9月10日(新得→十勝清水) 
 全駅間歩き6日目(14.6km)

距離 着時 発時
12 新得 8:20
農道離着陸場 5.0km 9:18 9:26
運動公園 4.5km 10:18 10:30
13 十勝清水 5.0km 11:28
 最終日は、新得から隣駅の十勝清水駅を目指します。
 石勝線はかすりもしない、タイトルに偽りありな一日です。

 今日歩く駅間もたった1駅間です。
 最短コースで歩くと10kmあまりの駅間です。
 山越えにつぐ山越えだった石勝線は終わりを迎えたものの、
 それでも1駅間で10km越えるあたりが
 北海道らしいところです。

 そもそも、こんな中途半端に歩くんだったら、
 新得で終わりにしたほうがキリがいいんじゃないかと思う方も多いと思います。
 実は自分自身、今でもそう思っています。
 ただ、せっかく十勝平野まで来たのだから、広大な十勝平野を眺めて終わりにしたいというのもありましたし、
 今後この続きを歩くときに、もう一駅間歩いておくと都合良さそうだったので、
 あえて「6日目」の行程を追加することにしました。

 せっかく十勝平野を見るなら、思いっきり十勝平野を拝める場所を歩きたいと思い、
 最短コースでは無く、大きく東へ迂回するコースをとることにしました。
 晴れてたら、とても気持ち良い景色が広がっていたでしょうね。


 そう、晴れてたら。

 この日の天気は雨でした。
 ザーザー降りというわけではありませんでしたが、
 雨装備なしだとガッツリ濡れてしまうような雨でした。
 いっそのこと最短距離で国道を歩いてしまおうかとも思ったのですが、
 結局、当初の予定通り、東へ迂回するルートを歩くことにしました。

 朝食終えて、出発の支度を始めたところ、衝撃的な事実が発覚しました。
 ザックカバーが無くなっていたんです。
 初日に確認したときにはあったので、どこかの宿で置き忘れてしまったようです。
 ザックカバーなしで歩こうかとも思ったのですが、
 新得駅までならいざ知らず、15km歩くとずぶ濡れになってしまいます。

 そこで宿屋の方にお願いして、ゴミ袋を分けてもらい、即席のザックカバーを作ることにしました。
 ゴミ袋の長辺を片側だけ切って、ザックへかぶせるように取り付けただけですけど。
 初めて作った割には、そこそこさまになるものができました。
 あとは、これで15km保ってくれればいいのですが。


 8時過ぎに宿を出発しました。
 まずは新得市街を東へ進みました。

 道路には水たまりができていました。
 トレランシューズは防水性があるわけじゃないので、
 なるべく水たまりを踏まないように気をつけて歩きました。


 狩勝峠越えで歩いた国道38号は、新得市街の東端付近を通っていました。


 新得市街を抜け、佐幌川を渡ると、上り坂が始まりました。
 それなりに傾斜のある上り坂ですが、荷物が軽くなればたいしたことありません。

 5分あまり歩くと、上り坂のゴールが見えてきました。
 その先には…


 十勝平野が広がっていました。

 横一線に並ぶ防風林も雰囲気を出していました。


 晴れてたらもっと良かったのに…。


 しばらく歩いていると、小さな建物が見えてきました。

 建物の前には、なにやら白い物体も置かれていました。
 民家にしてはちょっと様子がおかしいのですが、
 この建物は一体何なんでしょうか?


 
 白い物体の正体は飛行機でした。
 ここは、十勝西部地区の農道離着陸場です。
 地形図に「農道離着陸場」って書かれていたので、気になって行ってみました。

 農道離着陸場とは、文字通り農道扱いの「滑走路」を作り、
 飛行機の離発着を可能にした場所のことで、全国に8カ所あるんだそうです。
 簡易的な空港という位置づけで、新鮮な農作物をいち早く空輸することを目的にしていました。
 ゆくゆくは旅客輸送ももくろんでいたそうですが、コストの問題や運用上の制限も多かったことから、
 新規事業は中止となり、すべての農道離着陸場が赤字に転落しているそうです。

 そういえば、留置されていた飛行機も、
 しばらく使ってなさそうな雰囲気だったような…。


 農道が「滑走路」を横切っていました。
 というより、「滑走路」も農道扱いなんですよね。

 右の写真の左側に「滑走路」が写ってるんですけど、分かりますでしょうか。
 左側の幅の広そうな道がそれなんですが、奥に行くと再び道幅が狭くなっているのも分かります。
 実は、「滑走路」の両側とも、接続用の農道を介して一般道路とつながっています。
 もちろん、誤って進入しないように、入口は通行止めになっていましたが。


