静かな黄檗、静かな夜

●久しぶりの、そして変わらぬ黄檗

京阪で黄檗へ。徒歩で万福寺に至る。

ここも久しぶりだ。壁がきれいになっているが、歩いてみればほとんど前と変わっていない。
中国は明時代の禅宗をいまに伝える。山門をくぐり、歩き出せばもうそこは日本ではない。

修行者がいるため、あまり騒いではいけないのだが、それ以前に騒ぐ気もしない。かといって、妙に緊張することもない。人も少なく、ゆっくりと回廊を巡っては、極彩色のお堂などに目を奪われる。

決して明るい場ではないのだが、どこかカラリとした空気はやはり、禅宗のもの。
金堂に仏弟子の像があり、日本では小乗としてあまりとりあげられない直弟子を意識しているところなど、単に建物意外の特徴も楽しい。

情緒に強く訴える何かがあるわけではなく、また単なる異国情緒とも異なる。日頃見慣れた「京都・禅寺・枯山水」という枠を、たまにこうして取っ払ってみる。それが楽しい。

●街の喧騒に戻る

そろそろ夕方に近づいている。京阪電車で三条へ戻ることにした。

街に戻ると、ツレが春に来たときに見かけた新しいカフェに行こうという。話を聞きながら新京極を探すが、見つからない。
はたと気付いて、寺町京極に行ってみた。ビンゴ!

device.というセレクトショップの二階にある、device. cafeだった。
お腹も落ち着いて、もう少し散歩。寺町京極の一本西、御幸町通などを歩くと、アランジ・アロンゾと自転車を置いた店などがある。このあたりは裏原宿的な空気があるのか。

歩き疲れたので、一度ホテルで足を休めることにした。

●木屋町

ツレがシャワーを浴びて休むというので、私は一人で出てみることに。

木屋町と河原町の間の路を、縫うようにして歩いてみた。日曜なのに意外に人が少ないようで、街の様子が気になっていた。
歩いてみれば、カラオケとフーゾクの客引きが目立ち、その分、他の店の勢いが感じられない。以前からこんなふうになっていたろうか。
三条から四条に向かってあれこれ眺めていくうちに、月曜日ということを考えてもあまりに人が少ないことに、滅入ってきた。三条大橋も四条大橋も、人がまばらだ。

四条木屋町の信号を渡り、以前からフーゾクの店のあるあたりを過ぎて、喫茶フランソワで休むことにする。
相変わらずのウィンナコーヒーとケーキ。冷房の中、音楽に身体を浸す。しかし、ショパンのピアノ曲ばかりが続いて、冷たい音にやや寒くなってきた。いや、device. cafeの食事が少なめだったので、腹が減ってきたのだ。

店を出る。が、夜の10時を過ぎて、宿に戻る途中で食事をとれるところがあるだろうか…いわゆるカフェめしはもう食ったから、そうでないものがいいのだが。
なかなか見つからない。 結局、木屋町三条で、パスタとコーヒーをとった。想像したよりまっとうなイタリアンパスタで、身体は温まった。デートや飲み会の客が多い中、ちゃんと野郎一人に席を作ってくれたギャルソンに感謝。

宿に戻ると、ツレは少し疲れがとれたようだ。街の様子を話してから、眠った。ちょっと冴えない夜だった。

 


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