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11.虫たちの家(文庫改題:彼女たちの眠る家) 12.失踪.com−東京ロンダリング−(文庫改題:事故物件、いかがですか?) 13.ラジオ・ガガガ 14.ランチ酒 15.三千円の使いかた 16.DRY 17.おっぱいマンション改修争議 (文庫改題:そのマンション、終の住処でいいですか?) 18.ランチ酒−おかわり日和− 19.まずはこれ食べて 20.口福のレシピ |
【作家歴】、はじまらないティータイム、東京ロンダリング、人生オークション、母親ウエスタン、アイビー・ハウス、彼女のための家計簿、ミチルさん今日も上機嫌、三人屋、ギリギリ、復讐屋成海慶介の事件簿 |
一橋桐子(76)の犯罪日記、サンドの女、ランチ酒−今日もまんぷく−、母親からの小包はなぜこんなにダサいのか、古本食堂、財布は踊る、老人ホテル、図書館のお夜食、喫茶おじさん、定食屋「雑」 |
古本食堂新装開店、あさ酒 |
「虫たちの家 Insects in the Garden」 ★★ (文庫改題:彼女たちが眠る家) |
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2019年01月
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ネット上で晒され、傷付けられた女たち。親族たちからも白い目で見られ、居場所を失った彼女たちの隠れ家が、九州の離島にある“虫たちの家”。 代表の田中マリア、その養女となったテントウムシ(38歳女性)とその他2人が暮すその家へ新たにミツバチ・アゲハと仮名がつけられた母娘がやってきます。 しかし、1年前に世間を賑わす事件を引き起こした女高生のアゲハ、この離島でも何やらきな臭い動き。 ここにしか自分の居場所はないと思い定めているテントウムシは“虫の家”を守るためアゲハの事件を調べ始めるのですが、思いもしない事態に・・・・。 やがてサスペンス紛いの展開へ。同時に、父親と共に家族で赴任したアフリカの町において、日本人同士の確執があった過去が語られます。これは誰の過去なのか。 傷付けられた人たちにとって、その心を癒すための隠れ家は欠かせない大切なものでしょうけれど、同時にそこに閉じ籠ってしまうのは問題であろうと思います。 否応なくにしろ、テントウムシ再び外へ出て行くまでの、きっかけを描いたストーリィ。 本作を面白いと感じるかどうかは微妙なところがありますが、勇気を奮い起こして一歩を踏み出すテントウムシの複雑な心情に強く惹き付けられます。 |
「失踪.com(ドットコム)−東京ロンダリング Tokyo Laundering−」 ★★ (文庫改題:事故物件、いかがですか?−東京ロンダリング−) |
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賃貸不動産物件の“ロンダリング”という題材が鮮烈で、忘れ難い作品となっていた「東京ロンダリング」の、5年ぶり復活。 ストーリィは前作に連なっていますが、続編と称するのは適切なのだろうか。 「あとがき」において原田ひ香さん曰く、「むしろ本作が第一作で、前作はゼロ地点の物語のように感じている」とのこと。 様々な主人公が登場します。 「うちの部屋で人が死んだら」:全てに逃げ腰の夫からアパート管理を押し付けられ奮闘する、きちんとした性格の専業主婦。 「君に栄光を捧げよう」:失踪した同僚を心配する会社員。 「幽霊なんているわけない」:浮気ばかりし続けた揚げ句に妻から家を追い出された、いい加減な性格の夫。 「女が生活保護を受ける時」:真面目できちんとした性格ながら生活保護を受ける羽目になった中年女性。 「地方出身単身女子の人生」:不動産屋の20代女性事務員。 「失踪、どっと混む」:失踪者を探すという仕事を、元同僚の女性都起業した仙道啓太。 「昔の仕事」:前作で主人公を務めた内田りさ、36歳。 「大東京ロンダリング」:再び仙道啓太。 きちんとした人物なのに何故こんな不運に?と思うケースもあれば、これだけいい加減ならと思うケースもあり。 “ロンダリング”に関わる以上、そこにはそれなりの事情有り、というは当然のことでしょう。 