シャーロット・ブロンテ作品のページ


Charlotte Bronte  1816〜55 英国の作家。妹のエミリー(1818〜48)、アン(1820〜49)とともに、作家三姉妹として有名。21年に母親が死去した後の24年シャーロットとエミリーは姉のマリアとエリザベスが在学するクラージー・ドーターズ・スクールに入学するが、この学校が「ジェーン・エア」に登場する悪名高きローウッド・スクールの原型となった。31年ロー・ヘッドの学校で学んだ後に教師勤め。47年カラー・ベルの筆名にて「ジェーン・エア」を発表。54年父親の教会の牧師補と結婚し妊娠するが、翌年03月31日に結核で死去。

 ※ フィリス・ベントリー「ブロンテ姉妹とその世界」(新潮文庫)

 


 

●「ジェーン・エア」● ★★★
 原題:"JANE EYRE"      訳:大久保康雄




1847年発表

1954年01月
新潮文庫刊
(上下)
 
2004年06月
第87刷

(各629円+税)

 

2005/09/18

 

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中学1年の時に読んだきりですから、38年ぶりの再読。
英国でオースティンと並ぶ人気作家ですからいずれ再読しようかと思っていましたが、実際に踏み切ることになったのはフォード「文学刑事サーズデイ・ネクスト1−ジェイン・エアを探せ!のお陰。
「ジェイン・エア」を人気名作に仕上げているのはどんな点か、を確かめるように読みましたので、以下の感想が評論臭くなっていることはご容赦のほど。

この第一人称による小説で一番印象づけられるのは、何と言っても主人公ジェーン・エアの独立不羈の精神でしょう。成長してからというのではなく、少女の頃から彼女はそれをしっかり備えています。その点が鮮烈です。それがある故に、読み手はこの物語に魅せられてしまうのです。
ストーリィ自体は大きく3つに分けられます。ローウッドの慈善養育学校の部分、ソーンフィールド館に家庭教師として雇われ主人であるロチェスターと恋愛で結ばれる部分、出奔し後に従兄弟同士と判る牧師セント・ジョン・リヴァーズの元に身を寄せる部分。
この第一の部分はお見事。ブロンテ姉妹が実際に在学した寄宿学校での経験が基になっていますから、無駄がないばかりかとても現実感があります。作者の2人の姉もその寄宿学校で健康を損ない早死にすることになったというのですから、ローウッドの様子は現実そのものだったのでしょう。ローウッドでジェーンの貴重な友人となり、病で死んだヘレン・バーンズは、ごく僅かな登場に過ぎないのですけれど、本作品での存在感はとても大きい。

第一部分が素晴らしかったのに対し、第二部分にはどうも余りよく判らない。また、ロチェスターとの恋愛についても唐突な感じが否めず、納得感が余りない。そもそも、ジェーンの社会経験がなさ過ぎるのです。ローウッドで学んだ後に同じ場所で2年間教師をし、ローウッド以外の世界というのはソーンフィールドが初めてなのですから。
第三の部分では、インドへの宣教に妻として同行を求めるセント・ジョンに対し、ジェーンは妻となることは断るが伝道助手という条件なら同行すると答える。神の名の下にジェーンを自分の支配下に置こうとするセント・ジョンと、それをあくまで拒否するジェーン、2人のやりとり場面はプロポーズというより男女の交じわることのない議論を戦わせているようであって、圧巻。ジェーン・エアという人物の本質を明らかにする白眉の場面です。

ジェーン・エアという主人公が持つ独立不羈の精神は、恋愛においても変わることがないのです。愛したからといって相手に譲ることなく、そして曖昧な恋愛=結婚観を断じて拒否するという、強烈な自己主張を備えています。
ロチェスターは結婚によってジェーンに妻という地位を与えるという意識があり、そもそもそんな状況において2人の結婚は成立する筈がなかったのです。
最後に狂人の妻が引き起こした火事のためにロチェスターが失明し片腕も失い、初めてジェーンが与える側となり2人は対等となり得るのです。そこにまで至ってやっと2人は結ばれることができるのです。

孤児となった少女の生きていく戦いに始まり、ソーンフィールドでのサスペンスティックな展開、終盤から鮮烈となる強い独立不羈の精神、困難を乗り越えての恋愛成就という波乱万丈さ。終わってみれば本書はとても忘れ難い作品です。
ただ、ブロンテの文章(前半部分)は上手くないと思うし、現実離れしている箇所も所々あります。
それでも、終盤からの追い込みには圧倒される面白さがありました。この力強さが、ジェーン・エアという果敢な主人公像と合わさって、本作品の魅力になっていると言えます。

※ 映画化 →「ジェーン・エア

 


 

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