檀 ふみ著作のページ


1954年(?)東京生、慶応義塾経済学部卒。作家檀一雄氏の長女。高校在学中に女優デビュー、78年芸術選奨新人賞を受賞。99年阿川佐和子との共著「ああ言えばこう食う」にて第15回講談社エッセイ賞を受賞。


1.ありがとうございません

2.ああ言えばこう食う

3.ああ言えばこう(×嫁)行く

4.まだふみもみず

5.太ったんでないのッ!?

6.父の縁側、私の書斎

7.けっこん・せんか

8.どうもいたしません

9.アガワとダンの幸せになるためのワイン修行−ゴージャスワイン編

10.アガワとダンの幸せになるためのワイン修業−カジュアルワイン編

 


 

1.

●「ありがとうございません」● 



1998年06月
日本経済
新聞社刊
(1200円+税)

2001年04月
幻冬舎文庫化

1998/12/19

ダンフミさん2冊目のエッセイ集とのこと。収録エッセイはかなり長期にわたっています。1992〜1997年、日経新聞+日経流通新聞に掲載されたもの。

ダンフミさんを最初にTVで見た頃、如何にもお嬢さんらしい人でした。ご本人には失礼ながら、それから20年近くも経つと随分イメージも変わります。
でも、そのイメージを変えたのは、何を隠そうご本人のエッセイなのです。外見に似て伸び伸びとした雰囲気に、外見に現れなかったボケーッとした、不器用なところが公開されて。そんなところが、本書を気軽に楽しめる理由です。
阿川佐和子さんとの往復エッセイではダンフミさんの可笑しさが際立ちましたが、本書ではささやかに可笑しい。万歩計の話等では、くすっと笑ってしまいました。
ダンフミさんと私は同学年の筈です。そんなところから、共感をもって読めるのも楽しさのひとつです。

ありがとうございません/心の支え/嫁入り前/幸運な女たち

 

2.

●「ああ言えばこう食う」(阿川佐和子・共著)● ★★ 第15回講談社エッセイ賞




1998年09月
集英社刊
(1500円+税)

2001年06月
集英社文庫化

 

1998/09/29

“口から生まれた双子座”ダンフミと“天然の饒舌”アガワサワコのお二人による往復エッセイ。
2人とも同年代、独身、父親が作家という共通点を持つものの、ダンフミさん言うとおり、背格好、性格からまるで正反対。そんな2人ですから、お互いの違いが際立ち、興に乗り、思わずいらぬことまで書き出してしまう、という可笑しさが随所にあります。
2人とも結婚しなかった(ご本人たち曰く「今のところ」)だけに、少し変わっているところに磨きがかかり、更に熟女に至ってもう抑えがきかない、ということみたいです。
ダンフミさんとは同学年だけに、親近感を持ってかつ他人事として、同級生の話を聞くような楽しさがあります。
アガワさんは従来のイメージどおりに愉快なのですが、ダンフミさんがこんなに楽しいエッセイを書くとは思いもかけませんでした。これもA・A女優(「アフター・アガワ」の由)となるに至った効果なのでしょうか。
所々に出てくるお互いへの辛辣なセリフが、特に楽しめます。

文庫化に伴う追記
文庫化あとがきは、お2人+五木寛之さんの対談。そもそもは五木さんの発案だったとか。このあとがきだけでも、充分面白いです。単行本で読書済みの方は、是非立ち読みをお薦めします。

 

3.

●「ああ言えばこう(×嫁)行く(阿川佐和子・共著)● ★★




2000年09月
集英社刊
(1500円+税)

2003年05月
集英社文庫

 
2000/09/03

前著ああ言えばこう食うが絶賛だったことから、2匹目のドジョウを狙った続編 往復エッセイ
前著をそのうち再読しようと思っていたところが、書店の平台の上に本書を見かけ、読み直す前に続編が出ちゃった!というのが正直なところです。

前著は、予期しない面白さ!というのが魅力だったのですが、さすが2冊目ではそれは通じず、予期した範囲内の可笑しさに留まってしまいます。壇さんのおっとり過剰も、もはや既知のこととなってしまいました。
その分本書では、お2人のお互いへの毒舌が、多少エスカレート気味。「こんなに悪口を言い合って、お二人の仲は大丈夫なんですか?」と心配されるのも、当然のことでしょう。
とは言っても、読めばそれなりに可笑しく、楽しいのは相変わらず。私にとっては、同年齢のお仲間気分で読む楽しさがありますので(当方の勝手な思いですが)。
それにしても、2人の共通点が紙袋にあったとは。まあ、紙袋というのはやはり便利なものに違いありません。
前著のテーマが
食事だったのに対して、本書のテーマはだそうです。

   

4.

