フリーマンの随想

その41. 小泉内閣に思うこと


* 今はこれしか言えないのですが・・・ *

(6. 25. 2001)


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この2カ月ほど、小泉内閣への評価や期待について、多くの友人たちから 「 あなたの意見は ? 」 と問いかけられました。 個々には丁寧に率直にお答えしましたし、 この問題は大切なテーマだとは思いますけれども、 それらの返事をまとめてこのホームページに随想として発表する気には、なかなかなれません。 もうしばらく時間を頂いて勉強し、また状況の推移も見守りたいと思っています。

私は小泉首相の人柄には好感を抱いていますけれども、 考え方には一部理解・共感できない部分もあります。 彼のめざす方向は間違っていないと思いますが、具体的な実行の力量についてはよく分かりませんし、 どれだけ有能なブレーンやスタッフをお持ちなのかも知りませんので、成否の予測も出来ません。 自民党主流派や官僚による 「 反革命 」 により、引きずり倒されそうな危惧もあります。 評価には慎重にならざるを得ません。

田中外務大臣となると、もっと心配で、 腐りきったあの外務省の官僚機構 ( 官僚個々人ではありません:念のため ) をぶちこわそうという意図には、大いに期待しますが、 彼女自身の統治能力不足や性格の欠陥のために、 今にも失脚してしまいそうで、心配で見ていられません。

マルクス・レーニン主義ではないが、効果的な改革の前には、 多少乱暴な破壊がまず必要であると私は思います。 今は既存の悪しき枠組みを一旦ぶちこわして、 そのあとに新しい良いものを創造するしかないのです。 また、改革には 「 痛み 」 や 「 犠牲 」 も伴います。多少の錯誤もあり得ます。 それらを怖れ、ためらっていたら、永久に 「 改革 」 など出来はしません。

四方波立たず、誰も傷つかずに、全員が満足な 「 改革 」 が出来るなどと夢想してはいけないし、 もしそういう事を主張する政治家が居たら、その人は馬鹿か詐欺師か、 そうでなければ改革の足を引っ張る陰険な連中でしょう。 「 構造改革は景気対策にも十分配慮しながらやれ 」 という亀井某のような手合いがそれです。 それにしても、各党首の都議選での演説は面白かったですね。 自民党総裁は終始 「 改革 ! 」 と叫び、共産党の議長は盛んに 「 経済安定を 」 と主張している。 何か逆のように思えませんか。

「 小泉内閣はお題目や掛け声ばかりで具体策が見えない 」 と批判する人が多いようです。 しかし、今迄の日本人 ( 政治家だけではない ) の欠点は、確固たる理念や理想を持たず ( 多分それが不得意なのでしょう )、在来の路線に乗った 「 その場その場の小手先の手当て 」 にばかり腐心していた事にあると思います。 まず理念や方針をしっかりと確立し、 次に徐々に的確にそれに沿った具体策を練り、実現を図ってゆくというのが、 問題の解決のための、正しい、当然の順序だと思います。

この点で、橋本や森よりは小泉が大分まさっていると、国民は本能的に察知しているようです。 もう一つ、小泉がまさっている点は 「 自分の頭で考え、自分の言葉で物を言う 」 ことができるという点でしょう。 これこそが、実はリーダーにとって一番大切な資質なのです ( 随想 その8をご参照 )。

「 まず皆さんのご意見を謙虚に良く聴いて・・・ 」 などという、 竹下以降の歴代首相に感じられた姿勢・言動は ( 日本人によくみられる、 我々には違和感のあまりない手法ではありましたが )、 実は彼らに自分独自の理念、理想が何もない事を白状しているに過ぎないのだという事に、 国民は漸く気づき始めたのではないでしょうか。 「 皆さんのご意見を謙虚に良く聴いて 」 その最大公約数で方針を決めるのなら、 立派なリーダーなど要りません。 「 真空 」 のような人でも首相は務まります。 いや、実は彼らは 「 謙虚によく聴く 」 意思すら、 本当は初めから持っていなかったのでしょうが・・・。

「 一人でも反対者が居る間は私は実施しない 」 と、以前、某知事が言ったとか聞きましたが、 正しい、誰かがやらなければならない事であると信じたならば、どんなに憎まれようと、 千万人の敵が自分の行くてを遮ろうと 「 私は行く ! 」 のが、勇気あるリーダーです。

今日の時点で私に言えることは、ここまでです。これ以上は書けません。 とにかくこのまま放っておいたら、日本はどんどん駄目になって行きます。 ケ小平がかつて言ったように 「 白い猫でも黒い猫でも、鼠を捕るなら、それは良い猫である 」 と、私も思うので、何党の出身であろうと、その構造改革の理念・方向と実行力が私を満足させるなら、 私は支持します。

それにつけても、猪瀬直樹氏の 「 日本国の研究 」 およびその続編 ( 文藝春秋社 : とても分かりやすく、面白い、そして腹の立つ本です ) を、 皆さん、是非読んでくださいませんか。 今度彼は石原大臣の行政改革の諮問委員の一人になったようです。 あまたの有害無益な特殊法人や財政投融資を一日も早くぶちこわし、 なくす事が、この国にとって、今どれほど大切な、緊急に必要な改革であることでしょうか・・・。

ご感想、ご意見、ご質問などがあれば まで。