瀬尾まいこ
作品のページ No.2



11.僕の明日を照らして

12.おしまいのデート

13.僕らのごはんは明日で待ってる

14.あと少し、もう少し

15.春、戻る

16.君が夏を走らせる

17.ファミリーデイズ

18.そして、バトンは渡された

19.傑作はまだ


【作家歴】、卵の緒、図書館の神様、天国はまだ遠く、幸福な食卓、優しい音楽、強運の持ち主、温室デイズ、見えない誰かと、ありがとうさようなら、戸村飯店青春100連発

 → 瀬尾まいこ作品のページ No.1

 


     

11.

●「僕の明日を照らして」● ★★


僕の明日を照らして画像

2010年02月
筑摩書房刊

(1400円+税)

2014年02月
ちくま文庫化



2010/03/02



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瀬尾作品にしてはちょっとシリアスなストーリィ。

中学2年の隼太。父親を幼い時に亡くし、夕方5時から夜中の3時までスナック勤めの母親とずっと2人暮らしだった。
そんな隼太に、母親が再婚した結果、優ちゃんという若い義父ができる。しかし、その優ちゃん、突然キレると隼太に暴力をふるう。このままではダメだ、出ていくという優ちゃんを、隼太は懸命に引きとめる。何故なら、ずっと一人で過ごす夜の恐ろしさを再び味わいたくないから。

この隼太という主人公のキャラクターに、ぐいっと胸を鷲づかみにされたような気分です。
暴力を何度もふるわれながら、平気だといって、逆に優ちゃんを慰める。さらに、何も気づかない母親に一切知らせず、自分の力で優ちゃんと一緒にこの問題を解決しようとする彼の姿は、余りに切ない。
自らのことを何もかも切って捨ててしまう人間だと思っている隼太、しかし、同級生たちは隼太のことを優しいという。そのギャップは、親子関係の何かが置き忘れられてきた生い立ちの所為のように思えるし、何もかも一人で解決できる人間になろうとして急いでいる所為とも思えます。
しかし、大人からみれば所詮隼太は中学生、彼の意見が受け入れられることはない。

周りの自分を見る目と、自分の思いとのズレ。それでも彼はやはり強い。
彼が決して孤独ではなく、友達にも恵まれていることにホッとします。人ときちんと繋がることができるのであれば、明日はちゃんと来る、と思えますから。

      

12.

●「おしまいのデート」● ★★☆


おしまいのデート画像

2011年01月
集英社刊

(1200円+税)

2014年05月
集英社文庫化



2011/02/13



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風変わりな組み合わせのデートを描いた5篇という短篇集。
瀬尾さんらしい温かさと、その上手さが光る一冊です。

さて、各篇デートの組み合わせは、というと、
「おしまいのデート」は、親の離婚後月に一回外で会うようになった中学生の孫娘と祖父。
「ランクアップ丼」は、元不良の教え子と定年間近の老教師。
「ファーストラブ」は、殆ど話をしたことがない同じクラスの男子生徒同士。
「ドッグシェア」は、捨て犬の面倒を見ている離婚歴あるOLと大学生。
「デートまでの道のり」は、保育士と手のかかる園児、そしてその父親。

小説の物語というと、それだけで完結してしまって、事前・事後の物語は無いように感じられるものなのですが、本短篇集の場合、それがくっきりと存在するのです。
すなわち、本書に描かれるのは、主人公たちの日々のホンのごく一部。その小ストーリィ自体も味わいがあるのですが、そこに至るまでにそれなりの物語が主人公たちにはあり、そしてまた本書後にも新しい物語が続いていくことがはっきり感じられて、嬉しくなるのです。
各篇、あっさりとしたストーリィながら、つい憎たらしく感じてしまうような味わいあり。その上、読まれぬ事前ストーリィと、これから先へに楽しみが膨らむ書かれぬストーリィがある、という具合なのです。
いろいろな隠し味ある、玉手箱のような短篇集。お薦め!です。

なお、5篇中私が特に好きなのは次の2篇。
「ランクアップ丼」はちょっと重松清「青い鳥を思い出す、人と人の温かな繋がりを感じさせてくれるストーリィ。
「ファーストラブ」、中学〜高校時代は女の子とより、まず男の子同士の友情を築くことこそ大事、とつい力説したくなってしまう、明るくてすこぶる気持ちの良いストーリィ。 いいなぁ。 

おしまいのデート/ランクアップ丼/ファーストラブ/ドッグシェア/デートまでの道のり

             

13.

