伊坂幸太郎作品のページ No.2



11.終末のフール

12.陽気なギャングの日常と襲撃

13.フィッシュストーリー

14.絆のはなし

15.ゴールデンスランバー

16.モダンタイムス

17.あるキング

18.SOSの猿

19.オー!ファーザー

20.バイバイ、ブラックバード


【作家歴】、オーデュポンの祈り、ラッシュライフ、陽気なギャングが地球を回す、重力ピエロ、アヒルと鴨のコインロッカー、チルドレン、グラスホッパー、死神の精度、魔王、砂漠

 → 伊坂幸太郎作品のページ No.1


マリアビートル
、3652、仙台ぐらし、PK、夜の国のクーパー、残り全部バケーション、ガソリン生活、死神の浮力、首折り男のための協奏曲、アイネクライネナハトムジーク

 → 伊坂幸太郎作品のページ No.3


キャプテンサンダーボルト、火星に住むつもりかい?、ジャイロスコープ、陽気なギャングは三つ数えろ、サブマリン、AX、ホワイトラビット、クリスマスを探偵と、フーガはユーガ、シーソーモンスター

 → 伊坂幸太郎作品のページ No.4

   


     

11.

●「終末のフール」● ★★


終末のフール画像

2006年03月
集英社

(1400円+税)

2009年06月
集英社文庫化



2006/04/13



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来るべき終末まで残す時間あまりない中で、着実に生きようとする人々の姿を描いた連作ストーリィ。

心憎い小説を書く人なんだよなぁ、伊坂さんは。
そこが伊坂作品の魅力ではあるのですけれど、毎回毎回、各々趣きの異なったストーリィが展開される訳ですから、唸らずにはいられない。本書も紛れなく、そんな作品のひとつです。

舞台は仙台市北部の丘に作られた団地、ヒルズタウン。
冒頭の「終末のフール」、老夫婦が残された時間は3年とやたら言うので末期癌なのかと思ったら、何と小惑星が地球に衝突するまでの時間だという。
8年前に衝突=地球壊滅が報道された後、社会の混乱・秩序崩壊は極まりなく犠牲になった人も多かったが、それから5年が経過し今は落ち着いた状況だという。
大勢の人が逃げ出したりして、今やヒルズタウンに住む人数は少ない。両親に自殺されたり、暴徒に身内を殺されたりということを経て、各篇の主人公たちは自分らしく生きることを守り続けている、という印象を受けます。
両親に自殺されても少しも恨まず、一人残されてもちゃんと自分の道を歩いている。それって凄い。(それ故に本書中一番好きな篇は「冬眠のガール」。)
終末物語なのに何故かカラッとして、明るい雰囲気があります。おまけに静かで快い。ちょうど、正月の3日間都心の空がすっきりとした青空を見せるような、そんな爽快さがあります。
SFのような様相を見せながら、実は地道に生きる、健気な人たちを描いたストーリィ。そんな取り合わせが実に上手い!

もし自分がそんな状況に置かれたらどうだろうか。
所詮人間は生まれながらにして死刑囚、という言葉があります。私も本書の主人公たちのように、普段とあまり変わるところなく淡々と生きていきたい。
そんな親近感から、主人公たちのことが愛しく思えます。
やっぱり上手い。

終末のフール/太陽のシール/籠城のビール/冬眠のガール/鋼鉄のウール/天体のヨール/演劇のオール/深海のボール

       

12.

●「陽気なギャングの日常と襲撃」● 


陽気なギャングの日常と襲撃画像

2006年05月
祥伝社

NON NOVEL
(838円+税)

2009年08月
祥伝社文庫化

2006/06/12

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陽気なギャングが地球を回すの続編。
最初は例の4人が代わる代わる主人公となる短篇集として書き始められたそうなのですが、途中で伊坂さんの気が変わり長編となり、4短篇はプロローグ部分の第一章として長編の中に取り込まれたとのこと。

「地球を回す」の魅力は、銀行強盗4人(成瀬響野久遠雪子)各々のキャラクターの面白さと、4人の間のやりとりの面白さにあったのですが、続編となると流石にもう斬新さは感じられません。また、今回は誘拐事件に巻き込まれるといっても所詮他人事にお節介の手を出すようなもので、前回のようなサスペンス性はまるで無い。
そこが正直言って物足りなかった理由です。