さらに、ロンダリングに向いた人間もいれば向かない人間もいるという次第。どうもこの点、女性の方が強いようです。 前作に登場した不動産屋の相場社長、同事務員のまあちゃん、内田りさが再び登場するほか、「株式会社失踪ドットコム」担当部長の仙道啓太が登場、本作で重要な働きを見せます。 ロンダリングを妨害する様な動き?というのが本書の読み処。 社会の裏側に舞台設定した群像的人生ドラマ+ロンダリング。興味がある方は、前作と併せてお薦めです。 うちの部屋で人が死んだら/君に栄光を捧げよう/幽霊なんているわけない/女が生活保護を受ける時/地方出身単身女子の人生/失踪、どっと混む/昔の仕事/大東京ロンダリング |
「ラジオ・ガガガ RADIO GAGAGA」 ★★ |
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2020年05月
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ラジオのリスナー、トーク等を題材にした短編集。 “ラジオ”という言葉を聞いただけで、何か良いんですよねー。 高校〜大学時代、深夜ラジオに嵌っていました。 就職して以来全く縁がなくなっていましたが、今でもラジオ番組は楽しい、魅力があるのだということは、小林信彦さんのエッセイでしきりと聞かされていました。 TV番組は漫然となく観ていても済んでしまいますが、ラジオは全く違うものなのでしょう。 ラジオから聞こえてくる声は、リスナーに語り掛けてくるもの。そしてその声に耳を傾けるというのも積極的な行為。 ネット等からの情報が溢れかえっている現代社会の中で、素朴な良さに心が惹きつけられる気がします。 伊集院光やナインティナインら、実在の番組が取り上げられているので、なおのことリアル、自分もまたリスナーになった気分がして楽しい。 ・「三匹の子豚たち」:ケアハウスに入所した河西信子、彼女がラジオを聞くようになった理由は思いがけないもの・・・。 ・「アブラヤシのプランテーションで」:任されていたシンガポールのラーメン屋を放り出し逃げ出した裕也の今後は・・・。 ・「リトルプリンセス二号」:聡子は不妊治療中の辛かった記憶を思い出し・・・。 ・「昔の相方」:夫が応援していた友人は、今や人気漫才コンビに。その所為なのか、夫は最近何か考え込んでいる風・・・。 ・「We are シンセキ!」:女子中学生の来実、ラジオ番組の相談コーナーのファン。その相談にクラスの最上位女子が・・・。 ・「音にならないラジオ」:ラジオドラマのコンクールで最優秀賞を受賞した貴之。しかし、ラジオ制作部の壁は厚く、数多く考え出したプロットはいつもボツばかり・・・。 5篇の中で私が特に好きなのは、「昔の相方」と「We are シンセキ!」の2篇。良い味わいですよねェ・・・。 1.三匹の子豚たち/2.アブラヤシのプランテーションで/3.リトルプリンセス二号/4.昔の相方/5.We are シンセキ!/6.音にならないラジオ |
「ランチ酒」 ★★ |
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2020年10月
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アラサー、離婚してバツイチ、愛娘と別れて小さな部屋で一人暮らし、そんな犬森祥子の唯一の楽しみは、夜を徹しての見守り仕事明けのランチ&お酒。 離婚して行き場を失った祥子を助けてくれたのは親友の幸江、そして小学校同級生以来の付き合いである亀山太一。 その亀山が経営するのが<中野お助け本舗>、祥子は今そのお助け本舗に所属して、夜中の“見守り人”仕事で糊口をしのいでいるという状況。 見守り仕事の相手は、キャバ嬢の幼い娘だったり、老いたペット犬、老母等々と、依頼人が傍にいられない事情が生じた夜間、依頼人に代わって見守るというのがその仕事内容。 仕事はその都度様々な相手、場所も然りで、仕事明けに見つけた食事場所でお酒も一緒に楽しむというのが祥子のパターン。 もっとも、祥子が昼に酒を飲むのはそれなりに切ない心理があるのですが。 連作風ストーリィ、中心になるのは見守り仕事とその後のランチメニュー。