Fabry病の現況とQ&A
第四回日本リピドーシス研究会公開討論より |
■ Fabry病患者調査報告 北川照男(東京予防医学協会理事長)
治療の可能性が見えてきたので、予備調査として全国7000の病院に一次、二次の2回にわたって患者数、どのような診察科か、症状はどうかという調査をおこなった。Fabry病に関する全国的な調査としては、おそらく世界初の試みだろう。
- 回収率は60%で、一次では63例、二次では47例が報告された。この他、鹿児島、宮崎では独自調査で70例があるが、これは今回の調査には加算していない。
- 診療科は小児科が36%、内科が23%
- 患者は20歳以下が半数を占めているが、高齢者もいる
- 15歳未満の患者は10%しかいないが、実際にはこの段階で診断ができるはずなので、ほとんどの患者が見逃されていることになり、早期診断の必要性を痛感した
- また、40歳以上の患者は別の疾患のために来院し、そこで偶然Fabry病でもあることがみつかるケースが多いと考えられる
質問>隠れた患者が多いのではないかと思うが、実際にどのような経過で診断に至ったかについては調査されているのか?
回答>(北川)今回の調査の目的は、患者の現況を調べることであり、過去の経緯については調査対象に入っていない。小児科や定期検診で見逃されている一つの理由は、いままで治療法がなかったため、早期発見に熱心になれなかったということはあると思う。
質問>治療法はどこまで実用に近づいているのか?
回答>(Desnick)日本の1グループを含めて世界で3つのグループが治療法確立に向けて動いている。私はこの疾患を25年来研究してきたが、はじめて治療法の兆しが見えてきたことを非常に嬉しく思っている。個人的には5年くらいで、現在のゴーシェ病と同じような段階まで有効な治療法が確立されるのではないかと考えている。
→第4回日本リピドーシス研究会のプログラムと内容
■ 患者さんとの公開討論
以下のQ&Aは、リピドーシス研究会の公開討論において、Fabry病患者の家族から出された質問と、それに対するセミナー参加の医師・研究者からの回答をレポートしたものです。
Q:疼痛に対してテグレトールが処方されていますが、この薬は本来抗痙攣薬では?
A:(Desnick)どうして効くのかを完全に説明することはできないが、かなり以前から経験的に、カルバマゼピン系の薬、つまりテグレトールなどを定期的に服用することが痛みの予防になることがわかっている。
Q:Fabry病と他の病気の関連は?
A:先天性代謝異常症は確率的に低いというだけで複数重なることもありうる。たとえば個人的な経験ではFabry病とディシェンヌ型筋ジストロフィーを併発した患者を知っているが、これはまったく偶然に過ぎない。
Q:日本での酵素補充療法の開始時期は?、治験開始のスケジュールは
A:何種類かの治療法が考えられ、複数の医療機関で検討されている。ファブリー病のマウス(アニマルモデル)が研究中である。たとえば、医薬品の効果についても実験中。酵素の残された活性を高める実験も行われている。あるいは、ゴーシェ病のように単純に正常な酵素を補充するという方法、遺伝子療法もアニマルモデルの段階では進められている。ごく初期の段階ではあるが、脂質の合成のレベルを下げる薬、活性を高める薬の療法が治験をはじめたところ、あるいは始める直前だ。というわけでいろいろなアプローチが考えられるが、非常に効果のあがる治療法までは、時間がかかる。先例のなかったゴーシェ病に比べれば、ここ数年で実績を上げている別の疾患の経験を活かすことができるのでこの先は速いと思われるが、それでも3年、5年、あるいは8年かかるかもしれない。
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