住野よる
作品のページ


大阪在住の兼業作家。高校時代より執筆開始。2015年「君の膵臓をたべたい」にて作家デビュー。


1.君の膵臓をたべたい

2.また、同じ夢を見ていた

3.よるのばけもの

4.か「」く「」し「」ご「」と「

5.青くて痛くて脆い

6.麦本三歩の好きなもの

  


       

1.
「君の膵臓をたべたい ★★☆


君の膵臓をたべたい

2015年07月
双葉社刊

(1400円+税)

2017年04月
双葉文庫化



2015/08/05



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かなり衝撃的な題名です。それ故に読んだ方が良いのかどうか迷い、一旦は見送ったという経緯あり。それでも気になり、どうも評判が高いらしいと知り、改めて読むに至った一冊。

主人公の「
」は、人に関心を持たず、人からも関心を持たれずと、孤立感をかこっている高校生。
そんな僕がクラスメイトの
山内咲良に深く関わることになったのは、病院で「共病文庫」と題されたノートを拾ったことから。そこには膵臓の病気により自分の余命がそう長くない事実が語られていた。そのノートの持ち主こそ山内咲良。
その時から僕の、咲良に振り回され続ける日々が始まります。家族以外の誰にも自分の病気を内緒にしていた咲良にとって、友達がおらず、また特に同情も寄せない僕は、自分の病気を隠さずに話せる格好の相手だったらしい。

病気によって大事な人の余命があと僅かという物語は、何も本作品だけに限りません。その上で本作品の良さは、明朗活発で人気者の咲良と地味で根暗の僕という正反対のキャラクターを超えて2人が繋がり合った、ということに尽きます。
人と人が繋がり合うことがどれだけ大切なことか。咲良に振り回され続けている内に僕の内面には変化がもたらされますし、それは咲良にとっても大切なことであったように感じます。
2人のそうした関係は、2人の間で繰り返されるテンポとキレの良い会話によって実を結んでいく、という風です。この2人の会話が本作品における最大の魅力である、と言って決して過言ではないと思います。
本作品の衝撃的な題名はストーリィ中で、僕が咲良に、また咲良が僕に向けた言葉として登場しますが、お互いへの想いを象徴する言葉であったと思います。

最後は思いがけない結末が待ち構えていますが、僕と咲良の繋がりがどのような実をもたらせたかと思うと、本書は悲劇というより、多少の痛みはあったにしろ清冽な青春物語の1ページを描いた作品という印象の方が強い。読後感は極めて爽快です。

※似て非なる作品として
ニコラス・スパークス「奇跡を信じてを久しぶりに思い出しました。これも感動の大きな作品でした。

※映画化 →「君の膵臓をたべたい

      

2.
「また、同じ夢を見ていた ★★


また、同じ夢を見ていた

2016年02月
双葉社刊
(1400円+税)

2018年07月
双葉文庫化



2016/03/06



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本書の主人公は小柳奈ノ花、小学生の女の子。
両親が仕事をしていて夜にならないと母親が帰宅しないため、放課後はいつも野良猫の
ナーを伴い、きれいなお姉さんであるアバズレさんのアパート、丘の上の一軒家に住むおばあちゃんを訪ねて時間を過ごしている。
後、無人建物の屋上で知り合ったリストカット癖のある女子高生=
南さんとも知り合う。
本好きで“かしこい子”を自認する奈ノ花ですが、クラスに友達はおらず、どちらかというと孤立気味なのか。
クラス担任の
ひとみ先生が出した国語授業の課題が、「幸せとは何か」。
本書は、奈ノ花がその答えを見つけるまでの、小学生版成長ストーリィと言えます。