●「まだふみもみず」● 




2000年06月
幻冬舎刊
(1400円+税)

2003年08月
幻冬舎文庫化

 

2000/12/25

ダンフミさんと、阿川佐和子さんのエッセイを何故好んで読むのかというと、お2人には同級生的な親しみを勝手に私が抱いているからです。本書も、そんなことから読んだ一冊。
ダンフミさんのエッセイには、その人柄を表すように、人の好い、のんびりとした雰囲気があります。そのため、読みながらくつろいだ気持ちになれるのが、その良さでしょう。人から何度注意されても忘れ物をする習性、ちょっとした買い物にも女優とは思えないケチケチ根性を発揮する本性、いくら注意されても注意が足りず呆れられる、そんな普段着の姿を見せられると、フミさんへの親しみが増します。ご本人には失礼ながら、女優よりエッセイストの方が存在価値は高いかも知れません。
生まれてから○十年、住む家も、同居する相手も変わらず、自宅と仕事場を往復するだけの単純な生活とご本人は言うものの、そこはやはり女優さんだけあって、我々から比べるとその行動範囲ははるかに広いのです。イギリスやオーストラリア等、外国へ滞在した折のエッセイは、ことのほか楽しく読めました。
温泉につかりたいと思うが如く、のんびりしたいと思った時に、ちょうど良い一冊です。
※本書の題名は、和泉式部の娘・小式部内侍の和歌から、「文」と「ふみ」を掛けてつけたものだそうです。
 

イギリスはあやしで満ちている/オーストラリアでのあさましな初舞台/アフリカ、カナダ、旅はゆかし/日本の醍醐味はすずろなり/恋をしたら何もかもがあはれでをかし/父・壇一雄とのいとかなしな別れ

 

5.

●「太ったんでないのッ!?(阿川佐和子・共著) ★☆



 

2003年09月
世界文化社刊

(1300円+税)

2007年05月
新潮文庫化

  
2003/09/07

阿川佐和子+檀ふみというコンビ、すっかり定着してしまいましたねぇ。本書も、このコンビあってこそのエッセイ、という印象です。
お2人に共通する点は数々あれど、まず第一に食欲、美食へのこだわりがある、と言って良いでしょう。それあってこそ、本書の美食譚があるというもの。
本書は、雑誌「デリシャス」に連載されていたエッセイとの由。
構成としては、集英社の往復エッセイと同じ。はじめにお互いへの簡単なコメントがあり、美食版往復エッセイの後には、再びお互いの近況に対するコメントがあります。
ただ、やたらとお2人の顔写真、それを飾るイラストが織り込まれているものですから、お2人の表情を思い浮かべながら楽しめる、という趣向。
それにしても、これだけ美食を楽しめる、食べることに情熱を燃やせるというのは、羨ましいこと。
銀座の高級仏料理店のこと、その美味しさ故に舐めまくりだった佐和子さんに対し、クレームブリュレの無料追加サービスがあったとか。本書を象徴する可笑しいエピソードです。
終わりの方で、仏コートダジュール行きのことが書かれていますが、これは先般TVで見たグルメ紀行のことか。
ちとマンネリ化の向きもありますが、食いしん坊には楽しい一冊です。

    

6.

●「父の縁側、私の書斎 ★☆



 

2004年01月
新潮社刊

(1400円+税)

2006年09月
新潮文庫化

 

2004/02/10

帯にある阿川佐和子さんの紹介文は次のとおり。「この家には、私の知らないしっとりと美しいダンフミが住んでいる」

父君・檀一雄氏の思い出に関する部分(「父の縁側」)が書き下ろし、ダンフミさんの屋根裏部屋兼書斎を初めとした自家に関する部分(「私の書斎」)が雑誌「モダンリビング」の掲載文、という内容のエッセイ集です。
表紙写真の着物での後姿といい、上品な雰囲気ある檀さんが、何故佐和子さんと一緒になると、ああも変わるものか。
佐和子さんが「私の知らない(中略)ダンフミ」と言うのは、当然のことなのです。佐和子さんと一緒になった途端、ダンフミさんは豹変してしまうのですから。
檀一雄氏の思い出に関わる書下ろし部分は、貴重に感じられます(※阿川父娘とは対照的。どちらが良いとも言えませんが)。檀氏亡き後も、未だ家の中には檀氏の面影がずっと残っているようです。
その部分に印象を引っ張られついしんみりしたものを感じてしまうのですが、檀ふみさん自身に関わる部分になると、抑え気味ながらやはりそそっかしいところが多分にあるようです。
表紙写真の楚々としたその着物姿に騙されまいと思いつつ、本書を読むのもまた楽しい。

能古島の家(月壺洞)/建てたそばから後悔は始まる/石神井の家(瓦全亭)/他人の住まいはよく見える/離れ(奇放亭)/思い出は日ごとに美しい/死んだ親があとに遺すもの/モノは限りなく増殖する

  

7.

