音は問題にならないのか?
結論を先に述べますと、”予想以上に大きな悪影響を及ぼす”、です。あまり注意が払われていないように思いますが。
音といってもいろいろな種類があります。
@建物内 空調の音(多くの研究室で使われている空調は、15分から30分周期で空気量が変動します。そのため、音もその周期で変動)、床振動(建物が振動しています。強い風や大雨などでは実感されているかもしれません)、エレベータの止まる音、動き出す音(エレベータは安全性のため、建物と一体化しているので大きく聞こえます)、人の動く音、話し声、物を動かす音(人が多数いれば、仕方のないことですが)、各種装置の動作音(実験装置、測定装置が増えると、喧しいほどです)
A建物外 飛行機(言うまでもないやかましさ))、通行する車(ダンプなどのクラクションもあり、結構うるさい)、人の話し声(建物が立派だと気にならないと思い込んでしまいますが)、などが、実際の音でしょう。高音であったり、低音であったり、単調であったり、複雑であったり、と様々です。
伝わり方も、色々あります。その中で次の3つが大きな影響を与えます。
1.直接被測定物を振動させる。(空気中の音伝播)
2.被測定物を支持しているジグ・装置・床を振動させ、その振動が被測定物を振動させる
3.測定する装置のプローブを振動させる。
などです。
2の場合:装置等の振動を防止するために、定盤などが使われます。市販の通常の定盤では、カットオフ周波数が3から10Hz程度なので、可聴域周波数では、床から被測定物にほとんど伝わりません。従って、定盤上の装置等が直接音の影響を受けることになります。1と同じ議論になります。
問題なのは、定盤上に、非測定装置を支持するジグと共に、測定装置(電気で動作する装置)を置くことです。この装置の音や振動は、大問題です。少なくとも、このような状況はおやめください。
3の場合:測定する側のプローブ自体が振動したり、音を発していては、論外になります。系を検討してください。弊社装置はプローブ自体は、受動部品のみです。ただ、本体は電気で動作する装置ですから、上記の対象のひとつとなります。
1の場合:これは経験上、大きいことは測定されてこられた作業者さんの共通の実感だと思います。ではどの程度の大きさなのでしょうか?そこで、今回、ご質問にお答えする形で、検討してみました。PDF版にまとめましたので、そちらをご覧ください。
音による対象物の振動(PDF版)
2重3重の対策をして、1nm以下にできる。何もしないと、簡単に10nm以上のノイズが発生する。
高精度で計測する際には、音の対策は絶対に必要です。
実際の経験から音の影響を追加して説明します。
本社は、日野市にあり、米軍横田基地への輸送機等の着陸態勢に入った状況は、大変うるさいです。
普通の人なら、”やかましい”、と思うことでしょう。この爆音、実験室の中からも聞こえました。その影響は実験結果に現れました。ただ、近くを走る車や人の動きと区別がつきにくく、明確な原因とはわかりませんでした。
そこで、本社での実験・計測に限界を感じ、田舎(飛行機も車も人もめったにいない環境)の開発室を立ち上げました。すると、今までの実験結果は何だったのかと思わせる程に、劇的に変わりました。ノイズ成分の少ないこと。驚きでした。音の対策は絶対必要条件であることを再認識しました。
音は単独に影響を与えません。音が作り出す縦波が、機材や建物を振動させるのです。この振動は伝搬するのです。そして、爆音の周波数成分とは異なる周波数が発生するのです。建物は低周波側に大きな影響を作り出します。計測では、低周波成分は、様々な要因があるので、原因を特定することは難しい面があります。
しかし、測定場所を変えると大きく変わることを認識してください。以前、ある企業の研究所で測定して、”データが出ない”との問題点が持ち込まれたことがあります。現場は立派なコンクリート製の4階建ての建物の3階にありました。実験室内は外の音が全く聞こえませんでした。近くを走る高速道路の車の音も全く聞こえませんでした。その企業の研究員さんは、”外の影響を全く考慮しなくて良い”と判断していました。そこで、説明提案して、実験道具をすべて1階に運び、測定してもらいました。結果、測定できました。上記の音対策の一つを行っただけですが、原因の一つを理解していただくことが出来ました。
弊社内では、パソコンのファンの音さえ問題にしています。
お問い合わせ、ご質問は下記までお願いします。
株式会社フォトンプローブ 代表取締役 理学博士 平野雅夫
TEL 048−538−3993 本社
電子メール photonprobe@asahinet.jp
注意;2020年5月より、本社を移転しています。
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