主人公の奈ノ花のキャラクターがユニークで、大人の目からするととても魅力的。その分、子供らしくないとも言えますが。
(※人生について奈ノ花が語る幾つもの比喩、これが楽しい)
その一方で、ナーをお供にする奈ノ花がアバズレさんや南さん、おばあちゃんと親しく交流する様子は楽しい。
実は本ストーリィ、ある仕掛けがあるのですが、中盤でそれに気付きました。乙一さんのかつての作品に似たストーリィがありましたから。でも乙一作品は短編、本書は長編。その分、他の登場人物との会話が楽しめ、そして胸熱くなるものがあります。

ベストセラーの後の2作目としては、十分に及第点。何より、好感の持てる作品に仕上がっている処が嬉しい。
本書は、多くの人へ、今後の人生へのエールを送るストーリィです。
お薦め。

          

3.

「よるのばけもの ★★☆


よるのばけもの

2016年12月
双葉社刊

(1400円+税)

2019年04月
双葉文庫



2017/01/26



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デビュー作の題名にも驚かされましたが、本作では冒頭の展開から驚かされます。よくもまぁ、こんなストーリィを思いつくなぁと。
後から気が付くと似たような出だしに
カフカ「変身」がありますが、まるで違った印象。変身するのは夜だからでしょうか。

「夜になると、僕は化け物になる」というショッキングな一文からストーリィは幕を開けます。
目から黒い粒が零れ落ちるとそれはみるまに全身を覆い、主人公の
安達は、足が6本・目が8つ・尾が4本の化け物へ毎夜変身してしまいます。そのまま外へ。人を驚かすことにも飽きた主人公はある夜、忘れた宿題を取りに中学の教室へ。
そこで主人公は、思いがけない人物に出会ってしまいます。
それは、ある意味クラスで目立っている同級生の
矢野さつき
化け物の正体にすぐ気づいてしまった矢野、何故こんな時間に学校にいるのかというと、昼休みならぬ“夜休み”なのだと。

読み進んでいくと、本作が現在ではもはや定番ともいえる学校教育問題を扱っていることが判ります。
“化け物”とはいったい何を言うのか。外見を言うのか、それとも心を言うのか。
それ以上に、形も見えず、正体の判らないものこそ化け物と言うべきではないかと思います。

もう一人の主人公と言うべき矢野さつきが、何故いつも笑っているのか。その理由とストーリィの最終場面には、胸の中を突き刺されるような思いが残ります。
そしてまた、矢野さつきの健気さが愛おしい。 お薦め。

   

4.

「」「」「」「」 ★★☆


か「」く「」し「」ご「」と「

2017年03月
新潮社刊

(1400円+税)



2017/04/09



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変化球ばかりがその個性、特徴かと思った住野よるさん、今度はなんと直球どまん中勝負の青春ストーリィ、と思ったのですが、そう易々と単純なものではない!という処が住野よるさんらしさなのでしょうか。

大学受験前の高校3年、同じクラスで仲の良い男女生徒5人の、互いに交錯する想いを章毎、ひとりひとりを主人公にして描いた高校青春ストーリィ。
ただし、題名といい、各章題といい、何やら不可解な語の羅列。一体何の趣向なのだろうかと思ったのですが、それは読んでみればすぐ判ります。
単純な高校生ストーリィでないという理由は、5人共それぞれが向かい合う相手の気持ちを表す或るサインを見る力を持っているという設定にあります。
しかし、それは決して万能ではない。サインの意味を読み取るのは結局各人の洞察力に任されているのですから。

内気男子の
京くん(大塚)、元気者女子のミッキー(三木)、パッパラパーを演じるパラ(黒田)、何があっても動じないヅカ(高崎)、内気女子のエル(宮里)といった5人、それぞれ個性的で魅力に富んでいます。
そしてその5人の関係をややこしくしているのが、仲が良い組み合わせと好きという想いの組み合わせが異なっていること。
いやー、これだけ舞台設定、趣向が凝られていれば、数多くある高校青春ストーリィの中でも頭一つ図抜けていると評しても過言ではありません。

ちょっと普通ではない処のある高3男女5人に交錯する想いを見事に複数視点から立体的かつ繊細に描き出した青春譚。自分のあの頃を思い出し、読み処・感慨ともたっぷりです。
住野よるさん、ますます見逃せない作家になりました。


プロロオグか、く。し!ご?とか/く\し=ご*とか1く2し3ご4とか♠く◇し🍀ご♡とか↓く←し↑ご→とエピロオグ

        

5.

