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正直に言うと、本当に彼女を連れて行っても良いものか、戸惑った。
確かに、彼女には、僕が連れているデジモンと言う生き物が見えている。
そして、何よりも僕のパートナーであるこの子が、彼女を連れて行く事を勧めた。
本当は、何もかも、知っているのかもしれない。
僕達の仲間が何処に居て、それが誰かと言う事を……。
泉さんの家の前で、知らない人達が立っていた。
二人とも、僕と同じように不思議な生き物を連れている。
一人はアザラシのような生き物、もう一人が連れているのは、球根??
でも、僕が連れているのや、あのアザラシのようなデジモンと違って、透けていない。
「ねぇ、貴方もデジモンを連れているのね」
ピンク色の髪をした女の人が僕に声を掛けてくる。
「私は、太刀川ミミ、それで、この子がタネモン。よろしくね」
「あっ、僕は、高石タケルって言います」
にっこりと笑顔で挨拶されて、僕も慌てて頭を下げた。
「紹介が遅れてしまったね。僕は、城戸丈。ここの直ぐ近くに住んでいるんだ。君も。ここに用があるのかい?」
「あっ、はい……でも、あの……」
「取り合えず、中の人を呼ぼうか、ここで立っていても仕方ないからね」
優しそうな笑顔で言われた言葉に、僕はただ頷くだけしか出来ない。
言葉に困っている間にも、その手は、呼び鈴を押していた。
それを横目に、僕は自分の隣に居る、ヒカリちゃんへと視線を向ける。
ヒカリちゃんは、何も言わずにただずっと俯いたまま。
「あの、ヒカリちゃ……」
「お待たせいたしました、高石く……えっ?」
そんなヒカリちゃんに声を掛けようとした瞬間、玄関の扉が開いて、中から泉さんが出てくる。
だけど、僕達を見た瞬間、驚いたように言葉を無くした。
その表情で、僕以外の人達が予想外の客だと言う事が分かる。
「泉くん、お久しぶり。私の事、覚えてる?」
「た、太刀川さん、どうして貴方がここに居るんですか?」
ああ、でもミミさんとは、お知り合いみたいだね。
もしかして、泉さんの恋人なのかな?
「タネモンが、ここに行けば、全てが分かるって言ったから、だから会いに来たの」
「タ、タネモンですか…そうでしたね。それが、貴方のパートナーデジモン」
えっ?タネモンって、デジモンの名前だったの?
でも、どうして、僕達に聞こえるんだろう。
「それに、貴方は……」
「何度か会った事はあるよね。僕の名前は、城戸丈。改めて、宜しく」
「貴方も、デジモンを連れていらっしゃるのですね」
「ああ、この間男の子がこの子を連れてきたんだよ。そしたら今日、タネモンと言う同じデジモンを連れた彼女に会ってね、今その少年が、ここに居ると聞いたから、話を聞きたくって付いて来てしまったんだ。迷惑だと思ったんだけどね」
少しだけ困ったように話をする城戸さんに、泉さんが納得したように大きく頷く。
そして、その視線が、ヒカリちゃんへと向けられた。
「貴方は?」
「あっ、あの、彼女は……」
「私は、八神ヒカリと言います。タケルくんが連れているこの子から、ここに私がずっと探している人が居ると聞いて、だから、会わせてください、その人に!」
不信気に、ヒカリちゃんを見る泉さんに、慌てて説明をしようとした僕の言葉を遮って、真剣な声が泉さんに向けられる。
彼女のこんな姿、初めて見た。
何時も、何処か不思議な、それでも人に安心感を与えるような笑顔を浮かべているのしか、知らなかったから。
そう、あの人に似た、何処か安心できる笑顔を……。
「僕からも、お願いします。あの人に会わせてあげて下さい」
慌てて、僕からも、頭を下げる。
だって、本当に必死なのが分かるから、だから、その願いを叶えてあげたい。
「ボクからもお願い。ヒカリを―――に会わせてあげて!!」
「オイラからもお願いするよ、ヒカリは、オイラ達の仲間だぞ」
「ワタシからも、お願いよ。ヒカリを、―――に会わせて上げて!」
僕に続いて、デジモン達もそれぞれ同じように泉さんに、お願いする。
やっぱり、デジモン達は、彼女の事を知っているのだと、改めて実感した。
「……分かりました。今、石田先輩と武ノ内先輩も来ているんです。どうぞ、上がり下さい」
そして、仕方ないという様子で、泉さんが了承の言葉を出す。
だけど、言われた言葉に、僕は、驚きの声を上げた。
「石田って、もしかして、お兄ちゃんが、ここに来ているの?」
信じられないと思いながらも、あの人が、お兄ちゃんも仲間だと教えてくれた事を思い出す。
「お兄ちゃん?」
「あっ、えっと、僕と石田ヤマトは、兄弟なんです。両親が離婚しているので……」
僕の言葉に、驚いたような泉さんの言葉に、僕は慌てて説明した。
それに、納得したのだろう、泉さんも頷く。
「では、狭いですが、入ってください。今、大事な話しをしてくださるそうですから……」
中に促されて、大きく頷く。
そして、部屋の中へ入った瞬間、またあの不思議な音を耳にした。
彼を見つけた時、聞こえたあの音が、部屋の中から聞こえてくる。
「……デジヴァイスが……どうして………」
扉の向こうから、彼の声が聞こえて来た。
デジヴァイス?それが、この音の正体??