決して贅沢なグルメメニューではありませんが、祥子が美味しい、美味しいと食べるシーンが楽しい。 祥子の真に大切なストーリィは、その表の影に隠れているかのようです。 本作はその匙加減が、何とも言えない味わいがあります。 決して安心できる状況とは言えない祥子の現在ですが、食べることを楽しめているなら、まだまだ元気に生きていける、そう思います。 頑張れ、祥子!と声を掛けたくなると共に、読み手も元気になれる気がする一冊。お薦めです。 第一酒:武蔵小山 肉丼/第二酒:中目黒 ラムチーズバーガー/第三酒:丸の内 回転寿司/第四酒:中野 焼き魚定食/第五酒:阿倍野 刺身定食/第六酒:御茶ノ水 牛タン/第七酒:新宿 ソーセージ&クラウト/第八酒:十条 肉骨茶/第九酒:新丸子 サイコロステーキ/第十酒:秋葉原 からあげ丼/第十一酒:新丸子リベンジ アジフライ/第十二酒:代官山 フレンチレストラン/第十三酒:房総半島 海鮮丼/第十四酒:不動前 うな重/第十五酒:秋葉原、再び とんかつ茶漬け/第十六酒:中野坂上 オムライス |
「三千円の使いかた」 ★★ | |
2021年08月
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三千円・・・たかが三千円と思うか、すべては三千円から始まると思うか、それによって人生が変わる? 幸せとお金はどう関わるのか、御厨家の祖母・嫁・孫娘2人(既婚と独身)をそれぞれの主人公として、5つのケースについて語り、そして問うた連作ストーリィ。 まぁ、お金はあるに越したことはないし、ある程度はないとそれは困るもの。特に寿命が延びた現在は老後資金のことも考えないといけませんし。 また、節約しないとお金は堪らないし、だからといって節約ばかりでは何のために生きているのか、とも思いますし、いくら考えても尽きない問題ですねー。(笑) それじゃあ、実際のケースに当てはめてで考えてみよう、というのが本作であろうと思います。 ・まずは独身の次女=御厨美帆。給料は今まで使いたい放題。気が付けば、貯金は〇十万円。このままで良いのか・・・。 ・琴子、73歳。夫が死んで年金は減額、貯金は1千万円あるものの何かあったらと不安。だからといって何もできず・・・。 ・高校時代からの恋人と結婚した長女=井戸真帆。夫は公務員である消防士ながら低給与。節約に務め貯金は現在〇百万円。しかし、大学時代の友人から金持ちの息子と婚約した話を聞くと、つい心が揺らぎだします。 ・琴子と園芸絡みで友人になったフリーター=小森安生、40歳。結婚もせず子供も作らず、気楽な身分でいるのが一番と考えていましたが・・・。 ・手術して退院した智子、しばらく家事は控えるようにと言われていましたが、夫の和彦は何の家事もできず。ふと虚しさを覚え・・・。 ・再び美帆。恋人の翔平から、親が勝手に奨学金〇百万円を借りていたことが分かったと打ち明けられます。困惑しながらも自分が返済しないとと言う恋人に、結婚を意識していた美帆にとっては大問題・・・。 さてその結論は、というと、最後の一文に尽きますね〜。 皆さんも納得できるところではないでしょうか。 1.三千円の使いかた/2.七十三歳のハローワーク/3.目指せ! 貯金一千万円!/4.費用対効果/5.熟年離婚の経済学/6.節約家の人々 |
「DRY」 ★★ | |
2022年12月
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やりきれない思いをさせられる作品、というのに時々出会いますが、本作もそんな一つ。 親の介護という責務を負わされた女たちの過酷な運命を描く、まさに渾身の長編と言って良いでしょう。 主人公の北沢藍は33歳。パート勤務先の上司と不倫し、それがバレて離婚。祖母と母親との間に起きたトラブルの後始末を押し付けられ、その結果として実家に戻ると、口喧しい祖母と男にだらしない母親との口論は相変わらず。 そんな藍に手助けの手を差し伸べてくれたのは、子供の頃からの隣人で41歳?の馬場美代子。 その美代子は、ずっと祖父の介護を一人で背負ってきて愚痴も言わず、近所では評判の孝行娘。 しかし、美代子と親しくなった藍は、ある日、思いも寄らぬ美代子の秘密を知り、また知らされてしまう・・・。 