『タイタン』
(M.ガスコン,社会思想社)
【入手可】

ファイテングファンタジーシリーズ(以下、FFと略す)の世界を余すことなく紹介した。世界設定資料集です。これと双璧をなす『モンスター事典』(同社)は、FFを楽しんだゲームブックファンなら必携のアイテムでしょう。今になれば、世界設定資料はどんなRPGにも付加されていますが、おそらく、ゲームブック(以下、GBと略す)単体のシリーズでの世界設定資料集は、これが初めてではないでしょうか。
小説をモチーフにしたGBは様々あるし、TRPGを背景にした小説やGBはある。しかも、小説にしてもTRPGにしても設定があり、背景があり、もちろん世界もある。しかし、FFはGBが全てである(小説とかあるかもね)。ここから、逆にTRPGに移行したのも珍しい(アドバンティストFFやファイティングファンタジーなど)

で、『タイタン』であるが、この魅力はズバリ地図とそこにある神話やイベントの数々が点在していることである。架空の地図を見ながら、ここには「盗賊都市」があり、エルフの住居がある。GBに出てくる重要人物の背景やその大陸にある神話体系、貨幣や経済や生活などを空想の産物であると分かっていながらも、FF(ソーサリーシリーズでの旧大陸の「カーカバード」なども含む)で楽しんだ作品の数々から想起される様々な想像を産み出す。
FFのGBに使われていた挿し絵もふんだんに使われ、どの巻でどういった場面なのかも分かるのも嬉しい。

地図の楽しみについて
世界地図でも日本地図でもいいんだけど、出来るだけ詳細に載っているものを見たりすると、そこに何があり、どんな地形で、かわった地名だと、そこに特別な意味があるんだろうかと想像して楽しいものがある。また、しばらく、学習をしてその国の風土とか歴史とかを知るようになると、地図を広げることで、こことここの国境はどのように決まって、民族間の争いとか価値観とかを想像するようになる。また、旅行に行ったりすると、ここにこんなのがあったよナァと想起をしたりする。
ファンタジーでは、思いっきり想像で遊ぶことが出来る。思い入れの強いRPGの世界設定は、プレイしたことのある地名があれば、想起と共に、新たな記述があれば、他の所ではこんなドラマがあるのかナァと想像できる。

蛇足ながら、『モンスター事典』も同様に、FFに出てきた様々なモンスターに対する思い入れとともに、想起される生態や行動のイメージが補強されて、イマジネーションがよりリアルに自分の中で再構築されていく。

また、この本が出たときは、TRPGとくにD&Dのエキスパートをプレイし始めたときであって、キャンペーンや地図作製などのバイブルになった。プレイといっても、GBの形式で、どっちに行くとか選択肢がある程度決まっていて、GBに毛をはやした程度で、友人達もFFシリーズの信者であったこともあって、タイタンの世界観はぴったりであった。

最後に、『安田均のFANTASY GAME FILE』(P50)より
「この時点では、もうすぐなんて書いてあるけど、『タイタン』はこれから遅れに遅れて、2年後にようやく翻訳が出た(1990年)。資料集というのは、訳語の統一とかがあって大変だったのだ。
FFシリーズは、こちら(日本)ではGBの衰退共に、33巻で打ち止めになったけど、向こう者、延々60巻を越えてなお健在だ。内容もこの『タイタン』に沿って、ますます充実した面白いものになっている。〜関連して、三番目の大陸クールでは、タイタンの歴史上上の重要事件「魔法大戦」の皮切りになっている。戦火も激しくという設定であるので、FFシリーズの新しい書き手はここを思う存分活用して、従来よりもRPG風の作品を書いていくらしいから、大いに期待できるところだと言及している。

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