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2.生きて候 3.冬を待つ城 4.姫神 5.平城京 6.迷宮の月 |
●「彷徨える帝」● ★ |
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2005年2月
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後醍醐天皇が世に残したという面、その面のもつ呪力、3つの面が揃うことによって帝の真の力が得られるという。その面を獲得するための争闘を中心に、南北朝対立の歴史を、足利幕府の有り様と共に描く出すストーリィ。 しかし、評判程面白くなかったというのが実感。 |
●「生きて候」● ★★ |
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2006年01月
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隆慶一郎「一夢庵風流記」を彷彿させるような風雲児、本多政重の半生を辿った大型歴史小説。 豊臣方、徳川方、双方の武将に重用されたのですから、武、政に抜きん出たうえ、その人物も高く評価された、ということが判ろうというものです。 |
3. | |
「冬を待つ城」 ★★ |
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2017年10月
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秀吉が差し向けた15万もの大軍に対し、寡兵でもって九戸城に立て籠もり、籠城を以て対抗しようとする戦国ストーリィ。 当然ながら和田竜「のぼうの城」を思い出させられます。「のぼう」が埼玉県の行田という土地を舞台にしていたのに対し、本書は本州最北端の地が舞台。 「のぼうの城」とどこが共通し、どこが異なるのか。その点も私にとっては興味処のひとつ。 上記2作品については大軍対寡兵、沼地あるいは厳寒の地という場所の利を頼んで対抗するという共通点はありますが、読み進む内に和田竜作品より隆慶一郎作品との共通性に惹きつけられました。 九戸政実が何故奥州の地、奥州の民を守ることに拘るのか。明かされた経緯からは隆慶一郎「吉原御免状」を思い出させられます。 そこに気づくと、秀吉という中央集権側の支配に対する無謀な抵抗というより、自由独立のための闘いという、表面的な対立構図の底に隠れる真のストーリィ構図が浮かび上がってきて、本作品が俄然面白くなってきます。 本ストーリィの主人公を、九戸政実ではなく、九戸四兄弟の末弟で29歳までは僧門にあったという久慈政則に設定しているところが、作者の妙。そこに第三者的な視点と、奥州が抱える秘密を初めて知らされるという読み手に近い視点が設けられ、ストーリィの面白さが深められています。 また、ストーリィ中の節々に、誰なのか定かならぬ者同士の謀略めいた書簡が挿入されているところも、戦いとは別の角度から成るサスペンスの面白さが加えられています。それが誰なのか、推測しながら読むのも真に楽しい。 450頁余り という歴史長編ですが、この面白さに本書の厚さはまるで気になりません。 1.長兄政実/2.兄弟四人/3.南部信直/4.政実挙兵/5.計略/6.硫黄紛失/7.能登屋五兵衛/8.山の王国/9.籠城/10.和平工作/11.滝名川の戦い/12.裏切り/13.大軍襲来/14.和議の使者/15.生き残る者 |
4. | |
「姫 神」 ★★ |
2018年08月
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古代日本、朝鮮における倭国(日本)の支配地=任那(にまな)を新羅に奪取されて以来敵対関係が続く倭国と新羅、また新羅と争う高句麗・百済を交え、4ヶ国揃って隋へ朝貢し冊封を受けることに拠って倭国と3韓の間に和平を実現しようと計画したのが厩戸御子(聖徳太子)。 その計画実現のため協力するのが、元は朝鮮半島と倭国にまたがる海人族で、現在は北九州に本拠を置く宗像一族。 とはいえ、倭国では任那奪回を誓った故欽明大王の命を戴く蘇我馬子と蝦夷父子が、新羅では朝鮮統一を目指した故真興王に従う花郎徒一団が和平計画を妨害しようと暗躍します。 本書は、聖徳太子&小野妹子による遣隋使の歴史を、和平プロジェクト計画として描いた古代歴史小説。 主人公は新羅人商人であった父親と倭人であった母親との間に生まれ、祖母の跡を継いで宗像一族の姫巫女となる筈の伽耶。 その伽耶を中心として、宗像君大善の嫡男でやがて一族の首長となるべき疾風、重傷を負って浜に流れ着いた処を伽耶が助けた新羅からの使者=円照等々の人物を配し、壮大な歴史フィクションが繰り広げられていきます。 遣隋使という歴史的事実の裏に、こうした物語があったかもしれない、という点が本作品の面白み。 新しい古代史の世界が目の前に広がる気分です。 昨年沖縄に旅行して以来、視点の中心をそれまでの西欧や東京とは別の所に置いてみると全く別の景色が見えてくる、ということを実感していますが、本ストーリィもまさしくそうでしょう。 本書の巻頭に挿入されている地図では、宗像一族が神の住む島として信仰の拠り所としている沖ノ島が中心になっています。 3韓と日本の間は、現代に劣らず近いものだったのだなぁと感じさせられます。 なお、本書題名の「姫神」は沖ノ島の神である田心姫神を差しているのだろうと思いますが、同時に積極果敢な女性主人公=伽耶をも意味しているのではないかと思えます。 ※本作品は、福岡文化連盟創立50周年と「宗像・沖ノ島と関連遺産群」世界遺産登録支援として上演される舞台劇「姫神」のために書かれた長編とのこと。 序章.洛陽の都/1.漂着者/2.大和の都/3.新羅への使者/4.沖ノ島の誓い/5.海峡の激闘/終章.金の指輪 |
