縮刷版96年4月下旬号


【4月30日】 ひねもすのたりの日本列島を震撼させるまねっこおじさんのゴールデンウイーク特別企画は、ご本人の都合もあってわずか2日間で終了。もしかしたらまねっこされるんじゃないかとウヌボレてこんなモノを用意しいた僕は、ただの大たわけではないですか。
 でもまあ、こんな技とかこんな技とかを覚えることができたのでよかったよかった。2階に上がってハシゴを外された気分だけど、下から石をぶつけたり水をかけたりしないでね。
 世間はゴールデンウイークで10連休とかいっているのに、いちおー日刊で新聞を出しているので、今日も出勤して新聞を作る。世間の会社は大半が休みで、発表も会見もほとんどないため、届いた郵便物やため込んだプレスリリースの中から面白そうなものをみつくろって記事を作る。今日は旅行新聞社から届いていたハガキをもとに、インターネットにオープンした旅館・観光関連情報を集めたホームページの記事を書く。ほかにはディズニーアニメのビデオ「眠れる森の美女」が7月に再び発売される話とか。電話も鳴らずテレビはTBSのことばっかりで、突発ニュースもないままダラダラしながら1日を過ごす。
 届いていた荷物にインプレスの「インターネットマガジン」があった。アル原を書いたわけでも広告を出しているわけでもないのに、なぜか先月から突然僕のところに見本誌を送って来るようになった。とりあえず有り難く頂戴してなかを見ると、6月号もやっぱり分厚い分厚い。半分とはいわないまでも3分の1は広告じゃないかと思えるくらいで、いっしょに発売になったBNNの「インターネットライフ」の3倍近くはあるんじゃないだろーか。そーいえば「SFセミナー」でお目にかかった「インターネットライフ」編集の高橋まこりんさんは、本気とも冗談ともつかない口調で「カバンに入れると重たいでしょう」と「インターネットマガジン」のことを話していた。記事自体は読者層が違うためあまり比べられない(と処世術)。技なしのホームページを作ってる身には「インターネットマガジン」の特集は高尚すぎるのだけれど、6月号に限っていえば美術館関連のホームページ特集はとてもとても参考になった。

【4月29日】 やっぱりいい天気。本を漁りに神保町まで出向く。靖国通り沿いを歩いていると、日本文芸社の隣のビルの3階に、新しい古本屋がオープンしていたのを見掛けたので中をのぞく。「アニメ」とか「映画」とか「写真集」とかが品揃えの中心。宮崎駿関連の古書が数万円の値段で売られているのを見ると、あん時ムリしても買っときゃ良かったと大いに悔やむが、買っていたら売るわきゃないので、数万が数10万円でも関係ないっちゃー関係ない。荒木経惟の写真集「恋人たち」「アラキンZ」なんかもあったが、やっぱり数万円で手が出ない。
 こぎれいな店内の奧の棚に「ハヤカワ・SF・シリーズ」、通称「銀背」が100冊ばかり並べられていて驚く。誰か著名な方の放出品だろーか。ほとんどが初版なのに、どれも程度がよい。値段も500−800円と良心的。記念すべき3001番の「盗まれた街」(フィニイ)も初版があった。ほかにも貴重な本が混じっているかもしれないが、書誌には詳しくないので解らない。せっかくなので、昨日の「SFセミナー」で声だけの出演となった今日泊亜蘭御大の「光の塔」を800円で買う。
 古本屋の店員が「知っている人が、数カ月前からセキが止まらなくって」とゆー話をしていて、とても気になる。僕も数日前からセキが出てしょうがない。数カ月続いていた腹痛の方は、医者にもらった胃腸薬と眠り薬で収まった。胸の方の痛みも神経から来ているのかと思っていたが、相変わらず続いているので違うみたい。ゼンソクとか乾湿性肺炎とか結核とかいったよからぬ病名が頭をよぎるが、熱はないのでとりあえず病院にも行かずに様子を見ている。そーいえば周りにセキをしている人が多い。むかし「SFマガジン」で読んだコラムに出ていた「在郷軍人病」の話を思い出し、「復活の日」とか「ブルーシティー」のよーな、よからぬ病気がはやりはじめているのかと気にかかる。

