全ては、この決められた時間の中で流れていく。
  もしも、それに逆らったとしたら、想像を越えるような事が起きるかもしれない。
 
  誰かが決めた時間。
  それすら分からないのに、確実に決めたれた時間が過ぎていく。
  そう、何もかもを巻き込んで……。


 
                                         GATE 27


「……デジヴァイスが、デジタルワールドに?」

 レオモンの言葉に、思わず驚きの声を上げる。

 ずっと、それは、彼等の手の中にあると信じて疑っていなかったのだ。
 なので、一瞬言われた言葉が理解出来なかった事は、否めない。

「そうなのだ。それを知らせなくてはと思い急いでいたのだが、迷惑を掛けて、すまなかった……」

 申し訳なさそうに頭を下げられて、太一が、困ったような表情を見せる。

 謝られる事など、何もないはずなのに、どうして誰もが、自分に謝罪するのだろう。
 この中で一番、皆に迷惑を掛けているのは自分。
 もし、謝らなければいけないとすれば、他の誰でもなく、自分が一番に謝罪しなければいけないと言うのに……。

「いや、謝らないでくれ……それで、デジヴァイスは、何処に?」
「それが………」

 言葉を続けようとしたレオモンの言葉を遮るように、チャイムの音が鳴り響いた。

「多分、高石くんだと思います。少し待っていて下さい」

 それに、光子郎が立ち上り、部屋を出て行く。
 その後姿を見送りながら、太一はそっと息を吐き出す。

「高石って、誰だ?」
「きっと、タケルだよ。昨日来るって言ってたから」
「タケル?高石タケルって……」

 疑問を口にしたヤマトに、ガブモンが明るい声で説明をする。
 だが、出てきた名前に、ヤマトは更に混乱したような表情を見せた。
 知らないウチに、繋がっていく関係。
 もう、既に後戻りなど出来はしない。

 ヤマトとガブモンの声を聞きながら、太一は複雑な表情を見せる。

「タイチ、大丈夫?」

 そんな自分に気が付いて、アグモンが心配そうに見詰めてくるのに、太一はそっと笑顔を向けた。

「大丈夫だ。心配掛けてごめんな、アグモン」
「謝らないでよ、タイチ。ボクは、タイチのパートナーなんだから」

 向けられる暖かな体温とその優しい心が、自分に触れてくれる事が嬉しくって、ぎゅっとアグモンを抱き締める。
 ずっと、一人残された自分を支えてくれた大切な大切な存在。

「タイチ、ボクは、ずっとタイチの傍に居るよ」
「ああ、有難う、アグモン」

 心からの感謝の言葉を口にした瞬間、突然デジヴァイスが、鳴り響いた。

「な、なんだ?」
「何の音?」

 突然の音に、ヤマトと空が驚いて辺りを見回す。

「……デジヴァイスが……どうして………」

 ベルトに固定してるデジヴァイスを、手に取る。
 仲間が近くに居る事を知らせる音が、部屋の中に鳴り響く。

「……多分、選ばれし子供が、全員そろったと言う事だろう」
「えっ?全員、それって、どう言う…………」

 不思議に思いながら、デジヴァイスを見つめていると、レオモンが小さな声で呟いた。
 言われた言葉の意味が分からずに、太一が問い掛けようと口を開く。
 だが、視線を向けた先に見た姿に、その言葉を失ってしまう。

「タケル、丈、ミミちゃん………ヒ、カリ……」

 そこに居たのは、もう既にパートナーデジモンを連れている3人の仲間達と、一人の少女。
 昔の面影を残しているから、相手が誰なのか、自分が一番良く知っている。

「高石くんや、城戸さん、それにミミさんは、デジモンを連れていらっしゃるので、分かるんですが、高石くんが連れて来られた方は、お断りしたんですけど、どうしてもと仰るので……」
「すみません、僕が、断れなかったから……でも、ヒカリちゃんも、この子が見えるんだ。だから、仲間だと思って…。やっぱり、いけなかったかな?」

 申し訳なさそうに言われる言葉に、小さく首を振って返す。

「……こいつも、仲間だ………パートナーも、ここに居る……」

 信じられないと言うように、ジッと少女を見詰めながらも、言葉だけを相手へ返した。

「でも、どうして、ヒカリが……」

 その少女のパートナーであるテイルモンも、信じられないと言うように少女を見詰める。
 そんな自分達の視線を受けながらも、少女は何処か嬉しそうに微笑を浮かべた。

「呼ばれたんです。私の無くしたモノが、ここにあると……それに、タケルくんが連れている子が、呼んでいたから……」
「……呼んだ?もしかして、あなたには、聞こえるのですか?」

 ヒカリの言葉に、驚いたように光子郎が問い掛ける。
 自分達には、聞こえない、それでも、知りたいと思う少年の名前。

 光子郎の問い掛けに、ヒカリは、小さく頷いて返す。

「はい、私にとって、大切な人の名前がはっきりと聞こえました……」
「ヒカリ、お前……」

 しっかりとした口調で言われた言葉に、太一は、信じられないと言うような表情を見せた。

 デジモンの事を覚えているのは、ミミだけだと聞いているのだ。
 まさか、自分の妹であるヒカリまでもが、覚えているなど、思いもしなかった事。

「ずっと、おかしいと思っていたんです。どうして、こんな事になったのか分かりません。だけど、みんな覚えていなかった。私には、3つ年上の兄が居たのに……両親でさえその事を覚えていなかったんです……」

 泣き出しそうな表情で語られる内容に、誰もが息を飲む。

「でも、私は、覚えていました。私には、大切な兄が居た事。誰も、覚えていないのに、私にはちゃんと記憶があったんです」

 周りの誰もが、覚えて居なかった事なのに、自分にはその記憶があった。

 一人だけ残されていた記憶。
 そう、両親でさえ覚えていないと言うのに、なぜか、はっきりと残されていた記憶。

「貴方の、お兄さんですか?」

 信じられないと言うように光子郎がヒカリへと再度問い掛ける。

「はい、私の名前は、八神ヒカリ。今、目の前に居るのは、私の兄の、八神太一です」


                                                 



   はい、本当に急展開を迎えました。『GATE 27』になります。

   本当は、もっと違う展開を考えていたのですが、ヒカリちゃんが出張ってまいりました。
   どうやら、それだけ出てきたかったと言う事なのでしょうか?

   今回で、選ばれ子供が全員揃いました!!(めでたいvv)
   そして、あっさりと2度目のクイズの答えも今回載ってしまった訳であります。

   2つ目のクイズは、誰が、太一さんの名前を呼ぶか?!だったんですが、
   このクイズの正解者は、いらっしゃいませんでした。
   やっぱりと言いましょうか、皆様ヤマトさんと言う事で統一されておりました。
   なので、誰も正解者居ませんでした。
   性格の悪い管理人ですみません。

   そんな訳で、思いっきり急展開してしまった『GATE』ですが、今回も、『裏・GATE』UP予定です。
   UP予定の人物は、もちろんこの人。ヒカリさんです。
   後、違う人もUPするかもですが、今回考えているのは、彼女だけです。
   何時UPできるかは、謎ですけどね。<苦笑>