5. | |
「平城京」 ★ |
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平城京造営という壮大な古代史ロマンを期待したのですが、当てが外れた感じ。 あまり面白いとは思えなかった、というのが正直な感想です。 主人公は、かつて遣唐使の船長を務めながら、ある罪に問われ、罪人として朝廷から追放された阿倍船人、28歳。 その長兄で阿倍家の当主である宿奈麻呂が、阿部家の復興を目指して、実力者である藤原不比等の命による平城京造営の仕事を引き受けたことから、船人はその手伝いに駆り出されます。 藤原京に遷都して間もないというのに、僅か2年という期間での平城京造営・遷都という計画。 困難事であることは最初から明らかですが、実際に工事が始まると、思わぬ妨害が幾度も起こります。 新都推進派と反対派の対立、その奥底には唐との外交樹立を目指した天武派と、百済王朝と親密だった天智派との根深い反目があったとは・・・。 主人公である船人は、立ち退き交渉から工事の進捗と幅広く活躍すると同時に、反対派との争闘にも奮闘します。 しかし、ストーリィ全体を通してみると、新都造営という大計画に対する興奮、ワクワク感がないだけでなく、船人自身からも特段の使命感や躍動感、達成感というものが感じられないまま。 荒山徹「白村江」のような、予想外の驚きもありませんでした。 結局、平城京造営という歴史ドラマの背景には、こうしたドラマ要素が隠されていたかもしれないという示唆、そうした歴史要素を知るに留まった、という印象です。 船人が最後にもっと幸せを手に入れていたら、読後感も変わっていたかもしれません。ちょっと残念な思いです。 1.新しい都/2.建都の計画/3.新たな指令/4.葛城一族/5.見えざる敵/6.帝の行幸/7.奈良山の激闘/8.百済の泊/9.天智派対天武派/10.鳥部谷/11.即身仏/12.太極殿/エピローグ |
6. | |
「迷宮の月」 ★★ |
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2022年10月
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白村江の戦い以来途絶えていた唐との国交を回復するという使命を負った、33年ぶりの遣唐使。本作は、その使命を成し遂げるための困難な道のりを描いた古代歴史長編です。 主人公となるのは、遣唐使の長として<遣唐執節使>に任じられた粟田真人(あわたのまひと)・63歳。かつて留学僧として滞在した長安を目指し、真人は4隻にわたる使節団を率いて再び海を渡ります。 ところが、渡った先の唐は、則天武后が皇帝に即位して国号を「大周」とする等、国情は大きく変わっていた。 藤原不比等から密命を与えられた真人は、そうした状況の中で国交回復という使命、そして密命を果たすことができるのか。 まず何といっても、古代における外交史譚として面白い。 端的に言ってしまえば、皇帝から国書の授与を受けること、それだけのことです。 しかし、それだけのことを果たすのに、どれだけの年月、どれだけの積み重ね、どれだけの苦労と危険があったことか。 本作はまさにそのプロセスを描いた歴史ストーリィと言うべきでしょう。 それは、現代の外交にも通じる苦労、プロセスと言えるのかもしれません。だからこそ息詰まるような緊迫感を覚えます。 遣唐使、中国への渡海、中国の地を踏んでからの苦労、そして長安の都を舞台に繰り広げられる波乱万丈、ハラハラドキドキの展開。それは、真人が対峙する大周の官僚、宦官、貴族らとの虚と実の駆け引きがもたらすものでもあります。 そして、武后の娘で権力者の一人でもある太平公主との折衝。 歴史小説といってもこうした古代史を基にしたスリリングな作品は少ないと思います。だからこそ本作には、目を瞠らせられるばかり、という面白さがあります。 63歳という老齢にもかかわらず粟田真人に、快男児といった姿を感じてしまう、長大で骨太のストーリィ。 歴史小説好きの方には、是非お薦め。 ※遣唐船の船長の一人で、真人の娘である真奈の許婚者として登場する阿倍船人、「平城京」で主人公となる人物ですよね。 1.唐へ/2.楚州塩城県/3.則天武后/4.龍門石窟/5.皇帝と天皇/6.冬至の祭祀/7.砂金の袋/8.大明宮/9.打開の秘策/10.投獄/11.釈放/12.外交談義/13.夜鳴き鳥/14.獄門/15.送別の餞 |