【4月28日】 今日もいい天気。「SFセミナー」を水道橋まで聞きに行く。「日本SF大会」に出たことも、同人誌を出したことも、大学でSF研究会に入ったこともない身にとって、「SF」な人々が3人以上集まっている会合に出るのは、これが始めての経験になる。
 なぜ出たのか。岡田斗司夫さんが看破したように、理由の大半は「新世紀エヴァンゲリオン」だ。集まっている人の少なくとも1割が、「エヴァ」の監督、庵野秀明氏が出席するとゆー理由で、朝10半から午後5時半にまで及び、その間ずーっと椅子に座っていなくてはならない、アニメに関するお喋りも出来なければコスプレも出来ないハードなSFイベントに参加したに違いない。
 もっともアニメ者ではあるけれど、それ以前にSF者だった自分にとっては、1時限目の大野典宏さんによるロシアSFの最先端「ターボ・リアリズム」に関する講義は、ロシアSFに関する興味を引き起こしてくれたし、3時限目の梅原克文さんによる講義「くたばれ、SFイデア主義」は、観念的・思弁的な方向に行ってしまった日本のSFを否定し、その元凶であるJ・G・ヴァラードを「1万回死刑にしても足らない」とぶった切り、経済的・商業的に瀕死の日本SFを生き残らせるためには、商品価値至上主義のマーケットに合ったSFを(SFというジャンル分けにも固執することなく)確信犯的に生産していく必要性があるということを教えられ、楽しめた。
 5時限目の伊藤典夫さんによる「『アインシュタイン交点』をめぐって」でも、SFのことだったら何だって知っていそうな伊藤典夫さんから「ヴァラードって、どこが面白いのか解らないんですよ」とゆー発言が出て驚いたが、ホント、解らないものを解ったフリして気取っているより、面白いものをオモシロイといったほうが胃腸にも血管にもいいからね。
 さて「エヴァ」だ。2時限目の岡田斗司夫さんと大宮信光さんとの対談「想像力という名のシヴァ」は、はじめから「オウム事件」に関する話題になることが決まっていたから、たとえ岡田さんが「エヴァ」を作ったガイナックスの創設メンバーであっても、「エヴァ」についての話題は出なかった。おそらく集まっている人の2割(さっきより増えた)が待ち望んでいた講義、4時限目の「『新世紀エヴァンゲリオン』の世界」は、庵野監督のほかにアニメ誌編集の小黒祐一郎さん、説明無用の大森望さんが登壇し、もっぱら大森さんのリードで庵野監督が答えていくパターンで進んだ。ハタで見ていると「腫れ物」に触るようなトークの進め方に、隔靴掻痒の気分を味わっていた聴衆も多かっただろー。だが、開始30分を過ぎたあたりから問題の第弐拾五話、第弐拾六話へと話が及び、時間と人材があまりにも不足していたこと、精神的に追いつめられていたこと、そのなかで可能な限りの表現をしようと模索したことが、ラジオも活字も通さない生身の監督の口から語られると、「ようし解った。次はガンバレ」とゆー気持ちになってくるから不思議な(いー加減な)ものだ。
 「SFセミナー」は夜の部に続いていくのだけれど、僕はお金がないのと恥ずかしいのでパス。大森さんやBNNの高橋誠さんといった、インターネット上で名前を見掛ける方々に挨拶できたのは収穫。他にもSF界、ネット界で有名著名な方々が大勢来ていたよーだけど、やっぱり恥ずかしいので声はかけられなかった。こんなんでよくブンヤやってると今さらながらあきれる。

