登山NO.0053 火 打 山( 火打山:2,462m ) 1995.8.19登山


 天狗の庭からのぞむ火打山( 1995.8.19 )

【火打山登山記録】

【火打山登山データ】

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再登山


NO.53 火打山登山記録

本年は、草津白根山の項でも述べた通り、 九州宮崎への単身赴任の解消、台湾出張などがあって山に行く機会を悉く潰されていたのであるが、この夏に山に登らぬ訳にはいかないと、 何とか土日を使っての百名山登山を計画した。

どうせ山に登るなら1回の山行で多くの百名山に登りたいし、さりとて本年はアルプスに登る体力的自信もないということで、 目的地は永年の懸案であった火打山・妙高山にスンナリ決まったのである。

金曜日の夜、東京駅から夜行バスに乗ったが、バスに乗る前に東京駅のスタンドで生ビールを飲んだのが良かったのか、 久々の夜行バスであったにもかかわらずよく眠ることができ、翌朝 6時少し前に長野駅前に着いた時には結構爽快な気分であった。

長野駅から直江津行の列車に乗って妙高高原駅に着いたのは 7時15分で、 この時間には火打山登山口である笹ヶ峰行きの早朝バスは既に出てしまっており、次のバスまで 40分程待たねばならなかった。
これは事前に分かっていたことだったので、当初からタクシー利用を考えてはいたのだが、1人でタクシーを利用するのは経済的にキツイと思っていたところ、 駅前に登山服姿の老夫婦がいたので相乗りを打診してみた。これがスンナリOKとなり、お陰で経費節減ができて幸先良いスタートとなった。

タクシーに乗りながら山の方を見ると、ガスがかかっていて何も見えず、これには少しガッカリさせられたのだが、 笹ヶ峰登山口でタクシーを降りた時には、青い空に雲一つない天気となっていて、これまた私をウキウキさせてくれた。

登山口には立派な標識と登山案内図があり、そばには清流が流れていたので、そこで水を補給してから出発した。
暫くはブナを中心とした樹林帯の中の登りとなり、黒沢を横切るとやがて十二曲りと呼ばれるジグザグの上り坂になったが、 やはりこの辺になると夜行バスで来たことのツケが回ってきたようで、喘ぎながら登らねばならなかった。

十二曲りを登り切ってからも、傾斜がやや緩やかになったと思ったら、 またジグザグの急勾配が現れるなどして結構苦しかったのだが、後ろを振り返ると白馬岳 を初めとする北アルプスの山々が認められ (残念ながらやや雲がかかっていた)、またさらに先に進むと、 雲一つない真っ青な空の下に、火打山のなだらかな山容と、それに続くズングリとした焼山が見えてきたので、少々元気がでてきた。

足下から火打山へと続く樹林の濃い緑色も美しく、火打山の山肌に所々に見える残雪の白も鮮やかで、 それらが青い空と解け合うようになっており、夏山はこういうものだ という典型のような明るい光景が目の前に広がっていたので、 一遍に爽快な気分になったのであった。

こういう景色を見ると、山に登ることから遠ざかっていたことをものすごく反省させられて、 毎週でも山に登りたいという気にさせられるのであるが、この頃 この気持ちが長続きしないのが自分でも若干気になっている。

黒沢池ヒュッテとの分岐点となる富士見平を過ぎ、黒沢岳の山腹を巻くように進んで行くと、 道はネマガリダケの中を進むようになり、木道を伝って、やがて多くの登山客で賑わっている高谷池ヒュッテの前に出た。

ヒュッテ前で少し休んだ後、また登山道に戻ったが、ここからは山上の楽園というありきたりの表現ではあるものの、 それ以外の言葉が見つからないような素晴らしい光景の連続であった。

まず、空を映して青く見える高谷池の美しさに目を奪われたが、それはその次に控えた天狗の庭の素晴らしさのプレリュードに過ぎず、 ゴロゴロした岩の道を進んで小さなピークを乗り越して着いた天狗の庭では、ずんぐりした火打山の姿と、その手前に拡がる草原、 そこに点在するなかなか趣のある岩々、そして火打山を水面に映した池塘などが目に飛び込んできて、ハッと息を飲んでしまう程の美しさであった。

こういう素晴らしい自然の造形を初めて目にした人間はどう思ったのであろうか。山を苦労して越えて来て、 目の前に広がった風景に神の技 (ワザ) を感じ、天狗の庭と命名したのかもしれない。

美しさに目を奪われながら木道を進み、やがて火打山の稜線に出て、右に荒々しい鬼ヶ城の岩壁を見ながら最後の登りにかかったが、 これが結構キツく、おまけに高校生位の若者が空身で後ろからすごいスピードで追いついてきたので、負けじとスピードを上げたため、 かなりヘバってしまった。

やっと着いた頂上は小広く、真ん中に三等三角点と小さな石仏はあったものの、頂上標識は小さく貧弱で些か拍子抜けであった。
しかし、あまり華美な標識があるのも困りもので、これが本来の山の姿かもしれない。

展望は、高谷池を中心に来し方を一望することができたが、妙高山方面には雲が涌いていてその姿をとらえらることができず、 また反対側の焼山もこの頃には涌き上がってきた雲に包まれて、ほんの一瞬顔を見せてくれただけであり、従ってその後方に見えるはずの北アルプスの山々も全く目にすることができず、 もっと早いうちに頂上に立っていたらという残念さが残ったのであった。

下山路は途中まで往路を戻り、高谷池ヒュッテの所から茶臼山経由で黒沢池ヒュッテに向かう道をとった。
この頃になると気温も結構上がり、草いきれでムンムンする中を進んでいくと、やがて前方下に黒沢池の地塘群と青色をしたドーム型の屋根を持つ黒沢池ヒュッテが見えてきた。

ヒュッテに着いたのはまだ午後 2時であったが、さりとてそのまま妙高山に登る気力も湧いてこず、 今夜はここで泊まることにして宿泊申し込みをし、小屋の前のベンチに座って風に吹かれてボーっとしていた。

夜、外へ出ると満天の星で、流れ星がいくつも流れていくのが見え、小屋に泊まりに来ていた若い人達は流れ星が見える度に歓声をあげていた。
私自身もこのような体験は 20年近く前の飛騨高山の山中以来のことで、心弾む思いであった。

小屋は団体が入っていたこともあって結構混んでいたが、なかなか快適で、また隣合わせになった人とも会話が弾んで楽しい夜であった。

以下、妙高山の項へ続く。


火 打 山 登 山 デ ー タ

上記登山の
データ
登山日:1995.8.19 天候:快晴単独行前夜車中泊
登山路:笹ヶ峰−十二曲−富士見平−高谷池ヒュッテ−天狗の庭 −火打山−天狗の庭−黒沢池ヒュッテ(
交通往路:瀬谷−(相鉄仙)−横浜−(東海道本線)−東京− (バス:車中泊)−長野−(信越本線)−妙高高原−(タクシー)−笹ヶ峰
交通復路:翌日妙高山に登山。妙高山の項参照
その他:8月18日夜行バス似て出発。翌19日火打山登山。
19日は黒沢池ヒュッテ泊。
その他の
火打山登山
笹ヶ峰駐車場−十二曲り−富士見平−高谷池ヒュッテ−天狗の庭 −雷鳥平−火打山 (往路を戻る)
  (2013年6月13日 : 曇り時々晴れ)     こ こをクリック


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