●「僕らのごはんは明日で待ってる」● ★★☆


僕らのごはんは明日で待ってる画像

2012年04月
幻冬舎刊

(1300円+税)

2016年02月
幻冬舎文庫化



2012/05/27



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兄が死んで以来一人でたそがれて、クラスから浮いている葉山
そんな葉山に声をかけてきた同級生の女子=
上村。体育祭で米袋ジャンプ競技にペアで出場することに決まったからと。
そこから始まる、高校〜大学〜結婚という、2人の青春&愛を育んでいくストーリィ。

何はともあれ、2人の間で交わされる、淡々としているけれどもどこかピントがズレているような、軽妙な会話劇が楽しい。
この辺り、瀬尾さんの得意とする処でしょうし、瀬尾作品を私が好きな理由のひとつでもあります。
暗くて、クラス皆から嫌われているような葉山に平然と声をかけてくる上村という女の子、心が広くて分け隔てなく人に接することのできる、優等生的な女子というのがこのようなシチュエーションでの定番でしょうけれど、この上村はちょっと違う。
上村が声をかけてくれたおかげで、また上村と付き合い出したことによって徐々に葉山の世界が広がっていきますが、それに相応して、実は上村もある問題を抱えている女子だということが明らかになっていきます。
突然の別れ、紆余曲折あっての復活、そして結婚後に迎えた試練と、本作品は決して心温まるだけのストーリィではありません。
それでも、2人が成長していく中で、お互いが自分にとってどれだけ大切な相手であるかを確認していく様子は、心温まるものがあります(羨ましい、と言う方が正しいかも)。

ユーモラスで健やかな味わい+シリアスな内容。瀬尾作品としては一段昇った、という印象です。お薦め。

米袋が明日を開く/水をためれば何かがわかる/僕が破れるいくつかのこと/僕らのごはんは明日で待ってる

             

14.

●「あと少し、もう少し」● ★★☆


あと少し、もう少し画像

2012年10月
新潮社刊

(1500円+税)

2015年04月
新潮文庫化



2012/11/06



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中学生の駅伝を題材にした清新な中学生&スポーツ小説。

山深い場所にある市野中学校、全校生徒 150人余という小さな学校ながら、男子駅伝チームは毎年県大会への出場を続けてきた。
ところが顧問教師が他校へ異動し、その代わりに顧問となったのはド素人でしかも頼りない美術担当の女性教師=
上原先生
部長の
桝井は1年から駅伝を走ってきたが、中学生最後の駅伝だというのに最悪のスタートだ。
また、陸上部で長距離を走れるのは3人(
桝井・設楽・俊介)のみのため、残る3人は陸上部以外から寄せ集め。自他共に不良と認める大田、吹奏楽部で足は速いが性格的に何のある渡部、決して速くはないがお気楽なお調子者で彼がいるだけで皆が盛り上がるというバスケ部のジロー、というのがその顔ぶれ。
ド素人の監督に寄せ集めのチーム、県大会連続出場は果たして成るのか?というストーリィ。

プロローグ「0」の後は「1区」〜「6区」と、各区間の走者を第一人称の主人公に据えた構成。駅伝チーム結成前後から大会まで各人の視点から描いているのですが、このストーリィ構成が抜群に良い。
各人の個性、持ち味だけでなく、各人各様の中学生ぶりを描いているところが光っています。
外見と中身が同一という生徒もいれば、逆に大違いという生徒もいて、そんな処も中学生らしい。特に大田と設楽のすれ違い、対照的な渡部とジローの組み合わせは楽しい限りです。
また、頼りないとはいえ生徒たちの個性をしっかり見抜いているところは上原先生も中々のもので、読み応えあり。
中学とはいくら失敗してもいい場所。そんな言葉が温かく響きます。

喧々諤々、レース開始までにはぶつかり合うことも多々ありましたが、本番レースでは各人が懸命な思いで襷を次の走者に繋いでいく。
自分一人で走っているのではない、懸命な思いを襷によって次々と受け渡していく。そんな姿に、興奮と感激、さらに彼らたちの伸び代を感じるようで、その場面、何度読み返しても飽きることがありません。
成長過程にある中学生たちの清新なストーリィ、お薦めです。

※もし未読でしたらこちらもお薦めです(大学生による箱根駅伝)。
  →
三浦しをん「風が強く吹いている

     

15.

