宇治の大きな変貌

●目指すは宇治

起きると、晴れている。今回は宿の朝食を利用せず、木屋町三条交差点にある小川珈琲へ。

食べ終えて外へ出ると、昨日より暑くなりそうだ。ツレがまだ見たことがないという平等院を拝観するため、京阪三条の地下改札で宇治周遊切符を買う。
急行に乗って、いつも降りる東福寺などを通りすぎていく。ビルが減り、緑が増えていく。風景が郊外になっていく。直通列車ではなかったので、中書島で乗り換えて宇治へ。

京阪の宇治に降り立つのは何年ぶりだろうか。もう七年は来ていない。
降りて改札に至る通路がまったく新しい。出ると、大きなロータリーがある。

あれ? 京阪宇治を出てすぐの、お茶の通圓は?!

駅のリニューアルで改札はだいぶ奥に引っ込み、車を寄せやすくなった。ロータリーを越えるとやっと、以前に見た通圓が視野に入ってきた。

暑くなってきたし、レンタサイクルの看板を見たので尋ねようとするが、受付らしいところは無人だ。何度か声をかけるが誰も現れない。
よく見ると、駅にあるコンビニが受け付けになっていることに気付いた。もう駅をだいぶ離れてしまっている。諦めて、宇治橋に向かった。

●あまりに変わっていた平等院

水量豊かで流れの速い宇治川を、ほとんど人の歩いていない宇治橋で渡る。
暑い。ほんとうに暑い。逃げ場がまったくない。風も生温い。渡り終えただけで結構こたえる。

気を取り直して、平等院参道へ曲がる。
これまた、えらくきれいになっていて驚く。宇治茶の店が軒並みきれいになっていたり、古代のもち米を使った和菓子が販売されていたり。菓子は少しひかれたが、日もちしないものだというし、今日はひどく暑いので、やめにする。

***

左右に気を取られつつ歩いていくと、平等院の境内に至る。何度も見に来たところだ。拝観料を払い、藤棚を左手に見つつ、慣れた足取りで鳳凰堂へと進んでいった。
いつものように近づこうとすると、鳳凰堂に至る順路に、別の受付がある。尋ねてみれば、鳳凰堂は別料金になるが、一時間に三組、ガイドがついて解説する上に、中にも入れるという。確かにいままでは建物の外から伺うだけだった。それでも阿弥陀如来や飛天を見ることは出来たのだが…
ブツクサ言っても仕方ない、ここまで来たら見るしかない。入り口の拝観料と同額を支払って、順番を待つことに。

前の組が終わる頃には、我々の組も人数が揃ってきた。引率のもと、鳳凰堂の外観の解説を経て、中へ。
初めてである。阿弥陀如来の金箔が見事に残るだけでなく、色は淡くなってきたが、扉などにも彩色された極楽図がある。しかし、阿弥陀如来の周りを取り囲んでいた飛天は約半分、取り外されて鳳祥堂(境内にある博物館)に収蔵されているという。
これはまことにショックだった。せっかくガイドが解説してもくれるのだし、創建以来阿弥陀如来とともにあった飛天を、いまさら引きはがさなくても。

●近代的な博物館

その鳳祥堂に至る前に、庭園を見ておく。池の対岸から鳳凰堂を望むと、以前に比べて少し右に寄っているような気分になる。池を平安時代の様式に戻したからか。
鳳凰堂の扉の前は、当初は白い石で敷き詰められていたそうだ。江戸期に石垣になった。これを元に戻したという。
確かに石垣でないと、池と鳳凰堂になだらかな連続性が生まれる。なるほど、優美だ。

それを見た後で鳳祥堂に入るとびっくりする。
鳳凰堂に脇にある丘をくりぬいた近代建築。地下から入り、見学を終えると丘の上に出てから、鳳凰堂の背後を通って戻る仕組みになっている。(以前は緑の園になっていたが、その面影は残されている。)

中に入れば、NHKが特集した(創建当時の平等院の様子をCGで復元する)番組の様子や、寺宝などを展示している。
それなりに充実してはいるが、飛天もこうした展示の中にあった。鳳凰堂で外の空気に触れてきた彼らはいま、地下の空調の中にいる。手にする楽器が心なしか寂しげだ。

見学を終えると最上階。ここは本やビデオ、グッズを販売している。記念にハンカチを買う。

外に出れば、真夏の空気が押し寄せてくる。それ以上に、あまりに変わりようにびっっくりした夏となった。

●昼食とお茶

鳳凰堂をゆっくり見たため、すでにお昼時を過ぎてしまったくらいだ。境内を出てから、参道の続きを先に進んでみる。

食堂がいくつかある。あっという間にどん詰まりに行き着いて、戻るのも暑いし、どこも同じ程度に見えるので、目の前の店に入ってみた。
客が誰もいない。出てきた品は、まぁ食べられる。ただ、あれこれ話し掛けられるのが少々うるさく感じてしまう。悪気はなく、むしろサービスなのもわかるが、疲れていて静かに食べたかったので、切り上げて出る。

戻る道すがら、なんとなくお腹が物足りない。デザートに、とある茶屋に入ってみる。
抹茶ぜんざいはおいしかったし、茶器のセンスも悪くない。頼んだお茶もおいしい。茶器の販売もしている。
ただ、お店の人が愛想よく商品の解説をして、「ほら、茶香炉っていって、これで自家製のほうじ茶を作れるんです、こういうのってなかなか癒されると思いませんか」と少々押し売り調。
あまりにうるさいので、お勧めの高い商品でなく、水出し煎茶と、形のよい急須を買って出た。
今日はこういう日なのか?

次は黄檗だ。一番暑くなっていく時間帯に、再び宇治橋を渡った。駅についた頃には汗だくである。

 


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