柚木
(ゆずき)麻子作品のページ No.3



21.マジカルグランマ

22.らんたん

23.ついでにジェントルメン

【作家歴】、終点のあの子、あまからカルテット、嘆きの美女、けむたい後輩、早稲女・男・女、私にふさわしいホテル、王妃の帰還、ランチのアッコちゃん、伊藤くんAtoB、その手をにぎりたい

柚木麻子作品のページ bP


本屋さんのダイアナ、ねじまき片想い、3時のアッコちゃん、ナイルパーチの女子会、幹事のアッコちゃん、奥様はクレイジーフルーツ、BUTTER、さらさら流る、名作なんかこわくない、デートクレンジング

柚木麻子作品のページ bQ

 


                     

21.
「マジカルグランマ Magical Grandma ★★


マジカルグランマ

2019年04月
朝日新聞出版

(1500円+税)

2022年07月
朝日文庫



2019/05/09



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浜田正子、74歳、元女優。
映画監督の夫とはもうずっと家庭内別居状態。

先輩女優のアドバイスを受けて女優に復帰したところ、仕事は順調、携帯電話のCMにも出演し「ちえこばあちゃん」として広く人気を集めます
ところが、夫の死に際して洩らした一言からネットで叩かれ、仕事から干されてしまう。さらに国民年金は受給できず、夫の生命保険は解約済、古い洋館の自宅は売却困難のうえに、夫に2千万円の負債ありと、今後の生計を考えるとまさにお先真っ暗。
そんな苦境の中、なりふりかまわず正子が実行し始めたことといえば・・・。

最初に正子が見せたのは可愛いおばあちゃん像、その後一転してドタバタ劇、それからとんでもない方向へどんどん転がり出すというところが、柚木麻子作品のいつもながらの面白さ。
70代にもなってなりふり構わず、というのが愉快ですよねー。

理想のおばあちゃん(
マジカルグランマ)像なんて他人の身勝手な押しつけに過ぎない、という正子の主張はごもっとも。そんな押しつけ像に従う必要はないのです。
そして新たな正子の行動の中、若い居候の娘=
杏奈、隣人の主婦=明美さん、近所のゴミ屋敷老人=野口さんとの間に仲間関係が出来上がっていくところが楽しい。
さらに近所の人たちも巻き込んで仲間の輪、人の輪が広がっていくところには、何とも言えない嬉しさを感じます。
助け合える仲間、人の繋がり、この辺りは柚木麻子さんが当初から描き続けて来たテーマだと思います。その点でも本書は、柚木さんの面目躍如というべきストーリィ。

しかし、そこは柚木さんだけにそれだけでは終わりません。
最後にコケるという予想外の展開、つい笑わされてしまいます。

年を取ったからといって、過去を振り返ってばかりではつまらない。前だけを向いて突き進んでもいいのだと、元気づけられる作品です。
60年代以上の方に、特にお薦め。


正子、おおいに嫌われる/正子、ものを売る/正子、またセクハラされる/正子、お化けになる/正子、虹の彼方へ

               

22.
「らんたん Lantern ★★☆


らんたん

2021年11月
小学館

(1800円+税)



2021/12/31



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冒頭、天璋院篤姫が名付け親だという一色乕児(とらじ)51歳は、初めて見合いした相手の渡辺ゆりという38歳の女性教師に一目惚れし即結婚を申し込みますが、結婚の条件としてシスターフッドの契りを結ぶ一回り上の友人=河合道との同居を提示され仰天します。
3人の奇妙な関係あるいは女性2人の友情を描く物語かと思われるところですが、そうはならず。
そこからは、河合道という一人の傑物女性の人生を描く伝記小説となっていきます。

河合道(1877〜1953)は、女性の教育に身を捧げ、日本YMCA同盟総幹事を勤め、恵泉女学園を創立した人物。
札幌で創設されたばかりのスミス女学院で学び、
新渡戸稲造の教えを受け、その支援と津田梅子らが創設した奨学金を得て米国プリンマー女子大学に留学、帰国して津田梅子の女子英学塾(現津田塾大学)の教師となり様々な活躍を経て52歳の時、一色ゆりらの支援を受けて恵泉女学園を創立。

