縮刷版96年10月下旬号


【10月31日】 マイケル・ギルモアの「心臓を貫かれて」(文藝春秋、2900円)を読み終える。父親に暴力をふるわれながら育った兄が、だんだんと”歪んで”いき、最後に殺人を犯して死刑にされるまでの様が、身内のことながら冷静かつ客観的な視点で、克明に描かれていて慄然とする。ともすれば死刑廃止の問題ともリンクされそうな話だが、力点はむしろ「家族」とその崩壊に置かれているような気がして、家父長制度がとっくに崩れ、核家族化がすすみ、未婚のままで1生を過ごす「無家族世代」が増えている今こそ、深く読まれる本との印象を持った。

 幼児期の虐待については、先だって読み終えた「いつもの空を飛びまわり」(安野玲訳、筑摩書房、1545円)にも描かれていたが、こうしたテーマが小説やノンフィクションになって、大勢の人に読まれるようになるほどまでに、事態は深刻の度合いを深めている。第8巻が出たばかりの、萩尾望都さんの「残酷な神が支配する」(小学館)も、やはり父親(この場合は義理だが)の虐待にあって心が歪んでいく少年の様子が描かれている。やるせないとしか言いようがない。

 ソニー・ミュージックエンタテインメントの発表会に行く。今年最大のベストセラー「脳内革命」を書いた春山茂雄さんが、新しく瞑想のための音楽を収録したCDを出すという発表で、今や時の人である春山さんの講演と、CDに収録してある音楽を使ったリラクゼーションの実践という、信奉者にとっては垂涎ともいえるプログラムを、傍観者的に体験してきた。

 いくら自分がベストセラー好きのスノッブ野郎でも、さすがに「脳内革命」だけは読んでいないし、読みたいとゆー気にもなれない。300万部も売れているとゆーことは、それだけ信じる人がいるのだろーが、そーいった人を非難する気もさらさらない。しかし実際に目にした春山さんの、56歳とゆー年齢にも関わらずすべすべして張りのある顔の肌、つやつやとしてふさふさとしている黒髪(本物か否かは不明)などを見ていると、「脳内革命」が健康に良いとゆーのも、まんざら嘘ではないよーに思えてくる。

 しかし、発表会で行われたちょっとした講演のなかで、DNAの二重螺旋を描くといって、マジックを2本持って描いたような、重なって渦を巻く二重螺旋を描いたところを見て、なんだかなあという気持ちにとらわれた。加えてアデニン、シトシン、チミン、グワニンといったDNAを構成している塩基の配列をもとに、音楽を作曲したとゆー話を聞いては、もはや心から信奉するとゆー殊勝な態度は取れない。

 音楽自体は、鳥のさえずりや河のせせらぎといった自然音に人工的な音楽が重なって響く、リラクゼーションに適した作りとなっていた。聞いている分にはおそらく、一切の害はないだろー。売れるかと聞かれれば、売れるだろーと答える。それだけ人間には、「癒されたい」という気持ちが強まっていると言える。けれども音楽によって癒された心が、実生活にもどって再び傷つかないという保障はない。別のものに救いを求める前に、障害となっている事態を打破していくことを教える方が、もっと大切なことのよーな気がするのだが・・・。

 コミック版「新世紀エヴァンゲリオン」(角川書店)の第3巻を買う。アニメでは暗く冷たい場所に描かれていた綾波レイの部屋が、漫画では家具こそ少ないものの、光の差し込むほの明るい部屋に描かれていた。意味があるのだろーか、それとも単に筆力の問題なのだろーか。第6話のラストでシンジがレイに言った「笑えばいいと思うよ」というセリフが、「ふつうは嬉しかったら笑うんだよ」というネームに変更されている所からも、アニメと漫画では、シンジの性格設定に少しばかり違いがあるよーな印象を受ける。考えすぎだろーか。ちなみに明日1日は、いよいよ「新世紀エヴァンゲリオン」の映画製作発表会。その名も「シト新生」がどのよーな話になるのか。追って報告を待て!


【10月30日】 凸版印刷に行って新しいCD−ROMタイトルの発表を聞く。印刷会社と言えばこれまでは、よそ様のCD−ROMのデジタライズやオーサリング、プレスなんかを請け負うのがマルチメディア分野での主力業務だったけど、これだけ市場が膨らんで来た(ように見える)今こそ、自主CD−ROMタイトルの制作に参入する時期だと考えたみたい。来年2月から3月にかけて10タイトルばかり出して、以後も年間何10タイトルかを断続的に出して行くことにしているとゆー。