【4月27日】 いい天気。「ルパン3世DEAD or ALIVE」を銀座まで見にいく。本屋で「ぴあ」を立ち読みして時間を確認。ついでに「SFマガジン」と「グインサーガ」(栗本薫)の51巻とキム・スタンリー・ロビンスンの「永遠なる天の調」(創元推理文庫、850円)を買って行く。「SFマガジン」に載っていた、安永航一郎さんの描く「第35回日本SF大会コクラノミコンのページ」の漫画が傑作。「おしおきよ」ってポーズをする女性自衛官は果たして実在するのか?航空自衛隊芦屋基地見学は、それを見に行くだけでも12分に価値がありそーだと思う。藤田尚さんのコラムには「使徒不明! 人類ポカン計画!? 怒りにもゲンドーがある!!」の傑作なお言葉が。水玉蛍之丞さんの漫画にも「エヴァ」絡みのネタがあり、あの結末が、関係者・無関係者ご一同様に、今なお大変な動揺を与えていることが解る。
 開場まで時間が少しあったので、西村画廊で荒木経惟さんの個展「FLOWERS」を見る。1枚20万円でプリントしてくれるとゆーことだったけど、ネットのやりすぎでお金が極端に不足していて、涙をのんであきらめる。さて「ルパン3世」。僕の立場を明確にしておくと、「カリオストロの城」が唯一絶対の「ルパン3世」ではないし、旧作「ルパン3世」だけがルパンだと言い張る気もない。大泥棒のルパンとその相棒次元大介、つかずはなれずの石川五右衛門に謎の女峰不二子、そしてルパン逮捕に地の果てまでもの銭形警部の5人さえ出ていれば、それが「ルパン3世」なのだと思っているから、話の出来不出来に関わらず、これまで作られたどんなテレビもどんな映画も、楽しく喜んで見てきた。そんな八方美人の僕だから、信じてもらえないかもしれないけれど、今回の「ルパン3世DEAD or ALIVE」は、まぎれもなく大傑作であると叫びたい。
 目的のためなら女だって騙す悪漢なのに、罪のない人を見殺しにするようなことは絶対にしない正義感でもある「ルパン3世」を僕は待っていた。ストーリーのほころびは幾つもあるし、探せばアラは幾つも見つかる。だけどもルパンはあくまでも強く、次元も五右衛門も不二子も銭形も、それぞれの役割をきっちり果たしてくれているから、最後には必ずルパンが勝つだろうと思って安心して見ていられた。栗田貫一も上手くなった。栗田がマネしているルパンだと、はじめて意識せずに見ることができた。次回作が楽しみ。モンキー・パンチさん、また監督しませんか。

【4月26日】 もしかしたら羽生7冠王の姿を見られるかもしれないと、朝からホテルのロビーをうろうろするが、対局疲れからかまだ起き出していないみたいで、関係者らしき人は見掛けなかった。
 9時過ぎにホテルを出て、「伊勢戦国時代村」にバスで向かう。新しくオープンした「安土城城郭」をお披露目するために、東京、大阪、名古屋から主催者が招いた記者、編集者らは総勢120人あまりで、それほどまでに力を入れて見せる施設とは、いったいどれほどのものかと、期待半分、冷やかし半分の気持ちで目的地までの時間を過ごす。「伊勢」に「安土城」なんてヘンという声もあるだろーが、何せ相手は「日光」に「江戸村」を作った会社である。「伊勢」に「安土城」を作るくらいは平気の兵座でやってのける。さて「安土城」。史料のほとんど残っていない城を再現するには、伝承や研究に頼らなくてはならないが、再建された城は、そんな説の主流となっている、黄金の天守閣と瑠璃色の屋根瓦を持った荘厳華麗なつくりとなっていた。完成から日が浅いため、どこか塗り治したばかりの公園のベンチを思わせるチープさがあったけど、真下から見上げると、なかなかの迫力を備えていた。
 内部については、現代のお城らしく、ハイビジョンやら立体音響やらを駆使した劇場になっていて、小学生や中学生なんかは、キャアキャア行って喜びそうな仕掛けになっていた。資料館になっている名古屋城とか小田原城とは大違い。犬山城は行ったことがないから知らない。岡崎城はどーだったっけか。何といっても注目の最上階は、4方の壁と天井を金箔で被った20畳ほどの部屋になっていて、案内の人に「手で触ってはいけません」「鞄を触れさせてもいけません」とやかましく注意される。壁に空いた窓から見える伊勢湾は、あいにくとカスミがかかってぼーっとしていたが、晴れていたら黄金に青が映えて綺麗だったかもしれない。窓を全部締め切って、黄金の部屋でひとり、1日中ぼーっとしていたら、果たして気持ちが落ちつくだろーか、それとも気持ちが高ぶるだろーか。10円玉を握りしめて削りはじめるかもしれないなー。

