恩田陸作品のページ No.



31.中庭の出来事

32.朝日のようにさわやかに

33.猫と針

34.不連続の世界

35.きのうの世界

36.ブラザー・サン シスター・ムーン

37.六月の夜と昼のあわいに

38.私と踊って

39.蜜蜂と遠雷

40.祝祭と予感

41.ドミノin上海


【作家歴】、六番目の小夜子、球形の季節、不安な童話、三月は深き紅の淵を、光の帝国、象と耳鳴り、木曜組曲、月の裏側、ネバーランド、麦の海に沈む果実

→ 恩田陸作品のページ bP


上と外、puzzleパズル、ライオンハート、MAZE、ドミノ、黒と茶の幻想、図書室の海、劫尽童女、ロミオとロミオは永遠に、ねじの回転

→ 恩田陸作品のページ bQ


蛇行する川のほとり、まひるの月を追いかけて、Q&A、夜のピクニック、夏の名残りの薔薇、「恐怖の報酬」日記、小説以外、蒲公英草紙、エンド・ゲーム、チョコレートコスモス

→ 恩田陸作品のページ bR


ドミノin上海、スキマワラシ

→ 恩田陸作品のページ No.5

    


   

31.

●「中庭の出来事」● ★☆       山本周五郎賞


中庭の出来事画像

2006年11月
新潮社刊

(1700円+税)

2009年08月
新潮文庫化



2007/03/21



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「中庭にて」「旅人たち」という2つの現実らしいストーリィと、『中庭の出来事』という作中芝居らしいストーリィの3つが同時に並行して進行していく長篇作品。
しかし、その3つのストーリィは並行して存在するではなく、入れ子のように内側であったり外側であったりするからややこしい。しかも、3つがどういう構成にあるのか、なかなか判然としないというのが本書の特徴です。

冒頭は「中庭にて」にて、作家の毒死事件が2人の女性によって語られるところから始まります。
作家の毒死事件は実際に起きた事件なのか、またビルの谷間の中庭のような場所で急死していた若い女性のことは? 
「中庭にて」「旅人たち」『中庭の出来事』各々にて同じような出来事が繰り返し語られている中で、読み手は次第に何が小説中の現実であって、何が作中芝居のことなのか混乱してきます。一時判ったようなつもりになっても、話が進むとまた判らなくなってくる、という仕組み。
読み手が大変というより、書き手である恩田さんの方がむしろ混乱しないよう大変だったのではないかなぁ。

読み手に謎を仕掛けたような作品ですが、恩田さんの狙いとしては舞台の虚構性、虚構なりの真実性を小説の中で描き出すことにあるのではないか、と感じられます。
そもそも“中庭”とは、舞台と似通った場所に他なりません。
本書中シェイクスピア「夏の夜の夢」が引用されていますが、「じゃじゃ馬ならし」といい、シェイクスピアこそ劇中劇をさかんに仕掛けた戯曲作家。
読み始めると何が真実か判らなくなって不安になる作品という恩田さんの対談を先に読んでいましたし、シェイクスピア劇は元々好きなので、入れ子構造の本作品について私はそう困惑することはありませんでしたけれど、何も知らずに読み出した方なら相当に困惑するだろうなぁと思います。

ストーリィとして共通するところは全くありませんが、やはり演劇・役者を主題にしたチョコレートコスモスを思い起こさせる要素は幾つかあります。舞台・演技という共通要素に加え、登場する3人の女優のキャラクターが似ていること。学生演劇出身の女優、俳優一家に生まれてサラブレッドと目されている若手女優、ベテランの大女優と、まるで「チョコレートコスモス」そっくりではないですか!
私はこうした仕掛けが主体の作品はあまり好きではありませんが、複雑なミステリが好みの方ならかなり気に入るかもしれません。

  

32.

●「朝日のようにさわやかに」● ★☆


朝日のようにさわやかに画像

2007年03月
新潮社刊

(1400円+税)

2010年06月
新潮文庫化



2007/04/18



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恩田さんという作家は長篇小説より短篇小説にこそ持ち味が発揮される、というのが私の考えです。その代表例が初期短篇集の光の帝国−常野物語−
長篇にももちろん魅力的な作品はありますが、独特な発想、構想こそが恩田さんの持ち味。長篇になるとその折角の構想が最後に息切れしてしまうと感じることが多いのですが、短篇となればアイデアだけで勝負できるのでその面白さが際立つ、という観があります。
もっとも本書あとがきによると、恩田さんは短篇小説が苦手とのことですが。