「春、戻る」 ★★☆


春、戻る画像

2014年02月
集英社刊

(1200円+税)

2017年02月
集英社文庫化



2014/02/25



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主人公は望月さくら、36歳。間もなく結婚する予定で、既に勤めていた会社は退職、料理教室に通ったり、結婚相手の和菓子屋に手伝いに行ったりして日々を過ごしている状況。
そんなさくらの前にある日突然、「
さくらの兄」と名乗る青年が現れます。彼は何とさくらより12歳年下の24歳。

何故、年下なのに兄なのか。いや、そもそも兄って何で?とさくらは青年を警戒しますが、そんなさくらの不審な目も何のその、お兄さんは遠慮なくさくらの身近に接してきます。
いつのまにか、さくらのみならず、結婚相手の
山田さん38歳まで彼を「お兄さん」と呼び、まるで本当の親族のよう。
果たして「お兄さん」の正体は? そして何の目的でさくらに近付いてきたのか?

SF?とも思ってしまいますが、いやいや瀬尾まいこさんがそんなストーリィを書く筈もなく、何だろうなぁと謎は最後まで持ち越されます。
それでもさくらとお兄さんの間に和気藹藹、まるで兄妹の様な雰囲気が次第に満ちていくところが、何とも温かく、楽しく、気持ち良い。まるで春の日差しに包まれているようです。

さくらと山田さん、お互い年齢も年齢だし頃合いだし、結婚式もとくに挙げる必要はないという考えでしたが、お兄さんの様々なお節介が次第に2人の心情にも影響を与えていきます。
出版社の宣伝文に「ハートフルウェディング・ストーリー」とありましたが、まさに言い得て妙。。
結婚に向けて、幸せに向けて2人の気持ちが高まっていく、良いですよねぇ、これって。
瀬尾さんらしい魅力に満ちた、ウェディングストーリーです。

             

16.

「君が夏を走らせる ★★☆


君が夏を走らせる

2017年07月
新潮社刊

(1500円+税)



2017/08/19



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高校にろくに通わず派手な格好してふらふら、金髪にピアス穴2つという高校生の大田
お前しか当てがないんだと中武先輩とその奥さんから強引に頼まれ、その1歳10ヶ月の幼児である
鈴香の世話を、夏休みの1ヶ月引き受けることになります。
奥さんが切迫流産で出産までの一ヶ月間入院することになった、託児所などには心配で預けられない、駆け落ち同然に結婚したため絶縁状態にあり、親には頼れないというのがその事情。

いやいやちょっと待って、ほとんど赤ん坊ですよ、こっちは落ちこぼれの16歳の男子高校生ですよ、かえって心配じゃないの? 無理ですよ無理と、主人公の大田だけでなく、たかが読者の私でさえ慌てるし、心配になってしまいます。
懸命の辞退むなしく、大田は先輩が帰宅するまでの日中、鈴香の世話を引き受けることになります。

当然ながら、スムーズに進む訳がありません。大田、鈴香に手を焼き全くのお手上げ状態。
それでの日が進むうち、いつしか鈴香は大田に懐くようになり、大田もまた鈴香をとても可愛いなぁと思うようになります。

稀な体験をした大田のひと夏ストーリィというより、高校生と幼児という違いはあるももの、大田と鈴香が一緒に成長していくストーリィと言うべきでしょう。
鈴香のための食事作り、鈴香と一緒の外遊び、公園での育児中ママたちとの交流等々。
大田と鈴香、稀に良くできた大切な“相棒”という間柄、と言って良いと思います。
ストーリィ中、この2人の姿がなんと愛しいことか!
そして、鈴香が大田に掛ける「ばんばって!」という言葉、きっと彼にとっては宝物のような思い出になるに違いありません。

主人公の大田、
あと少し、もう少しで中学の駅伝選手になった大田くんだったとは!
なお、大田くんの物語、どうもこの後も続きがありそうな気配を感じます。おちこぼれ高校生の成長ストーリィ、楽しみでない訳がありません。
お願いです、瀬尾さん、是非この続きを!