私としてはむしろ短篇部分の方が面白かったです。
その第一は、雪子と祥子(響野の妻)が同僚のOLを手助けして日常ミステリを解き明かす「卵を割らなければ、オムレツを作ることはできない」、次いで公務員としての成瀬が連れ立っていた後輩に冴えたるところを見せる「巨人に昇れば、巨人より遠くが見える」
長編ストーリィは、短篇(第一章)部分のストーリィ、登場人物を踏まえて繰り広げられます。でも、ややこじつけがましい。その分ストーリィに切れ味が生まれなかったのかもしれません。

  

13.

●「フィッシュストーリー」● ★★


フィッシュストーリー画像

2007年01月
新潮社

(1400円+税)

2009年12月
新潮文庫化



2007/03/03



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題名の“フィッシュストーリー”とは、釣り師が自分の釣果を実際より誇張して言いがちなところに由来し、ホラ話のことを言うらしい。

まず「動物園のエンジン」、辞職した後の今も檻の前に寝転ぶ元職員にまつわる話。彼がいると動物たちの雰囲気がまるで違う、それ故に“エンジン”なのだという。その人物の奇妙な行動の理由は何か。その真相が笑えます。
そして次なる「サクリファイス」には、ラッシュライフに登場した空き巣稼業の黒澤が登場。てっきり気色悪い結末の話かと思いきや、黒澤が見破ったのは、余りに馬鹿馬鹿しくも涙ぐましい裏話。

どこへどう行くのか判らない話ばかりかなぁ、この中篇集は? いつも程は面白くないナァと思い始めたところで、次の「フィッシュストーリー」が実に面白かった。
「僕の○○が魚だったら・・・」というフレーズに絡めて「二十数年前」「現在」「三十数年前」「十年後」と時間軸を前後して展開するストーリー。この伊坂さんの技が巧妙で、えっ、えっ、と何度も前の章に立ち返り読み直すという始末。
最後の「ポテチ」も楽しい一篇。空き巣稼業の今村忠司、その同棲相手である大西若葉、そして今村の母親に今村の師匠格である黒澤も加わって、登場人物同士の会話が実に楽しい(特に若葉と母親のやり取りが格別)。

4篇とも、出だしの雰囲気から全く予想もつかない結末に至るところに面白さがあるのですが、これってホラ話的な面白さ?
本書の面白さはとても説明できず、読んでもらう他ありません。

動物園のエンジン/サクリファイス/フィッシュストーリー/ポテチ

   

14.

●「絆のはなし」(斉藤和義・共著) ★★


絆のはなし画像

2007年10月
講談社

(1200円+税)



2007/12/04



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作家である伊坂さんが短篇小説を書き、ミュージシャンである斉藤さんが詞と曲を作る、という世にも稀なコラボレーション。
そこから生まれたのが本書、2人の対談+etc。

元々伊坂さんは斉藤さんのファンで、会社員をしながら小説を書いていた伊坂さんが会社を辞めて執筆に専念しようと決心したというきっかけが、斉藤さんの“幸福な朝食 退屈な夕食”という曲だったそうです。
音楽方面には疎い故に斉藤和義さんのことはまるで知りませんでしたが、本書を読んでいてそんなことは少しも気にならず、お2人の対談等々を存分に楽しめること、間違いなし!

伊坂ファンとしては、小説からは伺えない、普段着の伊坂さんに触れることのできることが何といっても楽しい。
交わされる様々な話の中には、お互いのデビュー経緯どころか、伊坂さんと奥さんの学生時代の馴れ初め(まるで映画シーンのような出会いに、映画にならないような進捗だったらしい)話まであり。
本書を読んで斉藤さんの曲を聴きたいと思わないのは申し訳ないことかもしれませんが、伊坂さんのその短篇と続編はそのうち何らかの形で出版されることでしょう。それが今から楽しみです。

※伊坂さんの短篇小説は「アイネクライネ」、斉藤さんの曲は“ベリーベリーストロング〜アイネクライネ〜”。短篇小説付きシングルCDという形で発売され、業界内外で話題になったとのこと。

1.対談−歩いて話そうPart1(07.02.26),Part2(07.08.22)
2.伊坂幸太郎・斉藤和義が出来るまで(2人の年表完全版)
3.伊坂幸太郎・斉藤和義の作り方(伊坂・斉藤を作った20の作品:映画・音楽・小説・マンガ)/作品が生まれる現場/職人の小道具/Question on 100

※斉藤和義・・・1966年栃木県生まれのミュージシャン

 

15.

