初期流動活動展開プログラム


初期流動活動とは

 TPM活動の柱「製品設備開発管理」の中で、ラインを設置してから量産立上げの段階を「初期流動管理」と称している。そしてこの段階が製品と設備初期管理の最後の活動であることから、「初期流動活動の展開」と名づけた。
 いかに製品設計段階や工程設計、設備設計段階でMP情報を基に設計され生産前活動(サイマル活動)が行われても、現実の姿になるとさまざまな不具合が発生する。これらのデバッキングを行い、早期に品質、納期、原価の目標値を達成して量産立上げを行う、即ち「垂直立上げ」を行う活動が初期流動活動の展開である。
 また初期流動活動は物作りの総合力が発揮される。既設のラインで実施してきた品質管理、設備管理、現場管理、生産管理、安全衛生管理など生産システムの全てが凝縮した活動である。故に「初期流動活動」を見ればその会社の物作りの総合力レベルが判断出来る。さらに不具合の問題解決力である現状把握力、解析力、改善力、維持管理力がここで発揮される。
 

初期流動活動展開プログラム

 初期流動活動を展開するに当たっては、品質、生産性、設備総合効率など量産立上がり時点の目標値を設定する。そして設備又はラインの工場内へ据付け時から、量産立上げまでの活動を5ステップに区切り、それぞれのステップで設備面のテバッキング、品質面のデバッキング、原価面のデバッキング、作業面のデバックと標準基準の設定、オペレーターの習熟訓練、そして生産方式の設定などを実施する。

以下に活動展開5ステップの概要を記す。

ステップ 時期、活動名          活  動  概  要    管理項目 役割分担
1ステップ メーカー立会
工場据付け

立上試運転

[初期流動活動板]の設置、目標値の設定、立上げ活動日程設定
事例(ここをクリックするとMicrosoft Power Pointが開きます)
[設備面]
・メーカー(工機)立会い時不具合エフ付け
・静的精度測定・動的検査・空運転動作確認・サイクルタイム確認
・工具消耗品予備品リスト作成手配
・消耗工具予備品棚設置
[品質面]
試加工品質確認
・品質管理基準、QA表、XR管理図、チェックシート作成

・測定具、測定台の設置
[原価面]
予定した製造原価を原価費目別に分解し、実績原価との差が分かる
 ように活動板に掲示する。
[生産面]
管理ポイント、停滞ポイントの仕掛かり在庫MIN,MAX表示する。
計画した「生産リードタイム」「在庫回転日数」を表示する。
・供給、出荷の容器、及びシュート、部品供給台の設置
・エフ付けエフ取り件数
・メーカー
(工機)
・技術
・製造
・保全

・検査
2ステップ 短時間連続
運転−1

設備初期
総点検
1〜2時間連続運転デバッキングの実施、客先要求数の玉だし
[設備面]
・設備総合効率の把握(故障、チョコ停の把握)と要因解析対策
・締結増締め、油空圧洩れ、潤滑、駆動、配線、センサー等の不具合
 清掃給油点検困難個所のエフ付けエフ取り
 作業不安全部位のエフ付けエフ取り
 [自主保全1〜3ステップ活動参照ここをクリック]
・予知保全基礎データー測定(振動、有効電力、温度など)
[品質面]
・工程能力測定、不良手直しの対策実施
[作業面]
・標準作業書の作成

時間当り出来高 ・一人時間当り出来高管理の記録実施
[生産面]
・生産指示方式、荷姿SNP、生産ロットサイズ、運搬方法の設定
・設備総合効率
・故障件数
・チョコ停件数
・不良、手直し率
時間当り出来高
・一人時間当り出来高
・メーカー
(工機)
・技術
・製造
・保全
・検査
・生産

・IE
3ステップ 短時間連続
運転−2

品質総点検
4時間連続運転デバッキングの実施、
[設備面]
・加工液、切屑の発生源対策、チョコ停対策の実施
・自主保全「清掃、給油、点検基準書」作成
・計画保全「点検整備基準書」作成
[品質面]
・品質総点検の実施(考えられる納入不良、加工組立不良の洗出し)
 [新品質保全展開参照ここをクリック]
[原価面]
・現時点の実際製造原価を原価費目別に調査し、活動板に表示する。
・予定原価との差異を分析して、原価面の改善アイテムを洗い出す。
[作業面]
・標準作業書に基づき運転操作、作業訓練実施
・清掃、給油、点検時間
・ポカヨケ設置件数
作業ILU管理
・技術
・製造
・保全
・検査
・生産
・IE

4ステップ 量産連続
運転


作業総点検
8時間連続運転デバッキングの実施
[設備面]
・段取り作業の実施と段取り時間短縮改善実施
・工具(型、切削工具、溶接チップ)の命数の調査と設定
[品質面]
・品質総点検の対策実施
・「QMマトリックス表」作成、要因点検項目をチェックシートに記入。
[原価面]
・予定原価に未達項目の原価費目改善アイテムの対策を行う。
[作業面
・「段取り手順書、工具交換手順書」作成、手順書に基づき作業訓練
 実施

異常処理基準、4M変更点管理基準設定
・作業総点検の実施と改善[手作業ラインの改善参照ここをクリック]
[生産面]
管理ポイント、生産リードタイム、在庫回転率で計画に未達項目の
 要因を洗い出し、対策を行う。
・生産指示方式、荷姿SNP、生産ロットサイズ、運搬方法の実施確認
・段取り時間
・工具交換時間
製造原価達成率
生産リードタイム
在庫回転率
・技術
・製造
・保全
・検査
・生産
・IE
5ステップ 引渡し
量産立上げ
・引渡しチェックリストにより確認、残課題の整理対策日程確認
・MP情報発行
・残課題対策件数
・MP情報発行件数
・技術
・製造
・保全
・検査

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