【4月25日】 予定は願望であって現実にはあらず。以下「4月25日号決定稿」です。

 新幹線で隣りに座ったのは、「伊勢戦国時代村」に同じ団体で取材に赴く某専門紙の男性記者。通路を挟んだ反対側も、前後の座席も男性記者ばかりで、これは主催者図ったなと怒り心頭に達する。名古屋駅から近鉄に乗り換えても状況は変わらず、仕方がないので文庫と雑誌と新聞を読んで過ごす。しかし鳥羽について怒りはいっぺんに吹き飛んだ。宿泊先のホテルで、なんと将棋の「名人戦」が行われているではないか。対局者は今とときめく羽生善治7冠王と、羽生のライバル森内俊之8段。部屋に荷物を置くのもそこそこに、大盤解説場へと潜り込み、佐藤康光8段と中井広恵女流王将の解説を聞く。
 対局が夕食休憩にはいり、こちらも主催者側との宴会があったので、やむを得ずそちらに出席する。女性編集者の浴衣の裾割れ姿などは当然のごとくして一切ない。つまらないので食事もそこそこに、再度大盤解説場へ駆けつけると、いよいよ勝負は佳境へと入っていた。詰むや詰まざるやの攻防を固唾をのんで見守るが、新たに解説役となった小林健二8段の話によれば、夕休前の森内8段の手に疑問手があって、これからはどう進んでも「羽生有利の可能性が大きい」とのこと。事実、森内が攻めきれないまま、羽生が怒涛の攻めに転じ、結局羽生勝ちで午後10時前に投了となった。せっかくなので、解説場の前で売っていた羽生7冠王達成記念の扇子とテレホンカードのセットを買って、部屋に帰って寝る。鳥羽までいって扇子を買って帰る羽目にはるとは思わなかったが、しかしまあ、羽生が7冠でいる期間は、長くてあと1−2年といったところだから、その間にしか作られない貴重な品物だと思えば、気も紛れる。