 まあ半分くらいが欧米のタイトルのローカライズになるから、本当の意味でも自主タイトルといえるかどーかは疑問だけど、なかには建装材のビジネスで培った壁紙や石に印刷する様々な模様のテクスチャーを素材として集めたCD−ROMもあって、これなんか印刷会社らしく、また需要も多いそーなタイトルだと思う。とにかくエデュテインメントとかエンターテインメントは発売されるタイトルの数が多すぎる。わずか数1000枚売れれば最高って状況は、パソコン向けCD−ROMの世界では、今もほとんど変わっていない。おまけにショップ数が増えすぎて、どこもピーピー言っている。池袋にあった唯一まともなCD−ROMショップも、先頃店を閉めてしまった。華やかそーに見える裏で、衰退と淘汰は確実に始まっている。見誤ると未来はどん底。そんな業界の尻馬に乗った新聞も共倒れの憂き目に・・・・じゃなくって、一緒に未来を切り開いていかねばならんなー。

 帰りがけに秋葉原をウロウロ。平日だとゆーのに若い人、サラリーマンな人がたくさんあるいていて、なるほど表だって華やかなのはハードも同じだと感じる。ラオックスのコンピューター館ではアスキーサムシンググッドの「筆王」の宣伝がやかましく鳴っていた。CMキャラクターに蛭子さんを使うのは、蛭子さんがコンピューターなんか使えそーもないよーに見えるからに違いない。漫画は最高なのに。それにしても若い女性の姿はほとんど見かけない。アキバ系なんて女性、ホントに存在するのか、雑誌の中だけじゃないのかと思えてくる。まあ秋葉原なんぞに行かなくたって、今日日は渋谷でもコンピューター関連のハード、ソフト、周辺機器なんて何でもそろっちゃうからなー。秋葉原はやっぱりオタクの街なんですね。

 CIC・ビクタービデオから「ビーバス&バットヘッド」のビデオが届いていた。アメリカの「MTV」で人気の悪ガキキャラクターがビーバスとバットヘッド。アメリカじゃあ超人気なのに、日本ではこれまで知る人ぞ知るってキャラクターだったけど、最近になってミントキャンデーの宣伝に起用されたり、ムックやコミックやTシャツが発売されるなどして、人気に火が着きつつある。爆発させるのが、CIC・ビクターが12月20日に発売するこのビデオってことになるけど、パッケージを持って会社を回ったら、20人くらいに聞いて知っていたのは2人だったから、もしかしたらちょっと時間がかかるかも。

 グランパスはヴェルディに負けちゃったみたい。最近とみに点が取れなくなっていて(前節はまぐれ)、なんだか最悪だったナビスコカップの時の状態に戻ってしまったよーな気がする。ケイロスとは肌合いが悪いのか、ケイロスがまだまだ自分の考えを言い出せないでいるのか。言ってしまえばシーズン途中で投げ出したヴェンゲルが悪いってことになるけれど、今更言っても詮無いだけ。ここはやっぱり元気のいいのをバンバンと出して、ガンガンと勝ちまくて頂きたいものだが、しかしピクシーも抜けちゃいそーだしなー。不安がもやもや。


【10月29日】 ブエナ・ビスタ・ホームエンタテイメントの星野康二代表インタビューと同じ面に、アメリカでの「トイ・ストーリー」の売り上げ見通しを示した記事が出ていて、2000万本とか3000万本とかった数字が出ていて驚く。日本の10倍じゃねえか。まあ日本の場合は、ビデオのレンタルとゆー制度が定着ているから、買わずに借りて済ませる人だっているんだろーけれど、2回転とか3回転する程度だから、おそらくは500万人も見ないだろー。人口比で2倍のアメリカで、ビデオは4倍も6倍も売れてしまうこのギャップ。星野さんが「もっと売れるはずだし売れなきゃいかん」と強く言うのも解る気がする。

 とはいえアニメ大国ニッポンには、ニッポン人に会ったアニメがテレビで連日ばんばん放映されているのも事実で、外国人の作った外国人の文化慣習にあふれたビデオなんか見たくないとゆー人が、アメリカより多くたって不思議ではない。人口比なみの売り上げを求めるのは、やっぱり無理とゆーものだろーね。と前を降ったところで、ニッポンの代表的アニメになりかかっている「新世紀エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督へのインタビューが、「クイックジャパン」の第9号に続いて、第10号にも出ていたので買ってしまった。おまけに今回は庵野さんが表紙。SFセミナーで見た正ちゃん帽をかぶったまんだらけ店長風の容貌はガラリ変わって、よりアーティストっぽくなっている。

 中身は買って読んで頂くとして、面白かったのは最後の方で「クイックジャパンってどう思います」と庵野さんに聞いた部分。庵野さん曰く「いや、面白いです。いやホント、初期の『OUT』みたいで(笑)。赤田さん、あれですよ、注意しないと。このままだと『エヴァンゲリオンで』・・・・」。答えて赤田さん「『OUT』の二の舞」。確かに普段は買わないクイックジャパンを、「エヴァンゲリオン」絡みだといって買っている某工業新聞記者がいる訳だから、庵野さんの言い分も非常によく解る。「SFマガジン」も「エヴァ」特集号は完売だったと噂に聞くし、いっそウチの新聞でも、全面「エヴァ」で埋め尽くすか。金曜日にはいよいよ映画版の製作発表もあるみたいだし。

