濱野京子作品のページ No.3



21.夏休みに、ぼくが図書館で見つけたもの

22.
with you

23.野原できみとピクニック

24.マスクと黒板


【作家歴】、その角を曲がれば、フュージョン、トーキョー・クロスロード、レッドシャイン、碧空の果てに、白い月の丘で、木工少女、紅に輝く河、レガッタ!、レガッタ!2

 → 濱野京子作品のページ No.1


くりぃむパン、レガッタ!3、石を抱くエイリアン、ことづて屋、ことづて屋−停電の夜に−、アカシア書店営業中!、ことづて屋−寄りそう人−、この川のむこうに君がいる、谷中の街の洋食屋−紅らんたん、南河国物語

 → 濱野京子作品のページ No.2

 


                  

21.
「夏休みに、ぼくが図書館で見つけたもの ★★


夏休みにぼくが図書館で見つけたもの

2019年11月
あかね書房

(1200円+税)



2019/12/07



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小五の堤達樹は、かなりの本好き。図書館が自宅から近いということもあって、毎日のように入り浸っている図書館っ子。
学校では無口で目立たない生徒ですが、さくら図書館では子供たちからあれこれ相談されては的確に答えていて饒舌。

学校とではまるでキャラが違うと驚いたのは、初めてさくら図書館で見かけた、同級生の
皆川彩友
彩友、幼い頃に母親に読んでもらった本を探したいのだという。でも題名も、どんなストーリィかもよく覚えておらず。達樹は何とかその本を見つけてあげたいと思うのですが。
さらに達樹が見出した同級生は、さして本好きでもなさそうな
永井令央。まずは驚きですが、折角だから令央が楽しめる本を是非見つけてあげたいと思うばかり。

私も子供の頃から本は好きで(達樹には負けますが)、近くに開架式の図書館があったらきっと入り浸っていたのではないかと思います(無かったことは残念)。
その好きな場所で知り合いを見つけたら、いきなり親近感を抱いてしまうこと、これはもう間違いなし!です。

題名を見て、主人公が見つけたものは何だろう?と考えるに違いないと思いますが、多分、分りますよね?

本好きであれば達樹に同胞感を抱くのは当然のこと。
彩友の探している本は果たして何か? 令央は何故図書館に?
そんな些細な日常ミステリも楽しい。
いずれも本絡みの展開ですから、本好きにとっては嬉しい限り。

※なお、他人に面白い本を勧めるのはかなり難しいことですが、誰に対しても勧めたい本は何かと言えば、
川上健一「翼はいつまでもかな。これも小学生たちの、夏休みの物語でした。

※彩友の探す、孤児と病気の子どもが出てくる本とは? 最後に明らかになるその答えも楽しみなのですが、その本とはこちらです → 【彩友の探し本


プロローグ/1.さくら図書館児童室/2.彩友(あゆ)の探しもの/3.夢の本棚/4.めずらしい来館者/5.児童センターで遊ぶ/6.「かけがえのない本に出会うこと」/7.読書感想文の本探し/8.図書館に来る理由/9.湯浅じゅんの講演会/10.令央(れお)の家/11.花園の彩友/12.夏の終わり/エピローグ

                  

22.
「with you ウィズ・ユー ★★☆


with you

2020年11月
くもん出版

(1300円+税)

2022年07月
講談社文庫



2022/01/13



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“ヤングケアラー問題”をテーマにした作品。

中三生の
柏木悠人は受験生。
家は、母親と兄と三人での古い団地住まい、父親は家を出ていったが仕送りだけはしてくれている、それでも貧乏家庭。
母親は優秀な兄にばかりを気にしていて、悠人のことは無関心。
自分の存在意義が見出せない、というのがこの悠人の悩み。

その悠人、日課にしている夜のランニングの途中、公園のブランコに一人で座る少女を見かけ、声をかけます。
会う度に話しかけ、次第に彼女と悠人の間に会話が増え、親しみが生まれてきます。
彼女は
富沢朱音、他中学の二年生。彼女の言葉から、病気である母親の介護から幼い妹の世話、そして家事までを一人で背負っている“ヤングケアラー”であることを知ります。
朱音のことが好きになった悠人は、少しでも朱音の力になりたいと思うのですが・・・。

朱音、自分が担うしかないと思い定めているのですが、一方で幼い妹に腹を立てたりすることに罪悪感を抱いたり、睡眠不足等で勉強が十分出来ていないことに悩みを抱えています。
しかし、そんな家庭の内情を誰にも打ち明けたくないから、その点で孤独、夜の公園がせめてもの息抜き、という次第。
そんな朱音にとって、他校生徒である悠人は格好の吐き出し相手で、その優しさから僅かでも救いになったのでしょう。

