9月18日(達古武→釧路) 
 全駅間歩き6日目(33.6km)

距離 着時 発時
宿屋 8:00
16 細岡 7.6km 9:34 10:05
17 釧路湿原 2.5km 10:35 10:50
18 遠矢 11.5km 13:43 14:25
19 東釧路 7.5km 15:55 16:15
 20  釧路 3.3km 17:04 17:25
   幣舞橋 1.1km 17:45  
 全駅間歩き最終日の6日目は、
 いよいよゴールの釧路駅を目指します。

 達古武から釧路駅までは、
 直線距離にすると15kmほどしかありません。
 実際の距離にしても、釧路に向かうだけであれば、
 国道391号経由で20kmあまりです。

 ところが、全駅間歩きになると様子が一変します。
 細岡駅とその次駅・釧路湿原駅に向かうためには、
 国道から分岐する町道を4km以上歩かなければなりません。
 特に、釧路湿原駅から遠矢駅までのルートは
 元来た道を6km以上戻って国道をさらに8km歩くか、
 丘越えのダート道を延々8km以上歩いてショートカットするかという究極の選択を強いられます。

 ここまで5日歩いて、足の痛みもピークに来ています。
 しかし、幸いなことに、最終日も晴れの予報です。
 釧路湿原の景色を糧に、がんばってゴールまで歩きたいと思います。




 朝3時頃、目が覚めました。
 顔も引きつり、寒気を覚えるほどの寒さでした。
 具体的な気温は分かりませんでしたが、5℃は確実に下回っていたと思います。
 10℃くらいまで下がるかもと思っていましたが、ここまで寒くなるとは予想していませんでした。
 慌てて雨具以外の上着を重ね着しましたが、それでもまだ少し寒く感じました。

 起きるにはまだ早いので二度寝しようとしたのですが、
 寒さで目が覚めてしまい、それ以上寝ることができませんでした。
 外からは鹿の「キュン」という鳴き声が響いていました。
 耳を澄ませば鹿の足音が聞こえ、時折バンガローにもぶつかってきました。
 目の前が釧路湿原とはいえ、なんてワイルドなキャンプ場なんだろう。

 5時頃には空は薄明るくなりました。
 キャンプ場を歩き回っていた鹿も、さすがに山に帰ったようです。
 扉を開けてみても温度の違いが分からなかったので、室温も外気温とほとんど同じだったようです。
 寝るのはあきらめ、コンロでお湯を沸かし、冷えた身体を暖めることにしました。


 
 出発前に、もう一度達古武湖に足を伸ばしてみました。
 昨日と同じ場所から撮っているんですけど、雰囲気がずいぶん違いますよね。

 実は、湖畔を走る列車を撮ってみたかったのですが、
 対岸の林に阻まれ、ほとんど列車の姿を見ることはできませんでした。
 線路は1km近く先を通っていますが、「ガタン、ガタン」というジョイント音は甲高く山に響き、
 キハ54のエンジン音もうっすら聞こえてきました。


 最終日の全駅間歩きをスタートします。
 まずは細岡駅に向かうことになりますが、これが嫌がらせのようなルートです。

 かつては、達古武キャンプ場から細岡駅方面に通じる木道がありましたが、廃道になりました。
 そのため、キャンプ場から細岡駅に向かうためには、
 いったん国道391号まで戻って少し進んでから、対岸を走る町道を西に進むことになります。
 四角形の3辺を歩くような格好になるため、距離もかなり長くなってしまいます。
 直線距離なら1.5kmくらいなのに、実際は7.5km以上歩く羽目に…。

 町道の入り口には「細岡展望台入口」という看板が立てられています。
 矢印の下には「6km」と、歩く人にとっては地味にイジメな数字が小さく書かれています。


 達古武湖の向こう側に、今日泊まったキャンプ場が見えてきました。
 特に寄り道はしていませんが、スタートしてからすでに1時間以上が経過しています。

 1時間休み無く歩いて、ようやく湖の対岸です。
 これから先が思いやられます。


 釧網本線の踏切を渡る手前に、こんな看板が立っています。
 達古武キャンプ場から続いていた木道は、ここに通じていたようです。
 看板の向こう側に道が続いていたはずですが、長い年月が経ち、自然に還ってしまったようです。

 通じていたのは木道だったといいますが、どんな道だったのかちょっと気になります。


 踏切を渡った先には、カヌーポートがありました。
 釧路川は川下りのメッカなんだそうで、ここはその発着点になっているようです。

 個人で川下りしようと思うと、まず車にカヌーを乗せて上流に向かいます。
 スタート地点に着いたら車を置いてカヌーで川を下り、
 下りきったところでカヌーを止め、列車や自転車を使ってスタート地点まで戻ります。
 スタート地点に戻ったら車を拾い、カヌーを止めたところまで戻ってカヌーを回収することになります。

 このカヌーポートは細岡駅の近くにあります。
 ここまでカヌーで下ってきた人が、車に戻るために細岡駅から列車に乗ることがあるそうです。


 目の前には、釧路川が穏やかに流れています。
 このあたりは泥炭地帯とのことで、水は濃い茶色に濁っていますが、
 大雨が降った後の濁りとはちょっと違う、深い濁りをしています。