「けっこん・せんか(阿川佐和子・共著) ★★

  

 
2004年03月
文芸春秋刊
(1600円+税)

2007年06月
文春文庫化

 

2004/03/30

阿川佐和子・壇ふみコンビによる共著の4冊目、そして初の対談集。
1987年から2000年までの間に行われた対談12回。それに付け足して、22年目の書下ろし対談が4回。さらに余人を交えての対談が5回という盛り沢山な構成。
さすがに往復エッセイ2冊を読了していると、目新しい話はあまりありません。史上稀にみる美女2人の凸凹コンビといえども、さすがにネタが尽きてきたかなと思う次第。それでも、通勤電車でつい乗り過ごしそうになるのですから、面白いことは面白い一冊と言うべきなのでしょう。
読む楽しみというのは対談集でも変わることはないのですが、この2人ばかりは、文字だけでは物足りません。口調、表情、手振り、それも是非愉しみたい! DVDビデオで売り出せばきっと売れると思うのですが、それは無理な注文でしょうか。つくづく惜しまれます。
なお、本書では、余人を交えての
鼎談・座談会の方が面白い。

はじめに/あのとき、アンタは若かった/いま、結婚したい・・・/私たち恋上手です/日米お見合い摩擦/お楽しみはこれからよ/ダンさんは性欲強いほうですか/もう愛の話は聞かないで/それでもお皿は回る/結婚なんて、ばっかみたい/アガワは「火宅の人」の隠し子だった/いまどのくらい不幸?/言っていいこと、悪いこと/若けりゃいいてもんじゃない/タブーを破って「男」の話/親が小説家だからお嬢さま?
〔鼎談・座談会篇〕「作家の娘」父を語る(x大浦みずき)/気分はいつも適齢期(x関川夏央x山口文憲)/我ら焼肉を愛す(x福田和也)/すべてはこの犬がいけないのよ(x檀バジル)/永遠の七五三、永遠の幻(x野坂昭如)
私たちがバアサンになっても/おわりに

   

8.

●「どうもいたしません ★☆



 

2004年08月
幻冬舎刊

(1400円+税)

2007年08月
幻冬舎文庫化

 

2004/12/30

TVで檀さんを見かけると、いかにもNHK好みの、楚々とした和風美人女優としか思えないのです。
それなのにあぁ、エッセイを書かせるやとんでもないエピソードが次々と飛び出してくるのです。当のご本人はというと、恥ずかしさなどなんその、むしろ楽しげにどんどん自分の恥を暴露している。
外見と中身のこのギャップの大きさ! 思わずTV画面の檀さんを見つめ、可笑しくなってしまうこと度々です。

本書は、日経流通新聞掲載のコラムありがとうございません1998.1〜2004.4分を収録したもの。本書を読むのはずいぶんと遅くなってしまいましたが、読み始めると、とにかく楽しい。
ここまで自分のボケぶりをさらけ出してしまう美人女優って、貴重というか、前代未聞なのではないでしょうか。

本書中、思わず笑い出してしまったのは「悲しき雨女」「朝の夕焼け小焼け」の2篇。
一方、呆れてしまったのは「予行演習」。マネージャーが深い絶望から上げた悲鳴だという「だって、だって、講演は明日ですよッ!」という言葉が、今も頭の中でこだましています。

女優道/オバサン界に涯なし/めぐり逢えない/ほっといて/大バカの壁

      

9.