【4月25日】 出張で三重県の「伊勢戦国時代村」に行ってます。泊まりだから日記を更新できないので、新聞っぽく「予定稿」を入れておきます。

 『午後1時過ぎの新幹線で名古屋へと向かう。隣りの席に座った美人は、同じ一行で「伊勢戦国時代村」の取材におもむく、超一流雑誌の敏腕ライター。席につくやいなや、おもむろに鞄からノート型パソコンを取り出して、カチャカチャとキーボードを叩きはじめた。白魚のような指が忙しくキーボード上を行き来する。たちまちのうちに原稿を3本やっつけると、モニターをパタンと閉じて、ついでに目も閉じて、すうすうと寝息をたてはじめた。徹夜続きの取材が続き、疲れていたらしい。時折ガタゴトと揺れたり、売り子が声を上げて通り過ぎる新幹線の中でも、微動だにせず眠りこけている。寝顔をじっと見つめると、ほんのりと上気したほほに、うっすらと産毛が生えているのが見えてきた。閉じた瞼から見えるまつ毛の美しいカールは、マッチ棒を3本、その上に乗せることができるだろう。ほんの少しだけ開いた唇からは、輝くばかりに白い歯が、キュートな八重歯といっしょに除のぞいている。指を伸ばして、その唇に触れたい衝動をこらえながら、僕は名古屋駅までの2時間を、彼女の寝顔をじっと見つめて過ごした。
 目を覚まさない彼女に小さく声をかけ、名古屋駅にいっしょに降り立った。カメラが入っているのだろーか、大きめのダッフルバッグを肩から下げて、駅の階段を僕とならんで降りた。近鉄名古屋駅から鳥羽駅に向かう車両では、少し離れた席に座ることになってしまったが、途中、手洗いに立ってデッキで煙草をふかしていると、彼女も手持ちぶさただったのだろーか、細身のライターと、そして「ハイライト」の箱を手に持って、デッキへとやってきた。「さっきは起こして戴いて、ありがとうございます」。警戒しているのではないだろーが、それでもよそ行きの口調で僕に向かって礼を言う。「行く場所は解ってましたから」と僕。こちらは緊張で声が震えている。手にもった煙草が灰をパラパラと落としながら短くなっていくのに、とても気が回らなかった。指の火傷は2ー3日はヒリヒリするだろー。
 夜になって宴会がはじまった。浴衣に着替えてくつろぐ男性の取材陣とは対照的に、女性の取材陣はみな、ジーンズやチノーズといったパンツ姿で、上もシャツだったりトレーナーだったりして、浴衣の裾から見える柔肌、なんて感動的(官能的)なシーンはとても期待できなかった。列車の彼女は遠くの席で、もしゅもしゅと宴会料理を食べている。立ち上がって部屋に向かう機会を逃すまいと、チラチラと横目で追っていると、「飲んでないですねえ」と顔見知りの新聞記者がコップになみなみとビールをついで差し出して来た。遠慮できず2杯、3杯と飲み干すうちに、やがて意識が遠くなった。彼女が消えたのにも、もちろん気が付くはずがなく、僕は酩酊のうちに、貴重すぎる夜を無駄にすることになった』  

なんてこたあ、絶対にないね。

【4月24日】 東京臨海副都心にはじめて足を踏みいれた。「タイム24」にある情報サービス産業協会の発表に出るためで、慣れない道程ゆえ、何か事が起こったら大変と、ちょっと早めに家を出た。これが正解だったと後に知ることになる。さて、東京臨海副都心には、発表会が始まる1時間前には着いてしまって、「ゆりかもめ」のテレコムセンター駅の近所を散歩したり、ベンチ缶コーヒーを飲んで時間をつぶす。
 近所にあるビルはほとんどが空っぽ状態で、レストランやカフェテリアなんてものもほとんどない。テレコムセンターにあるコンビニだけが、唯一まともな商店だから、お昼どきともなれば近所のビルから、オアシスに集まるキャラバンのように(誘蛾燈に集まる虫のように)、わらわらと人が集まってにぎわうのだろー。それにしても凱旋門のよーな形をしたテレコムセンタービルの、天井付近に黄色のカタカナで「テレコムセンター」を書くのはやめて欲しい。あんましみっともよくないもん。
 「ゆりかもめ」は相変わらずの故障続きで、今日もお昼ちょい前か止まったみたい。発表会にぜんぜん人が集まらなから、おかしいなーと思っていたら、事務局の人が「ゆりかもめがとまってしまってまして」と申し訳なさそーな顔で教えてくれた。帰りがけには動いていたからよかったけど、降り立った新橋駅にはまだ何100人も行列ができていた。ここはディズニーランドか。それとも豊島園か。でも「ゆりかもめ」、1番前に乗ってると、景色がよくってうれしい楽しいおもしろい。地下鉄の運転席から見える風景を撮ったビデオ(つまりトンネルと駅の風景ね)が売れているご時世、「ゆりかもめ」の車窓だって需要があるかもしれない。もしかしたらもう出てるかも。運転手さんがいないから撮り放題だしね。