 本屋で本を物色。スーザン・パルウィックとゆー作家のデビュー作「いつもの空を飛びまわり」(安野玲訳、筑摩書房、1545円)を読んで泣く。うおんうおん。ファンタジーとゆーからもっと楽しい話かと思っていたら、厳しい現実とそれに立ち向かう少女の勇気を描いた、ノンフィクションのよーなフィクションだった。内田春菊さんの「ファザー・ファッカー」との共通点・相違点について、日米の事情を踏まえて誰か解説してくれないだろーか。年末にかけて絶対に話題になる本。柏書房の「新聞報道[検証]シリーズ 記者クラブ」(1030円)は意義深い本。莫言とゆー中国人作家の書いた「酒国」はカニバリズムな本。週末は楽しめそー。おっとその前にマイケル・ギルモアの「心臓を貫かれて」を片づけねば。あと400ページだ。


【10月28日】 中野善夫さんのホームページによれば、フィリス・アイゼンシュタインの「妖魔の騎士」の続編「氷の城の乙女」は刊行が遅れそーとのこと。つなぎにR・L・スタインとゆー作家の「迷信」(ソニー・マガジンズ、2500円)を買って読む。脈絡はほとんどない。ちなみに訳者はスプラッターならおまかせの友成純一さん。冒頭から頭の皮をべろんべろんとはぎとって、背骨をばきんぼきんとへし折る場面が出てきて、なるほど友成さん好みのお話だなーと納得する。

 ちなみにこのR・L・スタイン。子供向けホラーの「グースバンプス」シリーズ(豊岡まみ訳、ソニー・マガジンズ、各650円)が、全米で1億冊を売り上げるとゆーホラーの魔人。子供向けでも見せていた、章の終わりごとにフェイントの引きをつけて、次々とページをめくらせる手法は、大人向けでも1段とパワーアップしていた。まだ100ページ。残り380ページはきっと今晩中だろー。

 山と渓谷社がDVDソフトを出すとゆー話を月曜日付けに放り込んでおいたら、日経産業にもしっかり出ていた。あーよかった。「四季上高地」や「四季尾瀬」なんかがラインアップ。しかし映画会社がろくすっぽDVDに取り組むそぶりを見せていないなかで、音楽ばかりが出そろいそーなDVDタイトルにあって、キレイな映像をじっくり見てもらうとゆー目的に絞ったDVDタイトルは、それなりに需要があるかもしれない。でもやっぱりアダルトが見てみたいなー。あとアニメとか。LDよりやっぱり良くないんだろーか。

 火曜日付けにはブエナ・ビスタ・ホームエンタテイメントの星野康二代表インタビューを放り込む。インタビューといっても中身はほとんどビデオ版「トイ・ストーリー」の宣伝記事。まあいいや、いい映画だから。テレビで始まった宣伝も、去年の映画公開時にあったよーな「すっげーCG」ってな感じを雰囲気から、「おもちゃが動くんだよー」ってな感じに変わっていて、映画にイマイチ乗りの悪かった子どもたちや、お父さん・お母さん層を抱き込もーとしてた。11月1日から12月31日までの超短期限定生産、そして謝恩特別価格の3600円。さて過去最高の220万本を抜いて、大言壮語ではなく事実としての300万本突破を成し遂げるだろーか。見るなら吹き替え版がグッド。セトモノのお姫さまが欲しい。

 日本出版販売から届いた11月の新刊リストをながめて、欲しい本に赤線を引っ張っていったら、すっげー数になっていた。こりゃ11月もただではすまんな。主だったところでは、笠井潔伝奇小説集成の第4巻「巨人伝説」が作品社からいよいよ登場。加えて笠井さん、双葉社から「天啓の宴」とゆー本も出す。先月2冊、今月も2冊。いったいどーしたんだろーか、この刊行ペースは。SFも書いてくれないかなー。それからイアン・バンクスの「秘密」がハヤカワNVから刊行。こないだ「共鳴」が出たばかりなのに。かの「蜂工場」も再刊しないかなー。ちなみに新書ではいよいよの京極夏彦さん「絡新婦の理」が登場だ。新書で1200円。「コズミック」よりは薄い・・・かな。「豪華装丁本 風の谷のナウシカ」ってのは何だろー。