                     

17.

「ファミリーデイズ ★★


ファミリーデイズ

2017年11月
集英社刊

(1300円+税)



2017/12/14



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中学校教師を退職し、結婚して主婦となり、予想外の子供に恵まれたという瀬尾さんによる、呑気なご主人とやんちゃな娘との暮らしぶりを描いた家族&育児エッセイ。

とくに何を意識することもなく読み始めたのですが、ユーモアと温かに包まれた、いかにも瀬尾さんらしい日常エッセイ。小説とは異なる、もうひとつの瀬尾まいこ像を見る思いだったのが冒頭のこと。
ところが次第に本エッセイは、<やんちゃな娘>の育児日記へ表情を変えていくのですが、意外や意外、これが実に楽しい。

見ているだけで、いや読んでいるだけでとても楽しいのです。
とにかくその行動力、表情の豊かさ、一つ一つの物事への反応ぶり等々、生き生きとしたそのやんちゃぶりが、手に取るように伝わってきます。
実は我が娘も同じようなところがあったなぁと、懐かしく思い出しながら頁を繰っていました。
こんなに子育てが忙しかったら、こんなに子育てに喜びを感じられていたら、作品を書くどころではないよなぁと納得。

なお、本作では子育ての喜びが主として描かれていますが、実際には子育てのストレス、そんなストレスに苦しんでいるお母さん方も多くいる筈。
瀬尾さんが語っているように、周囲の人の言葉掛けや助言が貴重だよなぁと感じる次第です。

※なお娘さん、1歳11ヶ月の頃から幼稚園のプレクラスに入園したとのこと。いろいろ新しい仕組みがあるんですねー。


我が家のメンバー/虹が出たなら/人生の岐路/最強の占い師/女子力発揮/メモリアルデイ/朝の定番/主婦の心得/読めそうで読めない明日に未来/究極の共同生活/対面は突然に/Tomorrow will be more beautiful/眠れ、よい子たち/赤ちゃんはみんなのそっくりさん/押し寄せるイベントたち/今日も大いに拍手/春、戻る/すぐそこには、無数の手/バイバイ、おっぱい/不思議なお気に入り/やんちゃ娘、世にはばかる/おしゃれの道は遠い/芸術の夏、到来/怒涛の注射ラッシュ/アイドル登場/その手はなにを指すのだろう/新しい世界へようこそ/バイバイはいつしか拍手に/保護者一年生/ちびっこ黒猫、登場/赤ちゃんと子どものボーダーライン/最後にやっぱりもう一度/最初の覚えた名前は/必殺 おなかポーン!/お手伝いは控えめに/パラダイスからの逃亡/名残はいまでもあちこちに/ちびっこ先生、活躍の秋/望まない祝福客/明日はいつもすばらしい

                

18.
「そして、バトンは渡された ★★★       本屋大賞


そして、バトンは渡された

2018年02月
文芸春秋刊

(1297円+税)



2018/03/16



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森宮優子、高校3年、17歳。
現在は、優子が「
森宮さん」と呼ぶ義父との2人暮らし。
その優子、自分には父親が三人、母親が二人いる、17年間で姓は4回、家族の形態は7回変わった。でも全然不幸ではないのだ、と言います。

普通なら、なんて過酷な生い立ちだろう、どんなに悲しいことかと思う処ですが、この優子に限ってはそんな一般論には当てはまらないのです。
何故かと言えば、父親も母親も、優子の親になった人はいつも優子を大切に、そして心から愛してくれたから。

