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1947年東京生、横浜国立大学卒。79年「テロルの決算」にて第10回大宅壮一ノンフィクション賞、82年「一瞬の夏」にて第1回新田次郎文学賞、85年「バーボン・ストリート」にて第1回講談社エッセイ賞、93年「深夜特急第三便」にて第2回JTB紀行文学大賞、2003年それまでの作家活動に対して第51回菊池寛賞、13年「キャパの十字架」にて第17回司馬遼太郎賞、22年「天路の旅人」にて第74回読売文学賞随筆・紀行賞を受賞。 |
2.月の少年 3.ホーキのララ 5.春に散る |
【作家歴】、テロルの決算、深夜特急・第一便黄金宮殿、同・第二便ペルシャの風、同・第三便飛光よ飛光よ、象が空を、檀、オリンピア、贅沢だけど貧乏、血の味、イルカと墜落 |
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ポーカー・フェース、キャパの十字架、旅の窓、流星ひとつ、銀河を渡る、旅のつばくろ、天路の旅人 |
●「あなたがいる場所」● ★★☆ |
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2013年09月
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沢木さんが小説を書くとは、思ってもみませんでした。しかも、これほど見事な小説を書くとは! 期待半分・心配半分で読みだしたのですが、心配など無用のことでした。最初の頁から、全く違和感がありません。 9篇中、私が特に好きなのは「銃を撃つ」「迷子」「白い鳩」の3篇。いずれも少年少女が主人公です。 銃を撃つ/迷子/虹の髪/ピアノのある場所/天使のおやつ/音符/白い鳩/自分の神様/クリスマス・プレゼント |
●「月の少年」● ★★ |
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2012/05/12 |
沢木さんによる児童向け、ファンタジーな物語。 両親を亡くした冬馬は、山の中、湖の畔に建つ家で彫刻の仕事をしている祖父の元に身を寄せます。しかし、次第に学校へ行くのが苦痛になり、生活パターンも昼夜がずれていく。 両親を亡くした少年が、ふとした出来事から再生、ようやく前へ向かって歩き出すというストーリィ。 |
3. | |
「ホーキのララ」 ★☆ |
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2013年04月に講談社から出版された沢木さん作=絵本2冊の内の一冊。
少女のサラ、絵本の真似をしてララと名づけたホーキに飛びなさいと命令しても、ホーキは当然ながら飛ばず。 この絵本で沢木さんは何を語ろうとしているのでしょうか。 |
4. | |
「波の音が消えるまで」 ★★ |
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2017年08月
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マカオのカジノを舞台にした博打(バカラ)小説。 賭博あるいは博打の類には全く興味ありませんし、まず読まないところですが、沢木作品となれば別。「深夜特急第一便・黄金宮殿」に端を発しているのだろうと思いますし。 主人公は伊津航平、28歳。バリ島で1年サーファーとして暮していたのを切り上げて帰国する途中、偶然マカオのホテルに泊まることとなったことがきっかけでカジノに入り込み、興味はないと思っていた博打にのめり込みます。その博打とは“バカラ”。 しかし、一口に博打小説と言っても、ドストエフスキー「賭博者」のような賭博の狂気に捉われた人間を描くようなストーリィにはなっていません。 かつてサーフィンにのめり込んだように、バカラというものを見極めたいという主人公の探究心がストーリィの中心軸になっているからでしょう。探究心、追求心というその動機から、読み手も好意をもって主人公に寄り添い、付き合う気になります。 舞台となるマカオにはその土地柄からして多彩な人間が集まり、そこには当然のこととして様々な人生遍歴もある、というのが本作品のミソになっています。 主人公が知り合う、若い中国人娼婦の李蘭、カジノのバカラで勝ったり負けたりを繰り返している謎めいた老人の劉等々と、一種の群像人生劇にもなっていると感じます。 本ストーリィは、一旦日本に戻り、元のカメラマンとしての仕事で金を蓄えた主人公が、再びマカオで待つ李蘭の元に戻ってくるところから始まります。 しかし、動機がどうであろうと、一旦博打に憑かれてしまった人間の行動というのは恐ろしい。終盤は相当にサスペンスフルな展開です。 ともあれ、博打小説として極上のエンターテインメント大作。 読了時にはまるで、ひとつの人生を辿り切ったような充足感と疲労感を覚えます。 読み手の好み次第とは思いますが、お薦め! 【上巻】序章.橋/1.暗い花火/2.ナチュラル/3.天使の涙/4.裏と表/5.しゃらくさい/6.窓のない部屋/7.雷鳴/8.シンデレラ/ 【下巻】9.島へ/10.デッドエンド/11.雪が降る/12.罪と罰/13.汚れた手/14.仮面/15.波の底/16.銀河を渡る/終章.門 |
5. | |
「春に散る」 ★★☆ |
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2020年02月
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冒頭の舞台は、米国フロリダのキーウェスト。 日本を離れて40年という元ボクサーの広岡仁一は、心臓の持病を抱えた今、ふと日本に帰ろうと決意します。本作はそこから始まるストーリィ。 帰国した広岡は、かつて同じ“真田拳闘倶楽部”の合宿生としてチャンピオンを目指した、“四天王”と呼ばれた仲間たちを尋ね歩き始めます。しかし、3人のいずれとも現在の生活は芳しくない。 藤原次郎は喧嘩で相手に重傷を負わせてしまい刑2年の服役中。佐瀬健三はジム経営に失敗してかつかつの年金暮らし。星弘は自分を救ってくれた妻に死なれて呆然自失の状況。 広岡が誘い、かつての仲間4人は再びシェアハウスで共に暮らし始めます。 そんな4人が偶然出会ったのは、黒木翔吾という若いボクサー。彼を強いボクサーへ育て上げるという夢を感じた4人の目に、再び輝きが戻ります。 とにかく面白い、頁を繰る手が最後の最後まで止まらず、という面白さです。個人的には、ヘミングウェイ所縁のキーウェストから幕が開き、沢木さん得意のボクシングを題材にしたストーリィという処も大きい。 かつての仲間たちを一人一人訪ね歩き、再び4人が一つ所に集結し、そして彼らの新たな教え子という若いボクサーが加わるという展開は、小気味良いと言えるくらいテンポが良い。 また、主人公の広岡だけでなく仲間の3人、翔吾、そして彼らの暮らしを何かとサポートしてくれる不動産屋の女性事務員=土屋佳菜子に各々味わい、魅力があり、そのうえ一人一人が深いドラマを抱えているのですから、まさに読み応え限りなし。 やりがい、生きがいがあってこそ、人は満足して生きていけるもの、という思いを新たにするストーリィ。 沢木ノンフィクションに劣らず、沢木さんらしい面白さ満載のフィクション。沢木ファンには是非お薦め! ※沢木さん、ノンフィクションももうすっかり書き慣れた、という印象です。 序章.ルート1/1.薄紫の闇を抜けて/2.四天王/3.壁の向こう/4.鳥海山/5.クロッシング<交差点>/6.昔をなぞる/7.雨/8.白い家/9.帰還/10.いつかどこかで/11.朝の香り/12.戦う理由/13.自由と孤独/14.庭のリング/15.伝授/16.竜が曳く車/17.来訪者/18.階段を昇る/19.飛び立つ雀/20.月の光の下で/終章.花の道 |
※映画化 → 「春に散る」
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