【4月23日】 ミステリーと漫画ばっかり読んでいて、SFをあまり読んでいないなあと思って本屋に行くと、ジョン・バーンズとゆー人の「軌道通信」(ハヤカワSF文庫、620円)が並んでいたので、さっそく買って読み始める。小惑星改造船で暮らす少女を主人公にした成長物語。面白くて面白くて、あっとゆー間に読み切って、ああ、僕も宇宙で生まれてみたかったなあと物思いにふける。末弥純さんの描く表紙がとても綺麗。地球をバックに胸に手を当てて黙想するショートカットの女の子の絵で、「新世紀エヴァンゲリオン」のオープニングで、月をバックにたたずんでいた綾波レイの姿にちょっとだけ重なった。
 日本電子計算とゆー、あまり知られていないけれどちゃんとした上場企業の会社に仕事に行く。東陽町の本社ビル1階にあるショールームには、歴代のマッキントッシュが並べられていてなかなか壮観。これが出た頃はすごかったなー、パソコンのポルシェって呼ばれてさー、オレなんてこれ買うために給料の3カ月分をつぎこんだんだから。なんて会話をしていよーものなら、後ろを通る新入社員のパフォーマ使いからは冷笑をあび、バリバリのウィンドウズ使いからは苦笑をあび、お宝鑑定団の骨董屋からは爆笑をあびること間違いない。
 情報処理が中心のお堅い会社なのに、今日の発表はなんと通信カラオケ「ジョイサウンド」で有名なエクシングとのジョイント話。エクシングが開発した「MPEG2エンコーダー」を核にしたリアルタイム・エンコード・システムを、日本電子計算が販売していくとゆーもので、発表会にはエクシングの会長さんとゆーエライ人も来ていた。エンコーダーの性能がいいのか悪いのかは判断のしようがないが、少なくともエクシングが作ったCD−ROMマガジン「ギプス」は今イチだぞって断言できる。1つもらって帰って中身を見たけれど、1000円って値段だから仕方がないにしても、とにかく中身が薄すぎる。「ルパン3世」の最新作「デッド・オア・アライブ」を監督したモンキー・パンチへのインタビューくらいしか、見たいと思ったコンテンツがない。せめてエクシングがスポンサーになった「天地無用!」の話題とか、エクシングが出しているゲームソフトのデモでも入ってれば楽しめたのに。
 「ルパン3世」といえばキネマ旬報の別冊「THEルパン三世FILES」が出ていた。旧作から最近のテレビ特番や劇場版までのルパン3世に関するデータが、薄い本なのにしっかり詰まっていて楽しめる。秀逸だったのが押井守監督へのインタビュー。ルパンを撮るといわれつつ、結局撮ることのなかた押井監督が明かした、幻の押井版ルパン3世のストーリーは、完成していればおそらく7割のルパンファンから非難をあび、2割のルパンファンから理解不能の怒声をあび、1割のルパンファンから大絶賛をあびたことだろう。自分の場合は、それを見た年齢によって、入る場所が違ったよーな気がする。ずいぶんと醒めてしまった今だったら、きっと大爆笑をあびせることになっただろーね。

