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31.ロマンス 32.ムサシ 33.組曲虐殺 34.一週間 35.東慶寺花だより 36.グロウブ号の冒険 37.黄金の騎士団 38.一分ノ一 39.言語小説集 40.馬喰八十八伝 |
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夢の裂け目、あてになる国のつくり方、太鼓たたいて笛ふいて、話し言葉の日本語、兄おとうと、夢の泪、イソップ株式会社、円生と志ん生、箱根強羅ホテル、夢の痂 |
●「ロマンス」● 絵:和田誠 ★★ |
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2008/04/28
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井上さんお得意の評伝劇。今回はロシア人作家のチェーホフ! 評伝劇としてはこれまでの作品に比べ、面白味という点でやや見劣りする感じがしますが、チェーホフ作品に興味があるとなれば本作品は見逃せないところ。 ロシア文学というと、プーシキン、ゴーゴリ、トルストイ、ドストエフスキイの名前が浮かびますが、それら文豪たちの文学を愛すれば愛する程、かえってチェーホフの文学は判り難いというところがあります。 本劇に巧妙な仕掛けはありません。ただ周辺人物(妹のマリヤ、女優オリガ等)が一人の役者で演じられるのに対して、少年・青年・壮年・老年とチェーホフが4人の役者によって演じられるところがミソ。 私は確信もてませんが、チェーホフが目指していたのは悲劇ではなく、笑いと娯楽性に富むボードヴィル劇だった、というのは目を惹かれる着想です。 |
●「ムサシ」● ★★ |
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2009/05/09
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題名の「ムサシ」とは、勿論宮本武蔵のこと。 時は元和4(1618)年夏、ところは鎌倉の禅寺=源氏山宝蓮寺。 武蔵は言葉の駆け引き巧みで、小次郎は生真面目で一本気、沢庵禅師は超然としてある、というキャラクター設定は吉川英治「宮本武蔵」そのまま。 さて本戯曲、狙いは何か、何を伝えようとしているのか、それは最後まで読んでのお楽しみです。 |
●「組曲虐殺」● ★★ |
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2010/05/04
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最近人気が出ているという「蟹工船」の作者、プロレタリア作家の小林多喜二を描いた評伝戯曲。 貧しい人の存在を深く胸に感じた、多喜二の少年時代がプロローグ。 特別な趣向はなく、評伝戯曲の中ではオーソドックスな作品。しいていえば、多喜二の関わる内次第に考え方を変えていく2人の特高刑事の存在が妙味。 井上さんが先日亡くなったことで、本作品が最後の評伝戯曲になると思います。 |
●「一週間」● ★★☆ |
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2013年04月
2010/07/22
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第二次大戦終了後のソ連国内を舞台とし、レーニンの手紙をめぐる、極東赤軍政治部の将校らと、その秘密をにぎる日本人捕虜=小松修吉との、一週間にわたる凌ぎ合いを描いた長篇小説。 本作品、小説ではありますが、井上戯曲を読んでいるような感覚にとらわれます。 本ストーリィ、会話が主体ですから、テンポよく軽快に読み進んでいくことができます。約
500頁という厚さはまるで気になりません。 サスペンス劇の面白さに加え、笑劇の面白さも多々あり。 |
●「東慶寺花だより」● ★★ |
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2013年05月
2010/12/15
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時代小説、しかも駆け込み寺として有名な鎌倉・東慶寺というストーリィ設定が、最後の井上作品としてはまず意外。 主人公は、長年にわたり漢方医師の門下生として修行しながら、戯作者に夢を抱き何とか2作目を書き上げようと、東慶寺の御用宿である柏屋に泊まり込んでいる信次郎、23歳。 全15篇。その中でも、陶然となる「梅の章−おせん」、スリリングな「花菖蒲の章−おきん」と「落葉の章−珠江」、ミステリ風味ある「岩莨の章−おみつ」、井上さんらしい滑稽味溢れる「柳の章−おせつ」、嘘のような話の「白萩の章−おはま」はことに読み応えあり。 (梅の章)おせん/(桜の章)おぎん/(花菖蒲の章)おきん/(岩莨の章)おみつ/(花槐の章)惣右衛門/(柳の章)おせつ/(蛍袋の章)おけい/(鬼五加の章)おこう/(白萩の章)おはま/(竹の章)菊次/(石蕗の章)おゆう/(落葉の章)珠江/(黄蘗の章)おゆき/(蓼の章)おそめ/(藪椿の章)おゆう |
●「グロウブ号の冒険−附 ユートピア諸島航海記」● ★☆ |
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2011/05/09