アガワとダンの幸せになるためのワイン修行−ゴージャスワイン編 ★★

  

 
2005年09月
幻冬舎刊

(1300円+税)

 

2005/12/11

  

amazon.co.jp

図書館にたまたま入庫していたので借り出した一冊。
佐和子さん+ダンフミさんのエッセイもだいぶ読んだし、いまさらワイン本でもと思いつつ読み始めたのですが、ことのほか面白く+楽しい一冊でした。

有名ソムリエ+αが毎回入れ替わって登場し、サワコさんとダンフミさんにワインの手ほどきをするという趣向。
まずは赤ワインから始まり、白ワイン、シャンパーニュ、熟成したワイン、カリフォルニアワイン、ワイングラス、イタリアワインときて、締めくくりは幸せになるワインの楽しみ方。
ウ〜ン、いいですねェ。サワコ・ダンフミお2人がどんどんワインの味を判るようになっていくのですが、それはこうしてワインの説明を伺いながら飲み比べてみるからこそ。
なかなか普通人はこんなことできませんよ。出版社とかがバックについていて取材費で落としてくれるからこそ。羨ましい。
最後の方になると味への表現も相当に深いものになってくるのですが、読んでいるだけで少しも飲んでいない人間には判らない!

最初の方は行儀良かったサワコ・ダンフミさんも、5回目の江川卓講師あたりからかなり遠慮がなくなり、平然と脱線もするし、講師が苦笑させられることも多くなってきます。
有名ソムリエが苦笑するだけでなく、呆れ、声を強める場面もしばしば。終わった後の江川氏の言葉「わりとさー、プレッシャーかかって大変だったんだよー。(中略)いやー、疲れた」には実感が篭ってました。
「イクラ丼」「昆布じめ」「ホヤ貝」のような香りというサワコさんの譬えには流石のソムリエも苦笑するばかりですが、サワコさんの気取らない面白さが表れています。
それに対してダンフミさん、サワコさんとの対談を重ねる毎にますます性格がキツくなっているような・・・。
ともかくも、飲まないのに、至福の時間を過せた一冊です。

※ワイングラスによってワインの味がそうも変わるとは、思ってもみませんでした。いやー、勉強になった。

違いがわからぬオンナたち.赤ワインを嗜む(ソムリエ:仲田勝男)/白ワインの華麗なる変身。危うし、赤ワイン(若林英司)/ロマンスと誘惑のシャンパーニュ(広瀬一峰)/熟女二人、古酒を味わう(山本博)/江川氏に学ぶワインと男の選び方(江川卓)/友達とワイングラスは大きいに限る!?(若林英司)/イタリア最高峰のワインついに登場(黒田敬介)/アガワとダンの幸せワイン(中本聡文)

    

10.

アガワとダンの幸せになるためのワイン修行−カジュアルワイン編 ★★

  

 
2005年09月
幻冬舎刊

(1300円+税)

 

2007/01/06

 

amazon.co.jp

今回は上記の「ゴージャスワイン編」に代わって「カジュアルワイン編」
したがってワインは、カリフォルニアニュージーランド等々のニューワールドのワイン、ボルドーやブルゴーニュの名産地とは違った味わいのあるシャンパーニュラングドッグ、さらにキアンティに代表されるイタリア、スペインと、若くて気軽に飲めそうなワインたちへとワインの世界は広がっていきます。
珍しいと思うところでは、中華に合うワインという切り口。

サワコさん、ダンフミさんのおしゃべりは相変わらずというか、ますます絶好調。講師の先生たちに遠慮する気配は少しあるものの、すぐに言いたい放題の名コンビを発揮し、ワインの薀蓄と合わせて楽しいことしきりです。
遠慮容赦ない2人を前に、生真面目に講師役を務める毎回のソムリエたちの時に呆れ、時に辟易し、時にキレそうになる様子もまた楽しい。

芸能人等々を羨ましく思うのは、世界のあちこちに仕事で行けること、めったに食べられない美味しいものを食べられることですが、本書のワイン修業も同様。こんなにいろいろなワインを、しかも懇切丁寧な解説付きで味わえるなんて、フツー人には得られるものではありません。
ただそれは外部要因の問題ですけれど、私の場合は内部要因もあり。アルコールに極めて弱く、普段全くお酒類を飲んでいない私のような場合、グラス1杯飲んだだけでもうダウンしてしまい、次々と比べながら飲んでいくことなどできようもありません。
ですから、こうして読んで想像するだけでも、至福の時。

めぐりあえなかったワインたち(ソムリエ:後藤聡)/ブルゴーニュの女改め、中華な女(高橋時丸)/男もワインも掘出し物が一番!(吉岡慶篤)/南イタリアの「おらがワイン」(渡辺陽一)/初恋の人、キアンティとの再会(金子眞治)/安くておいしいスペインワイン(畠盛敬二)/お見それしました。スパークリングワイン殿(渋谷康弘)

  


 

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