ストーリィ、とにかく面白いです。 500頁の大長編。
明治という時代の中にあって英語を学び、新渡戸稲造らの知己を得て米国に留学し、多くの米国人女性たちと友情を結び、米国のみならず欧州へも講演旅行をするなど、その活躍ぶりには圧倒されるばかりです。
そして道の教育方針は、教え子たちに広い世界を示し、可能性や機会を与えることにあったと言うべきでしょう。
男女平等を実現すべく邁進した先駆者の一人と言えます。
また、軍国主義に満ちた戦時中に示した韜晦ぶりは中々のもの。
常に明るさと前向きな姿勢を捨てないその人物像には魅了されます。

そうした道の活躍の基盤には、多くの女性たちとの間におけるシスターフッド(女性同士の連帯)の関係があった、というのが本作から感じるメッセージです。
柚木麻子さん、元々デビュー当時から、女性同士の友情をテーマとされてきましたし。

ストーリィに登場する人物も多彩で興味深々。
新渡戸稲造夫妻や津田梅子を始めとし、
徳富蘆花有島武郎広岡浅子(大同生命創業、日本女子大学設立に関与)、市川房枝、村岡花子、そしてGHQ高官のボナー・フェラーズとの長きに亘る親交等々も描かれ、少しも飽きません。、

※題名の「らんたん」は、道がプリンマー女子大学で経験した、らんたんの光を灯すという伝統行事を彷彿させます。最初の自叙伝の題名も
“My Lantern”ですし。

第一部/第二部/第三部

               

23.
「ついでにジェントルメン Tired of taking a backseat to gentlemen ★★


ついでにジェントルメン

2022年04月
文芸春秋

(1400円+税)



2022/05/04



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柚木麻子さん初の“独立短篇集”とのこと。

これがとても面白い、柚木麻子さんならではの痛快な面白さを堪能できる一冊、と言って良いでしょう。
加えて“女性の、女性による、女性のための短編集”とも言いたいところです。

何だ彼んだといっても女性は、過去も現在も男性に比べて不利益を被っていることが多いし、常に男性たちから上から目線で見られがち。そんな憤懣を思い切り吐き出した、という印象を受けます。

・冒頭の
「Come Come Kan!!」は、新人賞を受賞して作家デビューしたものの、その後担当編集者からへこまされ続けている原嶋覚子・25歳が主人公。
文藝春秋社一階にあるサロン、そこにある菊池寛の胸像が覚子に声を掛けてくるという展開が面白い。

痛快なのは「エルゴと不倫鮨」「立っている者は舅でも使え」「あしみじおじさん」の3篇。

・若い女性を高級鮨店に連れて行き、落とそうと企んでいる中年男たちを、授乳中だったとヨレヨレのTシャツで現れた中年女性が蹴散らして見せる、という展開が
「エルゴと不倫鮨」
・夫の浮気に見切りをつけ、2歳の息子を連れて家を出た桃を、自分も家を出てきたという舅が追ってきて、何でもしますから置いてくださいと訴える
「立っている者は舅でも使え」は、こりゃ愉快。

・「ハイジ」や「あしながおじさん」「赤毛のアン」「少女パレアナ」等、少女を主人公にした名作のファンなら嬉しくてたまらないのが
「あしみじおじさん」
現代版「あしながおじさん」物語というストーリィですが、主人公である
内田亜子・18歳の行動ぶりが楽しい。
確かにウェブスター「あしながおじさん」には、耳の遺体痛いところがあるよなぁと認めざるを得ません。

・最後の
「アパート一階はカフェー」は、同潤会が建てた実在の大塚女子アパートメントハウスを舞台にした、1931年当時のストーリィ。
この篇にも菊池寛が登場します、女性に理解ある男性として。


Come Come Kan!!/渚ホテルで会いましょう/勇者タケルと魔法の国のプリンセス/エルゴと不倫鮨/立っている者は舅でも使え/あしみじおじさん/アパート一階はカフェー

  

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