現在の公用語はtlhIngan Hol(クリンゴン語の意)で、連邦標準語(英語)では民族名と同じKlingonという名で呼ばれる。現在の連邦との友好関係により、この言語の理解・研究は進みつつある。その特徴としては、喉音が多く、単音節で、接尾辞の発達した膠着形式の言語である。これについての詳細は、拙著ながら「クリンゴン語入門」を参照されたい。
交戦時代には、別の言語が公用語であったらしく、Klingonese, Klingonaase, Klingonii, Klinzhaii等の存在が非公式ながら確認されている。当時の状況ではほとんど解読されないままであり、また、これらが同一のものなのか別々のものなのかさえはっきりしない。以下に、数少ないKlingonaaseの例を示す。カッコ内に現在の公用語を示すが一見して全く別系統の言語であることが分かる。
Klingon:クリンゴン(tlhIngan)
komerex Klingon:クリンゴン帝国(tlhIngan wo')
klingonaase:クリンゴン語(tlhIngan Hol)
Klinzhai:クリンゴンの母星名(Qo'noS)
Kahlesste kaase:ケイリスの手(qeylIS ghop)
kleon:敵(jagh)
straave:奴隷(toy'wI''a')
kuve:召使い(toy'wI')
kuvesa tokhesa.:私は進んで仕える。(jItoy'qang.)
Kai kassai !:万歳!
クリンゴン人の愛情表現は、肉体的暴力によって表現されることが多い。愛のことばをささやき合うということはない。男女は互いに取っ組み合うことで感情の高まりに達する。また、同性間の友情を深めるのも肉体的暴力が効力を発する。上位者が部下の信頼を得るにも、肉体的暴力で相手をねじ伏せることが要求される。互いに戦い合うことで、自分の強さを相手に示し、同時に相手の強さを肌で感じるのである。クリンゴンの愛には常に暴力が付き物なのである。彼らと親交を深める異種族は、余程の覚悟が必要である。但し、クリンゴン人は自らの種族と他の種族の違いをよくわきまえているので、外交・通商・観光に際してはそれほど心配はいらないであろう。しかし、あまり仲良くなり過ぎると、感極まって一発食らうということもあり得る。