【10月27日】 急に冷え込んできたせいか、風邪をひいたらしく、鼻がくしゅくしゅとして腹がころころとして、どーにも気分がよろしくない。明け方までかかってロバート・J・ケッペルの「死体を愛した男」(戸根由紀子訳、翔泳社、2400円)を読んでいたのもよくなかったよーだ。これではとても、どこかに出かけよーとゆー気にならず、仕方がないので近所の食堂で昼御飯をかき込み、本屋をざらりと見て回り、スポーツ新聞を買い、夕飯の食材用としてトウガラシを買って帰途につく。出かけていた時間は都合1時間。日曜日だってのに何やってんだかってところだが、健康1番、ここはこらえて家で静かに本を読むことにする。

 といっても、もうろうとする頭では小難しい本が頭に入るわけもないので、軽そーなロバート・J・ソウヤーのSF「さよならダイノサウルス」(内田昌之訳、早川書房、640円)からとりかかる。案の定ジョークをふんだんにまぶした、軽めのアドベンチャーSFとして始まったが、読み進むにつれてだんだんとマジな要素が浮かんでは消え、消えては浮かんできて、読み終わってなかなかに重い感慨が残った。

 テレビで競馬の「天皇賞」がやっているよーだが、なぜか裏で再放送中の「ローザンヌ国際バレエ・コンクール」を見てしまう。この番組、これからの若手バレリーナを見られるという特徴もさることながら、解説陣のおばさんとおじさんのコメントに、日本人的なお世辞がいっさいなく、ダメならはっきり「ぜんぜんダメです」と言い切るから面白く、毎年楽しみにしている。踊った本人が聞いたら、相当に落ち込みそーなことも平気で言う。見習いたいと思う。無理かなー。

 そうこうしているうちに夕方。フェデリーニをうでて、トウガラシとサラミをオリーブオイルでいためてうであげフェデリーニをまぜてペペロンチーニもどきを作ってずるずる。にんにくをスライスして放り込むともっと味がでるはずなのだが、部屋中ににんにくのにおいがこもって1週間は抜けないので見合わせる。工藤静果宣伝「スパ王」の「ペペロンチーニ」には確かコーンが入っていたっけ。トウガラシはまだたっぷり残っているから、次に作る時はコーンも入れよー。

 夜からは表の新聞のためにDVDソフト関連の原稿をしこしこ。1時間くらいで仕上げてテレビを見て酒飲んで時間をつぶす。ヴィッセル神戸はそうかー、Jリーグ昇格かー。永島よかったねえ。ラウドロップも上がってくるのかー。カレッカみたく昇格後はさっぱり、なんてことにならないでくれい。しかし1チームだけではスケジュールが組み難かろうJリーグ。ここは大英断を下して、おまけでもう1チーム上げちゃおーぜ。


【10月26日】 カバーガールを変える。相変わらず似ていないのは仕方がないとしても、使っている色が少ない地味目(性格は派手なんだがなあ)の人なので、バックにあまりよく栄えない。ニッポン人は明るい場所に行くと沈み込んでしまうとゆー典型みたいなものか。実はアヤナミを描いていたんだけど、途中まで描いて髪型のあまりの難しさに投げ出してしまった。そのうち描こう。それまで認知され続けていれば、だけど。

 東京都現代美術館で「シンディ・シャーマン展」が始まったので見に行く。「アンタイトルド」という題名とゆーか識別番号の付いたセルフポートレートで有名な、アメリカの女性写真家だけど、最近は人体模型を使った猥雑な写真とか、顔を大写しにして大伸ばしにした写真を撮っていて、昔のきれいな写真からずいぶんと離れてしまっている。しかしまだ42歳とゆーから、ずいぶんと早い時期から活躍していたんだなー。

 会場を歩いていると金髪で眼鏡をかけた外国人がぞろぞろと人を連れて歩いて来た。どこかで見たことのある顔だなーと考えて、そうだこの人はデイビッド・ホックニーじゃないかと気が付いた。ちょうど下で「ホックニー版画展」をやっていたから、展覧会に合わせて来日していたのだろー。シャーマンの絵を見る目が芸術家の目だったかただの興味本位だったかは、外国人の目を見慣れていないから解らなかった。

 「シンディ・シャーマン展」のカタログは2500円。前にアール・ヴィヴァンで海外で開かれたシャーマン展のカタログを、5000円くらいで買ったことがあって、今回出ていた作品も、だいたいこの中に収録されていたけれど、日本語で書かれた解説なんかが読みたくて、やっぱり買ってしまった。名画の中とか映画のような場面に自分を入れ込む手法で、シャーマンとの共通点をいろいろ言われている森村泰昌さんが、11月3日に公演を行うとか。時間を作って聴きに行かねば。ちなみに12月には、香山リカさんの公演もあるそーな。