本書収録の14篇は、ショート・ショートから中篇といって良い作品まで様々。内容もお得意の孤島ものから、ファンタジー、ミステリ、ホラー風なものまでと実に多彩。それだけにいろいろな味わいが楽しめるという、チョコやキャンディーの詰め合わせセットを貰ったように楽しめる短篇集。
その中では、お得意の孤島もの的ミステリ「水晶の夜、翡翠の朝」、DJ2人の会話だけで成立させるテンポの良いミステリ「あなたと夜と音楽と」、短篇なのに構想は果てしなく壮大な「冷凍みかん」が秀逸。
「卒業」はストーリィの舞台背景が説明されないままのホラーストーリィですが、その迫真性は流石。及ぶまでには至りませんが、六番目の小夜子の迫真性を久しぶりに思い出しました。
末尾を飾る表題作「朝日のようにさわやかに」は、過去の思い出を語るあっさりとしたショート・ストーリィ。

水晶の夜、翡翠の朝/ご案内/あなたと夜と音楽と/冷凍みかん/赤い毬/深夜の食欲/いいわけ/一千一秒殺人事件/おはなしのつづき/邂逅について/淋しいお城/楽園を追われて/卒業/朝日のようにさわやかに

  

33.

●「猫と針」● ★☆


猫と針画像

2008年02月
新潮社刊

(1200円+税)

2011年02月
新潮文庫化



2008/03/07



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恩田陸さん、初の戯曲作品。
演劇絡みの作品チョコレートコスモス執筆にあたり取材に応じてくれた演劇集団キャラメルボックス。その縁で、彼らのために戯曲作品を書くことになったのだという。

短い4幕からなる劇。そして、高校のとき友人だった5人(男3人+女2人)が登場人物。
映画監督デビューすることになったタカハシユウコに頼まれ、葬儀の後に4人が語り合うという場面のエキストラを務めることになったという設定。それが偶然にも、やはり友人だったオギワラの葬儀の当日になるとは。
となれば、4人が演じる葬儀場面と友人の死との間に何らかの関係がある筈、と推測するのは当然のことでしょう。5人の間で交わされる会話の中で、どんな真相が明らかになるのか。

各幕で5人の置かれた局面ががらっと変わり、緊迫感と弛緩が繰り返されるところは、やはり恩田作品らしい。そして最後、なにやらよく判らないまま終わってしまうというのも、やはり恩田さんらしいと言うべきか。
ご本人の後書きによると、終幕を短くして欲しいという他、いろいろと役者さん側から出された要望に応えていたら、すっかり恩田カラーが薄まってしまったという。
本作品についての評価はともあれ、是非また戯曲作品に挑戦して欲しいと願う次第です。

「猫と針」口上/戸惑いと驚きと/猫と針/「猫と針」日記

   

34.

●「不連続の世界」● 


不連続の世界画像

2008年07月
幻冬舎刊

(1600円+税)



2008/08/29



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見送ろうかと思っていたのに結局読んだのは、そこに借りて読める状態の本書があったから。
私が恩田作品を読む経緯には、どうもそんなパターンが多いような気がします。そして読んでがっかりすることも多いのですが、それでももしかしたら、と引き寄せられてしまうところが恩田作品のミステリアスな魅力。本書もその例外ではありません。

本書は月の裏側に登場した塚崎多聞を狂言回し役とした、現代社会における怪奇的、あるいはミステリアスな現象を描いた連作短篇集。
東京、奈良、尾道、鳥取、そして夜行列車内と、様々な場所を舞台にしながら、幻想とも現実ともつかない渾然一体とした恩田さんならではのミステリ・ワールドが繰り広げられます。
多聞を取り巻く主な周辺人物は、キャリア官僚のハイパー大和撫子=美加、英国人で日本オタクのロバート、フランス人の客員助教授=ジャンヌという面々。

ただ、面白いかと言えば今ひとつ、というところもまた恩田作品らしいところ。
それでも冒頭「木守り男」には発想の面白さに惹かれますし、最後を飾る「夜明けのガスパール」は、ストーリィの組立て方が面白い。
「夜明けのガスパール」は、姿を消してしまって1年になる妻ジャンヌのことを、夜行列車に揺られながら多聞が友人たちに語る話。
「もう、おまえの奥さんはこの世にいないんじゃないかと思う−おまえが殺したからだ」という言葉。既に帯の紹介文で承知していたことはいっても、ドキッとします。
さてその真実は・・・・それこそ恩田ワールド!