●「ゴールデンスランバー」● ★★★       本屋大賞


ゴールデンスランバー画像

2007年11月
新潮社

(1600円+税)

2010年12月
新潮文庫化



2007/12/15



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本当に上手いっ! やはり伊坂幸太郎、只者ではないっ。
これまで以上に夢中になって頁を繰らずにはいられなかった作品です。

仙台で行なわれた金田新首相のパレード。そこに突然飛来してきたラジコンヘリの爆発によって首相は暗殺されてしまう。
その翌日、早くも容疑者が警察によって発表されます。元宅配ドライバーの青柳雅春。そして警察は次々と傍証となる事実を発表していき、それと歩調を合わせるようにマスコミは青柳の度重なる不審な行動の報道を重ね、全国中に青柳雅春が極悪な犯人として印象づけられていく。
そしてついに青柳雅春は追い詰められ、警察が取り囲む中央公園の真ん中に一人姿を現します。
しかし、本当に青柳雅春は暗殺犯人だったのか? そして逃げ回った2日間、彼は何を考えていたのか?
本書は、米国ケネディ大統領の暗殺、オズワルドという人物が犯人として逮捕された事件をモデルとした作品です。

まず、一般視聴者が見た事件の始終、そして20年を経て残る疑問を短い「章」として冒頭に置き、その後に事件渦中の3日間を克明に語るというストーリィ構成がお見事。
「おまえ、オズワルドにされるぞ」「逃げろ」と、青柳は久しぶりに再会した親友から突然に警告されます。
そして、どんどん嘘が事実として固められていく。警察は何の躊躇いもなく青柳に向かって発砲する。青柳雅春を何としてでも犯人に仕立て上げようとする国家権力。そんな巨大な力を前にして、一個人がどんな抵抗をできるというのか。
一人孤独に逃げ回る青柳の一方で、彼の人柄を知る元恋人、友人たちが権力に対してささやかな抵抗を試みます。

迫真の展開に、もし自分がそんな目に遭ったらという恐怖感が加わり、興奮をいっそうかき立てられ続けるストーリィ。
話の筋は極めて単純です。何度も追い詰められながらも、何とか逃げまくるというストーリィに過ぎません。
しかし、その背後にある広大なストーリィ性に圧倒され、次々に登場する人物像に魅せられてしまうのです。そして、後の方になって繋がってくるひとつひとつの細部が実にお見事。
そうした展開を経ての結末は爽快・・・かどうか、それはご自分で読んでもらうほかありません。

1.事件のはじまり/2.事件の視聴者/3.事件から二十年後/4.事件/5.事件から三ヶ月後

※ 映画化 → 「ゴールデンスランバー

     

16.

●「モダンタイムス」● ★★


モダンタイムス画像

2008年10月
講談社

(1700円+税)

2011年10月
講談社文庫化
(上下)



2008/10/31



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浮気を疑う妻が依頼した髭男から拷問されそうになる主人公、という書き出しから、一気に引き込まれます。
いったいどんな妻なんだ?という謎、恐怖から始まり、それが単純に引き伸ばされあるいは繰り返されることなく、局面が転回する毎に次々と新たな謎、恐怖が姿を現わすといったストーリィ展開。
これで面白くないなんてあろう筈がありません。ゴールデンスランバーに負けず劣らない面白さなのではないか。それに、舞台もまた同作品と共通するところがあるようです。

「人は知らないものにぶつかった時、まず何をするか? 検索するんだよ」
それはもはや現代ネット社会では当たり前のこと。でもその検索がが監視され、それがために災いが我が身に降りかかってくるとしたら、どうでしょうか。
本ストーリィを読んでいると、ネットの中で安易に検索したりしていることが空恐ろしくなってきます。
もうひとつ本書で味わう怖さは、人間の良識を越えて社会が勝手に動き出すようになり、人間一人一人の行動はその単なるパーツにしか過ぎなくなること。それが良いことならともかく、人に対する暴力として発現するようになったらそんな怖いことはありません。
単なるホラーでなく、予見的な視点から本ストーリィを紡ぎ出した点、流石は伊坂さん!と舌を巻く思いです。
その一方、危険な状況に置かれているというのについ剽げた言動をとってしまう主人公、思わず笑いを誘われます。
こうした両面で卓抜なところ、一筋縄ではいかない面白さが伊坂作品の魅力と、改めて得心しました。