 帰りに葛西の「河内屋酒販」によってバーボンを仕入れる。「エヴァン・ウィリアム」が「オールド・フォレスター」でも買おうかと考えていたんけど、「バレッツ」の20年物が8割引の2980円で売っていたので、ついついそっちに手が行ってしまった。定価じゃあ15000円はするとゆー代物だから、もしかしたら中になにか入っているのかもしれない。あるいは船といっしょに水没していたとか。とにかくまあ、飲んでみて美味しかったら、また買いに行こー。お金のあるうちに。

 ベルディ対レッズは酷い試合になってしまった。なにが酷いって、1度放映しておいたシーンをもう1度放映してしまう録画中継の酷さもさることながら、試合自体が大荒れに荒れて、ヴェルディから2人が退場となって、ついでにレオン監督まで退場してしまった。なのにレッズ、11対8とゆー圧倒的な数的優位を誇るベルディ(おまけに指揮官抜き)相手に点が取れない。勝つことだけを主眼に守りに入って、あえて点を取りに行かなかったとゆーなら別だが、こーゆーときにバンバン点をとっておけば、後々得失点で有利になるかもしれなかったのに。


【10月25日】 早起きして「エーベルージュ」の最後の3カ月をやり遂げる。高等部3年の5月にはすべてのパラメータをMAXにしてしまっていたので、テストをやっても満点ばかりとゆー、いささか自分の現実とは天とマントル対流ほどにも違う境遇を満喫していた主人公の「タニグチリウイチ」くん。日曜ともなれば女の子の部屋に行って花をプレゼントし、結果すべての女性キャラクターからニックネームで呼ばれるとゆー、これまた現実とはアンドロメダ大星雲とブラックホールの奥底ほどにも違う、うれしい学園生活を続けていた。

 なのに。なのに結果は農家のオヤジさんだって。いったいなにが悪かったんだろーか。僕は「独裁者」(ないって)か「バーのマスター」(そんなのないって)になりたかったのに。仕方がないので、セーブした場所からやりなおして、告白を2つかわし、もう1人の主人公ともいえるキャラクターと結ばれることにすると、よーやっと納得できる結果を得ることができた。女の子の告白を断るのは、たとえ架空の存在でも(とゆーか架空の存在だからこそ=2次コンの気があるからこそ)、強い意志と勇気を必要とした。1つ強くなった、ってそんなわけねーよな。

 給料日だったので本屋にいって山ほどの本やら雑誌を仕込む。まずは「SFマガジン」12月号。なんととり・みきさんの「SF大将」が終わってしまった。大森望さんのコラムなき後、水玉蛍之丞さんのコラムと双璧をなして、SFマガジンを支えて来た連載だったのにい。鏡明さんと川又千秋さんと高橋良平さんの対談「96年度の翻訳SFを斬る」は圧巻。さぞや司会の編集長、針と剣と爆弾のムシロの上にズボンもはかずに座らされた心境だったことだろう。日本語SFを斬るなんて企画もやって欲しい。メンバーは誰がいいだろー。梅原克文さんなんか入ると、すごい内容になるかも。

 それから東野司さんのコラムも今回で終了となった。野田昌宏さんは近く復活するみたいなので安心。前にツムラの社長んとこでヴァレイホだとかの絵を見せてもらったって自慢してた野田さん。ツムラさんがとっつかまって、コレクションが散逸しそーになったら、どーするんだろーか。散逸を防ぐために、資財をなげうって買い取ったらすごいなー。あと漫画レビューのコーナーで、唐沢なをきさんの「電脳なをさん」(アスペクト、1600円)が取り上げられていて、前に書いた感想文に間違いがったことを知って修正する。そうだ田村信さんだった。

 SFではほかにロイス・マクスター・ビジョルドが「戦士志願」に続いて送る「ヴォル・ゲーム」(東京創元社、880円)とか、ロバート・J・ソウヤーの「さよならダイノサウルス」(ハヤカワ文庫SF、640円)とかを購入。「戦士志願」は買ったのに部屋の中で行方不明で読めていないので、「ヴォル・ゲーム」はしばらく後回しになりそー。SF以外では連続殺人鬼の大本命、テッド・バンディについての本「死体を愛した男」(翔泳社、2400円)が登場。書いているのはロバート・D・ケッペルとゆー刑事さんだけど、いい編著者がいたのか、訳者がよかったのか、テンポの良い文章が巧みな構成で並べられていて、わくわくしながら(殺人をわくわくってのは不謹慎かもしれないけれど)、読むことができる。真打ちの資格あり。


【10月24日】 早起きして闇に紛れてこそこそとやる仕事を仕上げる。去年から始まった仕事だったけど、今回でようやく終了。1年にわたってこーゆー仕事をやるのは精神衛生上なかなかによろしくないことはない。つまり悪くない。カタメの新聞でカタメの記事ばかり書いていると、どーしてもヤワラカメの記事をヤワラカメの語り口で書くことができなくなる。別に書けなくたって仕事にはいっこうに差し支えはないけれど、バリエーションは広く持っていたほーが潰しがきくからね。って潰れるのか?

