光学調整
プローブより出射した光を被測定面に入射させ、被測定面からの反射光を再びプローブで検出することが測定のための必須条件です。従って、被測定面からの反射光がプローブに戻るように光学系・被測定物を調整しなければなりません。この調整は以下の用件により変動します。被測定物種類、その反射率、被測定物の動き、被測定物までの距離、被測定物の支持方法、等です。これらの条件がどの様に影響を与えるかを説明します。
2種に分けて説明します。
@機械的・物理的調整時の注意点
被測定物種類;測定用レーザ光が入射する面の状態は、凹凸性、粗さ、うねり、透明性、コートの有無、等で表現できます。表面状態を把握してください。表面散乱が大きい粗面では、プローブに再び戻る光量が減少し、測定できないことがあります。しかし、表面が荒れていても、プローブに戻り得るキャッツアイ等の構造を有していれば測定には向いています。この条件に適したものとして、反射テープ等が販売されています。
参考 反射テープ ; 3M社製 反射テープ、反射材
透明性は次の反射率とも絡んできます。コートがある場合において、コートの上面と下面で同程度に反射する場合、誤差を発生するかもしれません。つまり、コート厚が薄く、被測定物の動きが激しい場合には、測定値に誤りが発生するかもしれません。
被測定物の反射率;通常反射率は表面からの反射光量の全量を基準にする場合が多く、本装置のように戻り光量を扱う際には、反射率の一言では表現できません。被測定物からの反射光の指向性を考慮して反射率を検討しなければなりません。研磨されたコートなしガラス(通常、反射率4%)では測定できますが、これは、反射光の指向性が高いからに他なりません。(この程度の指向性を有すれば、レーザパワーを上げることで、0.2%の反射率でも測定できます)。当然、反射面形状、曲率半径も影響します。
被測定物の動き;プローブへの反射光量が被測定物の動きに合わせて変動しますが、この光量変動は本装置の光検出回路においてカバーできます。しかしながら、被測定物の大きな動きにより、反射光量がほとんど得られなくなれば、測定はエラーとなります。プローブへの反射光量が、被測定物の動きによって、どの程度確保できるかを検討しなければなりません。
被測定物までの距離;プローブからの光はコリメート光(集光系を取り付ける場合は特定距離で焦点を結びます)ですので、基本的には遠方でも十分計測出来ます。しかしながら、遠方ですと光が往復する時間(3mで0.01μs)内でのレーザ光の周波数の揺らぎが問題となります。本装置ではΔλ/λ〜0.00000001以下ですが、1nmの精度得るためには、プローブ先端から被測定物までを50cm程度を限界としてください。ちなみに実力的には7m先でも測ることは出来ます(結果の精度は保証できませんが)。
被測定物の支持方法;プローブと被測定物の上下左右の関係は自由です。プローブはしっかりとした台の上に固定してください。定盤のように外部の振動を除去できる台が最も好ましいです。出射方向に合わせて、被測定物を設置するわけですが、被測定物の測定面を任意に変えられるように、種々のステージを使ってください。X、Y、Z軸ステージ、回転ステージ、アオリ2軸ステージ等の上に被測定物を固定してください。被測定物にステージ等が取りつけられない場合は、プローブ側にアオリステージ等を取り付けてください。本装置のプローブは剛性を高めるため、厚い基板の上に干渉系が構成されています。

1プローブ2出射型のプローブ部

A人的・環境的注意点
測定者の問題;調整するとき細かな作業のため、気を使います。手が震えるようでは、調整ができません。体力をつけてください。これは、中腰や長時間同じ姿勢を保つのは困難だと根を上げてしまう姿勢が強要されるからです。ただ、最初は椅子に座って取り組んでください。無理な姿勢は調整がルーズになりやすいからです。それと、熱中しすぎないでください。調整が調整を呼び、深みにはまりやすいからです。技術Q&Aの<測定者の影響は?>でも問題としました。服装も気をつけてください。綿や化繊は良いのですが、ウールなど、ごみが発生しそうな服はおやめください。それと、めがねにごみが付着してないように注意してください。(これは、私の経験からです)。
環境の問題;温度制御・騒音制御・移動制御・安全対策、は言わずもがなの話だと思います。調整は結構大変な作業です。自分の鼻息が気になる程度ですから。これらの問題に関して、光計測Q&Aや、技術Q&Aでも述べていますので、参考にしてください。特に<音は問題?><風は問題?>に注意点を示しました。

お問い合わせ、ご質問は下記までお願いします。
株式会社フォトンプローブ 代表取締役 理学博士 平野雅
TEL 048−538−3993 本社
電子メール photonprobe@asahinet.jp
注意;2020年5月より、本社を移転しています。
旧本社の電話番号は使用できません