椰月
(やづき)美智子作品のページ No.3



21.伶也と

22.14歳の水平線

23.明日の食卓

24.見た目レシピいかがですか?

25.つながりの蔵

26.さしすせその女たち

27.緑のなかで


【作家歴】、十二歳、未来の息子、しずかな日々、体育座りで空を見上げて、みきわめ検定、枝付き干し葡萄とワイングラス、るり姉、ガミガミ女とスーダラ男、坂道の向こうにある海、フリン

 → 椰月美智子作品のページ No.1


ダリアの笑顔、市立第二中学校2年C組、恋愛小説、純愛モラトリアム、どんまいっ!、かっこうの親もずの子ども、シロシロクビハダ、その青のその先の、消えてなくなっても、未来の手紙、伶也と

 → 椰月美智子作品のページ No.2

 


          

21.

「伶也と ★★☆


伶也と画像

2014年11月
文芸春秋刊
(1300円+税)

2017年12月
文春文庫化



2014/12/08



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ごく普通の女性であった瀧羽直子は、31歳の時に転職。その転職先で同僚となった年下女性に誘われてロックバンド「ゴライアス」のライブに出掛けるのですが、ヴォーカルの黒沢伶也を一目見た途端に、その虜になってしまいます。
その時から始まり、その一生を、伶也への愛を貫き続けて生きた一人の女性の姿を描いた圧巻の長編小説。

これまで子供たちや10代の青少年を描くことの多かった椰月さんとしては、新たな領域へ足を踏み出す意味合いをもった作品と思います。

最終的な結果は冒頭で示されていますから、本作品は結末がどうなるか読んでみないと判らないといった波乱万丈の恋愛小説ではなく、どういう愛であったのか、を主眼として描いた作品であろうと思います。
一言で言ってしまえば、“無私の愛”。
どんなことがあっても(多少揺らぐことはあったにしろ)、生涯に亘り一度としてその一途な想いは薄れることなく、また変わることはなかった・・・・それだけでも凄い、圧倒されるばかりです。
人はどれだけ他人を愛し尽くすことができるのか、それをリアルに描いたストーリィと言えます。

自分のことなどお構いなしに、相手にひたすら尽くした愛。
でもそれは、相手のためになる愛だったのか、それとも所詮は自己満足のような愛だったのか・・・。
「幸せでした」という言葉とその一生をどう理解するかは読み手次第だと思いますが、ひとつの圧倒的な愛の姿であったことは間違いありません。

        

22.

「14歳の水平線 ★★☆


14歳の水平線

2015年07月
双葉社刊

(1500円+税)

2018年05月
双葉文庫化



2015/08/22



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児童作家の桐山征人は息子の中学入学時に離婚し、その後は息子の加奈太と2人暮らし。しかし、その息子が何か憤懣を抱え、好きだったサッカー部も何時の間にか辞め、成績もガタ落ちであることにまるで気付かずにいた。
どう息子に接して良いのか判らない征人は、加奈太を誘い、母親が一人で暮す故郷、神様が住む島という
天徳島へ3年ぶりの里帰りをします。

本作品は、天徳島へやって来て早速に父親の幼馴染が企画した中2年向け4泊5日のミステリーツァーに参加した加奈人を主人公とした14歳の夏休み物語と、ちょうど30年前に征人が幼馴染たちと過ごした14歳の夏休みをシンクロさせて描いた少年たちの夏休みストーリィ。

加奈人が参加したツアー、国内の各地から参加した同い年の6人はさっそく3対3に分かれてしまいます。共にサッカー部だったという3人は、加奈人を含む他の3人を早々と見下した風。
しかし、「メガネ」「デブ」と見下げられた
見楽留(みらくる)光圀という2人が、付き合っていくと実に魅力的なのです。加奈太、よくぞ見下されてこの2人とトリオになれた、実に幸運だったと賞賛してあげたくなる程です。
反目しあう6人ですが、最後のテントキャンプを迎えた日、ついに・・・・。

何だかんだとそこは色々あるのですが、所詮彼らは未だ14歳という子供に過ぎないのだと実感させられるところが多々あります。でもそんな14歳という時期だからこそ眩しいばかりの夏がある、未来への視線がある、というストーリィ。
でも、どんなに感動があっても、これからもそれがずっと続く訳ではありません。14歳の夏休みという今この時しかない楽しさ、喜びであり、友情であり、輝きなのです。
父親と息子の、同じ14歳という夏休みを比較することによって、その普遍性が謳われているといった次第。
椰月美智子さん、会心の14歳・夏休みストーリィ、お薦めです。

  

23.
「明日の食卓 ★★


明日の食卓

2016年08月
角川書店刊

(1600円+税)