目まぐるしい程に次々と新たな局面が展開していくストーリィ、ワクワクする思いで頁をめくっていたのですが、その割りに最後はひどく抽象的な結末になってしまったところがちと残念。でもそれが本作品の主題なんだよなぁ。
なお、本作品にはたった一人、常識や理性の枠を軽々と超越している登場人物がいます。理屈を屁とも思わない型破りな人物であって、その存在があるからこそ本ストーリィも前進することができたという程の強者。でも、その人物の不思議さは解明されないまま。
それでも、全てが明らかにされないからこそ本作品への思いも残り、また本書の面白さをより際立たせることにも役立っているのかもしれません。
「ゴールデンスランバー」に及ばないとしても、伊坂ワールドの面白さを充分に味わわせてくれる一冊です。

 ※なお、本作品には挿絵を完全収録した「特別版」もあります。

     

17.

●「あるキング」● ★★☆


あるキング画像

2009年08月
徳間書店

(1200円+税)

2012年08月
徳間文庫化



2009/09/27



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弱小プロ野球チーム・仙醍キングスを救うため、熱烈なキングスファンの両親の下に生まれた山田王求(おうく)
天才的野球少年の0歳から23歳までを節目毎に描いた、スポーツ・ファンタジー物語。

・・・というと夢物語的なスポーツ・ストーリィと思われるかもしれませんが(実際にそういうところはありますが)、本作品の真骨頂は、シェイクスピア「マクベス」との対比にあります。
それを示唆するのは、王求が幼少のことから時節に応じて姿を現す黒い姿の3人の魔女。
魔女たちは、マクベスに王の座を予言したように、王求に向かって“王になる者”として呼びかけます。

「マクベス」といい、「ジュリアス・シーザー」の主要人物マーク・アントニーの引用といい、本作品はシェイクスピア作品との関わりが濃厚。
しかし、決して「マクベス」を擬えたストーリィではない。むしろ対極にあるストーリィと言って良いでしょう。
即ちマクベスは、王となるに値しない者が魔女の言葉に浮かされて王になろうと背伸びした物語。
一方、本書は、王たるべくして生まれ、王たるべき道を短くも堂々と歩んだ者の物語。
したがって登場する魔女も、前者が惑わす存在であったのに対して、後者は苦難を予告することがあっても基本的には導き手という存在。
他人から親しまれることなく、むしろ憎まれることさえあっても、それらを一顧だにすることなく常に風格をもって遥か先を見据える存在。そうあってこそ、“王”と呼ばれるに相応しい。

「マクベス」と比べてこそ堪能でき、「あるキング」という題名にも納得がいく、類稀なる物語。
「マクベス」を知らずして読むなら本書の魅力は半減します。是非「マクベス」を知ってから読まれることをお薦めします。

 

18.

●「SOSの猿」● ★☆


SOSの猿画像

2009年11月
中央公論新社

(1500円+税)

2012年12月
中公文庫化


2009/12/22


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「私の話」「猿の話」という2つのストーリィが交互に語られていきます。
前者の主人公は、家電販売店に勤める遠藤二郎。イタリアに滞在していた頃に友人の父親から悪魔祓いの方法を学んだことを見込まれ、昔馴染みの年上女性から引き篭りとなっている彼女の息子について相談を持ちかけられます。
後者の主人公は、システム会社の品質管理部に勤める五十嵐真。論理的にしか物事を考えられない人物で、因果関係をあくことなく掘り下げていく性格の持ち主。

さて、その2つのストーリィがどう関係するのか、表題の「SOSの猿」とは、一体何のことか? ・・・まるで判りません。
ようやく2つのストーリィが交じり合うのは3分の2位が過ぎたあたりから。
それでも、悪魔祓いどころか「西遊記」孫悟空まで飛び出してくるのですから、もう唖然。
そもそも伊坂幸太郎さんの作品を判ろうとする方が無理なのかもしれません。判ろうとするから戸惑うのであって、判らないままにしておけば何と言うこともないのかもしれません。

時間のズレ、現実と非現実、虚言か真実か、それらを軽々と飲み込み、混沌としたままストーリィを一気に進ませてしまう手練、理解できないなりに如何にも伊坂さんらしい作品、と感じます。

要はSOSを発している人の声、如何にして人はそれに応え、救いを得られるか、と言うべきストーリィ。

     

19.