【4月22日】 朝から凸版印刷に行く。いつもの秋葉原ではなく小石川の産業資材事業部の方。建装材に関する発表で、ほんとうならば建材担当の記者の方が話が早いと思うのだが、なにぶん人手不足の会社で、1つの企業を担当分野別に何人もの記者でカバーする、某ニッケー新聞のようなわけにはいかず、マルチメディアとかエンターテインメントの分野を見ている僕が、いつも行ってる印刷会社とゆーことで、土地勘のない分野の発表に駆り出されることになった。
 とはいえ印刷会社の発表である以上、発表内容もまんざら印刷に関係がないわけではない。家の外壁などに使うコンクリートか陶器かなんかのプレートに、印刷技術でレンガ模様や花崗岩模様なんかをプリントした外装材で、遠くからなら本物のレンガ張り、花崗岩張りに見えてしまう。そういえば前に、ドアや壁や家具の表面を、印刷技術によってチークやマホガニーのように見せる内装材を見せてもらった。恐るべしニッポンの印刷技術。女性のお化粧なんかでも、シールにプリントされた美人の顔を顔に転写するだけで済むようになるのかも、なんて想像をしてしまった。ファンデーションなんかで塗り固めるよりは安く上がるはずだけど。
 午後は三越の向かいにある広告代理店の「アイアンドエス」に行く。訪問先はマルチメディア部だから、いわば本業の取材。インターネット上でエンターテインメント情報を提供して好評の「J−Entertainment」の話を聞いてくる。最近オープンした劇場版「天地無用!inLOVE」のホームページは好評のようで、毎日結構な数のアクセスがあるとか。アニメファン恐るべし。かくゆう僕も、去年の春頃からにわかに「天地無用!」のファンとなり、テレビシリーズは毎週見たし、CDも山と買い込んだし、文庫本もフィルムブックも出れば必ず買い揃える。もちろんホームページも閲覧済み。アイアンドエスに行ったのも、仕事半分、趣味半分のところがある。あまりの詳しさにオタク野郎と蔑まされるかと思ったら、担当者も結構なオタクで、「サザエさん」とぶつかったTVシリーズの苦労話とか、早ければ秋口にも始まる新しいテレビシリーズとかの話を聞けた。今度はさすがに日曜午後6時半の放映とは行かないよーで、「新世紀エヴァンゲリオン」でも見送ったビデオを、いよいよ買う羽目となりそー。

【4月21日】 会社の宿題があって手つかずだった吉村明美さんの「薔薇のために」(小学館、1ー10巻以下続刊)を明け方までかけて読み継ぐ。背中合わせの愛憎にほんろうされる主人公たちの思いが、痛みとなって突き刺さってくるようだった「麒麟館グラフィティー」とは少し雰囲気がかわって、ラブコメチックな展開で話が進んでいくため、1冊1冊を楽しく読むことができた。
 祖母の死によって天涯孤独の身の上になったと思われた主人公のゆりが、実は大女優の娘であったことが解って、はるばる札幌にある女優の家に乗り込むと、そこには女優の子供で、すべて父親が違う姉と兄と弟が住んでいた。そろいもそろって美男美女の兄弟たちのなかにあって、ひとり太めで顔が大きく決して美人とはいえないゆりだったが、他の兄弟たちと暮らすうちに、彼らにとって欠かすことのできない存在になっていった。兄と弟と妹がおかしくも不思議な恋愛関係に陥って、それはもう複雑なストーリーが繰り広げられるのだけど、ゆりをカナメに固く結ばれている4人のきずなは、ゆりの出生の秘密や、新しい女性の出現といったいろいろなエピソードを経てもなお、今までのところ決して切れることはない。しかし、成長していくきょうだいたちの姿を描いている以上、「終わりなき日常」を繰り替えす漫画とは違った、何らかの結末を迎えることは確実だ。家族が離ればなれになって、お互いの道を歩み始めるエンディングを予想する一方で、いつまでも仲良く楽しく助け合って生きていく家族の姿を見ていたい気持ちもあって、これからの展開をはらはらしながら見守っていくことになる。
 ほとんど寝付けずに朝を迎え、そのまま起き出して会社へと向かう。何カ月かに1度回ってくる日曜出勤の日で、朝から晩まで会社に詰めて、月曜日付けの新聞を作らなくてはならない。昼飯を買いに出る余裕もないので、出掛けに西武百貨店に寄ってパンを買い込む。カレーパンとメロンパンとアンパンとゆー、菓子パンの御三家ともいえる取り合わせで、しめて360円。普段の昼食に1000円近くかかっていることに比べると、何とも安上がりな昼飯だ。菓子パンの御三家とゆーには、クリームパンを入れるべきだ、いやジャムパンこそが菓子パンの王道、チョコロールを忘れるとは何事ぞ、といった声がそこかしこからわきおこりそーな気もしないでもないが、少なくとも小生、メロンパンだけは絶対に外すわけにはいかないとゆー信念があり、以下好きな順にカレーパン、アンパンと並べた次第。決してジャムパン、クリームパンに恨みはないから、ご理解のほどを。


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