縮刷版96年7月中旬号


【7月20日】 「海の日」なので、カバーガールを「鉄腕バーディー」に変える。相変わらずおまけのペイントソフトとマウスでグリグリと描いているので、相変わらず似ていないし、色の塗り方もちょっとヘン。次は「天地無用」シリーズに戻るかもしれないし、「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズに行くかもしれない。難しいのや特徴のないのは描けないが、難しすぎたり特徴がありすぎても描けないので、そのあたりの差配が難しい。何かこれはってゆー候補なないだろーか。

 早起きして見るのはオリンピックの開会式。仮面の人々が繰り出して五輪をグランドに描き出したのはいーが、子供たちで作った「100」の字の淵がギザギザになっている。いー加減なところはいかにもアメリカ的なんだけど、日本だったもっとピッチリしてただろーな、北朝鮮だったら違った意味で感動させるマス・ゲームを見せてくれただろーなと思う。

 黒白赤黄とりまぜたブラスバンドの演奏や、男女比でなんだか男子の方が多い気がしたチアリーダーの演技、ネイティブ・アメリカンの伝説を下敷きにした「サンダーバード」とやらの獅子舞なんかがダラダラと続くが、いかにもアメリカってオープニングで、だからどーしたって程度にしか驚けない。ロサンゼルスの時には宇宙飛行士に空を飛ばせたんだから、今度はスペースシャトルを着陸させるだとか、琥珀から抽出した遺伝子をもとに作った恐竜を歩かせるとか、とにかくもっともっと吃驚させる趣向が欲しかった。

 聖火ランナーのアンカーはモハメド・アリかあ。うーんなるほどねって感じにはなるけれど、おーっすっげーぜって感じにはならない。マイク・タイソンにやらせろよ。後ろにドン・キングを従えさせてさ。軍事衛星から火柱を放って付けるとかすれば、アメリカの軍事技術の優秀さが解るってものなのに。頭にカメラを取り付けたミサイルで、点火の瞬間を生中継するって手もあるね。ジョン・ウィリアムズの演奏だけは感動。これはスター・ウォーズ・ファンとしての依怙贔屓。

 白泉社の新刊「少年はその時群青の風を見たか?」を買う。酒井美詠子さんとゆー人の初めての単行本。「怪盗ルパンと名探偵ホームズは高校時代、大の親友だった!? 19世紀末ロンドンは今日も2人の話題でもちきり」とゆー裏表紙のアオリ文句に乗せられて読んでみた。絵はそこそこで、描きこめばどんどんうまくなる人と見た。ルパンとホームズが出ているけれど、金田一のはじめちゃんと明智警視が出てくる某コミックとか、たがみよしひさの「なあばすぶれいくだうん」のよーな謎解きの楽しみはなく、ルパンとホームズの2人を中心にした学園モノのノリでストーリーは進む。キャラクターの口の描き方に特徴があって面白い。2人の仇敵モリアーティーは美形の敵キャラとして人気出そう。

 単行本の「少年はその時群青の風を見たか?」は、白泉社史上3番目に長いタイトルとゆーことだが、さてこれより長い2つは何だったのだろーかと考える。僕にはちょっと思い浮かばない。あとがきによれば、作者の酒井さんは同志社大学の神学部に通っているとか。京都方面の人は要チェックだ。


【7月19日】 「鉄腕バーディー」(ゆうきまさみ、小学館、1200円)の帯にあった、CD「鉄腕バーディー誕生編」の実物をレコード屋で見て、今回発売になった第1卷に何が足りないのかを、だんだんと思い出して来た。「誕生編」のジャケットに書いてあった文章を読むと、CDには、バーディーが地球に来る5年前の物語が収録されていて、クリステラ・レビを倒すために修行に励むような内容になっている。どこかで聞いたことのある話だと考えていて、これは増刊少年サンデーに漫画として掲載された話だったこいうことに思い至った。好きだったという割には、ぞんざいな記憶しかないところが情けない。