木守り男/悪魔を憐れむ歌/幻影キネマ/砂丘ピクニック/夜明けのガスパール

   

35.

●「きのうの世界 ANOTHER YESTERDAY」● 


きのうの世界画像

2008年09月
講談社刊

(1700円+税)

2011年08月
講談社文庫化
(上下)



2008/09/22



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不連続の世界に続いて同じ“世界”と名のついた題名、それと恩田さん自らの「集大成です」という言葉に惹かれて読んだ作品。
集大成という言葉に相応しく、如何にも恩田さんならではの作品。でも、だからといって私にとって面白いとは限らないのが難しいところです。

舞台は、塔と水路のある、とある町。
その町の「水無月橋」である朝、1年前に失踪した男性が死体となって見つかるところからストーリィは始まります。
一体その男性に何があったのか。その死の理由は、この町に関わるものなのか。そして、この町にある3つの塔は何のために作られたものなのか。
この町で何かを調べているらしい「あなた」に向けて語りかける、という形でストーリィは始まります。そして、この町には何かあると思わせる雰囲気。そこには月の裏側に似た雰囲気があります。謎めいた町、水路、とくればなおさら。
ストーリィの根幹は、登場人物にはなく、町=区切られた世界そのものにあり、しかもそこに暮らす人々は町が抱える秘密から何らかの影響を受けている、というのが本ストーリィのみどころ。それこそ、まさに恩田ワールド。

この町の秘密を知る人、気づいている人、何らかを感じている人、何も知らない人、調べ歩く人と、いろいろな人物の立場からストーリィは組み立てられ、しかも長い。
しかし、読み終えた後、ストーリィらしいストーリィはあったのか、というとそれは疑問。町のある時の姿を描いただけ、という気がするのです。でも、それもまた恩田ワールドらしいところ。
良くも悪くも“集大成”という言葉に嘘偽りはないと思いますが、だからといって面白いかどうかは別。私にとってはそう結論づける他ない作品です。

  

36.

●「ブラザー・サン シスター・ムーン」● ★★


ブラザー・サンシスター・ムーン画像

2009年01月
河出書房新社刊

(1400円+税)

2012年05月
河出文庫化



2009/02/10



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本屋大賞を受賞した夜のピクニックに連なる青春ストーリィ。
「ピクニック」が高校生活だからこそのストーリィであったのに対し、本書は大学生活だからこそのストーリィ。
とくにこれというストーリィはないと言いながらも「ピクニック」はあるイベントを舞台にひとつの一貫した流れを持っていたのに対し、本作品はかなり散文的です。

高校時代から仲が良かった楡崎綾音、戸崎衛、箱崎一。彼らの大学生活が、それぞれを主人公にして3章構成で描かれます。
一人は文筆業に進むきっかけを見出し、一人はジャズバンド活動に没頭し、一人は卒業してから大学生活を振り返るという趣向。
あっという間に過ぎた、大学生活の4年間。それは貴重な時間だったのか、果たして意味がある時間だったのか、そして懐かしさを覚える時代だったのか。漠然と語りつつ、そこには大学生活4年間へのノスタルジーが感じられます。
その気分がなんとも懐かしくあり、快い。
本書を読みながら、いつしか自分自身の大学生活を振り返っていることに気付きます。
本書は、主人公たちの大学時代を読むのと同時に、自分自身の大学時代を読む物語でもあるのです。

大学1年の時、ある教授が口にした言葉を思い出しました。大学時代の4年間とは、自分が自由にして良い4年間なのだと。
ちなみに私の場合、前半2年間は入学する目的だった勉強に没頭し、後半2年間は勉強そっちのけで海外文学を読み耽っていました。その延長に今の活字中毒があります。
だからこそ、私にとっては忘れ難く、二度と手に出来ない4年間。そうした思いを蘇らせてくれる青春小説です。

「あいつと私」は子供の頃TVで見た石坂洋次郎原作の、眩しいような大学生青春小説。表題の「ブラザー・サン シスター・ムーン」は、やはり昔観たアシジの聖フランシスコを描いた映画。「陽のあたる場所」は観ていないのですが、モンゴメリー・クリフトとエリザベス・テーラー主演のあまりに有名な映画の題名。題名だけ聞いても懐かしい。

あいつと私/青い花/陽のあたる場所

 

37.