2019年02月
角川文庫化



2016/09/21



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同じ8歳で同じ「ヨウ」という名前の男の子を育てている3人の母親を主人公にした長編ストーリィ。
母親の姓もまた「石橋」と共通しているのですが、家庭状況はそれぞれ典型的に異なります。

専業主婦の
石橋あすみ・36歳は、専業主婦で静岡在住、夫の太一は東京に通う会社員。息子ののことがまだまだ可愛くてならない、という状況。
ライターとしての復活を目指している
石橋留美子・43歳は、2人して喧嘩ばかりしている悠宇と2歳下の次男=巧巳を相手に毎日苦闘中で神奈川在住。夫のはフリーのカメラマン。
離婚しシングルマザーの
石橋加奈・30歳は、生活のため毎日3つの仕事を掛け持ちして奮闘中。息子のは母親の苦労を分っているだけに健気。

境遇に違いはあっても三人三様、それなりに幸せだったのに、ちょっとしたことがきっかけとなって親子関係が、家族関係が破綻していく、というストーリィ。
本書のテーマが、親による児童虐待であることは明らかです。
予想もしなかった事態に次々と3人の母親は追い込まれていく。ここまでマイナス要因を積み上げられてしまうと、果たして自分が平静でいられるかどうか、手を上げずにいられるかどうか、まるで自信がありません。あるいは・・・・。

子供はどうしたら健全に育つのか。一度曲がってしまった子供をどうしたら健全に戻すことができるのでしょうか。
親も人間であり、親だからといって万能ではない、でも親である以上踏ん張るしかないのか、と考え込ませられる作品です。

※冒頭が冒頭だけに、ミステリ風味も味わえます。

                 

24.

「見た目レシピいかがですか? ★★


見た目レシピいかがですか?

2017年10月
PHP研究所刊

(1500円+税)



2017/10/20



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「見た目レシピ」って何?と思う処ですが、お化粧やファッションをトータルにイメージアップする提案のこと、らしい。

娘にダサいと言われてショックを受けた
純代、仲の良い従姉妹の勧めでイメージコンサルタントのアドバイスを受けることになります。
紹介されたコンサルタントは、「第一印象向上推進会」という肩書を名刺に載せている
御手洗繭子、元CAだという。
最初こそ緊張していた純代ですが、繭子の勧めによって変身していく我が身にびっくり。娘や夫からの評判も良く、何もかもが順調に進みだし・・・。
冒頭篇
「純代の場合」は、コミカルでハートウォーミングなストーリィ。椰月さんには珍しいなぁと思いつつ次の「あかねの場合」へと読み進むと、これがもうとんでもない、まるで真逆といった展開に、少々仰天。
そこはやはり椰月さん、安易に順調ばかりのストーリィを続ける筈もなく、曲者ぶりを発揮しています。
そして
「美波の場合」へと進むと、こう来るかぁ、とその捻りぶりには唸らざるを得ませんが、最後の顛末には思わずくすっとしてしまいます。

登場人物ならずとも気になるのはコンサルタントの繭子、いったいどんな経歴をもち、何故この仕事を始めたのか。
それを明らかにするのが最後の
「繭子の事情」。その思いがけない波乱万丈ぶりは、この一篇だけで充分読み応えあり。

全篇を通じて感じたことは、繭子がアドバイスしてくれたイメージチェンジは最終解答などではなく、自信をもって前へ進むためのきっかけということに過ぎない、ということ。

心が浮き立つような楽しさを感じる連作小説。
普段の服装なんて適当でいいや、と考えている読者に、是非お薦めです。(笑)


1.純代の場合/2.あかねの場合/3.美波の場合/4.繭子の事情

                  

25.
「つながりの蔵 Storehouse that connects you ★★


つながりの蔵

2018年04月
角川書店刊

(1400円+税)



2018/05/21



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椰月作品としては珍しいかな。少女たちを主人公にした、ちょっとファンタジーな、心温まる物語。

主人公の
遼子は現在、小学生の双子(姉弟)の母親、41歳。
その遼子の元に、幼なじみの
美音から電話が掛かってきます。
さくら小の5・6年のクラス会、当時仲の良かった
四葉ちゃんが出席するらしい、一緒に出席しないかという誘い。出席すると即答した遼子、そこから小5時代の回想が始まります。

小5のとき初めて同じクラスになった四葉ちゃんは、大人しく、一人でいることの多い女の子。ふとしたきっかけで遼子と美音は四葉ちゃんと大の仲良しになります。
その四葉ちゃんの家は、幽霊屋敷という噂のある、古くて大きな家で、今は使われていない蔵まであり。
そんな四葉ちゃんの家で、遼子と美音の2人は不思議な体験をします。
遼子と美音には、認知症になった祖母、障害をもって生まれ僅か5歳で死んだ弟について抱えている悲しい思いがあった。
そんな2人に前に、古い蔵はどんな光景を見せるのか・・・。