 第1卷にはほかに、浜辺でバットを投げるシーンが収録された話と、田舎の温泉で鬼退治をする話が抜けている。浜辺でバットを投げるシーンは、当時「週刊少年サンデー」に連載されていた「究極超人あーる」の合宿での出来事と対をなすもので、第2卷がホントに出てこの話が収録されたあかつきには、「週刊」だけしか読んでいなかった人も、ようやくにして投げ返されたバットの意味を知るのだ。あっはっはっ(って威張ることでもないね)。

 「ドクター・アダー」や「グラス・ハンマー」なんかで知られるK・W・ジーターが書いた「ブレードランナー2」(早川書房、1800円)が、ようやく日本語で発売になった。ピラミッドのよーな建物や、火を吹き上げる塔なんかが立ち並ぶ街の上を、亀の子たわしのような乗り物が行き交っている表紙絵は、まさしく映画「ブレードランナー」の1場面。ストーリー自体は、SFマガジンのSFスキャナーだったかなにかで、ネタバレなんて文句が出るくらい詳しく説明されていたから、とりたてて驚くような展開にはなっていなかったけど、強烈な印象を残した映画「ブレードランナー」の続編として、これ以外の話はないとゆーくらいに、すっきりとまとまって、かつ感動的なラストシーンになっていたので良かった。でも260ページで1800円はちょっと高い。

 映画「ブレードランナー」は何年か前に「ディレクターズカット版」のビデオを買って、自宅に戻った3日ほどの間に、毎日2回は繰り返し見ていた。それでも続編を読んで思い出すシーンが幾つもあって、髪の生え際とともに後退していく記憶力への不信感におそわれる。続編を読んで、「ディレクターズカット版」のビデオを見返してみたくなったが、手元にあるビデオを再生する機械が我が家にはなぜか存在しない。パッケージの裏側に付いている、腕に白い鳩をとまらせた、ルトガー・ハウアー演じるロイ・バティの写真を眺めつつ、深い深いため息を付く。


【7月18日】 「JALInet」のオープンを報じた新聞記事に筒井康隆さんが怒っているという。ホームページに新作の「越天楽」を掲載したことだけに注目が集まり、「断筆を一部解除」とか「電筆宣言」とかいった見出しが踊った翌日の新聞を見て、出版社の自主規制が未だ解かれていない現実に目をつぶって、ただ新作が発表されたと憂かれ騒ぐ新聞社の脳天気さに、立ち直れないほどのショックを覚えたという。

 筒井さんと出版社との戦いはまだ続いている。インターネットの活用が既存の出版社の無言のプレッシャーになってこそ、インターネットに新作を発表した意味があるというのに、既存の出版社の代替物としてインターネットを見ているようなスタンスでは、言葉の言い替えを強要してきた出版社の思う壺だということなのだろう。メディア側の人間として、筒井さんの新作発表はバリューの高いニュースだと思う。しかし、そのことだけを強調する余り、戦いの本質を看過したり、日本の文芸を世界に紹介するという文芸サーバー本来の役割を端折って報じなかったりしたことが、筒井さんにとって著しく不本意だったのだろう。

 我が"表"日本工業新聞は、文芸サーバーの登場によって、既存の出版社の思惑に左右されない文芸活動が可能となることや、作品のダウンロード販売という新しい出版流通形態が登場する可能性のあることなどを書いた。しかしそこはマイナー新聞社の悲しさ。記事を非難されるどころか、批評される対象にすらなり得ていない様子で、砂漠に水を撒くような徒労感に襲われ、布団をかじって涙にくれる。しくしくしく。

 藤田宜永さんのモダン東京シリーズ第2卷、「美しき屍」(朝日新聞社、2400円)を読了。むかし文庫で出た本がハードカバーで再刊される例ってあんまり聞かないし、その結果値段が2倍とか3倍に跳ね上がっていることが癪に触るけど、今となっては手に入れるのが難しい本なので、給料日に近づくほどに薄さを増しつつある財布の中身を気にしつつ、やっぱり購入してしまった。「美しき屍」が、「モダン東京」シリーズの実質的なオープニング作品として発売された88年頃は、おそらく今ほどにはミステリーが沸き立っていなかっただろう。忘れ去られていく文庫や新書のミステリー作品が多い中で、見事復活を遂げることの出来た作品だけに、再び絶版になることなく、広く読みつがれていって欲しい。表紙の絵もカッコいいしね。

