ジーン・ウェブスター作品のページ


Jean Webster  1876〜1916 米国ニューヨーク市生。母方の叔父にマーク・トウェイン、父親は出版社経営という環境に育つ。バッサー大学卒業後、1903年「パッティ、カレッジへ行く」を出版、1912年発表の「あしながおじさん」にて名声を得る。1915年結婚し、翌16年女児を早産した2日後39歳にて死去。執筆作品は次のとおり。

When Patty Went to College,1903 The Wheat Princes,1905 Jerry Junior,1907 The Four-Pools mystery,1908 Much Ado About Peter,1909 Just Patty,1911 Daddy Long Legs,1912 Asa(a play),1914 Deay Enemy,1915


1.おちゃめなパッティ大学へ行く

2.おちゃめなパッティ

3.あしながおじさん

4.続あしながおじさん

  


  

1.

●「おちゃめなパッティ 大学へ行く」● ★★ 
 原題:"When Patty Went to College"        訳:臼田庶 


おちゃめなパッティ大学へ行く画像

1903年発表

1967年
講談社
マスコット文庫

2004年05月
ブッキング刊
(1500円+税)


2004/05/23

ストーリィとしては「おちゃめなパッティ」の続きになりますが、実は本作品がウェブスターの処女作。元々は雑誌に連作として発表した短篇を一冊にまとめたものだそうです。
茶目っ気たっぷりなパッティのカレッジ生活をユーモラスに描いた作品集。ただし、現在の感覚からいうと、かなり穏やかなユーモア。

本作品におけるパッティは、寄宿制のカレッジ生。他の生徒が規則にしたがう普通の生徒であるのに対して、パッティはちょっと違う。悪戯心も旺盛で、時に規則を平気で破ったりする。それでも、気がよくて根は正直、他人を気遣うところもちゃんと持っているパッティは皆の人気者、という主人公像です。

カレッジ生・パッティからは、後にあしながおじさんジュディに発展する要素が幾つも窺えます。しかし、何故この作品が日本で読まれなくなったかというと、「パッティ」は所詮裕福な階級の恵まれた娘である故のストーリィだからか。
同じ大学生となってもその中身は孤児であり、孤児であるが故に感受性の幅が大きいジュディには、その点で及びません。
とは言っても、当時は女性の礼儀作法についてやかましかった時代でしょうし、そうした時代背景を考えるとパッティは格別に生き生きとした主人公だったことでしょう。現代からすると穏やか過ぎるとはいえ、そのユーモア精神は充分に楽しい。
また、本作品には「あしながおじさん」のジュディの原型を見るという楽しさもあります。

     

2.

●「おちゃめなパッティ」● ★★
 原題:"Just Patty"     訳:遠藤壽子 


おちゃめなパッティ画像

1911年発表

1956年
三笠書房刊

2004年03月
ブッキング刊
(1500円+税)

 

2004/03/22

1956年に刊行された三笠書房版の復刻本。ウェブスターとしてはあしながおじさんより前の作品になります。
当時の訳そのままの復刻ですが、新たに印刷された所為か、少しも古く感じません。ちなみに、あとがきによると訳者の遠藤壽子さんはそれまで「蚊とんぼスミス」という邦題だった名作を「あしながおじさん」に変更した方だそうです。

訳については古さを感じませんが、小説の舞台には古さを感じます。上流階級の女子を礼儀正しく育てるという寄宿学校、聖アーシュラ学園が本ストーリィの舞台。さしずめ古き良きアメリカといった観があります。
主人公のパッティ・ワイヤットは、生徒の中でも特に明朗かつ利発で人気者。ユーモアもあるし気転も効く、といった少女です。いわゆる少女物語の主人公と異なるのは、出来すぎた優等生的少女ではなく、時に大胆な行動力を示す果敢さを有している点でしょう。
しかし、「あしながおじさん」のジュディに比べて物足りないのは、所詮良家の子女であって生活に心配がない点、ジュディのような自立心が与えられていない故です。

ストーリィは長篇というより、いろいろな出来事を描いた短篇からなる作品と言った方が良いでしょう。
少女たちの若々しさ、寄宿学校ならではの楽しさ、ユーモラスな出来事等々、気持ち良く楽しめる作品です。
途中、パッティにボビーおじさんと呼ばれるペンデントン氏が登場したりと、後の「あしながおじさん」に通じる要素を幾つか見出せるのも、楽しさのひとつです。

     

3.

