っていくようになっており、 昨日の高妻山登山の疲れなどもあって、一汗かくまではあまり調子がでなかった。
また、道標となるものが全くないので少々不安になりながら登っていくと、やがて左から来る道と合流するようになり、 そこに指導標も置かれていたので一安心であった。
そこから指導標に従って右に道を進むと、やがて林道にぶつかることになったのだが、ここには標識がなかったためどちらに進むか少し迷ってしまった。
一応常識に従って右へ進んでいくと、やがて道は行き止まりとなって、その手前から左の斜面に再び取り付くような道が見つかり、 ここからは先ほどまでの整然とした植林帯 ?ではなく、自然林の中を進むことになった。ようやく山登りらしくなってきた感じである。

やがて、美岳荘 (だと思う) の前に飛び出したのだが、 無人の小屋にはガラス窓があり、そこから誰かが顔を出すのではないかという感じがして何となく薄気味悪く、小屋の前の水場で喉を潤した後、 そそくさと小屋を後にした。
ジグザグに登っていくとやがて樹林帯を抜けて展望も開けるようになり、またこの頃になると嬉しいことに雨も止んでくれていたので、 振り返ると雲海 (あえてそう呼ばせて頂く) がはるか先まで続いていて、その先には名前も分からない山が小島のように浮かんでいるのが見えた。

やがて、傾斜も緩やかになって草地に変わり、いままで明瞭だった道も入り乱れて分からなくなってきたので、 適当に登っていくと、頂上にある高原荘の横に飛び出すことになったが、そこはガラス戸を通して部屋の中が覗けるような場所で、 何かバツの悪さを感じながら努めて見ないようにして高原荘の前側に回った。
高原荘の前は気持ちの良い展望台となっており、雲海が足下から始まって、曇った空との境も不明確に遙か先まで続いており、 また左の方ではガスが滝のように流れ落ちていて、色があまり無い世界であるのにも拘わらず美しいと感じる素晴らしさであった。

自動販売機や車などが置いてあることに戸惑いを感じながら、 まずは王ヶ鼻を目指して車道を左に進み、武石峰への道を右に分けて電波アンテナを目標に歩いた。
ほぼ平らな道を進み、途中 遭難碑を過ぎてやがて石仏が沢山置かれている王ヶ鼻へ着くと、そこには 15人前後の人が景色を眺めており、 今までほとんど人に会わなかったので少しビックリさせられた。

王ヶ鼻からの展望は、やはり雲海が全てを遮っていてほとんど得られず、 かろうじて西の方に北アルプスの山々が屏風のように連なって雲海と空との境を形成しているのが見られたが、それらの山々は皆頭の部分が雲に隠れており、 残念ながら一つも名前を断定することができなかった。
王ヶ鼻には標識がなかったものの王ヶ鼻神社と彫られた石があったので、その前で記念写真を撮ってもらい、 今度は再び王ヶ頭を目指して先ほど通ってきた道を戻った。

王ヶ頭の三角点 (三等) は先ほどの高原荘の裏手 (王ヶ鼻寄り)、 電波塔の横にある神社の崖側にあったのだが、どういう訳か標石部分が 50センチほど露出しており大変不思議であった。
そこだけ掘られているなら分かるが、平らな地面から飛び出しているので、山全体が 50センチ程削られたというのだろうか ?
ここも標識はなく、三角点の他には小さなケルンがあるだけで、最早 ここは登山の対象ではないことを証明しているようであった。

展望の方は、先ほど高原荘の前にいた時よりも状況が良くなり、雲海の向こうに蓼科山八ヶ岳が浮かんでいるのを見ることができた。

王ヶ頭から再び高原荘の前に戻り、今度は美しの塔へと進んだが、 どうしても字の入ったものをバックに記念写真が撮りたかったので、途中の美ヶ原高原と書かれた大きな看板の前で 牛と並ぶようにして写真を撮った (無論セルフタイマー)
この頃になると、今までややガスがかかって見えなかった美ヶ原高原全体をハッキリと見渡せるようになり、標高 2,000mを越す高さの所にこのような広々とした草原があることに驚かされ、 尾崎喜八氏が 登りついて不意にひらけた眼前の風景に 天井が抜けたかと思う・・・ と詠った程の感動と驚きは得られなかったものの、 その後に続く ・・・やがて一歩踏み込んで岩にまたがりながら この高さにおけるこの広がりの把握に尚も苦しむ・・・ と詠った部分に大いに共感を覚えた次第である。