 こちらも鮮やかな復活劇。ゆうきまさみ幻の傑作「鉄腕バーディー」(小学館、1200円)が、10年近いブランクを経て初めて単行本としてまとまった。「増刊少年サンデー」に連載されていた作品だったけど、前後して「週刊少年サンデー」に連載された「究極超人あーる」が人気を博し、その後に続いた「機動警察パトレイバー」が漫画はおろかアニメや映画としても大成功を収めたにも関わらず、「鉄腕バーディー」だけはいっこうに単行本化がなされなかった。5年ほど前に1回だけ、雑誌綴じの形態でまとまったことがあったけど、うっかりして買い逃してしまいそれっきり。2度と会えないのかと思っていたバーディーの勇姿に再びまみえることができ、布団をかじりながらうれし涙を流す。おーんおんおん。


【7月17日】 「マルチメディアソフト振興協会」(MMA)がまとめた「マルチメディア白書1996」の発表会見を聞きに事務所のある虎ノ門へと向かう。熱波の中を汗だくになりながら歩いていると、胸のあたりがじくじくと苦しくなってきて、このまま行き倒れになった腐るのが早いだろーなと不謹慎な心配をする。

 MMAの事務所は虎ノ門の路地裏のビルの8階にあって、開けっ放しになったドアから、おじいさんやらおじさんやらおにいさんやらおねえさんが、忙しくもなさそうにパコパトをキーボードを叩いている姿が見えた。会議室に入って白書をもらい、バラバラと中身を見る。マルチメディア関連団体の項に、通産省傘下の団体であるMMAの敵対勢力?ともいえる、郵政相傘下の団体「マルチメディア・タイトル製作者連盟」(AMD)の名前もしっかり載っていたのを確認する。

 「インターネット」と並んで、これが付けば段が1つ2つ上がるのは確実といわれている「マルチメディア」というキーワードの付いた会見であるにも関わらず、出席している記者の姿がまばらなのは何故だろーか。「通商産業白書」とか「通信白書」とかいった、官のまとめる白書に比べるとバリューが低いとゆーことなのか、それとも中身が報じるに値しないとゆーことか。もしかしたら新聞社に連絡していないだけかもしれない。18日から店頭に並ぶ予定。CD−ROM付きで9800円もするが、「インターネット」と並んで、これが付けば売り上げが1、2割は上がることは確実といわれている「マルチメディア」というキーワードの付いた本だから、きっと適当に売れるんだろーな。

 平井和正さんの「月光魔術團」の第2卷「素敵なフェイク」(アスペクト、880円)を読了。1卷同様、明るいエッチなエピソードが展開されているが、話が向かっている方向は見えてこないし、CIAのよーな敵対する勢力も未だに姿を現さない。このまま伝奇スーパー学園ラブコメディーで進むとはとうてい思えないが、次の卷あたりでどかんと事件でも起こして、話を転がして戴きたいものと切に願う。帰りがけに「新世紀エヴァンゲリオン」のフィルムブック第8卷(角川書店、590円)を購入。第7卷は第拾九話だけを収録した贅沢な造りだったが、第8卷は第弐拾話から第弐拾弐話まで3話分を収録する、フツーの造りになってしまった。ひたひたと近づく第弐拾五話、第弐拾六話。いったいどんなフィルムブックになるのだろーか。楽しみっちゃー楽しみ。怖いっちゃー怖いね。


【7月16日】 我が母校(高校)の大先輩であることが判明した太田忠司さんを応援するべく、勝手に氏の代表作と思いこんでいた「新宿少年探偵団」&「怪人大鴉博士」(講談社ノベルズ、各780円)を買い込む。あとがきによると、代表作というのは僕の思い違いで、どうやら太田さんの著作のなかでは相当に異色な作品らしいが、僕のようなエンターテインメント一途な人間には、こちらの方が口にあったみたい。電車のなかや仕事の合間を利用してたちまちのうちに「新宿少年探偵団」を読み終え、続けて第2作の「怪人大鴉博士」も読んでしまった。なるほど「少年探偵団」対「怪人20面相」の戦いを、現代の新宿を舞台に展開させてらこんなかんじになるのかなー。それに加えて荒俣チックで加門チックな要素もパラリパラリとまぶされていて、面白いことのこの上ない。キリン化を招くシリーズがまた増えてしまった。

