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デジタルカメラのノイズ測定・その三


『デジタルカメラのノイズ測定』の続きである。 露出シミュレーションの改善のため、光ショットノイズの測定が行えないかとということも思案していたので、 その一助とすべく継続して実施した。

Noise, Dynamic Range and Bit Depth in Digital SLRs
Photon shot noise Fig.1
The photon noise was isolated by taking the difference of two successive images; the raw values for any one pixel then differ only by the fluctuations in the photon count due to Poisson statistics (apart from a much smaller contribution from read noise).

即ち
 連続する2つの画像の差分をとることによって、フォトンショットノイズを得ることができる
 何故ならば被写体は同一である故、差異はランダムなノイズ(ショットノイズ)のみとなる
 なお読み出し回路ノイズ等は、非常に小さいので影響は少ない
ということのようである。


【方法】

【結果】

[表1]
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[表2]
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[表3]
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[表4]
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[表5]
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[表6]
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【表中の各項目説明】

[イメージセンサ 用語説明] - 感度不均一性
飽和の50%の均一な光を当てた場合の、所定領域内における出力の標準偏差(σ)と同領域の平均値(Average)との比率(σ/Average)。

【考察】

【その他】

図1はPhotons to PhotosPhotographic Dynamic Range Shadow Improvement Chartのようなものを、 今回の測定に基づいて作成してみた。 他のカメラと比べると、概ね線形ということができる。 7000番台最新のD7500になると、低感度側と高感度側で別の処理が行われているもよう。 高感度のDRが大きく改善している。 どうやら最近のソニー製撮像素子の傾向のようである。 入門機のD5600は線形な状態である。 天体写真によく使われているキヤノン6Dでは、更に複雑というか細かい処理が行われている。

[図1] DR線形度図
image X軸(ISO=2^(x-1)*100)、Y軸(EV)

次にFFTだけでは区別がつかないので、そのプロットを見てみた。 Aはダーク画像のものであるが、何らかの処理が施されたような痕跡がある。 何の処理もされていないか、それがシグナルに対して微小であればB(今回測定時に撮影した画像)のようになるはず。 底部が水平になるはずなのである。 解像が高ければプロットのGrayValueが小さく、逆であればが大きくなる。 Aには傾斜が入っており、例えばフィルタによる処理が入っているような形跡がある。 どちらにしても支障無く前処理ができれば、問題無いことではあるのだが。

[図2-A] FFTプロット
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[図2-B] FFTプロット
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S/Nの計算を総ノイズの場合と、フォトンショットノイズのみの場合とで比較してみたが(1ショットの場合)、定量的には読み出し回路ノイズの影響はほとんど出てこない。

[まとめ]
天体写真の実写においては『(1)適正露出に拘らず飽和する直前まで露出時間を伸ばすこと、 (2)ダーク・フラットの処理を行うこと』によりS/Nが向上する。 しかし飽和直前まで露光すると、輝星部分は露出過多となり弊害が生じるので対策が必要となる。
また読み出し回路ノイズの影響はほとんど無く、ほぼシグナルとショットノイズの関係で画質が決まる。 したがって光害の少ないところで撮影することが肝要である。 光害地では露出を伸ばしても、悪化ないしは頭打ちとなる。 カメラの天文改造でRの感度を上げることも、S/N向上のためには効果がある。

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初出:2018-10-06 改訂:2019-07-23
(C) YamD