ヤングケアラーの問題は、内に潜ってしまって外から分かりにくいこと、子供たちが他に助けを求めることを知らない、ということにあるらしい。
そうしたヤングケアラーたちの典型的な姿を、本作は描き出していると思います。
本書の朱音は、金銭的に困窮していない点でまだマシな方なのかもしれません。

特殊な家庭事情という問題ではなく、今や社会問題として取り上げ、何とか救いの手を差し伸べなくてはならない問題でしょう。
大人にも子どもにも広く知ってもらいたい問題です。

             

23.
「野原できみとピクニック ★★★


野原できみとピクニック

2021年3月
偕成社

(1500円+税)



2021/04/26



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これはもう、私好みのストーリィ。

ロミオとジュリエットの障害は、家族一門同士の対立でしたが、本作2人の障害は社会的格差。
現実社会においてその差は大きいと思うのですが、2人の恋は易々と2人の間にある距離を超え、さらに同級生たちも巻き込んでいく。
2人のおかげで2つの社会の間にある壁が取っ払えた、などという理想的展開にはなりません。でも、壁に穴が開き、2つの世界が繋がることもできるのだと知っただけでも、彼らにとっては大きな前進、大きな成長であると思うのです。
そしてそんな彼らに、大人として大きな期待を抱くことができる筈。

主人公の一方は、山手にある中高一貫の
私立S学園の一年生である優弥。裕福な家庭の一人息子で優等生、高等部では写真部。
もう一方は、駅を挟んで反対の海側にある底辺校、
公立L高校の一年生である稀星(きらら)。父親の勤務先が倒産し、市営住宅に住む貧困家庭、小学校に上がる前の弟2人がいる。
2人の出会いは、カツアゲされそうになっていた優弥を稀星が救い、稀星がバイトしていたコンビニで再会した処から。一目ぼれした優弥がメアドを記したメモを稀星に渡し、2人の間に繋がりが生まれます。

片や裕福家庭、片や貧困家庭。私立進学校と底辺校。
子ども食堂を営んでいる、L高校のたまり場ともいえる<
はもれびカフェ>へ、稀星が優弥を誘った処から優弥の世界が広がります。
本ストーリィで良いのは、優弥がそれを他の同級生たちにも広げていったこと。そして稀星が、S学園の生徒らに対して自分たちを卑下することがなかったこと。
お互いに初めて知ることが多くありますが、恩恵を受けたのは優弥たちの方だと思います。現実の社会を多少なりとも知ることができたのですから。
同級生だって語り合わなければ相手のことを知らないまま、という言葉は強く胸を打ちます。
そうした展開を生き生きと味わわせてくれるのは、優弥と稀星の間の格差恋愛ストーリィに他なりません。

しかし、高校生たちが自分らのアイデアで行動しようとすると、とかく好事魔多し。
さて、彼らがどんな逆転劇を演じるのか。それは実際に読んでのお楽しみです。 
きみとピクニック」という題名が素敵です。是非、お薦め。

              

24.
「マスクと黒板 Masks and Black boards ★★


マスクと黒板

2022年04月
講談社

(1400円+税)



2022/05/22



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コロナ下の中学生たちを描いた児童向け小説。

コロナによる休校期間が開けてようやく登校できた植野中学の生徒たちを待っていたのは、「コロナに負けるな!」というメッセージの付いた見事な黒板アート。
美術部の2年生・
立花輝(てる)は絵に圧倒されつつも、描き手は誰だろうかと興味を惹かれます。
この輝のキャラクターが結構面白い。
コロナ前からマスクを欠かさなかったらしく、ウレタンマスクへの警戒心もいっぱい。人との付き合いは苦手で、美術部だが絵はそれ程才能ないものの、絵の鑑賞力はしっかり備えている、というキャラクター。

コロナ感染者の動向に注意を向ければマスク着用、いろいろな行事の中止もやむを得ないが、中学生であろうと不満な溜まっていきます。そのうえマスクは白と決めつけられるなんて・・・。

そうした中、黒板アートに刺激され、輝は何かやりたいと、同級生の藤枝貴里、生徒会役員でもある葉麗華らに図って動き出します。

コロナ下で制約されることも多いが、それでもやれることはある。
彼らが自分たちで考え、アイデアを出してイベント企画を実現したことはとても勇気づけられます。
それぞれ個性的な中学生たちの姿はすこぶる楽しいですし、先への希望を感じさせられてワクワクする一冊です。 お薦め。

        

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