森宮さんと暮らす高3の優子の日常を描くのと並行して、これまでの優子の17年間が描かれます。
実母の事故死、実父のブラジル転勤、義母となった
梨花さんが2度結婚するという目まぐるしい変化ですが、森宮さんと再婚した後に梨花さんが姿を消してしまい、現在に至るという次第。
なんといい加減な女性かと思う処ですが、どうも梨花さん、優子のためにどんな父親が必要か、という観点から再婚していたようなのです。

父親が三人、母親が二人「いた」ではなく、優子は「いる」と語ります。それぞれの親たちが示した愛情を感じ取り、今も繋がっているという確信があるから言えることなのではないか。
血の繋がった親なら、生まれた時から一緒に暮らしている親ならごく当たり前のことが、実の親子ではないからこそ、皆優子のために一生懸命になり、それだけ強い愛情も注いでくれたのでしょう。
その果てである、東大出身と優秀だが、どこかズレたところのある森宮さんとの親子生活はというと、2人がきちんとお互いに向かい合っていると感じられ、楽しくもあり、また心がじ〜んと温まってくるようです。
そんな2人のやり取りは楽しく、その日々はとても愛おしい。

最後は7年後、これは森宮さんの視点から描かれます。
そして、優子が気づくことのなかった、4人の親たちの深い愛情が明らかになります。如何にも晴れ舞台に相応しい、感動ストーリィ。
森宮優子、驚くような半生ですが、何と幸せな女の子だったことでしょうか。
本作は、デビュー作
卵の緒の延長上にある作品と言って良いでしょう。愛情に満ちて温かく、そしてとても気持ちが良い。
そうした所為か何となく、瀬尾さんのこれまでの作品を読み返したくなるような気持ちにさせられます。
 是非、お薦め!

※親が数多く登場するという作品として、
伊坂幸太郎「オー!ファーザーがありますが、こちらは全く趣向の異なる作品。 

              

19.
「傑作はまだ ★★☆




2019年03月
ソニー・ミュージックエンタテインメント刊
(1400円+税)



2019/04/05



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生まれてから写真だけで、25年間一度も会うことのなかった息子=永原智(とも)がいきなり訪ねてきたうえ主人公を“おっさん”呼ばわりし、バイト先が近くになったのでしばらく一緒に住まわせてくれと言い放ってきます。
何とシュールなストーリィの始まりであることか。
主人公だけでなく、読み手もつい一緒に呆然としてしまう。

これはいつもの瀬尾作品とかなり違う、と戸惑いと驚きを感じたものの、読み終える頃には、あぁ好きだなぁこの作品、と思いました。
この健やかさ、温かさ、嬉しさ。こんな都合よくいく訳ないという批判が飛んできそうですが、いいじゃないですか、こうしたことが起きることもあるのだと思うだけで、幸せな気分です。

今や50歳の主人公、大学最終学年の時応募した小説で新人賞を受賞して、気が付いてみれば作家になっていた。その後は一軒家に殆ど引きこもっているような執筆生活。
息子がいるといっても結婚していた訳でなく、相手は恋人であった訳でもなく、それでも毎月養育費を払い続け、相手からはその都度智の写真が送られてきた、というだけの関係。
いったいどう初めて会う息子に向き合えばいいのか、と困惑するうち、その智のペースにより殆ど家に引きこもり状態だった主人公の殻がどんどん破られていきます。
さて、父子の関係はそこからどんな風に展開していくのか?

主人公の小説家、余りの世間知らずぶりは笑える程。そこをこじ開けていくのが25歳下の息子なのですから、親子の役割が逆転しているようなところが本作の楽しさ。
しかし、その息子が再び主人公の元から去っていく時・・・・。

最後は、立て続けに隠されていた事実が披露されていき、全く嬉しい驚きばかり。
人と関わることがこんなにも幸せなことだったのか、と新鮮に感じる程です。
智、美月、森川夫婦、主人公の両親・・・主人公がボケッとしていただけで実は、とても幸せな境遇だったのだゾ。

瀬尾さんの新たな魅力がそこにあるようで、好きだなぁ瀬尾作品はやはり。 是非、お薦め!

  

瀬尾まいこ作品のページ No.1

  


  

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