●「あしながおじさん」● ★★★
 
原題:"Daddy Long Legs"     訳:松本恵子


あしながおじさん画像

1912年発表

1954年12月
新潮文庫

第34刷
1972年11月


2000/01/16


amazon.co.jp

私の愛読書のひとつです。
手許にある文庫本はもう30年も前の本で、すっかり黄ばんでいますが、読むのに少しも気になりません。
主人公は、ジョン・グリア孤児院で育てられた
ジルーシャ・アボット。彼女が書いた作文がある評議員の眼に止まり、彼女はその後援を得て大学へ入学することになります。後援者からの条件は2つ。後援者の名を秘密とし、仮にジョン・スミス氏とすること。そして、月に一度ジョン・スミス氏宛てに手紙を書くこと。そして、ジルーシャは女子大学の寄宿舎に入り、ジュディとして、彼女の命名による“あしながおじさん”宛てに手紙を書き続けることに なるのです。
本書の魅力は、類稀なユーモアと機知、さっぱりとした明るさ、時折挿入される絵等からの楽しさが、満ち溢れていることです。その中で、孤児院から初めて世の中に出た娘の驚き、女性としての成長、あしながおじさんへの愛情、そして初めての男性への愛が書き綴られていきます。本書は書簡体小説の傑作である、と言いたい所以です。
ジュディの最後の手紙は、何度読んでも楽しい感動があります。

今読み返すと、ジュディが古今の名作をかなり読んでいることに気づき、興味をそそられます。エリオットギボン「ローマ帝国衰亡史」サミュエル・ピープスの日記「ハムレット」ブロンテ「ジェーン・エアなどが取り上げられており、 楽しくなります。

※映画 → 「あしながおじさん

     

4.

●「続 あしながおじさん」●  ★★☆
 原題:"Dear Enemy"      訳:松本恵子


続あしながおじさん画像

1915年発表

1961年08月
新潮文庫

第70刷
2005年09月

   

1977/03/17
2000/01/22
2007/05/10

本書の主人公は、前作でジュディの学友だったサリー・マクブライドです。
サリーがジュディ夫妻に頼まれ、ジョン・グリア孤児院の院長を引き受けるところからストーリィは始まります。
本書も前作同様、サリーの書簡からなる作品。
手紙の相手は殆どがジュディなのですが、サリーの恋人ゴルドン・ハロック、スコットランド人の医者ロビン・マックレイ宛ての手紙がその中に混じります。そのドクトルに対してサリーが奉った愛称が「敵様」、つまり Dear Enemy なのです。
どうしても、前作「あしながおじさん」と比べてしまいますので、前作ほど面白くなかった、という感想になってしまうのは仕方ないところ。
前作のように、相手が一体どんな人か判らないというスリルはありませんし、女学生と結婚適齢期の女性では話し振りにも相当の違いがあります。また、孤児院がストーリィの舞台とあっては、あまり明るいことばかりではありませんしね。

その一方、ジョン・グリア孤児院におけるサリーの改革案を通じて、孤児院の問題・在り方、それに対する作者の意見が様々に明らかにされています。
それにしても、サリーが他人に会うたび「その人はジョン・グリアにどう役に立つのか」といつも考えてしまうというくだりは、お嬢様だったサリーの変貌ぶりを語っていて愉快です。

前作のような傑出したユーモア作品ではありませんが、孤児院の問題を明るく、ユーモラスに語った作品としてみると、やはり優れた作品だと思います。

(07.05.10再読)
ユーモア精神に満ちた書簡体小説ですから、楽しいことしきりです。サリーという主人公も良いし、手紙の相手は殆どはジュディだというところも良いのでしょう。
そのうえ、孤児院問題についても考えさせられること沢山あります。でも堅苦しくなく、明るく前向きに語られているところが素晴らしい。
だからこそ、院長サリーの手によってお手伝いに引っ張り込まれてしまう人が次々と現れるのでしょう。

  


 

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