勇者ゆたすけの冒険
●第62章●
〜その後の「ドラクエ2」〜


 前回で完全に終わったと思った冒険日記ですが、実は今回こそ本当の最終回なんだそうで。さて、その内容は....。


 3人の若き勇者たちが、悪の神官ハーゴンによって闇に包まれた世界に再び光を取り戻してから、すでに7年の月日が流れていた。

 悪は一掃され、魔物たちに破壊された町や村は復興し、人々は緩やかな時の中で、幸せな日々を過ごしている。空はどこまでも高く、海は果てしなく深く、そして草原は季節ごとに色とりどりの表情を見せる。人も、草も、虫も、動物たちも、すべてが穏やかに生きている。

 しかしここに、穏やかに暮らすことが出来ないお年頃の王がいた。ローレシアを治めるゆたすけ国王である。彼は悩んでいた。冒険が終わってから今日まで、ただひたすら悩んでいた。その悩みとは....

りんごを取るべきか、はたまたおさえを取るべきか。(苦笑)

 ゆたすけ華やかなエンディングの直後から今日このときまで、ただただそのことだけを考えて生きて来たのだ(アホ)。侍女が庭で摘んで来た花びらを1枚ずつちぎっては「りんご」「おさえ」「りんご」「おさえ」「りんご」「おさえ」「りんご」「おさえ」「りんご」「おさえ」「りんご」「おさえ」.... いーかげんにしろ(笑)。

 さすがに心配した元国王(おとーちゃん)が色々と縁談話を持ち込んで来るのだが、ゆたすけは一向に興味を示さない。中にはミス・ルプガナミス・ザハンといった町や村を代表する美人もいて、もてない男たちからブーイングが起こったほどなのに、ゆたすけはそんな女性には見向きもせず、ひたすら2人のことを考えて暮らしていた。

 が、そのくせ、ゆたすけは2人に連絡すらしていなかった。冒険が終わった直後にはりんごおさえもはるばるローレシアに遊びに来たりしたし、盆暮れの挨拶も欠かさなかったのだが、ゆたすけからの連絡がまったく無くなってしまったため、やがて2人からは何の音沙汰も無くなってしまった。

 そんなある日、ついにゆたすけは一大決心をした。こうして部屋の中でうじうじしていても始まらない。2人に会いに行こう。2人に会って、そこでどちらを取るか決めよう。ゆたすけは旅立ちの準備を始めた。

 ちょうどそのとき、兵士が一通のハガキを携えてゆたすけの部屋に飛び込んで来た。彼はハガキを手渡すと、物も言わずに部屋から飛び出してしまった。

 ゆたすけはカバンに下着や靴下などを詰め込みながら、何の気なしに手渡されたハガキを見た。そして、国中に聞こえるほどの大声で絶叫した。

 ハガキの裏には、満面の笑みを浮かべてケーキに入刀しているりんご君と、どことなく見覚えのある女性の写真が印刷されていた。



結婚しました


新しい生活の第一歩を踏み出しました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

りんご
チャチャイ


 チャチャイ....どこかで聞いたことがあるような。チャチャイ....ムエタイの選手じゃないんだから....(笑)。そうか!! ゆたすけはすべてを思い出した。

 チャチャイはその昔ローレシアの城に仕えていた女性だ。そして、りんごチャチャイは、ハーゴン討伐の旅の途中に出会っていたのだ!! (冒険日記・第17章参照)

 りんご君が結婚してしまった....。ゆたすけは、茫然自失状態でしばらく部屋にたたずんでいた。頭の中ではりんご君との楽しい思い出たちが走馬灯のように....などと過去を振り返っていても仕方が無いのだ。過去は過去だ物凄い切り返し)。だいたい男と男が結ばれるなんてことはありえないのだ。そうだそうだそうなのだ。おれにはおさえという、立派なお妃候補がいるではないか。何を心配するというのか。

 驚くほどのスピードで立ち直ったゆたすけは、おさえまんじゅうを食べながら微笑む姿を思い描きながら、愛の冒険を始めることにした。

 ゆたすけが自分の部屋の扉を開いた時、またもや先ほどの兵士が駆け込んで来た。兵士の手には1通のハガキが。

 ふわ。ちょっとイヤな予感〜(笑)。

 はたして、ゆたすけ黒い予感は的中してしまった。りんごに続いて、おさえまでもが結婚してしまったのだ。しかも相手は....



結婚しました



新しい生活の第一歩を踏み出しました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

エンリケ
おさえ


 同じ業者で印刷したのか、りんご君のハガキと文面がまるっきり同じである(笑)。んなことはともかく、このエンリケというのはおさえの幼なじみで、やはり2人(1人と1匹?)は冒険の途中で劇的な再会を果たしていたのだ(第41章参照)。

 こうして夢も希望も無くなってしまったゆたすけは自室に引きこもり、それ以降、二度と再び国民の前に姿を現わさなかったという。

 しかし、不幸中の幸いというか何というか、世界はいつまでもいつまでも平和な日々を送ることが出来ましたとさ。

〜おしまい〜

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