 地下鉄の中で「ザ・サード・フォース」(角川書店、1700円)を読み終える。CD−ROM版「GADGET」に出てくるキャラクターやガジェットを取り込んで、うまく小説に仕立て上げているけれど、全体に話がイマイチ難しく、夢オチなのかそーでないのか解らないままに最後まできてしまった。CD−ROMのよーに永遠に、センソラマ(洗脳機械)にかけられた人々が、夢と現実との具別がつかないまま、同じ時間と空間をグルグルと回り続けるラストなのか、それとも小説のラストが示しているよーに「ドッカーン」なラストなのか。時勢を追って再読する必要あり。でも疲れのは嫌だしなー。

 笠井潔さんんの「道 ジェルソミーナ」(集英社、1700円)も刊行。なるほど「三匹の猿」と同じシリーズだったのかと、奥付の著者略歴を読んで気が付くが、いまさら「三匹の猿」を読んでいないとは言い出しづらいので、明日にでもこっそりと買いにいくことにしよー。たぶん読んでおかなくっても、なんとなく解ると思うんだけど、シリーズ物ってやっぱり、刊行順に読むのが醍醐味みたいなところがあるからなー。50巻を越えた「グインサーガ」を今から読み始めることに比べたら(「ペリー・ローダン」ってすっげーのもあるけれど)、たった1冊の先行など、どーとゆーこともないわいな。

 前に取材した漫画エージェンシー「アコワーク」の記事を書いて出す。チラシなんかに漫画を斡旋しているだけかと思っていたら、なじみの凸版印刷のホームページに、有名漫画家の4コマ漫画を出稿している会社もこのアコワークだったとか。社長の坂本益造さんに聞くと、チラシやホームページ向けに漫画を描いてくれと依頼するくらいなら、誰でも簡単にできそに思われているよーだけど、媒体が抱え込んで離しそーもない超有名漫画家に原稿を頼むには、昔とった杵柄がモノを言うのだとか。漫画家のい家に張り込んで、いっしょに原稿を取り合った「戦友」たちが、今時分の少年誌や青年誌の編集長になっているんだから、これは強い。昨日・今日キャラクタービジネスの一貫として漫画を始めようと考えた人では、とてもじゃないが勝負にならない。

 エイベックスとNTTの共同発表資料を処理。エイベックスがインターネット上にサイトを立ちあげるに当たって、NTTがセキュリティだとか課金だとかのシステム構築に協力するのだとか。インターネット上でのチケット予約&決済ももくろんでいるよーで、来年3月だったかに開催される「globe東京ドーム公演」のチケット予約は、全席インターネットで受け付けるのだとか。これを聞いて「さっそくインターネットをはじめなくては」と決心した「globeファン」が、全国には300万人はいる(CDが売れた数だけ)・・・・とは思えないが、少なくとも予約開始日当日には、回線が吹き飛ぶくらいのトラフィックを集めることは間違いないだろー。ちゃんと対応しないと、インターネット予約の導入がぐぐっと遅れることになりかねないから、ここは1つ、NTTとタッグでもなんでも組んで、トラフィック対策をバッチリやっといて欲しい。「globe公演」なんか行かないけどね。


【10月23日】 朝日新聞社から「待望」の新雑誌「uno!」創刊。表紙に記事の見出しが一切はいっていない、いさぎよいつくりにまず感動。570円という値段にも、とりあえず納得する。がしかし、目次を読んで「おもしろそうじゃん」と思えた特集が「木村拓哉ロングインタビュー」くらいしかなく、あの花田さんが編集長をやっている割には、意外性のある企画が少なすぎるとゆー印象を受ける。

 たとえば「わが社の独身男性ナンバー1はこの人」。本当にこの人がナンバー1なら、僕はナンバー0にはなれると思えてくる会社が、冗談でもホラでもなく思える会社が何社かあった。もしかしたらバーターか。それから「君島一郎 嘘で塗り固めた人生」も、内容に意外性が感じられない。死んでしまった君島一郎の墓暴きをするくらいなら、生き残った君島兄弟の対談を企画するとかしてほしかった。吉田美和の記事のあとに掲載されているカルメン・マキへのインタビューは、一見記事なのにどーやらパイオニアLDCの広告らしい。完全にバーターだ。

 今はなきマルコポーロに掲載されていた西原理恵子さんの漫画コラムが「uno!」で復活したのが唯一の救い。邪悪なパワーに満ちていて、早くも全身に毒が回り始める。巻末の「voice!」とゆーコーナーを読んで吃驚。西原理恵子さんがバンコク在住カメラマンの鴨志田穣とゆー人と結婚するとゆー話が載っていた。本当か? ブラジルでなにがあったんだ? どっちにしても西原さんの凶悪さは衰えそーもないが。