 大先輩に敬意を表した関係で、平井和正さんの「月光魔術團」の第2卷「素敵なフェイク」(アスペクト、880円)はまだ触りだけしか読んでいない。第1卷にもまして陽気なエロチシズムが蔓延していて、楽しめそうな雰囲気があるが、1点、先にあとがきを読んでいて、気になる言葉を見つけた。「わたしも○○抑圧が原因でこれまで交誼のあった出版社と次々に袂をわかってきた。この「月光魔術團」もそうである」。この言葉が、最初に出す予定だった出版社から巡りめぐってアスペクトにたどり着いたという意味ならいいが、意図的とはいえ伏せ字を頻繁に用いるような事態が、エスカレートして進むようなことになれば、平井和正さんの言霊が、いずれアスペクトとも袂をわかつことになりはしまいかと危惧する。あと、あとがきに筒井康隆さんをめぐる会合を記した1文があって、「秘密」という言葉の意味を考えさせられた。

 「JALInet」が立ち上がったようなのでのぞいてみたが、筒井さんの新作という「越天楽」は、ほんのさわりだけしか出ていなかった。想像するにこの作品は、相当数が書き溜められていると「聞いて」おり、小出しになんかしていないで、早くすべてを見せてくれればいいのにと思う。小林恭二さんのページには日記が掲載され始めた。面識のある巨大新聞社の文芸担当記者の名前が出ていたりして、読書好きの人ならそこそこ楽しめる内容になっているが、プロの作家が個人的に始めていた日記群に比べると、まだ自我の部分が爆裂しきっていないような気がする。15日の会見によれば、薄井ゆうじさんは自費で作品を英訳してネットにアップするとのこと。プロという特権に胡座をかかず、自作のプロモートのために労を惜しまない態度に感銘を受ける。


【7月15日】 あまりの暑さに外に出ると死ぬかもしれないと思い、もっぱら届いたリリースの処理をして日中をしのぐ。リクルートが10月下旬に、いよいよインターネット関連発雑誌に参入すると発表。この新雑誌「ACARA(あちゃら)」は、もっぱら読者投稿によって人気のホームページをつのり、それをジャンル分けして雑誌に掲載すると同時に、ディレクトリーサービスのようにインターネット上にも公開するという。「じゅげむ」でゲーム情報を募り、「じゃまーる」で個人情報を募って雑誌の形にまとめあげ、情報が集まったその上で別の商売を立ち上げる手法を、ホームページという新種のコンテンツにも応用したものといえ、さすがリクルート、その辺りはぬかりがないなーと感心する。成功するかどかうかは別だか、なんか成功させちゃいそーな気がする。メジャーが勝つのって趣味じゃないけど、仕方がないのかなー。

 暑いといっても1日会社にこもっていては仕事になるはずもなく、熱波渦巻き飛ぶ鳥も燃え出す天候の中を、帝国ホテルへと向かう。筒井康隆さん、堀晃さん、小林恭二さん、薄井ゆうじさん、佐藤亜紀さんといった「ASAHIネット」でお馴染みのメンバーが発起人となって、インターネット上に文芸サーバー「ほら貝」じゃなかった「JALInet」を立ち上げるとゆー発表で、会見には堀さんを除く4人が出席して、結構なにぎわいを見せていた。

 「JALInet」自体は、あくまでも作家の自主的なホームページという建て前だが、実際の運営は「ASAHネット」を運営しているアトソンが代行することになる。「ASAHIネット」といえばこのところ、自社のサーバーに置いてある個人ユーザーのホームページのうち、自ネットの会員規則に触れるものを強制的に削除する行動に出ているが、「JALInet」の場合は、あくまでも別のドメインのサーバーであり、運営の主体も会員規則に拘束されない作家側にあるため、例えば作家がアップした作品に、社会通念に照らし合わせて不穏当だったり挑発的な部分があって、その点を敵対する勢力が突いてきたとしても、途端にホームページを削除するような行動には出ないという。