 
 遠くから「ガタン、ガタン」という音が聞こえ、踏切の警報音も聞こえてきました。
 網走方面に向かう列車がやって来ました。


 カヌーポートから5分ほど歩いて、細岡駅に着きました。
 駅前に集会所とおぼしき建物がある以外に民家はありません。
 そんなところでも、律儀にゴミ収集車が来ていました。

 待合室でしばらく休憩します。
 序盤戦なら、駅の構内をいろいろ歩き回るところなんですが、
 こう足が痛くなってしまうと、いったんベンチに座ったら最後、立ち上がりたくありません。

 休憩していると、今度は釧路行きの列車が入ってきました。
 ベンチに座ったまま「窓の外に見える景色」として列車を入れてみました。


 
 引き続き町道を歩いて、釧路湿原駅へ向かいます。
 さっきまで歩道付きだった町道も歩道が無くなり、ついには舗装までなくなってしまいました。

 気づけば、釧路川が道路のすぐそばまで迫っていました。
 川の向こうには釧路湿原が広がっていました。


 釧路湿原駅に着きました。
 駅舎はやはりログハウスで、細岡駅とよく似たスタイルの駅名看板も掲げられていました。

 駅名は「釧路湿原」と名乗っていますが、
 駅自体はどちらかいうと森の中の駅といった雰囲気です。
 臨時駅上がりの駅ですが、観光駅という性格もあってか、ホームはしっかりしています。


 次の遠矢駅までは10km以上あります。
 ここでゆっくり休憩してもよかったのですが、細岡駅からそれほど歩いたわけでもないので、
 少しだけ休んで、先に進むことにしました。


 釧路湿原駅から急な階段を上り、
 10分ほどで細岡大観望(展望台)に着きました。

 展望台からは釧路湿原が一望できました。
 やはり写真1枚じゃ収まりきらなかったので、2枚をくっつけてみました。
 それでも実は右側が欠けてしまっているんですけど。

 湿原といえば、自分は沼がそこらじゅうに広がる湖沼地帯をイメージしてしまうのですが、
 ここから眺める釧路湿原は、あたかもサバンナのような光景でした。


 
 細岡大観望を後にして、今回の全駅間歩き最後の難所に入ります。
 最初にも触れたように、細岡大観望から遠矢駅には2通りの行き方があります。

 ひとつは、町道の延長となるダート道を8km以上延々と歩くルート、
 もうひとつは、今来た道を国道まで戻り、そこからさらに8km歩くルートです。
 後者のほうが歩く分には楽なのですが、距離は長くなりますし、今来た道を戻るというのも抵抗があります。
 ダートの感じが気になるところですが、距離の短い前者を選ぶことにしました。

 このダート道、丘の尾根づたいに続いているのですが、林の中を歩くため、なかなか視界が開けません。
 砂利が少しでも少ない場所を選びながら、痛みをこらえつつ黙々と足を進めました。
 こんな道で車に会おうもんなら気分は最悪なんですが、
 車にとっても離合困難な道が延々と続くためか、行き交う車の数は非常に少なく、
 1時間半近く歩いても、出会った車はわずかに3台でした。


 ダート道を1時間ほど歩いた頃、木々の間から釧路市街が見えました。
 市街地の先には5日ぶりの海となる太平洋も見えました。


 確実にゴールまで近づいている、そう実感した瞬間でした。



 ダート道もいよいよ大詰めにさしかかり、下り坂が始まりました。
 8km近く砂利道を歩いているせいか、足を進める度に足の裏から痛みが襲いかかってきました。
 追い打ちをかけるように、道路の砂利が多くなり、ますます歩きづらくなりました。

 こんな道をバイクで登ってくる人もいましたが、
 これだけ砂利が多いとバランスとりづらいだろうなぁ。


 丘を下りきってもなおダート道は続きます。
 釧網本線の踏切を再び越えるところで、ようやく長かったダート道は終わりを告げました。
 全駅間歩き最後の難所も無事突破しました。


 舗装道に戻りました。
 あとは線路に沿って遠矢駅を目指します。
 民家はほとんどなく、右手には釧路湿原に続く原野が広がっています。

 遠矢駅が近づくにつれて、少しずつ民家が見えてきました。
 ようやく人里まで戻ってきました。


 遠矢駅に着きました。
 駅の周囲は住宅地で、塘路駅以来久しぶりの生活臭が感じられる駅でした。

 ここで昼食休憩をとりました。
 とはいえ、釧路湿原駅からあまり休憩せずにここまで歩いた上、
 10km近いダート道を歩き抜いた足の痛みも相当ひどくなっていました。
 足を冷やそうと思ったのですが、ひどい状態になっている足の裏は、もう見たくありませんでした。

 結局、40分の休憩はずっと座ったまま過ごし、待合室から出ることはありませんでした。


 次の駅は、東釧路駅です。
 釧網本線全駅間歩きも、いよいよ終わりが近づいてきました。
 100kmポストの少し先からお世話になった国道391号も、あと6kmで終わりを迎えます。