 CD−ROMでお馴染み「GADGET」を題材にした小説の日本語訳が店頭に並んでいたので買う。「ザ・サード・フォース」(角川書店、1700円)とゆー本で、書いたのは「パパの原発」なんかで知られるSF作家のマーク・レイドロー。読み始めたばかりだから内容はほとんど解らないけれど、どーやらCD−ROMの「GADGET」ほどには無機質ではなく、登場人物がいっぱいいて、帝国側とレジスタンス勢力の「サード・フォース」とに分かれてドンパチやるみたい。巻末にはクリエーターの庄野晴彦さんと粟田政憲さんのインタビューが載っているから、「GADGET」ファンやCD−ROMクリエーター&プロデューサー志望者は必読ね。

 森福都さんの「炎恋記」(講談社、850円)を読了。500ページとゆー大著のわりには物語の起伏にかけて、大した山場もないうちに終わってしまって物足りない。「ヤマ」も「オチ」も「イミ」もないとゆー点で、真実の「ヤオイ」小説といったら言い過ぎか。耽美的な場面もシチュエーションも一切ないけど。でも500ページを読み終えさせるだけの筆力はあるから、次作に期待と結んでおく。やっぱええかっこしいやね。オレって。


【10月22日】 早起きして「エーベルージュ」の続きを始めるがいっこうに終わらない。1週間ごとのカリキュラムを組んで与えてやるのに、体力がないのですぐに病気になって寝込む。平日は学校を休んで花を買いに行き、週末ごとに別々の女の子に花束を贈って色目を使ってる。ゲーム相手に朝っぱらからなにやってんだと、我にかえって深い自己嫌悪に陥る。そのまま支度をして会社へ。電車の中ではマイケル・ギルモア著、村上春樹訳の「心臓を貫かれて」を100ページあたりまで読み継ぐ。オーバーハングの岩山を登っていて、ようやく手がかり足がかりを得たってところで、これで一気に登り始められそーな気がする。週内には読了予定。でも予定だからなー。

 会社で原稿書き。日本出版販売から送られて来ていた週報を読んでいると、アダルトビデオとかアダルトCD−ROMで知られる九鬼が、なんと一般文芸書の刊行を始めるとゆー案内が載っていたので、直接九鬼に電話して詳しい話を聞いて記事にする。親戚じゃないけど同じ名字の詩人・谷口江里也とゆー人が、イソップとかの寓話を文章化して、それに19世紀の銅版画家の人の挿し絵を付けて編集した「寓話」とゆー本が九鬼の文芸書第1弾。意外とゆーしかない真面目な内容の本で、いったいぜんたいどーゆーことなのかといぶかるって担当者に聞くと、どーやら社長の中川得章さんが音頭取りして、刊行にこぎ着けた本らしー。3カ月に1度、同じ谷口さんの本「神曲」「聖書」「ドン・キホーテイ」を刊行していくとかで、いよいよ九鬼もビデオに電子出版に文芸書と、出版社として足固めに乗り出したみたい。でも4900円は高いぞ。

 会社にセールス用のファックスを送りつけてきた不遜な会社があったが、漫画をチラシやマニュアル漫画やゲームなんかに使ってもらうよーに、漫画家とクライアントとのコーディネートをしている会社とゆーことで、むくむくと興味が湧いてさっそく出かける。うまく釣られた感じ。もともと少年キングの編集をやっていて、キングがつぶれた最後の代の編集長を務めていた人が社長の会社。仕事の話はそっちのけで、「超人ロック」とか「ワイルド7」とか「プロスパイ」とかの話で盛り上がる。

 望月三起也さんは映画のほんの1シーン、2シーンだけを見て映画館を出てしまい、2年くらいたってからその場面を漫画にしっかり使っている話とか、名前は教えてくれなかったけど、さる大家の漫画家さんが、仕事がなくなってこの会社に仕事がないかと打診して来た話とかを聞く。帰りがけにもし欲しいのだったら家にたくさん「超人ロック」の原画があるから、こんどあげるとゆー話を聞いて、社交辞令でもうれしくおもって機会があれば下さいとお願いして帰る。カラーだとか。こーゆー話を聞くと、漫画の編集者っていーなー、なりたかったなーと思う。

 家に帰って「エーベルージュ」の続き。2時間たっても全然終わりそーもない。初等部は卒業して中等部はシナリオになくって、よーやく高等部の年末まで来た。あと2年と少しある。あいかわらず平日に花を買いにいって週末ごとに花を配りまくって女の子たちの機嫌を取りまくっている。あの女の子もこの女の子もその女の子も、たとえゲームだと解っていても、無視されたりふられたりするのはしゃくにさわるのである。がしかし、現実世界で女の子にプレゼントをしたことはおろか、声をかけたことすらない人間が、こーゆーゲームでこーゆーこをしている様は、端で見ていると大変見苦しーものではないだろーか。知ってたら止めろって? 止められないんだよ、これが。困ったなー。本が読めない。