 悩ましいのは、作家ホームページとはいっても、作家の自宅にサーバーが置いてあったり、作家個人がホームページの制作を手掛けているわけでなく、大部分をアトソンが代行しているという点で、敵対する勢力の攻撃が出版社に向かったように、アトソンに対して「ハードディスクを割にいく」だの「プログラムに侵入してめちゃくちゃにする」だの「社長を簀巻きにして裏の運河に沈める」だの言われたときに、どこまで作家を護るのか、あるいは護らずすべて作家にまかせるのか、いま1つはっきりしていない。こうした事態にならないことが、理想として素晴らしいことは解っているが、ヤジウマ根性旺盛な新聞屋としては、ついつい騒動を期待していまう。いかんなあ。

 内田康夫さんの「王将たちの謝肉祭」(角川書店、1600円)を読了。なんだかんだいっても上手い。内田さんや西村京太郎さんや山村美沙さんや赤川次郎さんが好きって新入生が来た時に、ワセダミステリクラブや京大ミステリ研究会ではどんな反応を見せるのだろーかと考える。


【7月14日】 太田忠司さんのホームページに出ていた、氏のプロフィールの出身高校を見て驚く。僕の母校ではないか。名古屋の学校群にあって、我が母校(つまり太田さんの母校)はいまいちマイナーな学校で、歴史も浅く、有名人や著名人を輩出したといった、華やかな話は一切ないと思っていた。清水義範さんや森博嗣さんといった地元出身作家を依怙贔屓してきた僕としては、これからは太田さんも贔屓して贔屓して引き倒すことにする。

 とゆーわけで、図書館に行って太田さんの本を探すが、さすがに人気があるためか、はたまたその逆なのか、2冊しか残っていなかった。うち1冊が「新宿探偵団」の続編だったため、残る1冊「歪んだ素描」(角川ノベルズ、760円)を借りて帰る。いっしょに清水義範さんの「バールのようなもの」(文藝春秋、1600円)、同じく清水さんの「新築物語」(角川書店、1500円)を借り、「バールのようなもの」に入っていた短編「愛知妖怪事典」に衝撃を受ける。僕の生まれ育った「天白」は、実は「妖怪」の名前だったのだ。区内を流れている「天白川」は、1年に1度大晦日の夜に立ち上がって、天を真っ白に覆うのだとか。あな恐ろしや。今年の年末には、「紅白」なんか見てないで、外に出て川の側まで行って、立ち上がる妖怪「天白」を見ることにしよー。

 森高千里さんの新譜「TAIYO」を買って、日がな1日聴いている。あいかわらず自分で、ベタベタとした鼓笛隊のマーチのようなドラムを叩いているのは弱りモノだが、ファンなので許す。やっぱり依怙贔屓なのである。楽曲では「GIN GIN GIN」でしっかり「サントリーICE GIN!」と歌っていたので驚く。テレビでは商品名を連呼していたCMソングでも、アルバムに入れる時はふつー、商品名を別の歌詞に置き換えるものだが、この曲はやはり、ほかに置き換えようがなかったのだろー。「HEY! VODKA」でもやっぱり「サントリー ICE VODKA」と歌っているから、1枚で2曲、サントリーの宣伝をしていることになる。喜べサントリー。「モルツ」は飲まないけど。

 ジャケットの写真を見て、美人は舌を出しでも美人なのだとゆー自明の理に改めて気が付く。「めざましテレビ」のテーマ曲になっている「ララ サンシャイン」を通して聴き、カラオケでも大丈夫なよーに頭にたたき込む。ほぼ完璧。聴きたい人はいませんかいませんねいるわけねーか。「長男と田舎もん」は、伊秩弘将さんの楽曲の良さと森高さんのぶっとんだ歌詞がヘンにマッチしていてスゴイ。でもドラムはやっぱりベタベタしてる。うーん、困ったなあ。猫の首に鈴を付けられる人はいないのか。


