|
|
5.ぼくらのひみつ 7.現代罪悪集 8.燃えよ、あんず 9.睦家四姉妹図 |
●「マリッジ:インポッシブル Marriage:Inpossible」● ★☆ |
|
2011年02月 2008/10/29 |
引田輝子、TV番組制作会社でグルメ番組担当のディレクター、29歳、独身。 「ひきたてる子」という親の付けた名前がそもそも悪い、と嘆きながら猪突猛進の観ある輝子のキャラクターが愉快ですけれど、30歳間近になって結婚!と慌てふためき出すストーリィは、ありきたりといえばありきたり。 客観的に見ると輝子、結構いい女らしいのですが、やることなすこと出会うこと、運に見放されていると思うようなことばかり。それでも最後は落ち着くべきところに落ち着いたようでホッ。 ※輝子のこと、他人事として呆れ、笑っていましたが、ふと思い出したら、上記のこと、私も一通り経験していました。(苦笑) |
●「船に乗れ!1−合奏と協奏−」● ★★ |
|
2011年03月
|
純粋で不器用で、思い返すと胸が痛くなること幾度もある、といった青春期。 当然の如く芸大附属高校を受験したもののあえなく不合格。サトルは仕方なく、祖父が学長を勤めている新生学園附属高校の音楽科へ進学します。 学校の音楽部を舞台にしたストーリィはというと、中沢けい「楽隊のうさぎ」以来。また、TVドラマ「のだめカンタービレ」の興奮もまだ残っていて、演奏の上達に精一杯を尽くす高校生たちの姿を小説においてまた見えることができるのは、とても嬉しいこと。 |
●「船に乗れ!2−独奏−」● ★★ |
|
2011年03月
|
青春音楽小説三部作の第2巻目。 その辺り、前半はごく穏当でそうあるべき2巻目ストーリィというところなのですが、度肝を抜かれたのは後半。 本作品の良さは、第1巻でも記したとおり、自分の青春時代を振り返るという視点が保たれているところにあります。 |
●「船に乗れ!3−合奏協奏曲−」● ★★ |
|
2011年03月
|
青春音楽小説三部作の最終巻。 前巻で、青春学園小説とは思えない衝撃的な展開に絶句したものですが、それ程ではないにしろ、本巻もまた主人公にとっては厳しい展開。ただし、それこそ現実的な厳しさ、と言われればそれまでのこと。 後半、サトルが仲間たちと演奏する合奏協奏曲、文化祭ミニコンでの演奏場面が、本ストーリィの如何を超えて圧巻。思わず武者震いしてしまった程です。 この3部作の最後に至り、記憶の霧の中から私の愛するある文学名作が浮かび上がり、本物語と姿が重なり合うのを感じました。 |
●「ぼくらのひみつ」● ★ |
|
|
時間が進まない。主人公である「ぼく」は、2001年10月12日の金曜日・午前11時31分という時間にずっと留まったまま。 “想像力の文学”と名付けられたシリーズの一作。 何故主人公は一つ時間に留まってしまったのか。 |
6. | |
「世界でいちばん美しい」 ★★ 織田作之助賞 |
|
2016年10月
|
小学校以来の親友であり、音楽の才能に恵まれたが、それ以外のことにはまるで幼い子供同然だったせった君(雪駄文彦)との長年に亘る交流を、思い出として書き綴るという形をとった長編ストーリィ。 人は成長するにつれて自分の才能の限界を知り、その一方で世知を身に着け、自らの生活、そして人生を築いていくものだと思いますが、主人公の島崎哲もそんな一人。 織田作之助賞を受賞した本作品ですが、本ストーリィが面白かったかどうか、感動を覚えたかどうかと問われると、少々戸惑うところがあります。 |
7. | |
「現代罪悪集」 ★☆ |
|
|
相当にひねりの効いた短篇集。 |
8. | |
「燃えよ、あんず」 ★★☆ |
|
2022年05月
|
下北沢の小さな書店<フィクショネス>。 かつてその書店でいつも長い時間を過ごしていた常連客の久美ちゃん。しかし、彼女は21歳で幸せに結婚したものの、その相手が僅か1年後に交通事故死。 その後、彼女は亡き夫の家族と暮らす道を選び、奈良県桜井市に引っ越し、そのまま音信不通。 その久美ちゃんが、十数年を経て、やはりかつての常連客である由良に付き添われて、再びフィクショネスに顔を見せます。 本作はそこから始まる、久美ちゃんが新たな人生を掴もうとする過程と、書店主のオサムと妻の桃子たちが何とか久美ちゃんに幸せになって欲しいと、応援するストーリィ。 「燃えよドラゴン」を模したような本作題名、それ故、一体どんなストーリィかと戸惑ったうえに、「あんず」という名前の人物も一向に登場せず。これは如何に?と思う処。 頭を悩ませつつも読み進むと、要は上記のようなストーリィだった次第。 ストーリィは波乱万丈ではあるものの、ドラマティックという程ではなし(本人たちにとっては大問題でしたけど)。 それを補うかのように、陰険な人物、いい加減な人物等々、個性的な人物がストーリィを彩っています。 中でも主人公の妻である桃子の、激情ぶりが愉快。 なお、最後に新宮獅子虎という人物の足跡を辿る、まるで番外編といった格好の物語が、本来ストーリィ終幕後に付け加えられているのですが、これが真にお見事。 これこそ、波乱万丈、意外や意外の顛末、まさに人物観もひっくり返すような展開。・・・・藤谷さん、やるなぁ。 誰かの幸せを心から願っても、現実の行動が食い違ったり、思わぬ行き違いが生じること、あるんですよねぇ。その時、一体どう行動すればいいのか・・・参考になります。 1.久美ちゃん/2.マサキくん/3.獅子虎/4.ぽんこつたち |
9. | |
「睦家四姉妹図」 ★★ |
|
|
ごくフツーの一家=睦家、両親&四姉妹のその人生模様、変遷を1988年から2020年まで、8章に分けて描いたホームドラマ。 母親である八重子の誕生日が1月2日であるため、正月+誕生日祝いを兼ねて毎年家族がその日に集まり、父親である昭が家族全員の記念写真を撮る、というのが恒例行事。 そのため各章とも1月2日、舞台は神奈川県戸塚区の原宿にある睦家の居間に設定されています。 冒頭の1988年、実家を出ているのは長女=貞子・24歳のみ。 次女=夏子・22歳、三女=陽子・20歳、四女=恵美里・13歳はまだ実家に同居。 それから32年に亘るのですから、四姉妹にもいろいろな出来事があります。 結婚、子育て、離婚・・・・。きちんとした相手を見つけた娘もいれば、顔にこだわり両親が危惧した相手もいて、予想どおりの結末へと。 それでも年に一回皆が、結婚した相手・恋人、孫も連れて集まってくれるというのは両親にすれば嬉しいことでしょうし、また実家へいつもどおり顔を出せるということも娘たちにとっては戻る場所がある、という意味で幸せなことと思います。 なお、帯同する結婚相手たち、ご苦労様とも思いますが。 ※睦家の正月もうひとつの恒例行事が「フーテンの寅さん」映画を観に行くということだそうですから、睦家の雰囲気が分かるというものではないでしょうか。 1.揺れる貞子と昭和の終わり/2.不安な陽子と世界の変容/3.悩む恵美里と日本の亀裂/4.苦しむ夏子と恐怖の大王/5.梶本さんが台所に立った日/6.「このごろのサダ子さん」/7.「ユートピア」が通り過ぎる/終景図.楽しき終へめ |