たしかに藍という女性の境遇にも厳しいものがありますが、とは言っても祖母・母・藍と三代そろって自業自得というところがないではありません。 それに対して美代子、就職も結婚もすることなく、若い頃から当然のように介護を背負わされていて、過酷という他ありません。 ストーリィ展開は相当にドラマチック。桐野夏生「OUT」を思い出さずにはいられませんでした。 現代社会の過酷な問題を題材にした、衝撃的な作品、と言って過言ではありません。 ただ、介護は女性たちだけの問題か、と言えば、今や決してそうとは言えないでしょう。介護離職、介護プアという問題もあり、その点では男女変わることはないと思います。 昔だったら、親の面倒は子がみて当然、ということだったのでしょうけれど、寿命が長くなった現在、社会で介護する仕組みを作ることが大事でしょう。 そうしないと子側は、何のために生きているのか、という問題に直面してしまうのですから。 ・・・とは思っていても、顔を背けたくなるようなブラックな展開は、読んでいても辛い、辛すぎます・・・。 |
「おっぱいマンション改修争議」 ★☆ (文庫改題:そのマンション、終の住処でいいですか?) |
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2022年02月
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今は亡き天才建築家=小宮山悟朗が建てた<赤坂テラスメタボマンション>。 蜂の巣を積み重ねたような奇抜な構造、そして本人家族が住んでいた最上階ペントハウスは、2つの丸窓部分を突き出すような特異なデザイン。よって付けられた異名が「おっぱいマンション」という次第。 かつて憧れの的だったおっぱいマンションも今や45年を経過し、老朽化も進み、住民たちの間から建て替えという声も上がっている状況。とくに構造的な欠陥と言われているのが、特殊な外観を損なわないよう雨樋が設置されておらず、直接雨が部屋に浸み込んでくるという問題。 要は、現在既に問題として浮上し、今後ますます増えていくであろう分譲マンションンの建て替え問題が本作品のテーマ。 どんなマンションでも起こりうる問題ですが、本ストーリィでは対象物件が今や文化資産的建造物となっている有名マンションであり、本マンションにいろいろ因縁を持つ人物が関わっているところからやたら騒がしい、という設定。 小宮山悟朗の弟子で跡を継いだ岸田恭三、悟朗の娘=みどり、学生運動経歴のある元教師=市瀬、住民である元女優、等々。 きちんと計画的に修繕を実施していれば、マンションは長く保つといいますが、資金的に余裕のある人は買い替えで出て行ってしまうのですよね。ですからスラム化していく懸念あり、というのが大きな問題。 私もずっとマンション暮らしですから、いずれ、という懸念を少々抱きながら読み進みました。 おっぱいマンション/おっぱい革命/敗北の娘/元女優/住民会議 |
「ランチ酒−おかわり日和−」 ★★ | |
2022年06月
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「ランチ酒」第2弾。 相変わらず元夫のもとに残してきた娘=明里(小三)のことを思いながら、犬森祥子の<見守り>仕事は続きます。 このところ似たような連作短編ものを読んでいますが、本作が楽しさにおいて勝るのは、気負いが無いから、と言って良いように思います。 夜から翌朝までの見守り仕事を終えた後、朝とはいえ一杯飲みたくなるのは当然の気持ちでしょう。 グルメものといってもわざわざ人気店を探すのではなく、仕事が終わったその場所近くに見つけて入った店での美味に喜ぶということですから、極めて自然体。 ストーリィ内容は、その祥子が料理&お酒を楽しむ様子にかなり頁が割り当てられており、その合間に、祥子の個人的状況が少しずつ前進していく風。 この2つのストーリィ要素のバランスが良く、また自然体のところも良いから、素直に心ゆく楽しめます。 前作に引き続き登場する人物は、月刊誌編集者の小山内学とその母親=元子、外資系証券会社勤務のエリート=新藤剛志、等。 第一酒:表参道 焼き鳥丼/第二酒:秋葉原 角煮丼/第三酒:日暮里 スパゲッティグラタン/第四酒:御殿場 ハンバーグ/第五酒:池袋・築地 寿司、焼き小籠包、水炊きそば、ミルクセーキ/第六酒:神保町 サンドイッチ/第七酒:中目黒 焼き肉/第八酒:中野 からあげ丼/第九酒:渋谷 豚骨ラーメン/第十酒:豊洲 寿司 |