【7月13日】 アシックスの代理店業をしていたフィル・ナイトが始めた会社「NIKE」が、緻密なマーケティングと派手な広告・宣伝活動で大躍進していく様を描いた、ドナルド・カッツの「ジャスト・ドゥ・イット」(早川書房、2200円)を読了。うーん、ナイキって宣伝ばっかの浮っついた会社かとばっかり思っていたら、とっても真面目な会社だったんだなー。ナイキのためなら火の中水の中。巨人アディダスを倒し、仇敵リーボックを葬りさって、世界ナンバーワンのシューズメーカーとして君臨し続けるナイキは、日本人なんて目じゃないくらいに、ワーカホリックな奴らが支えていたのであった。それにしてもフィル・ナイトが大前研一のファンだったとは。あのナイキの創業者が信奉するくらいだから、大前研一ってやっぱすごいんだなーなどと、ナイキの作り出す神話に目がくらみはじめる。とっても不本意。

 不本意といえば、ついに内田康夫さんの本を読んでしまった。流行モノには手をださないよーにしよーと、固く心に決めていたのに、将棋業界を舞台にした話とゆーことで、帯の羽生善治七冠王の「特別推薦文」に惹かれて、ついつい手に取ってしまった。新刊といっても、昔出た本を加筆・訂正の上、再刊したとゆーもので、将棋が大ブームとなっている時に再刊するなんて、内田康夫さん、これでなかなかの策士だなーと感心する。伊達に帽子は被っていない。さてこの「王将たちの謝肉祭」(角川書店、1600円)、「なんとかかんとか殺人事件」とゆータイトルではないし、浅見光彦も出てこないから、内田作品としては本流本業ではないと思われるが、冒頭から結末まで、いっきにページをめくらせる腕前から、内田さんの人気の秘密の一端を感じる。

 従姉妹の結婚式に出るために乃木会館へ。親戚一同の集う中を、後ろを縛った長髪でウロつくことになったので、緊張のおももちで会場に入るが、それほどびっくりされなったので拍子抜けする。こいつならこれくらいヘンでも不思議じゃないと、半ばあきらめられているのだろーか。さてこの従姉妹の結婚式、名古屋出身の嫁を東京勤務(ホントは幕張だけど)のダンナがゲットしたとゆー構図になっていて、今日の良き日を迎える前に、超巨大な結納返しが名古屋−東京間を移動したのだろーかと想像する。それから紅白の垂れ幕がかかった嫁入り道具のトラックも。きっと今頃、新居の方は秘密の嫁入り道具に占領されて、もの凄い状態になっているに違いない。


【7月12日】 休刊日前の金曜日くらいはゆっくりしたいなーと思っていたのに、インターネット絡みの発表が目白押し。燦々と降り注ぐ陽光の下を、ネイビーのスーツを着込んで汗だくになりながら、会社と発表会場と行ったり来たりする。

 午前中はNECの発表会。パソコン通信サービスの「PC−VAN」とインターネットサービスの「mesh」をいっしょにした「BIGLOBE」ってサービスが始まるよって内容。早い話が、ひとつのIDとパスワードで、「PC−VAN」も「mesh」も使えるよーにしてしまおーってことね。面白いのが、米OnLive!Technologic社の技術を使った3次元ボイスチャットサービスを始めるってことで、蜜柑みたいなじゃがいもみたいなアバター(分身)を駆使して、マイクとスピーカーを通じて相手と会話できるよーになるんだとか。なんかトラフィックに負荷がかかりそー。

 午後は富士通の発表会。シャープと共同で、インターネットを使ってテレビ番組情報を提供しますって内容で、どーして「TVガイド」とかじゃなくって、富士通とシャープなんだろーと不思議に思う。シャープが予定しているインターネットTVへの参入を見越して、番組表なんかをインターネットから取ってきて、その番組表に添付されたデータから、TVの予約機能を起動できるよーな仕組みでも考えているのだろーか。そんなことになったら、なんだか解らないうちに普及してしまった「Gコード」も、いよいよ年貢の納め時だろーね。