 とは言いつつ、夢枕獏さん大推薦の森福都さんの「炎恋記」(講談社X文庫、850円)とゆー本を、しこしこ読んでいるんだけど。苦手なチャイナ・ファンタジーの系譜に属する話なんだけど、中国的な部分は広い大陸をいろいろな国々が群雄割拠していることとか、人名や名詞に漢字を使っているとゆーことくらいで、これをカタカナにかえれば、そのまま西洋風ファンタジーになりそーな内容だから、読んでいてそれほど苦にならない。200ページあたりまではいまいち盛り上がりに欠けているけど、獏さんが絶賛しているんだから、きっと後半にすっごいヤマがあるんだろー。でも「エーベルージュ」があるから、いつ頃読み終えられるのかちょっと不明。ゲームはほんと、読書時間を惜しみなく殺す。


【10月21日】 明け方の3時頃まで選挙速報を見ていたのでとても眠い、とゆーのは表向きの理由。裏では富士通から調達したゲームソフト「エーベルージュ」を明け方の3時までごりごりとやっていた。調達してから2週間くらい経っているのに、これまでハードディスクの空きがなくってインストールできなかった。先週1ギガを増設したことで、よーやく試せる環境が整った。

 始めたのが選挙結果がほぼ出そろい、体勢が決した夜の11時頃。最後の1議席が決まるの決まらないのとやっているニュースの音声を後ろで聞きながら、そうかそうかこれが育成シミュレーションか、ふんふん、なに、生意気な女め、俺の花束を受け取れねーのかこの野郎・・・・などと泥沼にはまってしまい、気が付いたら夜がしらみ始めていた。なのにまだ5年分ある育成期間の1年にも達していない。いったいクリアまで何10日かかるやら。めざすあの娘とゴールインできのやら。しかしほんと、ゲームは読書の時間を惜しみなく奪う。悪魔の玩具だ。

 「WIRED」の最新号は「21世紀のサイバーモード」が特集。大原まり子さんが2本ほど、原稿を寄せている。ほかにか「カラークラッシック」をいかにハイスペックにするかに挑む人たちの話とか、幻とか太古のとか生きている化石とか言われながらも、どっこい現役で隠れたところで生き続け、かつ増殖し続けているOS「TRON」に関する記事だとかが載っていた。そーだ「日記猿人」も画面写真入りで紹介されていたぞ。ほかにはパイオニアLDCの新作にして幻と化した名作ソフト「ノエル」の記事とか。始めたばっかりでこーゆーのもなんだけど、「エーベルージュ」の次は「ノエル」のクリアが目標だ。その前にプレステ買わねば。1万円くらいまで下がらないかなー。

 一人で200行近く書いても紙面が埋まらず、山となった資料から、記事になりそーな話を掘り起こして記事にする。ファックスで送られてくるその日の発表資料も当然即記事化。出版取り次ぎ大手のトーハンが大阪の文房具商社と組んで文具の書店向け販売を強化して、書店の複合化支援に乗り出す話とか、大阪のソフト開発会社・コンテックが安いビデオコンバーターを発売する話とかをまとめて記事化。3時すぎに一息ついたところで、神楽坂にある映像関係の会社に取材に出かけ、最近の動向をいろいろと聞いてくる。

 帰りがけにどこかで見たことのある人に呼び止められて、どこかで見たことある人だけど、どこの人だったのかがすぐに思い出せず、申し訳ないことをしていまった。会社名を言われてすぐに納得。そーだこの顔だこの人だったと思い出せた。いったい自分の記憶の引き出しは、どーゆー分類で整理・収納されているのだろーか。ほとんど雨が降れば桶屋が儲かる的キーワードの連想で、顔や名前と会社名がつながっているに違いない。

 家に帰って「エーベルージュ」の続きを始める。当たるをさいわい気を遣いまくり、花束を贈りまくって女の子たちのご機嫌をとっているのに、軟弱者の寂しさよ、体力がともなわずすぐに病気になって寝込んでしまい、挙げ句にテストでは最低の点数をとって、皆からバカにされている。1週間分のスケジュールをマウスでクリックして入力しているうちに、次の週、次の週と止まらなくなって、気が付くとはや時計は深夜零時を回っていた。なのにまだ2年目の6月までしか進んでいない。しばらく本を読むスピードが、大きくダウンしそーな予感がする。いかんなあ。あっ、また嫌われた。拗ねないでくれよう。花束をあげるからさ。


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