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初の東大法学部出身の力士=山田山、引退後部屋付きとなった部屋の親方から新弟子探しを命じられて、何とカリブ海へ。 本作品は未完。執筆されたのはまだバブル経済の頃、1987年から岩波書店の雑誌に断続的に連載されていたとのこと。 本書については、こういう遺作があった、その遺作を読んだ、に尽きると言えます。 |
●「黄金(きん)の騎士団」● ★★ |
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2014年01月
2011/05/19
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孤児だった自分を施設で育ててくれた田中のおばあさんが入院したと聞いて、新入社員特訓研修を退社してまで抜けて「聖母の騎士園・若葉ホーム」に戻ってきた外堀公一、若葉ホームが事実上、残された6人の少年たちだけで運営されていることに気づきます。 規格外の発想に基づく気宇壮大なSF的夢物語という点では、大ヒットとなった「吉里吉里人」に通じるものがあります。 しかし、残念ながら本作品も遺作にして未完。 |
●「一分ノ一」● ★★ |
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2014年04月
2011/11/22 |
戦後日本、米英露中4ヵ国によって分割占領統治され、北ニッポン(ソ連占領)、中央ニッポン(米国占領)、西ニッポン(英国占領)、四国ニッポン(中国占領)に分かたれまま。そのうえ東京は50ヵ国によって分割占領されているという状態が40年続いている。 それでは日本地図を一色に塗ることができない、広域暴力団になりようがない、全国高校野球甲子園大会が開催できない、日本全国縦断ツアーができないと、地理学者、ヤクザ、高校野球部の監督、女性歌手が統一ニッポンを目指して活動を開始します。 かつて「吉里吉里人」を創作した井上さんらしい奇想天外なストーリィ。そのうえ、言葉遊びあり、各国文化比較論あり、作中小説あり、サブーシャが何人もの人物に変身するといったドラマ&風変わりな対決シーンありと、まさに井上さんらしさ満載という作品です。 |
●「言語小説集」● ★★ |
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2014年12月
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いかにも井上さん!と言うべき、言葉、日本語、方言を題材にした短篇集。 ・「括弧の恋」:井上さんの発想にまず脱帽。ワープロの中で、愛し合う「と」、さらに!や?などの記号たちが喧々諤々、凌ぎ合うのですから。 本書7篇では、奇抜な発想という点で「括弧の恋」、言い損ないや言語障害といった言葉遊びの面白さという点では「言い損い」と「言語生涯」の2篇が魅力です。 括弧の恋/極刑/耳鳴り/言い損い/五十年ぶり/見るな/言語生涯 |
40. | |
「馬喰八十八伝(ばくろうやそはちでん)」 ★★ | |
1989年 2016年03月
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井上ひさし作品の文庫復刊。 未読というだけでなく、如何にも井上さんらしい作品と思えたので読むことにしました。 年老いた母親の望みを叶えるため、種付け馬・花雲の背に老母を乗せて嘘を封じる百か所参りをしている途中の若者。 馬の名産地・桜七牧で花雲を盗まれ、訴えて真実を述べたというのに自分が悪者にされてしまい88回叩かれる刑を受けてしまいます。怒った若者は以後同じ数の嘘を吐くことを決意、名前を八十八と替えます。 悪代官やその手下、盗賊の頭目、さらに家老や藩主と嘘をもって張り合い、危機を乗り越え、一目惚れした娘お今のためにさらなる大きな勝負を仕掛ける、という時代物冒険ロマン。 嘘という語りの面白さ、言葉の序列がオカシイ代官や言葉の区切りのオカシイ藩主との掛け合いの面白さ、加えて主人公に馬語まで操らせるといったところは、井上さんらしいユーモラスな味わい。 久々に井上ひさし作品の面白さをたっぷり堪能したという気分です。 最後はハッピーエンドという訳には行きませんが、八十八らの前にお龍という年増女を登場させたところに救いがあるように感じられます。 嘘とは、一度付き始めると突き通すしかない、そしてその内容はどんどん大きくならざるを得ないものなのだなぁと、八十八の経過をみることによって感じられます。 嘘をついて幸せを手繰り寄せるなど、凡人には手の余ることと言うべきなのでしょう。 本編の主人公が八十八と名乗る以前こと/われらが主人公八十八に御難さわぎがつづくこと/われらが主人公八十八が第二第三の大嘘をつくこと/われらが主人公八十八の命が風前の灯となること/われらが主人公八十八が次々に難局を乗り切ること そしてロマンス/われらが主人公八十八が嘘についての若干の思索を試みること/われらが主人公八十八が高野村百姓衆と肝胆相照らす間柄となること/われらが主人公八十八が新たなる強敵と相見えること/われらが主人公八十八がついに桜の殿様と事を構えるに至ること/われらが主人公八十八がたったひとつの嘘がつけずに悩むこと |
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