亡くなった人への忘れられない思いを描いたストーリィ。
本作からは、たとえ死んだからといって、その人との心の繋がりまで消えることはない、というメッセージを感じます。
少女時代の回想という設定もあって、快い読後感が残ります。

                       

26.
「さしすせその女たち ★★


さしすせその女たち

2018年06月
角川書店刊

(1400円+税)



2018/07/10



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夫婦それぞれが仕事を持つ家庭における子育ての苦労を、主として妻側から、付け足し的に夫側からも描いた長編。

主人公の
米澤多香実は39歳、子供は5歳の娘=杏莉と4歳の颯太という2人。デジタルマーケティングの会社に勤務し、室長の地位にある。
仕事と子育ての両立がこんなに大変だとは思わなかった、とは言うものの、毎日奮闘中。
しかし、食品メーカー勤務で営業職という夫の
秀介は、家事は分担という約束にもかかわらず、家事を多香実に押し付けてのんびりとしている。
そんな秀介に苛々するうち、さて夫とはそもそも本当に必要なものなのか、と多香実は考えるようになります・・・。

共稼ぎ世帯であれば子育ては本当に大変だと思いますよ。ましてまだ保育園児が年子で2人なのですから。
何で私ばっかりと苛々を募らせる多香実の心情はよく判りますし、一方で、何で俺がと思う秀介の心情も判ります。
男側は理解が足りないという批判は甘んじて受けるしかありませんが、専業主婦世帯で育つと何で俺が?と思ってしまうのも致し方ないと思うのですよねぇ〜(それで良いということでは決してなく)。

こうした作品を読んで、少しでもできることをやろう、という気持ちになれたのなら、本作の意義は大きいと思います。

なお、
「さしすせそ」は、多香実が友人の秋山千恵から教わった、夫をうまく使いこなすためのコツ5つの頭文字。
そこから、幾つかのバリエーションが作られる処が面白い。

「あいうえお」は、多香実の夫である秀介を主人公にした小篇。
結婚して子供ができると、こうまで妻と夫の考え方に違いが出るものか、という様子が象徴的に描かれていて、他人事ではないものの、ちょっと可笑しい。

さしすせその女たち/あいうえおかの夫

                 

27.
「緑のなかで ★★☆


緑のなかで

2018年09月
光文社刊

(1500円+税)



2018/10/13



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椰月美智子作品というとインパクトの強い作品が多い、という印象なのですが、本作については、これって本当に椰月作品?と思うくらい、穏やかなストーリィ。
緑に満ちた北の地にあるH大学(北海道大学であることは明らか)という舞台設定と、私と等身大の学生が主人公という設定が、その大きな要因だろうと思います。

双子の片割れである
青木啓太は、東京の自宅を離れてH大工学部に進学して3年。H大学と外部を橋渡しする Ambition という活動組織に属する一方、気儘にフィールドワークを行うサークル“Green Grass”(略称:GG)に所属。啓太が暮らす緑旺寮では、環境衛生委員会に所属、清掃の励行に勤めている。

ごくフツーの学生生活。
主人公自身、特別に優れたという学生ではありませんし、むしろ不器用、気の利かない処が多く、鈍感な性格。弟の
絢太と違って女子にモテたこともなく、女子交際とは全く無縁な学生生活。また、つい吐いてしまった言葉にすぐ後悔するといったところは、私自身に共通するところが多く、共感大です。
それでも緑多いキャンパス、緑旺寮を中心とした気の置けない仲間たちとの生活は、とても美しく、貴重、かつ愛おしさ余りあるものがあります。

そんな現在の生活と対照的なのが、高校時代の生徒会仲間、卓球部仲間との交友関係。現在よりはるかに密接な関係があったことが、ストーリィから窺えます。
親元での特定された高校社会での生活から、寮生活ともっと広い大学社会へ。それは即ち、成長していく上でのプロセスといって差し支えないでしょう。

そんな中にも、ちょっとしたドラマは用意されています。
それは、母親の突然の失踪。啓太がH大学に進学した理由がその母親にあったことも語られます。そして、誰よりも自由を謳歌していたと信じていた高校仲間の身に起きた衝撃的な事件。

本作については、実際の頁数よりはるかに濃いストーリィをそこに感じました。すべてが青春であり、人間としての成長があり、瑞々しく、美しく愛おしい。
あぁ青春小説って良いなぁ。青春小説好きの方には是非お薦め!

「緑のなかで」は、「小説宝石」に連載された、H大学生である啓太を描いたストーリィ。
一方、
「おれたちの架け橋」は、進研ゼミ高校講座「マイビジョン」に連載された、啓太が高校生だった頃のストーリィ。

緑のなかで・・・春、芽吹く/夏、繁る/秋、色づく/冬、白く降る
おれたちの架け橋

    

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