手作業ラインの生産性改善方策

 手作業を主体とした組立、加工ライン(マンネック工程のライン)の生産性を現す指標には、[一人時間当り出来高]と筆者創案の[作業総合効率](ここをクリック)がある。この手作業主体ラインの生産性を向上する改善の狙いと改善手法について以下に整理した。

生産性向上の狙い

1)生産タクトの短縮
   生産要求量の拡大時、残業休出生産を解消する為に、所要人員は一定で生産タクトを短縮する改善。
2)省人化
   生産要求量は一定で生産タクト(要求タクト)を変えずに、所要人員を省人する改善。
  以上の狙いを明確にして次の改善手順で取組む。

ライン改善の手順と改善方策

 手 順             改 善 内 容 解 説   改 善 方 策 
1ステップ ・1時間の作業ペース調査によるタクトのバラツキ要因と作業総点検による改善
 ペース調査の結果から、タクトのバラツク(遅れる)要因を洗出し、改善アイテムを摘出する。
 さらに、[作業総点検ワークシート](ここをクリック)に要素作業ごとの要素動作(右手、左手動作)に分解し、それぞれの要素動作が「低付加価値作業」(取り置き、移動、保持、運搬、目視、修正、手待ち)に分類し、それらを「動作経済4原則」(動作数減、同時動作化、動作距離短縮、動作を楽に)の視点で改善アイテムを摘出する。

改善の指標=[付加価値作業率]・[両手作業率]
作業手順の標準化
・低付加価値作業の改善
・一個取り、一個流し化改善
・自動ハネ出し化改善
・修正、調整の要因改善
・検査測定方法の改善
・設備チョコ停の個別改善
・部品供給出荷容器入替え
 のワンタッチ化
改善
2ステップ ・時間当り出来高のバラツキ調査によるバラツキ要因の改善
 1時間の作業タクトのバラツキと要素動作の低負荷価値作業の改善がされたら、1日の作業の中で発生するロスの現状把握を行う。現状把握に「時間当り出来高」を一週間記録し時間当り出来高のバラツキをヒストグラムにする。
 ここで時間当り出来高の低下している要因を解析し、この改善を実施する。
(この記録する時に、朝の立上がり1時間目、段取り換え時、設備故障時、部品切れ時などが判るように記録する)
・朝の作業準備短縮改善
・管理記録作業の改善
・段取り短縮個別改善
・生産ロットサイズの改善
・設備故障解析と再発防止
・前工程との生産指示方法
 の改善
・生産進捗の時間当り把握
 方法の改善
3ステップ ・ラインバランスの改善
 以上の1〜2ステップの改善で、ラインバランスはかえって崩れてくるが、ここで改善の狙いの、1)生産タクトの短縮か、2)省人化によつてラインバランスの改善が異なる。
ここで各工程の正味時間をラインバランス表に落とし、1)生産タクトの短縮の目的ではネック工程の作業の一部を他の充実度の低い工程に移す。又はネック工程の要素動作改善をさらに実施する。
2)省人化の目的の場合は最も充実度の低い工程の作業を他の工程に移し、この工程を省人する。しかし完全に省人出来ない場合は同様な改善を他のラインで実施して、端数人員を集合し、リリーフマンとして不足工数の掛け持ち化とする。(ラインの大部屋化)

 (以上の改善を実施する段階で始めて工程のレイアウトの改善を実施したほうが良い。1〜2ステップ段階ではレイアウトの改善を実施しないほうが良いと筆者は考える。)
・作業工程の分離移動
・部品供給出荷方法の
 改善
・工程レイアウトの改善
・他ラインとの結合
及び
 集合化
(二の字化)
4ステップ ・要求生産量の変動に対する作業編成組合せの改善
 次に、要求生産の変動に対して多少の増減は負荷時間の調整となるが、大きく変動した場合は当然所要人員の増減が必要になる。この生産量の変動に対応した人員と作業工程をラインバランス率を低下させない組合わせを設定する。さらに所要人員に最適な工程レイアウトを作り、簡単にレイアウト変更が出来るように改善する。
 生産方式では、ラインを要求量に合わせたタクトで生産する「間欠生産」と、一定の量をまとめ生産してラインを渡り歩く「渡り鳥生産」のどちらが効率的かよく検討して決める。一見「渡り鳥生産」は効率的に見えるが、次工程間に在庫を大量に造ってしまい。容器、運搬、在庫のロスを生む。「間欠生産」生産は、設備の効率は低下するが。必要な要求量をこまごま生産するため、次工程間の在庫は極少ですむ。 生産要求量によって非量産は「まとめ渡り鳥生産」、中量生産以上は「間欠生産」を選択すると良い。
 尚、
「まとめ渡り鳥生産」の一回の生産ロットは、出荷サイクルの生産量の範囲内とする事。出荷サイクル内の一分割生産から始める、さらにニ分割生産に改善すると良い。(一分割生産のリスクは、生産中に設備故障等が発生するとその後に生産する製品の出荷に対して完全未納を発生するからである。二分割以上の生産では最低限の出荷が可能になる。)
・要求量変動人員組合せ
 改善
・レイアウト変更容易化改善
・最適生産方式の設定
・出荷サイクルに対する
 分割生産方式の改善
・他ラインとの結合及び
 集合化
(二の字化)
・非量産ラインの結合
 汎用化改善
5ステップ ・前後工程との物の流れ運搬、生産指示方式の改善
 前工程からの物の流れ、後工程への物の流れ方(生産ロットサイズ、荷姿、SNP、運搬方法、運搬タクト)の改善を実施する。
 前後工程間の仕掛かり在庫、段取りロット在庫、完成在庫、運搬ロス等生産方式の改善を行う。
・生産タクト同期化
・容器、SNPの統一
・運搬方法の改善
・前後工程のライン直結化
・生産指示、出荷指示の
 目で見える化

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