●「六月の夜と昼のあわいに」●(序詞:杉本秀太郎) ★☆


六月の夜と昼のあわいに画像

2009年06月
朝日新聞出版刊
(1500円+税)

2012年09月
朝日文庫化


2009/07/13


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斬新なスタイルの画、序詞、そして様々な趣向の恩田ストーリィとの組み合わせから成る作品集。

イージー・リスニングのPMへの思い出から始まるエッセイ的な篇であったり、時間と場所を軽々と越してみせるいかにも恩田陸さんらしい篇もあれば、夢か現(うつつ)か判然としない篇等々と、まさに様々な趣向がこの一冊の中には連ねられています。

元々恩田さんとは、時間にも場所にも捉われず、ふと湧いた着想を自由に繰り広げるタイプの作家。
そんな恩田さんらしい着想に溢れた一冊。
主人公など意識しない、スケッチ的な短篇小説を味わう、というのが本書を読む楽しみです。

私の好みに合った篇は、「Y字路の事件」「翳りゆく部屋」「コンパートメントにて」
その他、「窯変(ようへん)・田久保順子」の、何と皮肉と社会的な悲哀に満ちていることか。
また、「Interchange」の主人公には、恩田さん自身の投影を見る気がします。

恋はみずいろ/唐草模様/Y字路の事件/約束の地/酒肆ローレライ/窯変・田久保順子/夜を遡る/翳りゆく部屋/コンパートメントにて/Interchange

         

38.

「私と踊って」 ★★


私と踊って画像

2012年12月
新潮社刊

(1500円+税)

2015年05月
新潮文庫化


2013/02/09


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ノンシリーズの短編集は図書室の海」「朝日のようにさわやかに以来5年ぶりで、本書でまだ三冊目とのこと。
ホラー、ミステリ、SF等々、恩田さんらしい卓抜な着想を散りばめたショートショート19篇。
出版社紹介文では「万華鏡」という言葉が使われていますが、着想に妙がある恩田さんの短篇集は本当に宝石箱のよう、と私は思っています。元々恩田さんに興味を惹かれたのは
「六番目の小夜子」でしたが、魅せられたのは短篇集光の帝国だったのですから。

・冒頭の「心変わり」がお見事。のっけから、ゾクゾクっと背筋が凍るような恐怖感を味わったのですから、流石。
・対になっている2篇、
「忠告」「協力」は巧妙な仕掛けがお見事。
・「理由」、笑ってしまいます。まるで落語のような笑いに、オチも洒落ています。
・「火星の運河」は、本書中では味わいがちょっと異なる、シリアスな内容ですが、かえって心に残ります。
・「劇場を出て」は、ホンの短い一篇ですが、チョコレートコスモスに通じる魅力あり。
・「私と踊って」は、先年亡くなった舞踏家=ピナ・バウシュをモチーフにした作品。お楽しみに。

心変わり/骰子の七の目/忠告/弁明/少女界曼荼羅/協力/思い違い/台北小夜曲/理由/火星の運河/死者の季節/劇場を出て/二人でお茶を/聖なる氾濫/海の泡より生まれて/茜さす/私と踊って/あとがき/東京の日記

         

39.

「蜜蜂と遠雷 ★★☆       直木賞・本屋大賞


蜜蜂と遠雷

2016年09月
幻冬舎刊

(1800円+税)

2019年04月
幻冬舎文庫
(上下)



2017/02/21



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近年世界的に注目されている“芳ヶ江国際ピアノコンクール”
そこでの優勝を目指して世界各地から集まった才能ある若者たちが競い、勝ち抜いていく姿を描いた青春群像。
読み応えたっぷり、頁を繰る手が止まらず、といった風。

ストーリィの中心となるのは3人の若者たち+α。
・かつて天才少女と呼ばれ内外のジュニアコンクールを制覇したものの、指導者であった母親の死によってピアノを弾く目的を見失っていた
栄伝亜夜、20歳。彼女の復活は成るのか。
・突如音楽界に飛び込んできた養蜂家の息子という異能児=
風間塵、16歳。彼の登場は審査員たちを畏怖させます。
・優勝候補とされる米国の名門ジュリアード音楽院の
マサル・カルロス・エヴィ・アナトール、19歳。彼は本コンクールで、かつて彼を音楽の道に導くきっかけとなった少女と再会します。
・そして、音大出身ながら今は楽器店の社員、応募資格年齢ギリギリの
高島明石、28歳。彼は何故出場したのか?
その4人それぞれに、様々なパターンで絡む周辺人物を配し、彼らの姿を立体的に描き出します。
 