 離着陸場の構内には入れなかったので、敷地外の草むらにザックを下ろしました。
 周囲を見回すと、こんな所にもクマ出没を知らせる看板が立っていました。

 ええっ、ここにもクマ出てくるの?
 もうスプレーは送り返してしまったんですけど。

 ふと「滑走路」の向こう側を見ると、除草トラクターが作業していました。
 これも北海道らしいと思っていたら、トラクターが「滑走路」を横切って、こちらにやってくるではないですか。
 このままだと、ザックごとトラクターに巻き込まれてしまいます。
 慌ててザックを背負い直して、この場を後にしました。

 ふぅ、危機一髪だった。


 
 農道離着陸場を後にして、下佐幌の基線道路を南下しました。

 気づけば、道路案内に「清水町」の文字が入っていました。
 いつの間にか、今回の全駅間歩き最後の町・清水町に入っていたようです。
 残念ながら、清水町のカントリーサインを拝むことはできませんでした。

 清水町に入っても、周囲の風景は相変わらず、
 一面の農地が広がるばかりでした。


 しばらく歩いていると、農地の向こうに白い立派な建物が見えてきました。
 よく見ると、学校の体育館のような造りをしていました。

 入口まで行ってみると、校門らしきものがありましたが、
 そこには学校の名前ではなく、NPO法人の名前が掲げられていました。

 ここにはかつて下佐幌小学校があったそうです。
 遠くから見えた体育館は、この小学校の体育館だったようです。
 しかしながら、周辺地域の人口減少を受け、下佐幌小学校は2005年に閉校したそうです。
 現在は改築が施され、学校施設はグループホームとして使用されているそうです。


 小学校跡の少し先にあった、下佐幌パークゴルフ場の駐車場で一休みしました。
 降り続く雨から逃れられる場所といえば、駐車場の一角にあるトイレしかありませんでした。

 実はこのとき、地形図にパークゴルフ場の表示が無かったので、一瞬迷子になったのは内緒。
 民家もまばらで、街路も方形区画の連続だと、目印になるものがあまりありません。
 スマホで下佐幌パークゴルフ場を逆検索して、無事窮地を脱出しました。
 今は便利な時代です。


 休憩を終え、十勝清水駅へ向けて歩き始めました。
 15号道路を西へ道なりに進んで、坂を下り、やがて佐幌川を渡りました。

 さらに進むと、国道38号線に合流しました。
 車が水しぶきをあげて走り去っていきましたが、
 国道には歩道がついていたので、歩道を歩くことにしました。

 清水市街まで、あと少しです。


 
 清水市街に入りました。
 国道はここでも市街の東端付近を走っていました。
 道しるべに沿って、駅のある中心部へ向かうことにしました。

 はじめは狭かったアスファルト歩道も、次第に幅が広くなり、
 煉瓦タイル舗装に変わると、商店が建ち並ぶ中心部にさしかかっていました。
 すでに11時を過ぎていましたが、人通りが少なかったのは雨のせいだけなんだろうか。

 そして、道の先にゴールが見えてきました。


 ゴール駅・十勝清水駅に着きました。
 総歩行距離200kmにもわたった今回の全駅間歩きがここに完成しました。

 とはいえ、今日は15kmも歩いていないせいか、
 狩勝峠越えが今回のクライマックスだったせいか、
 昨日ほど歩ききったという感慨に浸ることはできませんでした。


 雨は依然として降り続けていたので、そのまま駅舎に入ることにしました。
 駅構内の待合室は、特急停車駅だけあって広く設けられていました。
 ベンチの横にザックを下ろし、雨装備をしまうことにしました。


 即席のザックカバーは、すばらしい働きをしてくれました。
 途中、少し風が吹いていたにも関わらず、ザックはまったく濡れていませんでした。
 さすがに靴は濡れてしまいましたが、ビチョビチョで歩くのが嫌になるほどではありませんでした。

 さらに、今回は足のダメージも最小限に抑えられました。
 これまで、一度にこれだけ歩くと、最後は必ず足が満身創痍になっていました。
 もう最終日なんて、歩き出しの5分は苦痛以外の何物でもなく、
 ずっと歩き続けて足の感覚を麻痺させて、気力で歩き続けたようなものでした。

 しかし今回は、右足に小さい豆を2〜3個作っただけで乗り切ることができました。
 最終日も、歩くことに全く苦痛はありませんでした。
 やはり5本足ソックスの効果は絶大でした。


 荷物をしまい、切符を買ってるうちに、
 帯広方面に向かう普通列車が来る時間になりました。

 跨線橋を渡ってホームに降りると、まもなく列車が入ってきました。
 この後は、昼食も兼ねたプチ打ち上げをするべく、帯広へ向かうことにしました。


 ゆっくり移ろいゆく車窓を眺めながら、
 車窓の外を歩く日のことをぼんやり考えていました。


 今度は冬に歩いてみようかな…。




 最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。



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