「まずはこれ食べて」 ★★☆ | |
2023年04月
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学生時代の仲間で起業した医療系ベンチャー企業「ぐらんま」。 CEO(田中優一郎)、営業(伊丹大悟)、IT(桃田雄也)、事務・経理(紅一点の池内胡月)と創立メンバー4人で担当を分け合い+バイトという体制は基本的に創業以来変わらず。 ただ、事務所は未だ2DKのマンション。ここで夕食、夜食を取る者もいれば泊っていく人間もいるという訳で薄汚くもなり、CEOの田中が決断したのは家政婦を雇うということ。 そこで派遣されてきたのが、筧みのりという50代女性。 その筧の用意する夕食、夜食が真に美味しそうで、このところぎくしゃくしていたメンバーたちを再びまとめていきます。 美味しい料理を食べれば気持ちも寛ぎ、心も開いていくというもの。まして仲間たちと一緒に舌鼓を打つのであれば、尚のこと楽しい。 また、料理を前に、筧に対して各自の口もほどけていきます。 そこから、メンバー各自が抱えている問題、内心の思いが明らかにされていく、という展開。 読むからに美味しそうな料理の数々、個性的な各人がもたらすストーリィ、筧とのやりとり、実に楽しき哉。 一方、各人による語らいの中で、そもそも起業発案者であり、何故か姿をくらませた柿枝駿(はやお)の存在が次第にクローズアップされていきます。 柿枝とはどういう人間だったのか、何故姿を消したのか。 最後、田中がずっと抱えてきた思い、筧みのりが隠していた事情も含め、一気に全ての謎が明らかにされます。 その辺りはまるでミステリ小説さながら。思わず興奮、です。 仲間、美味な料理、ミステリとスリル、それらの楽しみを巧みに、かつ鮮やかに楽しませてくれる逸品です。お薦め。 1.その魔女はリンゴとともにやってきた/2.ポパイじゃなくてもおいしいスープ/3.石田三成が昆布茶を淹れたら/4.涙のあとでラーメンを食べたものでなければ/5.目玉焼きはソースか醤油か/6.筧みのりの午餐会/エピローグ |
「口福のレシピ」 ★☆ | |
2023年02月
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このところ料理ものが目立つ原田ひ香さん、再び新たな料理もの連作ストーリィかと思ったのですが、意外にもさにあらず。 要は2つの時代をまたぎ、料理好き、工夫をすることが好きな2人の女性の姿を描いた長編ストーリィ。 主人公の一人は、代々料理学校を経営する品川家の一人娘として生まれながら、跡継ぎと決めつけられるのが嫌さに大学卒業後システム会社に就職してSE。今はその会社を退職し、フリーで仕事を請け負っている品川留希子・29歳。 住まいは、友人で離婚した小井住風花の一軒家に同居中。 元々料理好きとあって、自分が考えた家庭料理レシピをブログにアップしたところ好評、人気上昇もあって、お役立ちレシピのアプリ開発を思いつきます。 しかし、その留希子の前に立ち塞がったのが、品川料理学園の会長・校長である祖母と母・・・・。 一方、もう一人の女性は、曾祖父=品川丈太郎の時代に、料理教習所を営む品川家で何人もいる女中の一人として奉公していた、若い娘の山田しずえ(しず)。 留希子が工夫する、忙しい主婦でも簡単に作れるレシピという題材も楽しいのですが、祖母と母との葛藤を経て、留希子がしずえと繋がっていく展開に心が温まります。 何しろ、二人の間には元々繋がりがあるのですから。 ※留希子と祖母・母の仲介役として、現在理事長の職にある坂崎光太郎が登場しますが、結構喰わせ者ですね。(笑) ただ本ストーリィ、主眼はどこにあったのかと言うと、何だったのだろうと、少々戸惑います。 家庭料理への愛を綴る物語だったのでしょうか。 下ごしらえの日曜日/月曜日の骨酒/火曜日の竹の子/水曜日の春菊/木曜日の冷や汁/金曜日の生姜焼き/土曜日の梅仕事/日曜日のスープ/あとしまつの日曜日 |
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