私の感じる限りでは、演劇を題材にした長編
チョコレートコスモスのスケールアップ版、という印象。
「チョコレート」での主役は天才と異能児という少女2人でしたが、本作ではコンクールである故に人数が広がり、しかも甲乙付け難しという展開。
そして、主役3人それぞれの演奏ぶりを描く各場面はまさしく圧巻。エントリー・第一次予選・第二次予選・第三次予選・本選と進んでいくにつれ、圧倒感もさらに極まっていきます。
ただし、「チョコレート」の場合は演技でしたからどういう処に凄さがあったのかは明瞭でしたが、本作は音楽であるだけに<言葉>のみに圧倒されたという印象です。

いずれにせよ本作は、コンクールで若者たちが勝ち抜いていくストーリィ。コンテストが進むにつれますます彼らが奏でる音楽を表現する言葉に圧倒され尽くす作品である、といって過言ではないと思います。
ですから本作品については、主役3人の勢いに乗せられるまま、一気に読み上げることをお薦め。


エントリー/第一次予選/第二次予選/第三次予選/本選

※映画化 → 「蜜蜂と遠雷

     

40.
「祝祭と予感 ★★


祝祭と予感

2019年10月
幻冬舎

(1200円+税)

2022年04月
幻冬舎文庫



2019/10/26



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蜜蜂と遠雷のスピンオフ短編集、6篇。

内容は、“芳ヶ江国際ピアノコンクール”の後日談だったり、そのずっと前に遡る出来事だったりと、多彩です。
また、「蜜蜂と遠雷」はコンクールが舞台でしたから、緊迫した雰囲気が常でしたけれど、本作はそれに対して休憩時間とでも言えるような、気楽な雰囲気があります。
そうしたところが気軽に楽しめる、という趣向のスピンオフ短編集です。

「祝祭と掃苔」亜夜マサル、一緒に綿貫先生の墓参り。何故か風間塵までついて来て。
「獅子と芍薬」ナサニエル・シルヴァーバーグ嵯峨三枝子の、17歳と18歳だった時の出会いから今に至るまでの回想譚。
「袈裟と鞦韆」菱沼忠明が、芳ヶ江国際ピアノコンクールの課題曲として差し出した「春と修羅」の、秘められた経緯。
「竪琴と葦笛」:ジュリアード音楽院に入学したマサルがレッスンを受けた相手は、当初ミハルコフスキー。それが何故、ナサニエル・シルヴァーバーグに変わったのか。ちょっと愉快な前日談に、マサルの曲者らしさが顔を見て、楽しい篇です。
「鈴蘭と階段」、自分のヴィオラを決めかねている状況。そこに、何とプラハにいる亜夜と風間塵からの電話が・・・。
「伝説と予感」ユウジ・フォン=ホフマンと、風間塵との、偶然の出会い。それこそ、奇跡というべき出来事だったのかも。

祝祭と掃苔/獅子と芍薬/袈裟と鞦韆(ブランコ)/竪琴と葦笛/鈴蘭と階段/伝説と予感

                

41.
「ドミノin上海 ★☆


ドミノin上海

2020年02月
角川書店

(1700円+税)



2020/03/02



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パニック・コメディドミノの再現、上海編。

「ドミノ」で騒動を巻き起こした主要人物たちが、再び中国の上海に集結。5年ぶりにまたもや騒動を繰り広げます。

ことの発端は、盗難品である至珠「蝙蝠」の争奪戦。
そこにかつての関東生命保険の女子社員3名(
北条和美・田上優子・市橋えり子)が行き合わせると思えば、愛するペットのイグアナ=ダリオを料理にされて嘆き悲しむホラー監督のクレイヴンも顔を出し、成仏できないダリオの霊を中国人の風水師と神官の血筋である安倍久美子が追う中、至珠を手中にしようと追いかけるホテルの料理長と怪しい骨董商の追跡劇が交錯します。
その結果、骨董商を追う香港警察まで右往左往させられる始末。

舞台が中国らしい点と言えば、動物園から脱走した老練パンダの逃走劇、上海の交通渋滞がドタバタ劇に輪をかけ、美術品ビジネスが絡むというところでしょう。
ドタバタ劇を担う登場人物たちがまず集結するのは、最上階でアートフェアが開催されている、女子3人の宿泊先でもあるホテル=
上海飯店
 
要は25人と3匹が繰り広げるドタバタ劇ですから、難しく考えず、気軽に楽しく読んでいればそれで良い、というもの。
ただ、東京駅で繰り広げられた前作に比べると、折角再登場しながら活躍不足の人物もいるといった具合で、パワー不足という印象がぬぐえません。

      

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