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本年度、司法試験の合格者数/合格率が発表されました。約2000名/合格率25%超ということです。当職の合格した平成元年の合格率は2%です。有り体に言えば、当時であれば不合格になった人でも、今ではバッジをつけた弁護士さん・・・ということが当然にありうるわけです。
 政府や経済界や学会のエライ方達が、短慮で法曹養成制度をいじくりまわした結果が「新人弁護士さんの就職難」です(「弁護士」「就職難」で検索してみてください)。確かに往年の「合格者500名/年・合格率2%」では少なすぎ/厳しすぎとは思いますが、現状はあまりにも「水増し」ではないでしょうか?
 裁判/法廷の場というものは、当ったり前ですが、「ガチンコ勝負」です。勝つか負けるかの極めて厳しい世界です。簡単になったプロテストに合格し、トレーニングも足らない、経験も浅いボクサーがリングにあがったら、どうなりますか。闘う相手は、厳しい競争を勝ち抜いてきた百戦錬磨の猛者かも知れません。
 いずれにせよ当職は、裁判/法廷の場において、相手方が未熟であれ、未経験であれ、当然にKO勝ちを狙います。一切の手加減はいたしません。

法科大学院/法曹養成制度改革

以下、「事実」と「評価」を峻別し、「事実だけ」を列挙いたしますと・・・。

1 旧司法試験の受験料:6400円也(受験申請書に収入印紙を貼付)。
  改革後→(予備試験ルートを除けば)最低2年の法科大学院の学費で200万円以上。
2 旧司法試験:大学3年生から受験可能(大学2年次で一般教養履修済であれば可)。
  改革後→大学卒業まで2年+さらに最低2年の法科大学院、計+4年の期間を要する。
3 法科大学院の学費の多くは、法科大学院の教授の方の給与として費消される。
4 その教授の方の7割は、純然たる「学者」である。つまり、
  法律実務(裁判書面の作成、法律相談、証人尋問、検察官・裁判官実務等)の経験なし。
5 法科大学院卒業後、司法試験の受験回数制限は3回まで。司法試験の受験資格を喪失。
6 司法試験に合格しても、司法修習生の間は給与はなし。公務員扱いで副業も禁止。
7 修習終了後、法律事務所への就職は狭き門となり、弁護士登録できない人達が激増。

以上をまとめると、このたびの法曹制度改革の帰結は下記のとおり。

・従来の制度に比較して、資格取得までにずっと長い期間を要し、
・かつ費用も多額にかかり、
・しかもその費用は法科大学院の教授の給与として支払われる一方、
・その法科大学院では7割方は法曹実務経験のない学者から授業を受けることとなり、
・大学院卒業後、3回までに合格しないと全てがパー、というリスクとプレッシャを負い、
・3回以内に司法試験に合格して修習生になっても、修習中は給与をもらえず、
・副業も禁止なので、生活は、貯金取り崩し、借金、親がかりに依存せざるを得ず、
・修習が終わっても就職が厳しく、マトモにメシが喰えない

(評価と分析)
・法曹を志すことは、究極の「ハイリスク・ローリターン」となった。
・ なので法曹志望者(法科大学院志望者)自体が激減し、予備試験を指向する受験生が激増した
 のは極めて当然の帰結。

(原 因)
政府の諮問を受け、制度考案をした「学者・有識者」の方々は、「理想の」「制度論」ばかりを考え、
その裏にいる「ひとりひとりの法曹志望者」という「人間」がどう考え、どう行動するか、という一番
肝心なことに思い至らなかった。これは「ハコモノ行政」と同じである。「制度」だけ作が一人歩きし
「人間」を忘れた。学問ばかりしていて起業も経営もしたことのない「有識者」の方々とは、所詮その
レベルである。

(対処法)
ありません。
「法曹実務経験がないのに法科大学院教授になれて報酬が増えた」は既得権益。その権益を得ている当の
「学者・有識者」の御本人、ないしはその同業者が制度改革を担う限りは、「社長が自分の給料を決める」
ようなハナシで、あるいは国会議員が自らの定数削減をできないのと同じで、自分の既得権益を減らすはず
がない。
 換言すると「学者・有識者以外の公正なる第3者」を制度改革の担い手とすれば改善が見込めるが、その
ような担い手は、現状、皆無・不存在である。また弁護士業界も当事者能力がない。

(見通し)
・改悪された制度がこのまま独り歩きを続ける。
・法曹養成制度は矛盾と混乱を極め、やがては破綻する。
・ごく少数の「予備試験合格→司法試験合格組」ないし、「一流大卒→一流ロースクール卒→
 早期合格組」・・・だけがまともにメシが喰える状況となる。
・それ以外の「ロースクールは出たのに法曹にもなれず企業にも就職できない、その他大勢組」が
 多数出現し、社会問題化する。いわゆるポスドク問題と同列。
・法科大学院の多くは破綻、閉校する。


                                      以  上

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