 さあ、あとひとふんばりです。


 国道はひたすら線路に沿って伸びています。
 遠矢の集落を抜けると、やがて右手から釧路川が近づき、再び釧路湿原が広がります。
 釧路は市街地と湿原が隣り合わせになっているので、市街地の近くまでこんな風景が続きます。

 釧路市街に向けて、長い直線道路が続きます。
 たかが6km、されど6km。疲れも足の痛みもピークに達しています。
 国道の残り距離が少しずつ0に近づくことだけが救いです。


 
 国道が2車線となり、周囲に工場とおぼしき建物が増えてきました。
 いよいよ釧路市街の外れにたどり着いたようです。

 根室方面に向かう国道44号との交点で、国道391号は終わりを迎えます。
 交点には「起点」という表示が掲げられていました。
 釧路の中心市街は、もう目と鼻の先です。


 ゴールの都市・釧路市に入り、別保橋を渡ります。
 国道391号の延長となる市道なのに、カントリーサインはありませんでした。
 市と町が隣り合わせになってるだけでも紛らわしいのに、
 釧路市街も一部は釧路町だったりするからなおさら訳がわかんない…。

 橋を渡れば、東釧路駅まであと少しです。


 東釧路駅に着きました。
 かつては貨物列車が発着した駅でもあり、立派な駅舎が設けられています。
 貨物が廃止された現在でも広い敷地を有しており、駅舎からホームまでは少し離れています。

 東釧路駅の東側で根室本線と釧網本線が分岐しています。
 ホームの端まで行けば分岐している様子がよく分かるのですが、そこまで歩く気力はありませんでした。
 駅舎とホームの間に置かれた釧網本線の0キロポストも見事にスルー。
 しかもその事実に気づいたのは、東京に帰ってからというおまけ付き、あちゃ。


 網走方面に向かう釧網本線の列車が着きました。
 車内には、学校帰りの高校生が多く乗っていました。
 東釧路でも数人の高校生が列車に乗り込み、列車は駅を後にしていきました。


 泣いても笑っても最後の駅間です。
 釧路郊外の住宅地を進み、釧路川を渡ります。
 最後ならここまでを振り返りながら歩くべきなんでしょうが、
 時間に追われているような感じがして、せかせか歩いてしまいました。

 線路沿いの建物が住宅地から商業地に変わり、
 さらに進むと、背の高い建物が増えてきます。
 いよいよ釧路駅が近づいてきたようです。


 そして…


 
 ゴール駅・釧路駅に着きました。
 堂々とした駅舎は、ゴール駅の駅舎にぴったりでした。


 これで札幌から旭川、網走経由で釧路まで歩ききったことになります。
 全駅間歩きでかかった日数を全部足すと21日…通しで歩いたとすれば、だいたい20日弱。
 歩行距離だとだいたい650kmあまり。鉄道距離でも550km弱の距離です。
 そんな距離でも、いったん鉄道に乗ってしまえば、
 鈍行乗りついだとしてもその日のうちに着いてしまうんだから、何というか。


 最後の記念撮影をするべく、ホームに向かいました。
 自動改札なる文明の利器をくぐるのも、北海道に着いて初めてかも…。

 ホームに上がると、北の空に虹が出ていました。
 空も全駅間歩きのゴールを祝ってくれているようでした。


 最後は、釧路市街の幣舞(ぬさまい)橋まで歩いてみたいと思います。
 日没となり、少しずつ暗くなる釧路の中心市街を南へ歩きます。

 ゴール駅・釧路駅に着いて、緊張が抜けてしまったせいか、
 足の痛みが一気に襲い、もはやさっきまでのスピードで歩くことはできません。
 足を動かそうにも、全然前に進んでくれません。
 いつもの半分程度の早さで、のそのそと足を進めます。

 信号にたぴたぴ引っかかりながら歩くこと20分、
 重厚な造りをした幣舞橋に着きました。


 幣舞橋から釧路川河口に向かって撮ってみました。
 河口の先は太平洋に続いています。

 川縁には、何隻もの漁船が係留されています。
 残陽を背に受けてまた一隻、太平洋から漁船が戻ってきました。


 やがて市街は夜の町灯りに包まれました。



 オホーツク海から太平洋まで歩いた、今回の全駅間歩きも無事ゴールできました。
 行程に余裕があったため、体力的にはそれほどきつくはなかったのですが、
 2日目にして靴擦れをおこし、それを最後まで引きずってしまったのはかなり厳しかったです。
 靴擦れをおこしても極力普通に歩くことを心がけたのですが、
 無意識に足をかばってしまい、それが原因で他の靴擦れがおきたり、
 足のすねまで痛くなってしまったりして、余計に歩きにくくなってしまいました。

 長距離の全駅間歩きでは、防水を意識してトレッキングシューズを使っていますが、
 トレッキングシューズとは相性が悪いようで、よく靴擦れを起こしてしまいます。
 次回の長距離全駅間歩きまでに、対策を考えてみたいと思います。


 最後までご覧いただき、ありがとうございました。


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