「青くて痛くて脆い ★★


青くて痛くて脆い

2018年03月
角川書店刊

(1400円+税)



2018/04/11



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主人公の田端楓は、大学に入学した早々、秋好寿乃という女子学生と出会う。
授業中、突拍子もない質問を連発し、周囲から浮き上がるばかりの秋好だったが、皆を幸せにしたいという理想に向かって邁進しようとする彼女のペースにいつしか巻き込まれ、秋好と田端は2人だけで
秘密結社<モアイ>を結成する。
しかし、その田端が卒業を目前に控えた今、この世界に秋好寿乃はもういない、大きな団体となった<モアイ>は
ヒロという現リーダーの下にすっかり変質してしまったと彼は言う。
そして田端は
「僕が、秋好が残した嘘を、本当に変える」と、<モアイ>を潰そうと決意する。

題名でいつも読者を強烈に惹きつける住野さんですが、本作においてもそれはどんな意味なのか?と、まず興味が湧きます。
そしてその意味は、読み始めてすぐ、あぁそういうことかと感じ取れます。大学1年、理想を大いに語り合う。しかし、それは傷つきやすいことでもあります・・・。

果たして本書題名の意味は、上記のとおりだったのでしょうか。読み終えた今、別のことではなかったかと思い返します。
大学の中というのは、所詮世間から守られた領域ではないでしょうか。その枠の中で動く学生たち、純真なほど傷つきやすいのではないか。
終盤、主人公とその相手が互いに激高して罵り合う場面、格好をつけていた表情をかなぐり捨てて傷つけあう場面は、真に圧巻、迫真に満ちています。

上記の場面、そしてその数年後となるエピローグ場面を、どう捉えたらよいのでしょうか。
安易にその答えを自分の中で決めたくない、と思います。
そのままにして、何度も思い返して考えてみる、その方が本作に相応しい気がします。

あぁ、なんと青春とは、輝きがあると同時に残酷さも併せ持っていることか。
※ふと、青春映画の古典的名作「草原の輝き」(主演:ナタリー・ウッド、ウォーレン・ベイティ)を思い出しました。

     

6.

「麦本三歩の好きなもの ★★


麦本三歩の好きなもの

2019年03月
幻冬舎刊

(1400円+税)



2019/04/02



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大学図書館で働く麦本三歩という若い女性を主人公に、ごくありふれた日常の生活を、明るく、愛おしく描き出した作品。

ごく日常の生活、光景を描いたというと、すぐ柴崎友香さんの作品が思い浮かびますが、同じ傾向であっても手触りは大きく異なります。
柴崎作品の主人公の多くは地味な存在。それに対して本作の麦本三歩はかなり愉快な存在です。
同じ等身大の主人公像とは言っても、ちょっとそそっかしくて、不器用でドジ、周りを気にするようでいて鈍感、といったキャラクター。自作自演により、ごく小さなことを大騒ぎしているというコミカルさがあり、真に愛すべき存在です。

それはそのまま、本作に描かれるごく普通の日常生活を象徴しているようです。

職場である大学図書館で、同じミスを繰り返すところがあるようで、指導係の
“怖い先輩”に年中怒られているほか、“優しい先輩”“おかしな先輩”ともいろいろと・・・。

毎日繰り返すフツーの日常生活であっても、丁寧に見直してみればそれはとても愛おしいものである筈、そんなメッセージが本作から伝わって来るようです。
好きなもの、楽しいものが沢山あることは、実に幸せなことだなぁと思います。
毎日、見直してみるようにしよおっと。


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