美しの塔までは柵に沿って進む牧場の中の砂利道歩きとなり、 先にも述べたように、とにかくその広さには驚かされるばかりであり、また振り返れば、牛達がのんびり草を食む中、 その向こうに王ヶ鼻と王ヶ頭の切れ落ちた崖とその右に鉄塔やら建物やらが見えて、誰かが軍艦のようだと言ったそうだが、 まさに的を得た表現であることを実感させられた。

誰とも会うことなく塩クレ場を過ぎ、美しの塔に着いたが、 ここには美ヶ原高原ホテル方面からやって来た観光客が 10人余りいてワイワイ騒いでいた。
また塩クレ場まで戻って、今度はそこから牧場の柵の中に入り茶臼山を目指したのだが、時としてガスが発生して何も見えなくなり、 ガスの中からヌーと牛が出てくるのには些か参った。
牛はおとなしいとは言え、やはりそのそばを通るのは気持ちよいものではなく、大きな眼で見つめられると少々ビビってしまい、 その角を向けられはしまいかと恐る恐る進んでいくことになった。

やがて、牧場を抜けるとガスも晴れてきて、 雲海の向こうに蓼科山が良く見えるようになり、草の中を暫く登って茶臼山の頂上に着いた。
頂上はササで囲まれた小広い所で、壊れてはいたが大きく立派な標識が大岩に立てかけてあり、またベンチも置かれていて、 ここからもやはり雲海の向こうに蓼科山をよく見ることができた。

下山は石畳のような岩の道を下っていたのだが、ザワザワと風の音しか聞こえず、 またやや薄暗いこともあって何となく落ち着かない気分にさせられ、気が付くといつの間にか駆け足になっていた。
広小場から県民の森と書かれた看板を過ぎ、やがて車道に出てそのまま三城へと着くことができたが、 私の持っていた昭文社の地図は 1991年に霧ヶ峰を登るときに買ったもので、 私が今 茶臼山から下りてきた道は記入されておらず、途中何回か不安にさせられたのであった。
やはり最新の地図を買うべきだったと反省した次第である。

三城手前に休業中のユースホステルがあったので、その軒先を借りて服を着替え、 バス停前の食堂で飯を食べて時間を潰した。

美ヶ原は俗化し、最早 登山の対象ではないと良く言われており、 確かに頂上の建物やアンテナ群、そしてそこに停めてある車など、登山気分を損ねるものは数多くあるが、 今日は幸運なことに一部の場所を除いてはほとんど人に会わず、広々とした美ヶ原の良さを十分に満喫できたので、 私自身は十分満足いく山行だったと思っている。


美 ヶ 原 登 山 デ ー タ

上記登山のデータ登山日:1995.10.1 天候:雨のち曇り単独行前日泊
登山路:三城−美岳荘−高原荘−王ヶ鼻−王ヶ頭−高原荘 −塩クレ場−美しの塔−塩クレ場−茶臼山−広小場−三城
交通往路:長野()−(篠ノ井線)−松本− (バス)−三城。
長野までは、高妻山の項参照
交通復路:三城−(バス)−松本−(中央本線)−八王子− (横浜線)−橋本−(相模線)−海老名−(相鉄線)−瀬谷
その他:9月30日は長野泊。翌10月1日に美ヶ原登山。下山後帰宅。
その他の
美ヶ原
登山
美ヶ原高原美術館駐車場−牛伏山−山本小屋ふる里館−美しの塔−塩クレ場− アルプス展望コース分岐−百曲園地− 烏帽子岩−林道−王ヶ頭−王ヶ頭ホテル−アルプス展望コース分岐−塩クレ場−美しの塔−山本小屋ふる里館− 牛伏山−美ヶ原高原美術館駐車場  ( 2014.8.1日 晴れ )
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三城いこいの広場 近辺道路脇−三城いこいの広場 百曲コース入口−広小場−下降点−美しの塔−王ヶ頭− 王ヶ鼻−王ヶ頭−下降点−広小場−三城いこいの広場 百曲コース入口−三城いこいの広場 近辺道路脇  ( 2015.3.18日 晴れ後曇り )
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