そして、泉さんが、扉を開く。
「……多分、選ばれし子供が、全員そろったと言う事だろう」
扉が開かれた瞬間、ライオンのような生き物が、僕達を見る。
「えっ?全員、それって、どう言う…………」
そのライオンのような生き物が言った言葉に、彼が不思議そうに首を傾げて、漸くその視線を僕達が居る扉の方へと向けた。
「タケル、丈、ミミちゃん………ヒ、カリ……」
視線が、僕達を捕らえた瞬間、彼の瞳が驚きに見開かれる。
そして、躊躇う事も無く、僕達の名前がその口から零れた。
「高石くんや、城戸さん、それにミミさんは、デジモンを連れていらっしゃるので、分かるんですが、高石くんが連れて来られた方は、お断りしたんですけど、どうしてもと仰るので……」
そんな彼の姿に、泉さんが申し訳無そうに口を開く。
それに、僕も慌てて弁解の言葉を口にした。
「すみません、僕が、断れなかったから……でも、ヒカリちゃんも、この子が見えるんだ。だから、仲間だと思って…。やっぱり、いけなかったかな?」
心配そうに尋ねれば、小さく首が振られる。
「……こいつも、仲間だ………パートナーも、ここに居る……」
彼が、信じられないと言うように、ジッとヒカリちゃんを見詰めていた。
そんな状態でも、はっきりと、僕達に言葉を返してくれる。
「でも、どうして、ヒカリが……」
そして、猫の姿をしたデジモンが、信じられないと言うようにヒカリちゃんを見ていた。
もしかして、この子が、ヒカリちゃんのパートナーなのかもしれない。
そんなデジモンの視線を受けながら、ヒカリちゃんが嬉しそうに微笑んだ。
「呼ばれたんです。私の無くしたモノが、ここにあると……それに、タケルくんが連れている子が、呼んでいたから……」
「……呼んだ?もしかして、あなたには、聞こえるのですか?」
そう言えば、ここに来る前にも、同じような事を言われた。
僕には、あの人の名前は聞こえない。
なのに、ヒカリちゃんは、その言葉に、間違い無く反応を返した。
泉さんの質問に、ヒカリちゃんが小さく頷く。
「はい、私にとって、大切な人の名前がはっきりと聞こえました……」
「ヒカリ、お前……」
しっかりとした口調で言われた言葉に、あの人が信じられないと言うような表情を見せる。
「ずっと、おかしいと思っていたんです。どうして、こんな事になったのか分かりません。だけど、みんな覚えていなかった。私には、3つ年上の兄が居たのに……両親でさえその事を覚えていなかったんです……」
今にも泣き出してしまいそうな表情で語られた内容は、信じられないもの。
思わず、僕は、ヒカリちゃんの言葉に、息を呑んだ。
だって、その話しが、本当だとすると、考えられる事は一つだけ……。
ずっと、彼女が探していた人は……。
「でも、私は、覚えていました。私には、大切な兄が居た事。誰も、覚えていないのに、私にはちゃんと記憶があったんです」
はっきりと言われた言葉に、何も口など出せない。
だって、そんな事、普通なら信じられない事だ。
誰にも記憶に無いのに、彼女だけが覚えていたなんて……。
そんな事、信じられない。
「貴方の、お兄さんですか?」
僕と同じように、信じられないと言うように、泉さんが、ヒカリちゃんへと質問を投げかける。
それに、ヒカリちゃんは、小さくだけど、はっきりと頷いた。
「はい、私の名前は、八神ヒカリ。今、目の前に居るのは、私の兄の、八神太一です」

はい、『裏・GATE』タケルくん視点になります。
いや、一気に書き上げてしまいました。
本当に、今日は調子が良いなぁ。ああ、スランプ前の絶好調って奴かも……xx
そんな訳で、少々長めになりましたが、お約束しておりました『裏・GATE』になります。
ああ、またしても、表との関連性がバッチリと……。
ミミちゃんは、まだパルモンが光子郎に家に泊まる事を知っていたので、ここにきた理由は、説明できます。
しかしながら、丈先輩がここに来たのは、不自然ですよね?
なので、やっぱり理由が必要だと思いましたのでここで書いてしまいました。
ああ、やっぱりと言うか、表には、どう考えても、出せないよなぁ……。
うう、表しか読んでいない方、すみません。(いや、ここで謝っても、意味無いだろう!)
そんな訳で、今度は本編を進めます。
調子が良い時に、頑張って出来るだけ更新しますね。
スランプに入りそうで、正直怖い今日一日でありました。
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