●「オー!ファーザー」● ★★


オー!ファーザー画像

2010年03月
新潮社

(1600円+税)

2013年07月
新潮文庫化



2010/04/23



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高校2年生の由紀夫には、何と父親が4人!
決して冗談事ではありません。現に由紀夫は、母親+自分+4人の父親=6人という家族構成の下で育ってきたのですから。
4人の父親、それは果たして幸運なのか不幸なのか。

本ストーリィにおいては、どうも幸運のようです。
成績優秀、スポーツも得意、さらにケンカにも強いというのは、4人の父親に導かれてきたからこそのこと。ちょっとシニカルなところは、その反動かもしれません。
その4人の父親が、実に個性的かつ味のあるキャラクター。
鷹さんはギャンブル好きで直感を信じて生きている。葵さんは元ホストで女性にかけては凄腕。悟さんはいつも本を読んでいる超博識な大学教授。勲さんは中学教師で格闘マニア。
その4人、一つの下で仲良く暮らすばかりか、由紀夫に対しては父親としての愛情たっぷり。

他の作家なら単なるユーモア小説になってしまうところでしょうけど、伊坂さんが描くとそこには普通とは別の色合いある景色が生まれてくる、ただし日常生活とは紙一重、というところが伊坂作品の魅力。
時に伊坂作品には判り難い作品もありますが、本書はゴールデンスランバーと同じく、単純に楽しめるエンターテイメント。
同級生や幼馴染のお陰で面倒事に巻き込まれた由紀夫の危機を、4人の父親が颯爽・・・というより、やたら大袈裟に救う、というストーリィ。
しかし、読み終わった後にふと気付くと、そこに見えたのは父と息子の物語、家族ストーリィなのです。
この辺り、癪ですが、いつもながらに巧い!

4人の父親の他、由紀夫に纏わりつく同級生の女の子、面倒事に巻き込む幼馴染等々、愉快なキャラクターばかり。本書は、エンターテイメントとしても家族物語としても一級品です。
なお、4人の夫をもつ由紀夫の母親は、ちょっと登場するだけ。その点からも、本書が父と息子の物語であることは明らかです。

  

20.

●「バイバイ、ブラックバード」● ★★


バイバイ、ブラックバード画像

2010年07月
双葉社

(1400円+税)

2013年03月
双葉文庫化



2010/08/01



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帯の「1話が50人だけのために書かれた“ゆうびん小説”が、いまあなたのもとに」という意味、判るでしょうか? 私は全く判りませんでした。
1話ずつ、応募者50人対し郵便で届ける小説。50x5話=250人なのだとか。それにプラス書き下ろしを加えて計6話から成る連作短篇集。
さらに本作品、太宰治の未完の絶筆「グッド・バイ」のオマージュ。

「グッド・バイ」(私は未読で知らないのですが)、妻と偽った絶世の美女を連れ、愛人たちに別れを告げる男の話とか。
本書も同じく、女性に伴われて5股をかけて付き合っていた女性たちに別れを告げて回る青年の話。
何故かというと、何かの責めを負って<あのバス>に乗り、どこかへ連れて行かれるらしい。そして同行する女性が 180cm 180kgという大女、しかも傍若無人な性格、というところが異なっている、というより現代的と言うべきか。

各篇とも、ある意味、ワンパターンの展開。
それでもそれなりに嘘か真か出会いのユニークさ、別れる過程での付帯サービス、各々の女性の反応と、ショートストーリィとしての面白さ十分です。
別れを告げられた側、否応なしに別れを告げさせられる側(=主人公)、相手をいたぶって快感を得ているような大女=繭美と、各々に味わいあり、楽しめるところが伊坂流。

何をどう描いても、伊坂さん、読者を楽しませてくれます。

            

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