 会見の合間を縫って、「ギャラリー美遊」で開催中だった、「宮田二郎」で有名な鳥光桃代さんの個展に足を運ぶ。「宮田二郎って誰? 田宮二郎なら知ってるけど」って人のために説明すると、「宮田二郎」とは鳥光さんが制作した、すだれ頭の背広来たおじさんのロボットが、地面を匍匐全身するとゆー「芸術作品」のこと。ちょっと前に大崎の「O美術館」に展示されていて、そこで初めて動く「宮田二郎」を見ることができたけれど、まっすぐ進まずだんだん右方向へズレていってしまって、追っかけられるようで怖かった。キュレーターの人が元の位置に戻すために持ち上げよーとしたけれど、なにせ相手は鋼鉄を歯車とバッテリーのカタマリ。数人がかりでようやく持ち上げることができた。

 個展は「宮田二郎」ではなく、新キャラ(?)の巨大なウサギのフーセンだとか、ウサギの人形だとか、インコの人形だとかが出品されていた。コミック的なキャラクターを巨大なフーセンにして屋内に飾るって手法には、前に村上隆さんが谷中にある風呂屋の跡を利用したギャラリーで開いた展覧会で見た、「DOB」の巨大なフーセンと相通じるものがある。天井に頭がつかえて、ちょっとうつむき加減になったウサギのフーセンを見ているうちに、魔法のキノコをかじって家いっぱいに大きくなってしまったアリスを思い出す。「不思議の国のアリス」では、ウサギは時間がないって忙しそうに動き回り、アリスを不思議の国へと引っぱり込む狂言回し。ギャラリーにへたりこんだウサギのフーセンは、忙しくもないのに忙しそうに動き回って力つき、ウツロになってしまった今のニッポンの人たちの姿を、投影したものなのかもしれないなーと勝手に思う。


【7月11日】 小田急線に乗って東北沢へ。プロデュース・センターという会社に行って浜田哲生さんとゆー人に会う。この名前を聞いてピンと来る人は相当のビートルズ通。とゆーのもこの会社、ビートルズ関係のイベントや書籍・雑誌の出版、それからファンクラブの運営などをやっている会社で、浜田さん自身も音楽業界、ビートルズ業界では結構名前の通った人とゆーことらしい。ビートルズをほとんど聴いてこなかった僕なんて、ビートルズ命の浜田さんから見れば、きっととんでもない奴に写ったことだろー。

 20代後半から30代前半の人間が、ビートルズと出会うきっかけとゆーか、ビートルズを意識するよーになったきっかけは、おそらく80年のジョン・レノンの射殺事件だったのではないだろーか。当時、テレビのニュースや新聞の1面やほとんどすべての雑誌が、この事件を大きく、そして長い間報道し続けていた。古くからのファンの中には、放心状態となり、愕然とし、何も手に付かなかったとゆー人も少なくなかった。だが、ビートルズから隔絶されていた人間は、ジョン・レノンの死から得たのは、「そんなすっげー人だったの」とゆー程度の認識だった。そしてあまりの報道の過熱ぶりに、「ホントにすっげー人だったんだ」と、認識を改めるにいたった。そこから「ビートルズ」を聞き始めたか否か。残念ながら僕は、ビートルズを聞き始めることにはならず、当時流行っていた「イエロー・マジック・オーケストラ」から山下達郎、大瀧詠一、はっぴいえんどといった方向へと流れて行き、結局ビートルズから離れたところに今も生きている。ビートルズを聴いてこなかった僕は不幸せだろうか。それともジョン・レノンの死を悲しまずにすんだとゆー点で幸せだろーか。

 午後はパレスホテルに行って毎日新聞社の会見。狭い部屋にどえらげにゃあぎょーさんの人が来ていて、遅れて来たため座席に座れない人もいた。会見の中身は、「ニフティサーブ」に認証やら課金やらをまかせ、毎日新聞のフルテキスト記事はホームページ上に掲載して、ニフティから入った人だけに、有料で情報を発信していこーとゆーもの。前にザウルスで150字程度の毎日新聞の情報を見られるようにした毎日とニフティが、もう1つ新しいサービスを始めることになった。それにしても毎日新聞、一方ではジャストシステムでフィルタリングサービスを始めるし、ホームページのジャムジャムでも、記事情報やら何やらかにやらを発信している。既存のインフラを利用して、何ができるかを考え抜いた上で、着々と電子新聞事業を進める毎日新聞の原動力は、やっぱり経営への危機感なのだろーか。見習わんといかんなー。


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